需要率・負荷率・不等率¶
設備容量から実際に必要な電力を見積もる3つの指標。電力系統設計の「サイズ感」を決める最重要概念。
🧠 正答者 vs 誤答者の視点差¶
まず「正答者はどう考えているか」のゴールを見てから詳細に入ると効率が良い。
| 観点 | ||
|---|---|---|
| 需要率・負荷率・不等率の定義 | 3つの名前が似ていて混同する | 需要率=最大/設備、負荷率=平均/最大、不等率=各最大の和/合成最大 と分母で整理 |
| 不等率の大小 | 不等率が大きいと効率が悪いと思う | 不等率が大きいほど設備を効率よく使えている(合成最大が分散している) |
| 単位・次元 | 無次元だと思い込む | 需要率・負荷率・不等率は全て無次元([kW/kW])。ただし全日効率はkWh/kWhなので混同注意 |
| 3つの公式 | 公式を丸暗記するが分母分子を混同 | 「何を何で割るか」を日本語で説明できる |
| 不等率 | 1以下の数字を出しても気づかない | 不等率は必ず1以上と知っているので検算できる |
| 設計への応用 | 個別の計算はできるが全体像がない | 設備容量→需要率→不等率→変圧器容量の流れを理解 |
| 負荷率の意味 | 単なる計算問題と捉える | 電力系統の効率・経済性の指標と理解 |
5秒で思い出す¶
「需要率で"どれだけ使う?"、負荷率で"ムラなく使う?"、不等率で"バラバラに使う?"」
セルフチェック①: 需要率・負荷率・不等率の分母をそれぞれ答えよ
需要率の分母=設備容量(全負荷の定格合計)。負荷率の分母=最大需要電力。不等率の分母=合成最大需要電力(同時最大値)。分母を覚えれば公式は復元できる。
セルフチェック②: 不等率は必ず1以上になる。なぜか?
各需要家の最大電力が同時に重なることはないため、各最大の合計(分子)≧ 合成最大(分母)が成立するから。不等率が1に近いほどピークが集中、大きいほど分散して設備を小さくできる。
概念・趣旨¶
なぜこの3つが重要なのか¶
電力設備を設計するとき、全部の機器が同時にMAXで動くことはまずない。もし全部同時フル稼働を想定して設備を作ったら、変圧器もケーブルも巨大になり、コストが跳ね上がる。
この3つの指標を使うことで、現実的な設備容量を見積もれる。つまり「設備のサイズダウン=コスト削減」の根拠になる数字だ。
1. 需要率(Demand Factor)¶
定義¶
需要率 = 最大需要電力 ÷ 設備容量(負荷の定格電力の合計)
設備容量に対して、実際にどれだけの電力を同時に使うかの割合。必ず1以下(100%以下)になる。
公式¶
$$ \text{需要率} = \frac{\text{最大需要電力 [kW]}}{\text{設備容量(全負荷の定格合計)[kW]}} $$
身近な例え¶
家庭の例
自宅にある電気機器の定格電力を全部足すと仮に 10kW だとする(エアコン2台、電子レンジ、IH、ドライヤー、照明…)。
でも実際に同時に使うのは最大 6kW 程度。全部を一度に使うことはないから。
→ 需要率 = 6kW ÷ 10kW = 0.6(60%)
つまり「設備の60%分の容量を準備すれば足りる」ということ。
数値例(試験レベル)¶
ある工場に以下の負荷がある:
| 負荷 | 定格電力 |
|---|---|
| 動力負荷 | 200 kW |
| 照明負荷 | 50 kW |
| 空調負荷 | 100 kW |
| 設備容量合計 | 350 kW |
最大需要電力が 210 kW のとき:
$$ \text{需要率} = \frac{210}{350} = 0.6 \quad (60\%) $$
2. 負荷率(Load Factor)¶
定義¶
負荷率 = 平均需要電力 ÷ 最大需要電力
最大電力に対して、平均的にどれだけ使っているかの割合。負荷率が高い = 電力を均一に使っている(ムラが少ない)。
公式¶
$$ \text{負荷率} = \frac{\text{平均需要電力 [kW]}}{\text{最大需要電力 [kW]}} $$
$$ \text{平均需要電力} = \frac{\text{ある期間の総使用電力量 [kWh]}}{\text{その期間の時間 [h]}} $$
身近な例え¶
コンビニ vs レストランの例
コンビニ: 24時間営業で、昼も夜もほぼ同じ電力を使う → 負荷率が高い(0.8〜0.9)
レストラン: ランチとディナーだけ電力をガッツリ使い、それ以外はほとんど使わない → 負荷率が低い(0.3〜0.4)
電力会社としては、コンビニのような負荷率が高い客のほうが設備を効率よく使えるのでありがたい。
数値例(試験レベル)¶
ある需要家の1日の記録:
- 最大需要電力: 500 kW
- 1日の総使用電力量: 6,000 kWh
$$ \text{平均需要電力} = \frac{6{,}000 \text{ kWh}}{24 \text{ h}} = 250 \text{ kW} $$
$$ \text{負荷率} = \frac{250}{500} = 0.5 \quad (50\%) $$
3. 不等率(Diversity Factor)¶
定義¶
不等率 = 各需要家の最大需要電力の合計 ÷ 合成最大需要電力
複数の需要家の最大電力のピークが、同時に来るわけではないことを表す指標。必ず1以上になる。
公式¶
$$ \text{不等率} = \frac{\sum \text{各需要家の最大需要電力}}{\text{合成最大需要電力(同時最大電力)}} $$
身近な例え¶
マンションの例
3世帯のマンションを考える。
| 世帯 | 各世帯の最大需要電力 | ピークの時間帯 |
|---|---|---|
| A家(共働き) | 5 kW | 夜(19〜21時) |
| B家(在宅勤務) | 4 kW | 昼(10〜15時) |
| C家(高齢者) | 3 kW | 朝(6〜9時) |
| 各世帯の合計 | 12 kW | — |
各世帯のピーク時間がバラバラなので、3世帯が同時にMAXになることはない。 実際の合成最大需要電力は 8 kW だったとすると:
→ 不等率 = 12 kW ÷ 8 kW = 1.5
つまり「各世帯の最大電力を単純に足すと過大評価になる。実際は1.5で割った値でOK」ということ。 設備容量を 12kW ではなく 8kW 分で設計できる → コスト削減。
数値例(試験レベル)¶
3つの需要家がある変電所に接続されている:
| 需要家 | 最大需要電力 |
|---|---|
| 需要家A | 300 kW |
| 需要家B | 200 kW |
| 需要家C | 200 kW |
| 合計 | 700 kW |
合成最大需要電力(3つが実際に同時に使う最大値)= 500 kW
$$ \text{不等率} = \frac{700}{500} = 1.4 $$
3つの関係性まとめ¶
設備設計での使い方の流れ¶
設備容量(全負荷の合計)
↓ × 需要率
各需要家の最大需要電力
↓ ÷ 不等率
合成最大需要電力(変電所に必要な容量)
↓ × 負荷率
平均需要電力(日常の電力量の目安)
変圧器容量の算定公式¶
$$ \text{変圧器容量} = \frac{\text{設備容量} \times \text{需要率}}{\text{不等率}} $$
3つの指標の値の範囲を覚えておくこと
| 指標 | 値の範囲 | 大きい方が良い? |
|---|---|---|
| 需要率 | 0 〜 1 | 小さい方が設備に余裕 |
| 負荷率 | 0 〜 1 | 大きい方が効率的(電力を均一に使っている) |
| 不等率 | 1 以上 | 大きい方が設備縮小できる(ピークがバラける) |
相互の関係式¶
$$ \text{合成最大需要電力} = \frac{\text{設備容量} \times \text{需要率}}{\text{不等率}} $$
$$ \text{平均電力} = \text{合成最大需要電力} \times \text{負荷率} $$
頻出論点と落とし穴¶
危険度ランク: 🔴致命(連鎖失点リスク)/ 🟡要注意(単発失点)/ 🟢安心(加点要素)
-
🔴
不等率の分母・分子を逆にする間違い
- 不等率 = 各最大の合計 ÷ 合成最大 → 必ず1以上
- 逆にすると1以下になる。1以下になったら計算ミスを疑え
-
🔴
需要率と負荷率の分母を混同
- 需要率の分母: 設備容量(定格の合計)
- 負荷率の分母: 最大需要電力
- どちらも「最大」が出てくるが、位置が違う
-
🟡
負荷率の計算で「期間」を間違える
- 日負荷率なら24h、月負荷率なら720h(30日×24h)
- 問題文の「1日」「1ヶ月」を見落とさない
-
🟡
変圧器容量の算定問題
- 需要率・不等率・力率がセットで出題される
- 力率も含めた式: 変圧器容量 [kVA] = 設備容量 × 需要率 ÷ (不等率 × 力率)
-
🟢
「負荷率を上げる」の意味
- 負荷率を上げる = ピークカット+ボトムアップ = 負荷の平準化
- 蓄電池や蓄熱システムで夜間に電力を貯めて昼間に使う → 負荷率改善
関連テーマ¶
- 電気施設管理 — 需要率・負荷率は施設管理の基本概念
- 分散型電源・系統連系 — 分散型電源の導入が負荷率に与える影響
最終確認: 2026-04-04 | ステータス: v1.0 | バージョニング基準