🔌 回路パターン集¶
試験に頻出する「典型回路の見た目と解法パターン」を集めたページ。「この形を見たらこう解く」の辞書として使う。計算の細かい公式は 頻出公式一覧 を参照。
パターン1: 直列・並列の合成¶
回路の形¶
直列: ──[R1]──[R2]──[R3]──
並列: ┬─[R1]─┐
├─[R2]─┤
└─[R3]─┘
これを見たら使う¶
- 抵抗・コイル・コンデンサが一列につながっている → 直列
- 両端が共通の節点に接続されている → 並列
- 混合の場合は「外側から順に合成」していく
計算手順¶
- 最も内側(深い)の部分から合成を始める
- 直列: \(Z_{合} = Z_1 + Z_2 + \cdots\)(単純に足す)
- 並列: \(1/Z_{合} = 1/Z_1 + 1/Z_2 + \cdots\)(逆数の和)
- 2素子並列の場合は \(Z_{合} = Z_1 Z_2 / (Z_1 + Z_2)\)(積÷和)
- 外側に向かって順に合成し、全体の合成インピーダンスを得る
よくある計算ミス¶
- コンデンサの並列を「C も並列なら足す」と思いがち → 正しくは \(C_{合} = C_1 + C_2\)(抵抗と逆の挙動、詳細はパターン9)
- 直列インピーダンスで符号を間違える:\(X_L > 0\)、\(X_C < 0\)(\(Z = R + j(X_L - X_C)\))
パターン2: テブナン等価変換¶
回路の形¶
複雑な回路
┌─[複雑な素子の組み合わせ]─┐
A● ●B → テブナン等価 → A●──[Rth]──[Vth]──●B
└──────────────────────────┘
これを見たら使う¶
- 「特定の2端子間(A-B間)の電圧・電流を求めよ」という問題
- 素子を取り換えたときの影響を繰り返し計算したいとき
- 複雑な回路の外から見た特性を単純化したいとき
計算手順¶
- 開放端子電圧 \(V_{th}\) を求める: A-B 間を開放(何も接続しない)した状態で、A-B 間の電圧を計算する
- テブナン抵抗 \(R_{th}\) を求める: すべての独立電源をゼロにする(電圧源は短絡、電流源は開放)して、A-B 端子から見た合成抵抗を計算する
- 等価回路に置き換える: \(V_{th}\) を起電力とし \(R_{th}\) を直列に接続した回路が等価回路
よくある計算ミス¶
- 電源をゼロにする際、「電圧源は開放」と間違える(正しくは短絡)
- 従属電源(制御電流源・制御電圧源)が含まれる場合は電源ゼロ化が使えない→テスト電源法が必要
パターン3: ブリッジ回路の平衡判定¶
回路の形¶
A
/ \
[Z1] [Z2]
/ \
B C
\ /
[Z3] [Z4]
\ /
D
(B-D 間に検流計 G)
これを見たら使う¶
- 4つの素子がひし形(ブリッジ形)に配置されている
- 「B-D 間の電流・電圧を求めよ」という問題
計算手順¶
- 平衡の確認: \(Z_1 \cdot Z_4 = Z_2 \cdot Z_3\)(対角積が等しい)かどうかを確認する
- 平衡の場合: B-D 間に電流は流れない。検流計を除去し、単純な直並列回路として計算する
- 上半分: \(Z_1 + Z_2\)(A-C 直列)
- 下半分: \(Z_3 + Z_4\)(A-C 直列)
- 両者が A-C 間で並列
- 非平衡の場合: テブナン等価変換(パターン2)を B-D 端子に適用する
よくある計算ミス¶
- 平衡条件を「\(Z_1/Z_2 = Z_3/Z_4\)」で確かめようとして添字のミスが起きる→対角積の比較の方が安全
パターン4: RLC 直列回路のインピーダンス計算¶
回路の形¶
──[R]──[L]──[C]── (交流電源 V に直列接続)
これを見たら使う¶
- R, L, C が一列に接続された直列回路
- 電流・電圧・位相差・共振周波数を求める問題
計算手順¶
- 各素子のインピーダンスを書く:
- 抵抗: \(Z_R = R\)
- コイル: \(Z_L = j\omega L = jX_L\)
- コンデンサ: \(Z_C = 1/(j\omega C) = -jX_C\)
- 合成インピーダンスを計算: \(Z = R + j(X_L - X_C) = R + j\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\)
- 大きさと位相を求める: \(|Z| = \sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2}\) \(\tan\varphi = (X_L - X_C)/R\)
- 電流を計算: \(I = V/|Z|\)
- 共振条件: \(X_L = X_C\) → \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)
よくある計算ミス¶
- \(X_C = \omega C\) と間違える(正しくは \(X_C = 1/(\omega C)\))
- \(\varphi\) が正(コイル優勢・遅れ)か負(コンデンサ優勢・進み)かの判断を逆にする
パターン5: 三相回路の 1 相等価¶
回路の形¶
三相電源(Y結線または Δ結線)+ 三相負荷(Y結線または Δ結線)
これを見たら使う¶
- 三相平衡回路の問題全般
- 線電流・相電流・電力を求める問題
計算手順¶
- Y 結線に統一: Δ 結線があれば Y 結線に変換する
- \(Z_Y = Z_\Delta / 3\)(Δ→Y のインピーダンス変換)
- 1 相分の等価回路を描く: 中性点を基準に相電圧 \(V_{\varphi}\) を電源とし、直列インピーダンスをつないだ単純な 1 相回路を描く
- 1 相の計算を行う: 単相回路として相電流 \(I_{\varphi}\)、電力 \(P_{\varphi}\) を計算する
- 三相量に換算:
- Y 結線: 線電流 = 相電流(\(I_l = I_{\varphi}\))、線間電圧 = \(\sqrt{3}\) × 相電圧(\(V_l = \sqrt{3} V_{\varphi}\))
- Δ 結線: 線電流 = \(\sqrt{3}\) × 相電流(\(I_l = \sqrt{3} I_{\varphi}\))、線間電圧 = 相電圧
- 三相電力: \(P = 3 P_{\varphi} = \sqrt{3} V_l I_l \cos\varphi\)
よくある計算ミス¶
- \(\sqrt{3}\) の係数をどちらに掛けるか混乱する → 「Y 線間電圧は相電圧の \(\sqrt{3}\) 倍」「Δ 線電流は相電流の \(\sqrt{3}\) 倍」と覚える
パターン6: 過渡現象の一般式適用¶
回路の形¶
スイッチ S を t=0 で閉じる or 開く
──[S]──[R]──[L or C]── (直流電源 E と直列/並列)
これを見たら使う¶
- 「スイッチを入れた(切った)後の電流・電圧を求めよ」という問題
- \(t=0\) から \(t=\infty\) の過渡応答を扱う問題
計算手順¶
- \(t=0\) の初期値を求める: スイッチ操作直後の電流(コイル)または電圧(コンデンサ)を求める
- コイルの電流は瞬変できない:\(i_L(0^+) = i_L(0^-)\)
- コンデンサの電圧は瞬変できない:\(v_C(0^+) = v_C(0^-)\)
- \(t=\infty\) の最終値を求める: 定常状態(コイルは短絡、コンデンサは開放として)回路を解く
- 時定数 \(\tau\) を求める:
- RL 回路: \(\tau = L/R\)
- RC 回路: \(\tau = RC\)(\(R\) はコンデンサから見た等価抵抗)
- 一般式に代入: \(f(t) = f(\infty) + [f(0) - f(\infty)] \cdot e^{-t/\tau}\)
よくある計算ミス¶
- 時定数計算の \(R\) を「電源の内部抵抗を含めていない」ミス → テブナン変換後の \(R_{th}\) を使う
- \(t=0^+\) の初期値計算でコイルを「開放」にしてしまう(正しくは電流値一定で扱う)
パターン7: 交流電力の計算¶
回路の形¶
交流電源 V ─[Z = R + jX]─ 電流 I が流れる回路
これを見たら使う¶
- 「有効電力・無効電力・皮相電力・力率を求めよ」という問題全般
計算手順¶
- 電流を求める: \(I = V/|Z|\)(実効値)
- 位相差 \(\varphi\) を求める: \(\tan\varphi = X/R\)
- 電力三角形で 3 量を整理:
皮相電力 S (VA) │╲ │ ╲ Q(var) │ ╲ P(W)──╯ φ - 有効電力: \(P = VI\cos\varphi = I^2 R\) [W]
- 無効電力: \(Q = VI\sin\varphi = I^2 X\) [var](コイルは +、コンデンサは −)
- 皮相電力: \(S = VI = \sqrt{P^2 + Q^2}\) [VA]
- 力率: \(\cos\varphi = P/S = R/|Z|\)
- 複数負荷の場合: \(P\), \(Q\) それぞれを加算してから \(S = \sqrt{P^2+Q^2}\) を計算する(\(S\) を直接足してはいけない)
よくある計算ミス¶
- 皮相電力を足し算してから力率を計算するミス(\(S\) はベクトル量、直接加算不可)
- コンデンサの無効電力の符号を正にしてしまう
パターン8: 磁気回路の解析¶
回路の形¶
鉄心(磁路) + 巻線(起磁力源)+ 場合によってエアギャップ
これを見たら使う¶
- トランスや電磁石の磁束・起磁力・磁気抵抗を求める問題
- 「コイルに電流を流したときの磁束を求めよ」という問題
電気回路との対応表¶
| 磁気回路 | 電気回路 |
|---|---|
| 起磁力 \(\mathcal{F} = NI\) [A] | 起電力 \(E\) [V] |
| 磁束 \(\phi\) [Wb] | 電流 \(I\) [A] |
| 磁気抵抗 \(R_m = l/(\mu A)\) [A/Wb] | 抵抗 \(R\) [Ω] |
| \(\phi = \mathcal{F}/R_m\) | \(I = E/R\) |
計算手順¶
- 磁気回路を描く: 鉄心の各部分を「磁気抵抗」に置き換えたループ図を描く
- 各部分の磁気抵抗を計算: \(R_m = l/(\mu_0 \mu_r A)\)(エアギャップは \(\mu_r = 1\))
- 直列・並列の合成: 電気回路と同じルールで合成磁気抵抗を求める
- 磁束を計算: \(\phi = NI/R_{m, 合}\)
- 磁束密度を確認: \(B = \phi/A\)
よくある計算ミス¶
- エアギャップの透磁率を鉄心と同じにするミス(エアギャップは \(\mu_r = 1\))
- 磁路長 \(l\) をエアギャップ部分だけで測るミス(物理的な長さをそのまま使う)
パターン9: コンデンサの直並列¶
回路の形¶
直列: ──[C1]──[C2]──
並列: ┬─[C1]─┐
└─[C2]─┘
これを見たら使う¶
- 複数のコンデンサの合成容量を求める問題
- 「抵抗と逆の挙動」と覚えれば判断できる
計算手順¶
-
直列の場合(抵抗の並列と同じ形): \(\frac{1}{C_{合}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\) 2素子なら: \(C_{合} = \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}\)(積÷和)
-
並列の場合(抵抗の直列と同じ形): \(C_{合} = C_1 + C_2 + \cdots\)(単純に足す)
-
直列コンデンサの電荷・電圧分担:
- 電荷は全素子で等しい(\(Q_1 = Q_2 = Q\))
- 電圧は容量に反比例(\(V_1 : V_2 = C_2 : C_1\))
よくある計算ミス¶
- 直列なのに「コンデンサを並列みたいに足す」ミスが多発 → 「直列は合成容量が小さくなる(積÷和)」を確認
- 電圧分担の比が逆になる(大きいコンデンサに小さい電圧がかかる)
パターン10: オペアンプの増幅率計算¶
回路の形¶
反転増幅器: 非反転増幅器:
入力 Vin ─[Rin]─┬─ (−) (−) ─┬─[Rf]─ 出力
│ [オペアンプ] │
[Rf] (+)→GND Vin → (+)
│ ├─[R1]─ GND
出力 └ (−)
これを見たら使う¶
- オペアンプ(演算増幅器)回路の出力電圧・増幅率を求める問題
計算手順(仮想短絡・仮想接地の原理を使う)¶
仮想短絡の2つの条件: 1. 理想オペアンプでは \(+\) 入力端子と \(-\) 入力端子の電位差はゼロ(\(V_+ = V_-\)) 2. 理想オペアンプに流れ込む電流はゼロ
反転増幅器の手順: 1. \(V_+ = 0\)(GND)なので、\(V_- = 0\)(仮想接地) 2. \(R_{in}\) を流れる電流: \(I = V_{in}/R_{in}\) 3. この電流がすべて \(R_f\) を流れる(オペアンプに流れ込まない) 4. 出力電圧: \(V_{out} = -I \cdot R_f = -(R_f/R_{in}) \cdot V_{in}\) 5. 増幅率: \(A = -R_f/R_{in}\)(マイナスが反転を意味する)
非反転増幅器の手順: 1. \(V_+ = V_{in}\) なので、\(V_- = V_{in}\)(仮想短絡) 2. \(R_1\) を流れる電流: \(I = V_{in}/R_1\) 3. この電流が \(R_f\) を流れる 4. 出力電圧: \(V_{out} = V_{in} + I \cdot R_f = V_{in}(1 + R_f/R_1)\) 5. 増幅率: \(A = 1 + R_f/R_1\)(正値・同相出力)
よくある計算ミス¶
- 反転増幅器の \(V_-\) がゼロであることを忘れて \(R_{in}\) と \(R_f\) の分圧で計算するミス
- 反転増幅器の増幅率の符号(マイナス)を忘れる
使い方のヒント: まず回路の「形」を素早く判断してパターン番号を特定する。次に手順に沿って数値を当てはめる。計算ミスのポイントは各パターンに記載してあるので見落としを防ぎやすい。