頻出計算パターン集¶
電力科目で繰り返し出題される計算の「型」を5パターンで整理。
使い方
各パターンの「公式」を覚え、「手順」通りに当てはめるだけで解ける。 「注意点」は落とし穴なので必ず確認すること。
パターン1: 水力発電の出力計算¶
公式¶
P = 9.8 × Q × H × η [kW]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| P | 発電出力 | kW |
| Q | 流量 | m³/s |
| H | 有効落差 | m |
| η | 総合効率(水車効率×発電機効率) | — |
手順¶
- 有効落差 H を確認(総落差 - 損失水頭)
- 流量 Q を確認
- 効率 η が水車効率×発電機効率で与えられていれば掛け合わせる
- P = 9.8QHη に代入
注意点¶
落とし穴
- 9.8 は重力加速度(g=9.8 m/s²)× 水の密度(1000 kg/m³)× 単位換算の結果。暗記必須
- 有効落差(H)であることに注意。総落差を使うと誤答
- 出力の単位は kW(Wではない)
例題イメージ¶
有効落差 100 m、流量 10 m³/s、効率 0.85 の水力発電所の出力は?
P = 9.8 × 10 × 100 × 0.85 = 8,330 kW
パターン2: 火力発電の熱効率計算¶
公式¶
η = 3600 / H × 100 [%]
または
η = P_out / Q_in [小数]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| η | 発電端熱効率 | % |
| H | 熱消費率 | kJ/kWh |
| P_out | 発電電力量 | kWh |
| Q_in | 投入熱量 | kJ |
手順(熱消費率から求める場合)¶
- 熱消費率 H [kJ/kWh] を確認
- η = 3600 / H × 100 [%] に代入
手順(燃料消費量から求める場合)¶
- 発電電力量 = 出力 × 時間
- 燃料消費量 × 低位発熱量 = 投入熱量
- η = 発電電力量 [kJ] / 投入熱量 [kJ]
注意点¶
落とし穴
- 3600 は 1 kWh = 3600 kJ の換算係数
- 低位発熱量を使う(高位発熱量と混同しない)
- 熱消費率が小さいほど効率が良い(逆数の関係)
例題イメージ¶
熱消費率 9000 kJ/kWh の火力発電所の熱効率は?
η = 3600 / 9000 × 100 = 40%
パターン3: 変圧器の効率計算¶
公式¶
η = P_out / (P_out + Pi + Pc)
または負荷率 m を使って:
η = m × P_n × cosφ / (m × P_n × cosφ + Pi + m² × Pc_n)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| P_out | 出力(有効電力)= P_n × m × cosφ |
| Pi | 鉄損(一定) |
| Pc | 銅損(負荷電流の2乗に比例) |
| P_n | 定格容量 |
| m | 負荷率(実負荷/定格) |
| Pc_n | 定格時の銅損 |
手順¶
- 負荷率 m を確認
- 出力 = m × P_n × cosφ を計算
- 銅損 = m² × Pc_n(負荷率の2乗に比例することに注意)
- η = 出力 / (出力 + 鉄損 + 銅損)
注意点¶
落とし穴
- 鉄損は一定、銅損は電流の2乗(≒負荷率の2乗)に比例
- 最大効率条件: 鉄損 = 銅損(最大効率負荷率 = √(Pi/Pc_n))
- 全日効率は「1日の出力電力量 / 1日の入力電力量」で計算
例題イメージ¶
100 kVA、鉄損 500 W、定格銅損 1000 W、力率 0.8、負荷率 0.5 のとき効率は?
出力 = 0.5 × 100 × 0.8 = 40 kW 銅損 = 0.5² × 1000 = 250 W η = 40000 / (40000 + 500 + 250) = 98.2%
パターン4: 送電線の電圧降下計算¶
公式¶
三相3線式:
e ≈ √3 × I × (R cosθ + X sinθ) [V]
単相2線式:
e ≈ 2 × I × (R cosθ + X sinθ) [V]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| e | 電圧降下(送電端-受電端) | V |
| I | 線電流 | A |
| R | 1線の抵抗 | Ω |
| X | 1線のリアクタンス | Ω |
| cosθ | 力率 | — |
| sinθ | 無効率 = √(1-cos²θ) | — |
手順¶
- 力率 cosθ から sinθ = √(1-cos²θ) を計算
- 線電流 I を電力から算出(三相: I = P / (√3 × V × cosθ))
- 公式に代入
注意点¶
落とし穴
- 三相は √3 倍、単相2線は 2倍(単相3線は配線の状況次第)
- R, X は 1線分の値(三相全体ではない)
- 電圧降下率 = e / V_s × 100 [%] で表す場合もある
例題イメージ¶
三相3線式、R=2Ω、X=3Ω、I=100A、cosθ=0.8(sinθ=0.6)のとき電圧降下は?
e = √3 × 100 × (2×0.8 + 3×0.6) = 1.732 × 100 × 3.4 = 589 V
パターン5: 配電線の電力損失計算¶
公式¶
三相3線式:
P_loss = 3 × I² × R [W]
単相2線式:
P_loss = 2 × I² × R [W]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| P_loss | 電力損失 | W |
| I | 線電流 | A |
| R | 1線の抵抗 | Ω |
手順¶
- 線電流 I を確認(電力・電圧・力率から計算)
- 公式に代入
注意点¶
落とし穴
- 三相は 3本の線があるので係数は3
- 電流が2倍になると損失は 4倍になる(電流の2乗に比例)
- 力率改善の効果: cosθ が上がると電流 I が減り損失が大幅減
- 電圧を2倍にすると電流は半分になり損失は 1/4 になる
力率改善前後の損失比較¶
P_loss比 = (cosθ₁ / cosθ₂)²
力率 0.6 → 0.9 に改善すると損失は (0.6/0.9)² = 0.44倍(56%削減)
例題イメージ¶
三相3線式、R=1Ω/線、負荷 100 kW、線間電圧 6600 V、cosθ=0.8 のとき電力損失は?
I = 100000 / (√3 × 6600 × 0.8) = 10.95 A P_loss = 3 × 10.95² × 1 = 360 W