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⚡ 水力発電

水の位置エネルギーを電気エネルギーに変換する。P=9.8QHηが全計算の出発点。

📋 v0.7 — 過去問データ充填済み

出題実績(R01〜R07)を充填済み。公式・数値は参考書で必ず確認してください。


🧠 直感的理解

水力発電は「高いところにある水を低いところへ落とす」だけ。これをエネルギー変換として整理すると:

  • 位置エネルギー(水の高さ × 重さ)→ 運動エネルギー(水車を回す)→ 電気エネルギー(発電機)

アナロジーで言えば、水 ≒ 電流、落差 ≒ 電圧。水が多く(大流量)、落差が大きいほど大きなエネルギーが得られる。これはオームの法則 P=VI の構造と同じ。

損失がなければ位置エネルギーがすべて電力になる(エネルギー保存)。実際には水圧管路の摩擦損失・水車効率・発電機効率が絡む。これらをまとめたのが総合効率 η

直感的な公式の読み方: - 9.8 = 重力加速度 (g≒9.8 m/s²) × 水の密度 (1000 kg/m³) をkW換算した係数 - Q = 流量 [m³/s](水の量) - H = 有効落差 [m](実際に使える高低差) - η = 総合効率(水車効率 × 発電機効率)

5秒で思い出す

P = 9.8 × Q × H × η 「9.8・流量・落差・効率」

単位を確認:[kW] = [9.8 kN/m³] × [m³/s] × [m] × [-]


🏭 設備を歩く

graph LR
    A[貯水池・ダム] -->|取水口・制水門| B[水槽・サージタンク]
    B -->|水圧管路| C[水車]
    C -->|回転軸| D[発電機]
    D -->|出力端| E[所内変圧器]
    E --> F[主変圧器]
    F --> G[送電線へ]

    H[調速機] -->|回転数制御| C
    I[励磁装置] -->|界磁電流制御| D

主要機器テーブル

機器名 役割 試験で問われるポイント
取水設備(ダム・堰) 河川水を取り込み、有効落差を確保 調整池式・貯水池式の違い
沈砂池・スクリーン 土砂・異物を除去し水車を保護 摩耗防止の観点
水路・水槽 水を水圧管路まで導く 無圧水路(開水路)と圧力水路の区別
サージタンク 水撃(ウォーターハンマー)を吸収 圧力変動の緩衝装置
水圧管路(ペンストック) 高圧水を水車へ送る 損失水頭の発生源;肉厚設計
水車 水の運動エネルギーを回転力に変換 衝動型・反動型の分類;比速度
発電機 回転力を電気に変換 突極機(低速)vs 円筒機(高速)
調速機(ガバナー) 負荷変動に対し回転数を一定に保つ 周波数調整の仕組み
励磁装置 発電機の界磁電流を制御 電圧調整・力率制御の役割
主変圧器 発電電圧を送電電圧に昇圧 変圧比・タップ切換

現場の視点

揚水発電の「ポンプ水車」は電力系統の需給調整装置としても機能する。昼間は発電、夜間は揚水で系統の安定化に貢献する。これはバッテリーの充放電に相当する「電力の貯蔵」であり、再生可能エネルギーの普及に伴い重要性が増している。


⚖️ 水車の種類比較

衝動水車 vs 反動水車

比較項目 衝動水車(ペルトン) 反動水車(フランシス・カプラン)
作動原理 ノズルから噴射した水流の運動エネルギーで回す(水圧は大気圧) ランナーを水中に浸し、圧力差と速度で回す
適用落差 高落差(300m以上が多い)・小流量 低〜中落差(フランシス:40〜700m、カプラン:10〜60m)
比速度 Ns 低い(10〜30 rpm) 高い(フランシス:50〜350、カプラン:200〜900)
構造特徴 バケット(羽根椀)にノズル噴流を当てる ランナー翼が水圧差で回転;渦巻ケーシング内
出題ポイント 「ノズル」「バケット」「高落差」キーワード フランシス:混流型。カプラン:プロペラ型・可動翼
効率の特徴 部分負荷でもニードル弁で効率維持しやすい フランシスは設計点から外れると効率低下

比速度 Ns の公式:Ns = N × √P / H^(5/4) Ns が大きいほど低落差・大流量型。

発電所の分類

分類 特徴 出力の安定性 用途
流れ込み式 河川の自然流量をそのまま利用(調整機能なし) 河川流量に左右され不安定 ベース電源(流量が安定な河川)
調整池式 数日〜数週間分の水量を調整池に貯留 日〜週単位で調整可能 日負荷調整
貯水池式 大型ダムで季節間調整 季節変動を吸収 季節負荷調整
揚水式 上部・下部調整池を設け、電動ポンプで揚水 需要に合わせ自在に発電・揚水 ピーク対応・需給調整

🔍 公式の意味マップ

レイヤーA:基本公式

理論出力(損失なし)

P_theory = 9.8 × Q × H_gross  [kW]

実際の出力(損失あり)

P = 9.8 × Q × H × η  [kW]
- H = H_gross - h_loss(有効落差 = 総落差 - 損失水頭) - η = η_turbine × η_generator(総合効率 = 水車効率 × 発電機効率)

有効落差の構成

H = H_gross - h_friction - h_other
- h_friction:管路摩擦による水頭損失(Darcy-Weisbach式で算出) - h_other:取水口損失・ゲート損失など

ベルヌーイの定理との接続(参考)

P1/ρg + v1²/2g + z1 = P2/ρg + v2²/2g + z2 + h_loss
有効落差Hはこの式の位置水頭差からエネルギー損失を引いた値に対応する。

レイヤーB:応用公式

揚水所要電力

P_pump = 9.8 × Q × H_p / η_pump  [kW]
発電と逆方向(割り算)。η_pump はポンプ効率(ポンプ効率 × 電動機効率)。

揚水式発電の総合効率

η_total = P_gen / P_pump = (9.8 × Q × H × η_gen) / (9.8 × Q × H_p / η_pump)
         ≒ η_gen × η_pump  (H ≒ H_p の場合)

年間発電電力量

E = P × T  [kWh]
T:年間運転時間 [h]。設備利用率 = E / (P_rated × 8760) × 100 [%]

流量と流速の関係

Q = A × v  [m³/s]
A:水路断面積 [m²]、v:平均流速 [m/s]


🛤️ 解法パターン

パターン①: 発電出力を求める

見分け方:流量Q・有効落差H・効率η(または水車効率・発電機効率が別々)が与えられている

手順: 1. η_total = η_turbine × η_generator(別々の場合は先に掛け算) 2. P = 9.8 × Q × H × η に代入 3. 単位確認:Q [m³/s]、H [m] → P [kW]

例題:Q = 50 m³/s、H = 100 m、η = 0.85 のとき → P = 9.8 × 50 × 100 × 0.85 = 41,650 kW = 41.65 MW


パターン②: 有効落差を求める

見分け方:総落差(H_gross)と損失水頭(h_loss)が与えられている、または損失率が与えられている

手順: 1. H = H_gross - h_loss 2. 損失率で与えられた場合:h_loss = H_gross × 損失率 3. 求めたHをP=9.8QHηに代入

例題:総落差200m、損失水頭10m、Q=30 m³/s、η=0.90 → H = 200 - 10 = 190 m → P = 9.8 × 30 × 190 × 0.90 = 50,274 kW


パターン③: 揚水発電の電力・効率計算

見分け方:「揚水」「ポンプ」「揚程」「ポンプ水車」のキーワード。発電と揚水の両方が問われる

手順: 1. 発電出力:P_gen = 9.8 × Q × H × η_gen 2. 揚水入力:P_pump = 9.8 × Q × H_p / η_pump 3. 総合効率:η_total = P_gen / P_pump

注意点:発電時はηを「掛ける」、揚水時はηで「割る」。方向が逆!

例題:発電時 Q=40 m³/s、H=150 m、η_gen=0.88、揚水時 η_pump=0.82 → P_gen = 9.8 × 40 × 150 × 0.88 = 51,744 kW → P_pump = 9.8 × 40 × 150 / 0.82 = 71,707 kW → η_total = 51,744 / 71,707 ≒ 72.2%


🕳️ 勘違いTOP3

1. 「9.8」の単位と由来

よくある誤解:「なんで9.8なのか分からないまま使っている」

導出: - 水の密度:ρ = 1000 kg/m³ - 重力加速度:g = 9.8 m/s² - 重力 = ρ × g = 1000 × 9.8 = 9800 N/m³ = 9.8 kN/m³ - 出力 [W] = 力 [N] × 速度 [m/s] = 9800 [N/m³] × Q [m³/s] × H [m] - kW換算:÷ 1000 → 9.8 × Q × H [kW]

つまり 9.8 はγ(比重量)を kW/m³/s/m にまとめた係数

2. 有効落差と総落差の混同

問題文に「総落差H₀ = 200 m、損失水頭 = 10 m」とあるとき、H₀をそのまま使ってしまう誤り。

正しくは:H(有効落差)= 200 - 10 = 190 m を使う。P=9.8QH₀ηは誤り。

3. 揚水の効率方向の間違い

「発電も揚水もηを掛ける」という誤解。

  • 発電時:出力 = 入力エネルギー × η(損失があるから小さくなる)→ 掛ける
  • 揚水時:必要入力 = 揚水に必要なエネルギー ÷ η(損失があるから余計に必要)→ 割る

フレーム:「欲しい量に対して損失が加わるなら割る」


📝 正誤判定の急所

正誤 解説
フランシス水車は衝動水車である 反動水車(ランナーを水中に浸し圧力差で回す)
流れ込み式発電所は河川の自然流量をそのまま利用する 調整機能がないため出力は河川流量に依存
ペルトン水車は低落差・大流量に適している 高落差・小流量に適する(ノズル噴流方式)
有効落差は総落差から損失水頭を引いたものである H = H_gross - h_loss
揚水発電の揚水所要電力はP=9.8QHηで求められる 正しくはP=9.8QH/η(ηで割る)
カプラン水車は可動式のランナー翼を持つ 低落差・大流量用;プロペラ型で翼角度を変えられる
調整池式発電所は季節間の負荷調整に使われる 季節間は「貯水池式」。調整池式は日〜週単位の調整
サージタンクはウォーターハンマーを吸収する 急激な流量変化による圧力変動の緩衝装置

📊 出題実績

年度 タイトル 問題タイプ 難易度
R07下 問1 水力発電所の落差分類 穴埋 ★★☆☆☆
R07下 問2 単位体積当たりの水の運動エネルギー 計算 ★★☆☆☆
R07上 問1 水力発電所の理論出力と各単位 穴埋 ★☆☆☆☆
R07上 問15 調整池式水力発電所の使用水量と有効貯水容量 計算 ★★★☆☆
R06下 問1 水力発電の水車・発電機・主変圧器の特徴 論説 ★★☆☆☆
R06上 問1 衝動水車を中心とした水力発電所 論説 ★★★★☆
R06上 問2 揚水発電所の電動機入力と発電機出力 計算 ★★☆☆☆
R06上 問15 水車の回転速度と比速度および水車の種類 計算 ★★★★★
R05下 問1 水力発電所の落差と理論式 穴埋 ★★☆☆☆
R05下 問15 水力発電所の発電電力量と汽力発電所の重油使用量 計算 ★★★★☆
R05上 問1 水車の比速度の定義と特徴 穴埋 ★★☆☆☆
R04下 問1 水力発電の特徴や現在の概況 論説 ★★★☆☆
R04下 問2 水力発電で使用される水車の特徴 穴埋 ★★★☆☆
R03 問2 連続の定理及びベルヌーイの定理 計算
R02 問1 ダム水路式発電所における水撃作用及びサージタンク 論説
R01 問1 水力発電所の水車及び発電機 論説

詳細解説: 電験王 水力カテゴリ


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