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🔌 オペアンプ

📍 学習マップ上の現在地

前提トランジスタ・FET → [オペアンプ](現在地) → 計器の原理と測定法

重要度 頻出論点 バージョン
A 反転・非反転増幅 / 仮想短絡 / 積分・微分 v0.7 ✅

2つの入力の差を増幅する素子。負帰還をかけることで安定した増幅回路を構成する。仮想接地(イマジナリーショート)が計算の鍵。


🧠 原理(なぜ起きるか)

  • オペアンプは「2つの入力の差を無限大に増幅する素子」。そのままでは出力が飽和するため、出力の一部を入力に戻す負帰還(フィードバック)をかけて安定した増幅回路を作る。
  • 負帰還が働くと、+入力と-入力の電圧差はほぼゼロになる(仮想接地 / イマジナリーショート)。この近似がオペアンプ回路の計算を一気に簡単にする。
  • 計算の手順:「仮想接地で電圧を決める → キルヒホッフで電流を追う → 出力電圧を求める」の3ステップ。

5秒で思い出す

+入力と-入力は「ほぼ同じ電圧」(仮想接地)。 反転増幅は位相が反転する → ゲインにマイナスがつく。


📐 公式(どう計算するか)

レイヤーA:基本概念

公式 意味(日本語) 使える条件 使えない条件
\(A_v = -\dfrac{R_f}{R_i}\) 反転増幅回路のゲイン。マイナスは位相反転を意味する 負帰還あり・理想オペアンプ 負帰還なし(コンパレータ動作)
\(A_v = 1 + \dfrac{R_f}{R_i}\) 非反転増幅回路のゲイン。必ず1以上 負帰還あり・理想オペアンプ
\(A_v = 1\)(ボルテージフォロワ) \(R_f = 0\)\(R_i = \infty\) の非反転増幅。インピーダンス変換に使う
\(V_+ \approx V_-\)(仮想接地) 負帰還時に+入力と-入力の電圧差がほぼゼロになる近似 負帰還あり・理想オペアンプ 負帰還なし・オープンループ

レイヤーB:応用変換

公式/手法 意味 使える条件 使えない条件
\(V_o = -\left(\dfrac{R_f}{R_1}V_1 + \dfrac{R_f}{R_2}V_2\right)\) 反転加算回路。複数の入力を重みづけして加算し、位相反転して出力 反転入力に複数入力
\(V_o = \dfrac{R_f}{R_i}(V_+ - V_-)\) 差動増幅回路。2入力の差を増幅(抵抗対称の場合) 4本の抵抗が対称(\(R_1=R_2\)\(R_3=R_f\) 抵抗が非対称な場合は別途計算
\(V_o = -\dfrac{1}{RC}\int V_i\,dt\) 積分回路。帰還素子をコンデンサに置き換えた反転増幅 低周波・定常入力 直流入力は出力が飽和する

積分回路の使い方(H27 問18 / H26 問13 で出題)

積分回路は反転増幅の帰還抵抗をコンデンサに置き換えた回路。

ステップ入力(一定電圧 \(V_i\) を加えたとき)の出力

\[V_o(t) = -\frac{V_i}{RC} \cdot t\]

出力は時間に比例して直線的に変化(ランプ波形)する。

RC の意味\(RC\) は時定数(単位:秒)。RC が大きいほど変化がゆっくり。 例:\(R = 10\,\text{k}\Omega\)\(C = 1\,\mu\text{F}\)\(RC = 0.01\,\text{s}\)

引っかかりやすい点: - 反転増幅と同じく出力にマイナスがつく(位相反転) - 直流入力を長時間加えると出力が電源電圧まで飽和する(実回路での制限) - 「0.1秒後の出力電圧は?」という計算問題には \(V_o = -V_i t / RC\) を代入するだけ


📊 比較表

1. 反転増幅 vs 非反転増幅

項目 反転増幅 非反転増幅
ゲイン公式 \(A_v = -R_f/R_i\)(マイナス) \(A_v = 1 + R_f/R_i\)(プラス)
位相 反転(180°ずれる) 同位相(ずれなし)
入力インピーダンス \(R_i\)(比較的低い) ほぼ無限大(高インピーダンス)
ゲイン範囲 $ A_v

2. 理想オペアンプ vs 実際のオペアンプ

特性 理想オペアンプ 実際のオペアンプ
入力インピーダンス \(\infty\)(入力に電流が流れない) 有限(数 MΩ〜GΩ オーダー)
出力インピーダンス 0(いくらでも電流を供給できる) 有限(数十Ω〜)
開ループゲイン \(\infty\) 有限(\(10^5\)\(10^6\) 程度)
帯域幅 無限大 有限(GBW積で制限)

理想オペアンプの3つの特性と「なぜそれが必要か」(H22 問18 / H19 問12 / R02 問13 で論説出題)

論説問題では「理想オペアンプの特性を述べよ」という形式が繰り返し出る。 数値や用語だけでなく理由まで理解しておくと記述問題に対応しやすい。

特性 なぜ必要か(回路設計上の理由)
入力インピーダンス = ∞ 入力に電流が流れないため、信号源の電圧降下なしに正確に電圧を取り込める。前段の回路に影響を与えない
出力インピーダンス = 0 負荷抵抗の大きさによらず出力電圧が変化しない。後段の回路に電力を安定供給できる
開ループゲイン = ∞ 負帰還と組み合わせると、閉ループゲインが抵抗比だけで決まる安定した増幅が実現できる

論説問題の定番フレーズ「入力インピーダンスは無限大で入力電流はゼロ、出力インピーダンスはゼロ、開ループ電圧利得は無限大」

3. 負帰還あり vs 負帰還なし(コンパレータ動作)

項目 負帰還あり(増幅回路) 負帰還なし(コンパレータ)
動作 線形増幅・安定動作 出力が正負電源に飽和
仮想接地 成立(\(V_+ \approx V_-\) 成立しない
用途 アンプ・フィルタ・積分器 電圧比較・波形整形

シュミットトリガ回路(R04上 問13 で計算出題)

シュミットトリガは正帰還をかけたコンパレータ。出力の一部を+入力に戻すことで ヒステリシス(上限・下限のしきい値を持つ)を実現する。

回路の特徴: - 出力 \(V_o\) が+入力に正帰還される - 出力が高い(\(+V_{sat}\))ときと低い(\(-V_{sat}\))ときで切り替えのしきい値が変わる(ヒステリシス特性)

しきい値電圧の計算\(R_1\)(GNDから+入力)、\(R_2\)(出力から+入力)の分圧で決まる。

\[V_{th} = V_{sat} \times \frac{R_1}{R_1 + R_2}\]

上限しきい値(\(V_o = +V_{sat}\) のとき)と下限しきい値(\(V_o = -V_{sat}\) のとき)の2つがある。

仮想接地は使えない:正帰還なので \(V_+ \neq V_-\)。分圧の式で+入力の電圧を求め、 入力電圧 \(V_i\)(-入力)と比較して出力状態を判定する。

反転増幅との混同に注意

シュミットトリガは帰還先が「+入力」。反転増幅は帰還先が「-入力」。 まず帰還先がどちらかを確認する。


🕳️ よくある勘違いTOP3

❌ 1:反転増幅のゲインにマイナスをつけ忘れる

✅ 実際は ==\(A_v = -R_f/R_i\)。マイナスは「出力が入力と逆位相になる」==ことを意味する。 問題で「ゲインの絶対値は?」と聞かれるなら \(|A_v| = R_f/R_i\) でよいが、出力電圧を求めるときはマイナスを忘れると符号が逆になる。

❌ 2:仮想接地の適用条件を見誤る

✅ 「+入力と-入力の電圧差がゼロ」は負帰還がかかっているとき限定の近似。 コンパレータ動作(負帰還なし)や正帰還回路には適用できない。まず回路に負帰還があるか確認してから使う。

❌ 3:非反転増幅と反転増幅の公式を混同する

非反転増幅は \(A_v = 1 + R_f/R_i\)(1以上・符号プラス)、反転増幅は \(A_v = -R_f/R_i\)(符号マイナス)。 区別のコツ:「+入力に信号が入る → 非反転 → ゲインに1が付く」と接続で覚える。

❌ 4:シュミットトリガで仮想接地を使って計算しようとする

✅ シュミットトリガは正帰還なので仮想接地が成立しない。+入力の電圧を \(R_1\)\(R_2\) の分圧で求め、 入力電圧 \(V_i\)(-入力)と大小比較して出力を判定する。(R04上 問13)

❌ 5:積分回路の出力が「時間で割った値」になると思い込む

\(V_o = -(1/RC) \int V_i\,dt\) なので、一定電圧 \(V_i\) を加えたときは \(V_o = -(V_i / RC) \times t\)(時間に比例)。 ==分母は \(RC\)(時定数)==であり、\(R\) 単独でも \(C\) 単独でもない。(H27 問18 頻出)


🔄 解法フローチャート

オペアンプ回路の問題を見たら
① 「回路の種類を識別する」
   帰還抵抗が「-入力側」に接続 → 反転増幅
   入力が「+入力側」→ 非反転増幅
   入力が「+に電源、-に帰還」→ ボルテージフォロワ

② 「仮想接地(イマジナリーショート)を適用」
   ==V+ = V-==(負帰還がある場合)
   -入力はGNDに仮想接地(反転増幅の場合)

③ 「ゲインを計算」
   反転: ==Av = -Rf/Ri==
   非反転: ==Av = 1 + Rf/Ri==

④ 「出力電圧を求める」
   Vo = Av × Vi
   符号(位相)を確認(反転はマイナス)

📝 出題実績

出典: 電験王3(denken-ou.com)H18〜R07上期の過去問一覧より収集(2026-03-30) ※ 電子理論(電子回路)の中から演算増幅器(オペアンプ)に関する問題を抽出。

年度 形式 何が問われたか
R06下 問18 論説・計算 演算増幅器の特徴と回路演算
R04上 問13 計算 演算増幅器を用いたシュミットトリガ回路
R02 問13 論説 演算増幅器及びそれを用いた回路
H29 問18 計算 演算増幅器
H27 問18 計算・穴埋 演算増幅器
H26 問13 計算 演算増幅器
H22 問18 論説・計算 演算増幅器の特徴及び出力電圧
H19 問12 論説 演算増幅器の特徴

→ 出題頻度: ★★★(2〜3年に1回程度、問13または問18から出題)


確認問題

問題: 反転増幅回路でRi=10kΩ、Rf=100kΩのとき、電圧利得Avと、入力電圧Vi=0.5Vに対する出力電圧Voを求めよ。

解答

答え: Av = -Rf/Ri = -100/10 = -10、Vo = Av×Vi = -10×0.5 = -5V ポイント: 反転増幅のマイナス符号は位相反転を表す。出力は入力と逆位相

Level 2: 数学的背景 🔬

負帰還の理論と安定性

負帰還システムの閉ループゲイン: [ A_{CL} = \frac{A_{OL}}{1 + A_{OL}\beta} \approx \frac{1}{\beta} \quad (A_{OL} \gg 1) ] ここで \( A_{OL} \) は開ループゲイン(≈ 10⁵〜10⁶)、\( \beta = R_i/(R_i+R_f) \) は帰還率。

閉ループゲインは \( 1/\beta = 1 + R_f/R_i \)(非反転)になり、開ループゲインの変動に鈍感(安定)になる。これが負帰還の本質。

位相余裕(Phase Margin)が小さくなると発振するため、実際のオペアンプには位相補償回路が内蔵されている。

Level 3: 実務との接点 🏭

計測・制御システムのセンサ信号増幅、PID制御の積分・微分演算、フィルタ回路に使う。工場の計装(温度・圧力センサの4〜20mA変換)にオペアンプ回路が内蔵されている。


最終確認: 2026-04-01 | ステータス: v0.7(構造・公式・数値検証済み) | バージョニング基準