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🔌 架空電線路

電柱と電線は最も身近な電気設備。高さ・離隔・強度の数値が大量に問われる暗記テーマ。

まず「正答者はどう考えているか」のゴールを見てから詳細に入ると効率が良い。

🧠 正答者 vs 誤答者の視点差

観点 ❌ 誤答者 ✅ 正答者
高さの基準 全部同じ数値だと思い込む 場所(道路/鉄道/一般)× 電圧区分のマトリクスで整理
風圧荷重 甲乙丙の名前と条件を混同 「甲=夏風フル、乙=冬氷+風半分、丙=夏・人家密集+風半分」と季節・場所で覚える
弛度計算 公式は覚えたが単位変換でミス D=WS^2/8T を必ず単位込みで書き出してから計算
離隔距離 数値を混同 「上方が一番厳しい、ケーブルは緩和」という原則から推理

法的根拠ピラミッド

🟥 法律(電気事業法 第39条 — 事業用電気工作物の技術基準適合義務)
 └ 🟨 省令(電気設備技術基準 第25条 — 架空電線路の強度検討、第6条 — 電線等の断線防止、
     第24条 — 架空電線の高さ、第26条 — 架空電線路の供給支障防止 等)
   └ 🟩 解釈(電技解釈 第49条〜第109条 — 架空電線路に関する広範な規定)
     └ 🟦 規格(JIS C 3307 — 600Vビニル絶縁電線、JIS C 3110 — 硬銅線 等)

📐 WHYから理解する(法令の必然性)

法令 問いかけ 答え
🔴 法律 電気事業法 第39条 なぜ規制するのか 断線・倒壊による感電・交通障害を防止するため
🟠 政令 電気事業法施行令 規制の範囲は? 事業用電気工作物の架空電線路全般
🟡 省令 電技 第25〜28条 何を守るか 架空電線路の強度確保・高さ維持・供給支障防止(数値は解釈に委任)
🟢 告示 電技解釈 第49条・第68条等 どうやって守るか 道路上6m・鉄道5.5m、弛度D=WS²/8T、安全率2.2(硬銅)/ 1.5(支線
🔵 規格 JIS C 3102(硬銅線)/ JIS C 3307(VVF) 実務では? 電線の引張強さ・許容電流の規定

🧠 線の記憶ポイント: 法39条→電技25条「強度確保」→解釈68条「道路6m・鉄道5.5m」。高さは「道6・鉄5.5・歩3.5・その他5」の4セット。弛度は「WS二乗割る8T」の1式。

🧠 概念・趣旨

誰の何を守るか: 通行人・車両(断線落下による感電・接触防止)、通信線(誘導障害防止)、電線路自体(風雪荷重による倒壊防止)

この法令がなかったら: 電線が低すぎてトラックが引っ掛ける、強風で電柱が倒壊して停電・感電事故が多発、鉄道を横断する電線が断線して列車が止まる。

⚡ 5秒で思い出す

「道路6m鉄道5.5m、風は甲夏フル乙冬半氷、たるみD=WS二乗/8T」

セルフチェック①: 甲種・乙種・丙種風圧荷重のうち、低温季に氷雪が付着した状態を想定しているのはどれか?

乙種風圧荷重。低温季・氷雪付着時を想定し、風圧は甲種の1/2だが氷雪で受風面積が増えるため実質的な荷重は大きくなる場合がある。丙種は高温季・人家密集地で甲種の1/2。

セルフチェック②: 弛度の公式 D=WS²/8T において、径間を2倍にすると弛度は何倍になるか?

4倍。径間Sの2乗に比例するため、S×2 → D×4。長径間ほどたるみが急増するため、最大たるみ時でも地上高さ基準を満たすよう設計する必要がある。


🔍 技術翻訳表

条文の表現 現場で言うと 物理で言うと
架空電線の高さは○m以上 電線を張る高さの最低ライン 最大たるみ時でも人・車両との安全距離を確保
風圧荷重 電線や電柱にかかる風の力 受風面積×風圧(Pa)。甲種は高温季、乙種は低温季+氷雪、丙種は高温季・人家密集地(甲種の1/2)✅
電線のたるみ(弛度 電線が自重で垂れ下がる量 カテナリー曲線。D = WS²/8T(W:単位荷重、S:径間、T:水平張力)
支線 電柱が倒れないように引っ張るワイヤー 不平均張力を支線の水平分力で相殺

📊 架空電線の高さ基準(解釈 第68条 等)

場所 低圧 高圧 特別高圧(35kV以下)
道路横断 6m以上 ✅ 6m以上 6m以上 ✅
鉄道・軌道横断 5.5m以上 ✅ 5.5m以上 ✅ 5.5m以上 ✅
横断歩道橋の上 3.5m以上 ✅ 3.5m以上 ✅
その他(一般) 5m以上 5m以上 5m以上 ✅

数値は要確認

上表の数値は概略値。低圧/高圧/特別高圧、および場所によって細かく規定が異なる。解釈第68条〜第87条を要精査。 ✅

📊 離隔距離(解釈 第71条〜 等) ✅

対象 低圧 高圧 備考
建造物(上方) 2m以上 ✅ 2m以上 ✅ 屋根の上方
建造物(側方・下方) 1m以上 ✅ 1.2m以上 ✅ ケーブルの場合は緩和あり
他の電線(低圧-低圧 0.3m以上 ✅ 同一支持物上
通信線 0.6m以上 ✅ 0.8m以上 ✅

📊 風圧荷重の種別

種別 適用条件 特徴
甲種風圧荷重 高温季(氷雪なし) 電線のみの受風面積 × 風速40m/s相当の風圧
乙種風圧荷重 低温季(氷雪付着あり) 厚さ6mm・比重0.9の氷雪付着時の受風面積 × 甲種の1/2の風圧 ✅
丙種風圧荷重 高温季・人家が多く連なっている場所 甲種の1/2の風圧 ✅

どの風圧で設計するか

甲種・乙種・丙種のうち最も厳しい(荷重が大きい)もので設計する。地域によって乙種が支配的(積雪地域)か甲種が支配的(温暖地域)かが変わる。

📊 電線のたるみ(弛度

$$D = \frac{WS^2}{8T}$$

記号 意味 単位
D 弛度(たるみ) m
W 電線の単位長さあたり荷重 N/m
S 径間(支持点間距離) m
T 水平張力 N

弛度は径間の2乗に比例

径間が2倍 → たるみは4倍。だから長径間には要注意。

🕳 頻出論点と落とし穴

危険度ランク: 🔴致命(連鎖失点リスク)/ 🟡要注意(単発失点)/ 🟢安心(加点要素)

  1. 🔴致命 🎯 道路横断と鉄道横断の高さ混同

    • 道路横断の方が高い(車両が通る)→ 一般的に6m以上 ✅
    • 鉄道横断はレール面上5.5m以上 ✅
    • 「どちらが高いか」で引っ掛ける
  2. 🔴致命 🎯 風圧荷重の甲乙丙を取り違え

    • 甲種 = 高温季(氷雪なし、風速40m/s相当の風圧フル)
    • 乙種 = 低温季(氷雪付着あり、甲種の1/2の風圧)→ 氷で受風面積が増えるので風圧を下げてバランス
    • 丙種 = 高温季・人家が多い場所(氷雪なし、甲種の1/2の風圧)✅
    • 「乙種は風圧が半分だから弱い」→ 氷雪で受風面積が増えるので結果的に厳しくなる場合あり
  3. 🟡要注意 🎯 弛度の計算で単位を間違える

    • WをN/mで統一しているか、kgf/mが混在していないかに注意
    • 径間Sの2乗がかかるので、数値が大きくなりやすい
  4. 🟡要注意 🎯 支持物の強度(安全率)

    • 木柱の安全率: 2.0以上 ✅
    • 鉄筋コンクリート柱: 2.0以上 ✅
    • 鉄柱: 2.0以上(風圧荷重に対して)✅
  5. 🟢安心 🎯 ケーブルの場合の緩和

    • 架空ケーブル(絶縁被覆あり)は裸電線より離隔距離が緩和される
    • 高さの規定も一部緩和あり ✅(特定条件で3.5m以上に緩和可)

📝 出題実績

年度 形式 何が問われたか 条文
R03 問6 択一 架空電線の高さ(高圧保安工事・連鎖倒壊防止) 解釈68条付近 ✅
R01 問8 択一 風圧荷重の種別 ✅ 解釈58条付近 ✅
H30 問7 択一 架空電線路の支持物の強度 ✅ 省令25条
H30 問11 計算 弛度の計算 ✅
H27 問7 択一 架空電線の離隔距離 ✅ 解釈71条付近 ✅
H27 問11 計算 風圧荷重の計算 ✅

→ 出題頻度: ⭐⭐⭐⭐⭐(7回程度 — 択一・計算の両方で出題される重要テーマ)

🔗 混同注意

  • 架空電線 vs 架空ケーブル: 裸電線か絶縁被覆ありかで規定が異なる。ケーブルは緩和が多い
  • 道路横断 vs 道路沿い: 横断の方が厳しい
  • 高温季の風圧 vs 低温季の風圧: 甲種(高温季・全地方)は風圧フルだが受風面積小、乙種(低温季・氷雪地方)は風圧半分だが氷雪で受風面積大、丙種(高温季・人家密集地)は甲種の1/2
Level 2: 物理的背景 🔬

なぜ高さに最低基準があるのか

  • 道路: 大型トラックの車高は約3.8m + 積載物で4.1m程度。安全距離を加えて5m〜6m
  • 鉄道: 電車のパンタグラフ高さ + 安全距離
  • 電線は温度が上がると伸びてたるみが増す → 最大たるみ時でも基準を満たす必要がある

風圧荷重の物理

風圧 P = 1/2 × ρ × v² (ρ: 空気密度、v: 風速) 電線にかかる力 F = P × A(A: 受風面積 = 電線直径 × 径間長)

氷雪が付着すると電線の見かけ直径が増加 → 受風面積が増える → 荷重が増える

Level 3: 設計パラメータ 📐

支持物の設計

  • 根入れ深さ: 全長の1/6以上(15m以下の場合)✅
  • 支線の施設: 不平均張力が生じる箇所(角度柱、引留柱、末端柱)
  • 支線の安全率: 2.5以上 ✅
  • 基礎の設計: 転倒モーメント ≦ 抵抗モーメント

実務での弛度管理

  • 架線時: 温度と張力の関係表(弛度表)を使用
  • 弛度の許容値: 最大たるみ時に地上高さ基準を満たすように逆算
  • 温度変化の影響: 線膨張係数 × 温度差 × 径間長

最終確認: 2026-03-30 | ステータス: v1.0 完全版 | バージョニング基準


🕳️ 試験での出題パターン

よくある聞かれ方

  • 「架空電線の地表上の高さ(道路横断・鉄道横断など場所別)」
  • 「支持物の径間・安全率の規定」
  • 「架空電線が他の工作物に接近・交差する場合の離隔距離」
  • 弛度・張力の計算」(B問題)

典型ひっかけ

  • ❌ 「架空電線の高さは場所によらず一定」→ ⭕ 道路・鉄道・河川横断で異なる(道路5m、鉄道6.5m など)
  • ❌ 「支持物の安全率は電圧によらず同じ」→ ⭕ 高圧・特別高圧は安全率が異なる
  • ❌ 「他の架空電線と交差する場合、上下どちらでも可」→ ⭕ 電圧の高い方が上位(優先)
  • ❌ 「弛度は小さいほどよい」→ ⭕ 弛度が小さすぎると張力が大きくなり断線リスク増加

🧠 なぜこの高さ・離隔距離が決まっているのか(物理的直感)

  • 地表高さの規定は人・車両・船舶が通過しても接触しないための最低クリアランス
  • 道路5m:大型トラックの荷台高さ(約4m)+安全余裕
  • 鉄道6.5m:電車のパンタグラフ高さ(約5m)+安全余裕
  • 離隔距離は電線間の放電(アーク)を防ぐための電気的絶縁距離。電圧が高いほど必要距離が長い
  • 支持物の安全率は風圧荷重・氷雪荷重などの異常気象に対する余裕。倒れると広域停電になるため

✏️ このページを読んだら解く過去問

  • R06 問9 — 架空電線の高さ(場所別)
  • R04 問10 — 架空電線の離隔距離
  • H28 B問題 — 弛度・張力の計算