コンテンツにスキップ

🔥 火力発電

燃料の化学エネルギーを熱→蒸気→回転→電気に変換する。熱効率η = 3600/H_r が試験の核心。

📋 v0.7 — 過去問データ充填済み

出題実績(R01〜R07)を充填済み。公式・数値は参考書で必ず確認してください。


🧠 直感的理解

火力発電の変換チェーンは3段階:

化学エネルギー(燃料)→ 熱エネルギー(ボイラー)→ 機械エネルギー(タービン)→ 電気エネルギー(発電機)

この各段階で必ずロス(損失)が発生する。熱効率とは「入れた燃料エネルギーのうち何%が電気になったか」の指標。

アナロジー:燃料 = 食料、蒸気 = 体内エネルギー、タービン = 筋肉、発電機 = 仕事。食べたカロリーのうち実際の仕事に使えるのは一部だけ——それが熱効率。

数値感: - 昔の汽力発電:熱効率 35〜40% - 現代のコンバインドサイクル:熱効率 55〜60%以上(世界最高水準) - 電力1 kWhの熱量換算:3,600 kJ(1 kWh = 3,600 kJ は必ず覚える)

5秒で思い出す

η = 3600 / H_r 「熱消費率の逆数が熱効率」

H_r [kJ/kWh]:1 kWh発電するのに消費した熱量。小さいほど高効率。


🏭 設備を歩く

graph LR
    A[燃料タンク] -->|燃料供給| B[ボイラー]

    subgraph ボイラー本体
        B1[節炭器 - Economizer]
        B2[蒸発器・ドラム]
        B3[過熱器 - Superheater]
        B4[再熱器 - Reheater]
        B1 --> B2 --> B3
    end

    B --> B1
    B3 -->|過熱蒸気| C[高圧タービン HP-T]
    C -->|低温蒸気| B4
    B4 -->|再熱蒸気| D[低圧タービン LP-T]
    D -->|排気蒸気| E[復水器 - Condenser]
    E -->|復水| F[給水ポンプ]
    F -->|高圧給水| B1

    C --> G[発電機]
    D --> G

    H[冷却水 海水・河川水] --> E

主要機器テーブル

機器名 役割 試験で問われるポイント
ボイラー 燃料を燃焼して水を加熱・蒸気化 貫流ボイラー(高圧大容量)vs 自然循環
節炭器(エコノマイザー) 排ガスの熱で給水を予熱(省エネ) 「排ガスで給水予熱」→
過熱器(スーパーヒーター) 飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気に タービン入口温度を上げて熱効率向上
再熱器(リヒーター) 高圧タービン通過後の湿り蒸気を再加熱 再熱サイクルの核心部品;湿分除去
給水加熱器 抽気蒸気で給水を予熱(再生サイクル) 「抽気」「再生」キーワード
高圧タービン(HP) 高温高圧蒸気で回転力を得る 再熱後、中圧・低圧タービンへ
低圧タービン(LP) 再熱蒸気でさらに仕事をとる 排気は復水器へ
復水器 排気蒸気を冷却して水に戻す 真空を保つことで圧力差を大きくする;冷却水が必要
給水ポンプ 復水を高圧側に送り返す 循環ループの完結;消費動力は小さい
空気予熱器 排ガスで燃焼用空気を予熱 節炭器と同様の排熱回収

現場の視点

復水器の真空度を高く保つことが熱効率改善の重要ポイント。真空度が下がる(背圧が上がる)とタービン出口圧が上がり、圧力差が小さくなって仕事量が減る。冷却水温度が上がる夏場は熱効率が低下する理由がここにある。


⚖️ 熱サイクルの比較表

サイクル 構成 熱効率の向上ポイント 出題ポイント
ランキンサイクル ボイラー→タービン→復水器→給水ポンプ(基本) 基本形。改善なし 基準として把握
再熱サイクル 高圧タービン後に再熱器で再加熱→低圧タービン 蒸気温度を再度上げることで湿分を減らし、タービン効率を向上 「再熱器」「湿分防止」「2段タービン」
再生サイクル 途中タービンから蒸気を抽出して給水を予熱(給水加熱器) ボイラー入口水温を高め、ボイラーへの供給熱量を削減 「抽気」「給水加熱器」「熱量節約」
再熱再生サイクル 再熱+再生の組み合わせ 両方の効果を得る。現代の大型火力発電はほぼこれ 「実際の大型発電所」「最も高効率な汽力」
コンバインドサイクル ガスタービン排熱で蒸気タービンも動かす(GTCC) ガスタービン(高温域)+蒸気タービン(低温域)で広い温度範囲を活用 熱効率55〜60%超、起動時間が短い

熱効率の大小順(目安):コンバインド > 再熱再生 > 再生 ≒ 再熱 > ランキン


⚖️ 発電方式の比較表

発電方式 熱効率 起動時間 燃料 主な用途
汽力発電(蒸気タービン) 35〜42% 長い(数時間〜) 石炭・重油・LNG ベース負荷
ガスタービン発電 25〜35% 非常に短い(数分) LNG・軽油 ピーク対応・緊急電源
コンバインドサイクル(GTCC) 55〜60%+ 短〜中程度(30分〜) LNG ミドル〜ベース負荷
ディーゼル発電 35〜45% 非常に短い(数秒〜分) 軽油・重油 非常用電源・離島

コンバインドサイクルが高効率な理由

ガスタービン(850〜1500℃の高温)→ 排ガス(600〜650℃)→ 排熱回収ボイラー(HRSG)→ 蒸気タービン(低温域まで活用)という流れで、捨てていた高温排熱を回収して二重に仕事をさせる。カルノー効率の観点では、使える温度差(高温源 - 低温源)が大きいほど効率が高くなる原理と一致する。


🔍 公式の意味マップ

レイヤーA:熱効率の基本

発電端熱効率

η_gen = P_gen / Q_in = 3600 / H_r
- P_gen:発電機出力 [kW] - Q_in:ボイラー入熱(燃料消費による熱量)[kJ/s = kW] - H_r:熱消費率 [kJ/kWh](1 kWh発電するのに消費した熱量) - 3600:1 kWh = 3,600 kJ の変換定数

熱消費率 H_r の計算

H_r = Q_in_total / E  [kJ/kWh]
E:発電電力量 [kWh]、Q_in_total:総入熱 [kJ]

燃料消費量

B = Q_in_total / H_l  [kg/h]  または  [m³/h]
H_l:燃料の低発熱量 [kJ/kg]

レイヤーB:発電端・送電端の区別

発電端効率:発電機端子での出力をベースにした効率

送電端効率:所内消費電力を引いた送電電力をベースにした効率

η_send = (P_gen - P_aux) / Q_in = η_gen × (1 - L_aux)
- P_aux:所内消費電力 [kW] - L_aux = P_aux / P_gen:所内率

所内率の典型値:汽力発電 3〜7%、ガスタービン 1〜3%

年間発電電力量

E = P_rated × T × η_plant  [kWh]
T:年間運転時間 [h]、設備利用率 = E / (P_rated × 8760)

レイヤーC:熱消費率と熱効率の関係性

熱消費率 H_r [kJ/kWh] 熱効率 η [%]
10,000 36.0%
9,000 40.0%
8,000 45.0%
7,200 50.0%
6,000 60.0%

H_r が小さいほど高効率(少ない熱で多くの電気を作る)。逆数の関係であることを意識する。


🛤️ 解法パターン

パターン①: 熱効率から発電電力量を求める

見分け方:燃料消費量・発熱量・熱効率が与えられ、発電量または発電電力を問われる

手順: 1. 総入熱 Q_in = 燃料消費量 × 低発熱量 [kJ] 2. 発電端出力 P = Q_in × η / 3600 [kW](時間単位に注意) 3. または E = Q_in × η / 3600 [kWh](電力量として求める場合)

例題:LNG 1,000 kg/h、低発熱量 50,000 kJ/kg、η=0.50 → Q_in = 1,000 × 50,000 = 50,000,000 kJ/h = 13,889 kW(÷3600) → P = 13,889 × 0.50 = 6,944 kW ≒ 6.9 MW


パターン②: 燃料消費量を求める

見分け方:発電電力(量)と熱効率が与えられ、燃料消費量を問われる

手順: 1. 熱消費率から総入熱を求める:Q_in = P × H_r [kJ/h](または E × H_r) 2. 燃料消費量 B = Q_in / H_l [kg/h]

例題:発電出力 100 MWη=0.40、石炭の低発熱量 25,000 kJ/kg → H_r = 3,600 / 0.40 = 9,000 kJ/kWh → Q_in = 100,000 × 9,000 = 900,000,000 kJ/h → B = 900,000,000 / 25,000 = 36,000 kg/h = 36 t/h


パターン③: 送電端効率を求める

見分け方:所内消費電力(または所内率)が与えられ、送電端効率を問われる

手順: 1. 送電端電力 = 発電電力 - 所内消費電力 2. η_send = 送電端電力 / 総入熱 × 3600 3. または η_send = η_gen × (1 - 所内率)

例題:発電端効率 40%、所内率 5% → η_send = 0.40 × (1 - 0.05) = 0.40 × 0.95 = 38%


🕳️ 勘違いTOP3

1. 発電端効率 vs 送電端効率の違い

よくある誤り:「発電端と送電端は同じ」「どちらも同じ公式で計算できる」

正しくは: - 発電端:発電機出力 / 入熱(所内消費を含む) - 送電端:(発電機出力 - 所内消費) / 入熱(電力会社が売る電力ベース)

送電端の方が 必ず低い。問題文に「所内消費電力」や「所内率」が出てきたら送電端を問われていると判断する。

2. 熱消費率と熱効率の逆数関係

よくある誤り:「熱消費率が大きいほど高効率」「H_r = η × 3600」

正しくは: - η = 3600 / H_r(η は H_r の逆数に比例) - H_r が小さいほど高効率(少ない熱で同じ電力を作れる) - 覚え方:「消費率が低いほど燃費が良い(車の燃費と同じ感覚)」

3. コンバインドサイクルが高効率な理由を正確に説明できない

よくある誤り:「2つのタービンを使うから」「ガスと蒸気を両方使うから」(原因ではなく現象の説明)

本質: - 熱力学的にはカルノー効率 η = 1 - T_cold/T_hot が基本 - ガスタービン単独では高温(1300℃+)から中温(600℃+)の熱を使う - 捨てていた中温側の排熱(600℃)を蒸気タービンが回収し低温(50℃以下)まで使う - 結果として全体としての T_hot〜T_cold の温度差を最大化している


📝 正誤判定の急所

正誤 解説
節炭器は燃焼ガスの熱で給水を予熱する エコノマイザー。排ガスの熱エネルギーを回収する
再熱サイクルは給水加熱器で給水を予熱する 給水加熱器は「再生サイクル」。再熱は高圧タービン後の蒸気を再加熱する
熱消費率が大きいほど熱効率は高い 逆数の関係:η = 3600/H_r。H_r 小さい → η 大きい
コンバインドサイクルの熱効率は汽力発電より高い 排熱回収により55〜60%以上を達成(汽力は35〜42%)
送電端効率は発電端効率より高い 所内消費電力分だけ送電端効率の方が低い
復水器は蒸気を水に戻し圧力差を確保する役割がある 真空を保つことでタービン前後の圧力差を最大化する
ガスタービン発電は起動時間が長く緊急電源に不向きである ガスタービンは起動が速い(数分)。緊急・ピーク用途に適する
過熱器はタービン通過後の蒸気を再加熱する 過熱器はボイラー内で飽和蒸気を過熱蒸気にする。再加熱は「再熱器」

📊 出題実績

年度 タイトル 問題タイプ 難易度
R07下 問3 汽力発電所で使用される保護装置 論説 ★★★☆☆
R07下 問15 重油専焼火力発電所の熱効率と二酸化炭素発生量 計算 ★★★★☆
R07上 問2 タービン効率と使用蒸気量の関係 計算 ★★★☆☆
R07上 問3 水と蒸気及び燃焼ガスの通過する順序 論説 ★★★★☆
R06下 問2 汽力発電における熱効率向上対策 論説 ★★★★☆
R06下 問3 衝動タービンと反動タービンの比較 穴埋 ★★★★★
R06下 問15 重油消費量と二酸化炭素排出量 計算 ★★★☆☆
R06上 問3 コンバインドサイクル発電と汽力発電の比較 論説 ★★☆☆☆
R05下 問2 速度調定率の異なる発電機の出力変化 計算 ★★★☆☆
R05下 問3 復水器の特徴 穴埋 ★★★☆☆
R05上 問2 熱回収コンバインドサイクル発電の特徴 論説 ★★★☆☆
R05上 問3 火力発電所の煙風道系統 穴埋 ★★★☆☆
R04下 問3 コンバインドサイクル発電方式の特徴 論説 ★★★☆☆
R04上 問2 火力発電所のタービン発電機 穴埋 ★★☆☆☆
R04上 問3 汽力発電設備のタービン効率 計算 ★★★☆☆
R03 問4 電気集じん装置のメカニズム 穴埋 ★★★★★
R01 問5 コンバインドサイクル発電 論説 ★☆☆☆☆

詳細解説: 電験王 火力カテゴリ


🔗 関連テーマ

  • 水力発電 — P=9.8QHηと対比して「効率の向き」を整理
  • 原子力発電 — ランキンサイクルは共通。熱効率30〜35%と低い理由(低温蒸気使用)
  • 電力系統・需給運用 — ベース・ミドル・ピーク負荷と発電方式の対応関係