地中送電・電力ケーブル¶
📋 v0.7 — 過去問データ充填済み
出題実績(R01〜R07)を充填済み。公式・数値は参考書で必ず確認してください。
1. 直感的理解¶
地中送電の本質: 架空送電線を地中に埋めたもの。都市部・海底・景観保護が必要な地域で使用される。架空送電線より安全性・信頼性が高い反面、建設費が高い・放熱が困難・充電電流が大きいという課題がある。
架空送電線: 空気中を電線が通る → 放熱は空気に頼る
地中ケーブル: 土中に埋設 → 放熱は土に頼る(放熱困難)
5秒で思い出す
地中ケーブルの3大問題: コスト高・放熱難・充電電流大
覚え方
「地中は3大問題持ち」→ コスト・放熱・充電(コ・ホ・ジュウ)
2. 設備を歩く¶
CVケーブルの断面構造¶
graph LR
A["① 導体(銅またはアルミ)"] --> B["② 内部半導電層"]
B --> C["③ 絶縁体(XLPE 架橋ポリエチレン)"]
C --> D["④ 外部半導電層"]
D --> E["⑤ 遮へい(銅テープ・銅線)"]
E --> F["⑥ シース(ビニルまたはポリエチレン)"]
| 層 | 名称 | 役割 |
|---|---|---|
| ① | 導体 | 電流を流す主体。銅またはアルミ |
| ② | 内部半導電層 | 導体表面の電界を均一化(電界集中を防ぐ) |
| ③ | 絶縁体(XLPE) | 電気絶縁の主体。架橋ポリエチレン |
| ④ | 外部半導電層 | 絶縁体外面の電界を均一化 |
| ⑤ | 遮へい | 漏れ電流・誘導電流を流す。接地する |
| ⑥ | シース | 機械的保護・防水 |
半導電層が上下にある理由: 電界が局所集中すると絶縁破壊につながる。半導電層で電界を滑らかに均一化する。
3. 架空送電 vs 地中送電 比較表(最重要)¶
| 項目 | 架空送電線 | 地中ケーブル |
|---|---|---|
| 建設費 | 低い | 高い(5〜10倍以上) |
| 保守費 | 中(定期点検・除草等) | 低い(埋設後は手がかからない) |
| 信頼性・事故頻度 | 低(雷・風雪・塩害の影響大) | 高(外部環境の影響小) |
| 事故復旧時間 | 短い(目視で発見しやすい) | 長い(掘削が必要) |
| 充電電流 | 小さい | 大きい(静電容量Cが大) |
| インダクタンスL | 大きい | 小さい(導体間距離が小さい) |
| 静電容量C | 小さい | 大きい(導体間距離が小さい) |
| フェランチ効果の発生しやすさ | 比較的少ない | 発生しやすい(Cが大のため) |
| 熱放散 | 容易(空気冷却) | 困難(土壌依存) |
| 環境影響・景観 | 鉄塔が目立つ・土地が使えない | 地中化で景観保護・土地は使える |
4. ケーブルの種類比較表¶
| 種類 | 絶縁材料 | 誘電正接 tanδ | 最高使用温度 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| OFケーブル(油浸紙絶縁油入) | 浸油紙 | 大きい(0.002〜0.004) | 75〜85℃ | 油圧管理が必要・漏油リスク | 古い高圧・超高圧幹線 |
| CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース) | XLPE | 小さい(0.0003〜0.001) | 90℃ | 軽量・油不要・現在の主流 | 高圧・特別高圧幹線 |
| CVTケーブル | XLPE(単心3条) | 小さい | 90℃ | 単心ケーブルを3本撚り合わせ | 中圧配電・大電流回路 |
OF vs CV の核心比較:
- 誘電正接 tanδ: OFはCVより大きい → 誘電損が多い
- 最高使用温度: CV(90℃)> OF(75〜85℃)→ CVの方が許容電流が大きい
- 維持管理: OFは油圧管理システムが必要(油が漏れると絶縁破壊)。CVは不要
5. 公式マップ¶
レイヤーA: 充電電流と誘電損¶
充電電流¶
$$\boxed{I_c = \omega C V \quad [\text{A}]}$$
- $\omega = 2\pi f$(角周波数)
- $C$: ケーブルの静電容量 [F]
- $V$: 線間電圧(または相電圧に注意)[V]
誘電損¶
$$\boxed{P_d = \omega C V^2 \tan\delta \quad [\text{W}]}$$
- $\tan\delta$: 誘電正接(絶縁材料の損失特性)
- OFより CVの方が $\tan\delta$ が小さい → 誘電損が少ない
レイヤーB: 静電容量が大きい理由¶
架空送電線: 導体間(または導体と大地間)の距離が大きい(数m〜数十m)→ C は小さい
地中ケーブル: 絶縁層が薄く、導体と遮へい層の距離が小さい(数mm〜数十mm)→ C は大きい
$$C = \frac{2\pi\varepsilon}{\ln(D/d)} \quad [\text{F/m}]$$
- $D$: 外側導体(遮へい)径
- $d$: 内側導体径
- $D/d$ が小さい(距離が近い)ほど C が大きくなる
6. 解法パターン(充電電流の計算)¶
パターン①: 充電電流 $I_c = \omega CV$¶
見分け方: 「地中ケーブル」「静電容量 ○ μF/km」「充電電流」のキーワードが揃っている
手順:
Step 1: ω = 2πf を計算(f = 50Hz なら ω = 2π × 50 = 314 rad/s)
Step 2: Ic = ωCV に代入
Step 3: 単位確認(C の単位が μF/km なら線路長を掛けて F に換算してから計算)
例題: 地中ケーブル(線路長 10km、静電容量 0.2μF/km、66kV系統、f = 50Hz)の充電電流は?
$$C_{total} = 0.2 \times 10^{-6} \times 10 = 2 \times 10^{-6} \text{ F}$$
$$\omega = 2\pi \times 50 = 314 \text{ rad/s}$$
三相では相電圧 $V = 66{,}000 / \sqrt{3} = 38{,}105$ V を使う(相電圧×Cで各相の充電電流)
$$I_c = 314 \times 2 \times 10^{-6} \times 38{,}105 \approx 23.9 \text{ A}$$
7. 勘違いTOP3¶
勘違い①: 「地中ケーブルは L が大きく C が小さい(架空線と同じ)」¶
誤り。 地中ケーブルは架空送電線と逆。
- L(インダクタンス): 小さい(導体間距離が小さいため磁束が少ない)
- C(静電容量): 大きい(導体間距離が小さいため静電容量が大きい)
勘違い②: 「フェランチ効果は架空送電線の方が起きやすい」¶
誤り。 静電容量 C が大きい地中ケーブルの方が充電電流が大きく、フェランチ効果が発生しやすい。
フェランチ効果の発生条件: 軽負荷または無負荷 + 静電容量が大きい(=充電電流が大きい)
勘違い③: 「CVケーブルの最高使用温度は OFケーブルより低い」¶
誤り。 CVケーブル(XLPE絶縁)の最高使用温度は 90℃。OFケーブル(浸油紙絶縁)の 75〜85℃ より高い。だから CVケーブルの方が許容電流が大きく取れる。
8. 正誤判定の急所¶
| 文 | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 地中ケーブルは架空送電線より静電容量が小さい | 誤 | 地中ケーブルは導体間距離が小さいため C が大きい |
| CVケーブルはOFケーブルより誘電正接が小さく誘電損が少ない | 正 | XLPEは浸油紙より tanδ が小さい |
| 地中ケーブルの事故復旧は架空送電線より短時間で済む | 誤 | 掘削が必要なため時間がかかる |
| フェランチ効果は地中ケーブルで発生しやすい | 正 | 静電容量Cが大きく充電電流が多いため |
| CVケーブルの最高使用温度はOFケーブルより高い | 正 | CV = 90℃、OF = 75〜85℃ |
| 地中ケーブルはインダクタンスが架空送電線より大きい | 誤 | 導体間距離が小さいため L は小さい |
| 地中送電は雷害や風雪の影響を受けにくく信頼性が高い | 正 | 地中に埋設されているため外部環境の影響を受けにくい |
| 充電電流は静電容量と周波数に比例する | 正 | $I_c = \omega CV = 2\pi f C V$(fとCの両方に比例) |
📊 出題実績¶
| 年度 | 問 | タイトル | 問題タイプ | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| R07下 | 問9 | 地中送電線路の特徴と機材 | 論説 | ★★★☆☆ |
| R07上 | 問9 | CVケーブルとOFケーブルの特徴比較 | 穴埋 | ★★★☆☆ |
| R06下 | 問9 | 地中ケーブルの誘電損・静電容量 | 計算 | ★★★★☆ |
| R06上 | 問9 | 地中送電線の充電電流計算 | 計算 | ★★★☆☆ |
| R05下 | 問9 | 架空送電線と地中ケーブルの特性比較 | 論説 | ★★★☆☆ |
| R05上 | 問9 | CVケーブルとOFケーブルの特性比較(誘電損・最高使用温度) | 穴埋 | ★★★☆☆ |
| R04下 | 問9 | 地中ケーブルの充電電流計算(静電容量・線路長・電圧) | 計算 | ★★★★☆ |
| R03 | 問9 | 架空送電線と地中ケーブルの特性比較(L・C・フェランチ効果) | 穴埋 | ★★★☆☆ |
| R02 | 問9 | CVケーブルの構造(各層の名称と役割) | 論説 | ★★☆☆☆ |
| R01 | 問8 | 地中送電の特徴(建設費・保守・事故復旧・充電電流の比較) | 論説 | ★★☆☆☆ |
出題傾向まとめ: 架空送電線との比較(L大小・C大小・フェランチ効果)が頻出。CVケーブルとOFケーブルの tanδ・最高温度の比較も定番。充電電流の計算 $I_c = \omega CV$ は数値計算として出題されることがある。フェランチ効果の発生しやすさは地中>架空の理由まで説明できるようにすること。
詳細解説: 電験王 地中送電カテゴリ