⚖️ ブリッジ回路¶
📍 学習マップ上の現在地
前提 → 直流回路 → [ブリッジ回路](現在地) → 次 → 計器の原理と測定法
| 重要度 | 頻出論点 | バージョン |
|---|---|---|
| A | ホイートストン / マクスウェル / 平衡条件 | v0.7 ✅ |
4本の素子が十字に組まれた回路。対角辺の積が等しいとき「平衡」となり、検流計に電流が流れない。この性質を使って未知の抵抗・インダクタンス・静電容量を精密に測定する。
🧠 原理(なぜ起きるか)¶
- ブリッジ回路は天秤のイメージ。左皿と右皿のバランスが取れると指針がゼロになる(検流計に電流が流れない)。
- 平衡条件は「向かい合う辺の積が等しい」。これを使えば未知素子の値を他の既知素子から計算できる。
- 不平衡のときは天秤が傾く → 検流計に電流が流れる → テブナンの定理で解く。
5秒で思い出す
平衡条件 = 向かい合う辺の積が等しい(\(R_1 R_4 = R_2 R_3\))。 ==平衡のとき検流計 \(I_g = 0\)。==でも各辺には電流が流れている。
📐 公式(どう計算するか)¶
レイヤーA:基本概念¶
| 公式 | 意味(日本語) | 使える条件 | 使えない条件 |
|---|---|---|---|
| \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) | ホイートストンブリッジの平衡条件。向かい合う辺の積が等しい | 直流・抵抗ブリッジ | 素子がインピーダンスの場合は別途扱う |
| \(R_x = \dfrac{R_1 \cdot R_3}{R_2}\) | 平衡状態から未知抵抗を求める(比例辺 \(R_1/R_2\) と標準辺 \(R_3\) を使う) | 平衡状態のとき | 不平衡状態では使えない |
| 不平衡時: テブナンの定理を適用 | ブリッジ内の検流計位置でテブナン等価回路を作り電流を計算 | 不平衡状態 | 平衡時は \(I_g = 0\) なので不要 |
「比例辺・標準辺」とは何か(H18・H19・R03・R06下で繰り返し出題)
ブリッジ回路を菱形(◇)で描いたとき、辺には役割の名前がある。
A
/ \
R1 R2 ← 比例辺(ratio arms): R1/R2 の比だけが重要
/ \
C---Rg---D ← 検流計(中間の橋)
\ /
R3 Rx ← 標準辺(standard arm)R3 と 未知辺 Rx
\ /
B(電源)
平衡条件 \(R_1 R_x = R_2 R_3\) を変形すると:
- 比例辺の比 \(R_2/R_1\) を変えることでレンジを切り替える(例:×1、×10、×100)
- 標準辺 \(R_3\) を可変抵抗にして平衡点を探す
- 過去問では「\(R_1=100\,\Omega\)、\(R_2=1000\,\Omega\)、\(R_3=234\,\Omega\) のとき \(R_x\) を求めよ」の形が典型
不平衡ブリッジのテブナン計算手順(R02問7対策)
過去問で最もつまずく「不平衡ブリッジの電流を求めよ」への対処法。
ステップ1:検流計 \(R_g\) を回路から取り外す(開放)
検流計を外した状態で、電源 \(E\) から見て2つの分圧回路になる。
開放電圧(テブナン電圧):
ステップ2:電源を短絡して端子間の合成抵抗 \(R_{th}\) を求める
電源を短絡すると \(R_1\) と \(R_3\) が並列、\(R_2\) と \(R_4\) が並列になり、この2つが直列接続になる。
ステップ3:検流計電流を求める
平衡条件との関係: \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) のとき \(V_{th} = 0\) になる → \(I_g = 0\)(平衡状態)は、この式の特殊ケース。
レイヤーB:応用変換¶
| 公式/手法 | 意味 | 使える条件 | 使えない条件 |
|---|---|---|---|
| マクスウェルブリッジ: \(L = R_1 R_3 C\) | インダクタンスを抵抗とコンデンサで測定。平衡条件から \(L\) を求める | 交流ブリッジ・平衡状態 | 直流ブリッジには使えない |
| ウィーンブリッジ | CR素子で構成される交流ブリッジ。特定周波数で平衡 → 周波数測定に使える | 交流ブリッジ | — |
| シェーリングブリッジ | コンデンサの誘電損(損失角 \(\delta\))を測定。高電圧試験に使われる | 交流ブリッジ | — |
マクスウェルブリッジの平衡条件の読み方(H29問15対策)
交流ブリッジは直流ブリッジの「抵抗」を「インピーダンス」に置き換えたもの。 平衡条件は同じ構造:向かい合う辺のインピーダンスの積が等しい。
マクスウェルブリッジの構成:
| 辺 | 素子 |
|---|---|
| \(Z_1\) | \(R_1\)(既知の抵抗) |
| \(Z_2\) | \(R_2\)(比例辺) |
| \(Z_3\) | \(R_3\) と \(C\) の並列(既知) |
| \(Z_4\) | \(R_x + j\omega L_x\)(未知インダクタンス辺) |
平衡条件 \(Z_1 Z_4 = Z_2 Z_3\) を実部・虚部に分けて解くと:
試験での注意点: 問題文に「\(\omega\)(角周波数)が与えられていない」場合、\(L_x = R_1 R_2 C\) の式には \(\omega\) が含まれないことを確認する。これはマクスウェルブリッジの特性で、周波数に依存せず測定できることを意味する。
📊 比較表¶
1. 各ブリッジの特性比較¶
| ブリッジの種類 | 測定対象 | 電源 | 平衡条件(概略) |
|---|---|---|---|
| ホイートストンブリッジ | 抵抗 \(R\) | 直流 | \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) |
| マクスウェルブリッジ | インダクタンス \(L\) | 交流 | \(L = R_1 R_3 C\) |
| ウィーンブリッジ | 周波数 \(f\) | 交流 | \(f = 1/(2\pi RC)\) |
| シェーリングブリッジ | 静電容量 \(C\)・誘電損 | 交流 | 損失角 \(\delta\) から \(\tan\delta\) を求める |
2. 直流ブリッジ vs 交流ブリッジ¶
| 項目 | 直流ブリッジ(ホイートストン) | 交流ブリッジ(マクスウェルなど) |
|---|---|---|
| 電源 | 直流電池 | 交流電源 |
| 構成素子 | 抵抗のみ | 抵抗・コンデンサ・インダクタンス |
| 検出器 | 検流計(直流用) | 検流器(交流用・耳による音消し含む) |
| 測定対象 | 抵抗(\(R\)) | \(R\)、\(L\)、\(C\)、\(f\) など |
交流ブリッジで検流計の代わりに「耳」を使う理由
交流ブリッジでは検出器にヘッドフォン(耳)を使う場合がある。 平衡状態 = 検出器の出力ゼロ = 音が聞こえなくなる瞬間 = 「音消し法」。 試験では「交流ブリッジの検出器は何か?」という穴埋め形式で問われることがある。 ==直流用の検流計を交流ブリッジに使えない(直流しか反応しないため)==という点も選択肢の罠になる。
3. 平衡状態 vs 不平衡状態(計算方法)¶
| 状態 | 検流計電流 | 計算方法 | 使う公式・定理 |
|---|---|---|---|
| 平衡状態 | \(I_g = 0\) | 平衡条件を立てて未知素子を求める | \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) |
| 不平衡状態 | \(I_g \neq 0\) | テブナンの定理(開放電圧 + 等価抵抗) | テブナン定理・キルヒホッフ則 |
🕳️ よくある勘違いTOP3¶
❌ 1:平衡条件の「向かい合う辺」がどの辺を指すか混乱する
✅ ブリッジ回路を菱形(◇)で描いたとき、対角線でつながっていない「向かい合う辺」の積が等しい。 電源の両端 A-B を対角に置いたとき:上左辺 \(R_1\) と下右辺 \(R_4\) の積 = 上右辺 \(R_2\) と下左辺 \(R_3\) の積。 迷ったら菱形を描いて、検流計が渡っている対角線と電源が渡っている対角線を確認する。
❌ 2:「平衡=全回路の電流がゼロ」と誤解する
✅ 平衡状態で電流がゼロになるのは==検流計(中間の橋)だけ==。 各辺には電流が流れており、電源から電流が供給されている。「天秤の針がゼロでも、天秤全体は動いている」イメージ。
❌ 3:不平衡時に平衡条件を使って計算しようとする
✅ 不平衡のとき \(R_1 R_4 \neq R_2 R_3\) なので、平衡条件を使うことはできない。 検流計に流れる電流はテブナンの定理で求める:① 検流計を外した状態での開放電圧 \(V_{th}\) を計算 → ② 電源を短絡した状態での等価抵抗 \(R_{th}\) を計算 → ③ \(I_g = V_{th} / (R_{th} + R_g)\)。
🔄 解法フローチャート¶
ブリッジ回路の問題を見たら
├─ 「平衡しているか確認」
│ 対角の積が等しい: R₁R₄ = R₂R₃
│ → 平衡なら検流計に電流ゼロ → 単純な直並列で解ける
│
├─ 「平衡条件から未知抵抗を求めよ」
│ Rx = R₁R₃/R₂(比例辺と標準辺)
│
└─ 「不平衡ブリッジで検流計電流を求めよ」
① 検流計を取り外してテブナン等価回路を作る
② Vth = 検流計端子間の開放電圧
③ Rth = 電源短絡後の端子間合成抵抗
④ Ig = Vth / (Rth + Rg)(Rg は検流計抵抗)
📝 出題実績¶
出典: 電験王3(denken-ou.com)H18〜R07上期の過去問一覧より収集(2026-03-30) ※ 電気及び電子計測のうちブリッジ回路・直流回路のブリッジ系問題を抽出。
| 年度 | 問 | 形式 | 何が問われたか |
|---|---|---|---|
| R06下 | 問16 | 計算 | ブリッジの平衡条件を利用した回路演算 |
| R03 | 問14 | 計算 | ブリッジ回路を用いた未知抵抗の推定 |
| R02 | 問7(直流) | 計算 | ブリッジ回路に流れる電流 |
| H29 | 問15 | 計算 | 交流ブリッジ |
| H19 | 問6(直流) | 計算 | ブリッジ回路の平衡条件と電流計を活用した抵抗値の導出 |
| H18 | 問16 | 計算 | ブリッジ回路による未知抵抗の特定 |
→ 出題頻度: ★★(2〜3年に1回程度)
確認問題
問題: ホイートストンブリッジでR1=100Ω、R2=200Ω、R3=150Ωのとき、平衡条件から未知抵抗R4を求めよ。
解答
答え: R1×R4 = R2×R3 → R4 = R2×R3/R1 = 200×150/100 = 300Ω ポイント: 平衡条件は「対角の積が等しい」:R1R4 = R2R3
Level 2: 数学的背景 🔬
不平衡ブリッジの一般解とテブナン
不平衡ブリッジの検流計電流は行列法またはテブナンで解く。テブナン法の場合: [ V_{th} = E\left(\frac{R_3}{R_1+R_3} - \frac{R_4}{R_2+R_4}\right) ] [ R_{th} = \frac{R_1 R_3}{R_1+R_3} + \frac{R_2 R_4}{R_2+R_4} ] [ I_g = \frac{V_{th}}{R_{th}+R_g} ]
平衡条件 \( R_1R_4 = R_2R_3 \) はこの式で \( V_{th} = 0 \) とおいた特殊ケース。
Level 3: 実務との接点 🏭
ホイートストンブリッジはひずみゲージ式センサ(荷重・圧力計)の信号変換回路として現役。マクスウェルブリッジはインダクタンスの高精度測定に使う。計装エンジニアとして抵抗測定・インダクタンス測定の原理として知っておくべき。
最終確認: 2026-04-01 | ステータス: v0.7(構造・公式・数値検証済み) | バージョニング基準