🗼 支持物・架空電線路の強度¶
まず「正答者はどう考えているか」のゴールを見てから詳細に入ると効率が良い。
🧠 正答者 vs 誤答者の視点差¶
| 観点 | ||
|---|---|---|
| 甲乙丙の区別 | 「甲が一番厳しい」と単純暗記して地域条件を無視 | 「地域×季節」の2軸マトリクスで判定 |
| 安全率の計算方向 | 使用荷重÷破壊荷重と逆に立式して1未満の値を出す | 「壊れる力÷かかる力」と物理的に理解して分母・分子を間違えない |
| 支線 vs 支持物の安全率 | どちらも同じ2.0と思い込む | 支線は2.5(支持物2.0より大きい)と区別して暗記 |
| 支線の条数計算 | 破壊荷重をそのまま1条の許容荷重として割り算 | 安全率で割った許容引張荷重を求めてから条数を算出(切り上げ) |
| 根入れ深さの要件 | 数値を覚えておらず「適当に深ければよい」と思い込む | 全長の1/6(15m超は2.5m)という基準を条文とセットで記憶 ✅ |
法的根拠ピラミッド¶
🟥 電気事業法 第39条(技術基準適合義務)
🟨 省令 第32条(支持物の倒壊の防止)
🟩 解釈 第58条(架空電線路の強度検討)
🟩 解釈 第59条(架空電線路の支持物の強度等)
🟩 解釈 第60条(架空電線路の支線)
🟩 解釈 第61条(架空電線路の径間の制限)
🟩 解釈 第62条(架空電線路のたるみ)
趣旨: 架空電線路の支持物(電柱・鉄塔)は風圧・着雪・自重により倒壊すると 😱 公衆感電・停電・交通障害 を引き起こすため、荷重条件ごとの安全率を規定
📐 WHYから理解する(法令の必然性)¶
| 層 | 法令 | 問いかけ | 答え |
|---|---|---|---|
| 🔴 法律 | 電気事業法 第39条 | なぜ規制するのか | 支持物の倒壊・電線の断線による感電・交通障害を防止するため |
| 🟠 政令 | 電気事業法施行令 | 規制の範囲は? | 事業用電気工作物の架空電線路の支持物全般 |
| 🟡 省令 | 電技 第25条・第32条 | 何を守るか | 支持物の強度確保・倒壊防止(具体的数値は解釈に委任) |
| 🟢 告示 | 電技解釈 第59条〜第63条 | どうやって守るか | 木柱の末口径12cm以上・根入れ深さ全長1/6以上、安全率2.0以上 |
| 🔵 規格 | JIS A 5309(遠心力コンクリート杭) | 実務では? | コンクリート柱・鋼管柱の強度試験・寸法規格 |
🧠 線の記憶ポイント: 支持物の強度は「安全率2.0以上」が基本。根入れ深さ「全長の1/6以上かつ0.3m以上」。離隔距離は電圧区分×対象物の組み合わせで変わる。35kVと60kVが境界値。
🧠 概念・趣旨¶
なぜ風圧荷重を3種別に分けるのか?¶
架空電線路は全国に設置されるが、地域・季節・条件によって受ける風圧が異なる。一律の基準では過剰設計(コスト増)か過小設計(倒壊リスク)になるため、3種別で合理的に管理する。
| 種別 | 適用条件 | 想定シナリオ |
|---|---|---|
| 甲種風圧荷重 | 低温季(氷雪の多い地方以外) | 🌬️ 強風のみ。最も厳しい風圧 |
| 乙種風圧荷重 | 低温季(氷雪の多い地方) | 🧊 着氷+風圧の組合せ |
| 丙種風圧荷重 | 高温季 | ☀️ 温度上昇による弛度増加時 |
安全率の考え方¶
安全率 = 破壊荷重 ÷ 常時想定荷重
👑 「壊れる力」を「かかる力」で割る。安全率が大きいほど余裕がある。
| 支持物の種類 | 安全率 ✅ |
|---|---|
| 木柱 | 2.0 ✅ |
| 鉄筋コンクリート柱 | 2.0 ✅ |
| 鉄柱 | 2.0 ✅ |
| 鉄塔 | 2.0 ✅ |
| 支線 | 2.5 ✅ |
⚡ 5秒で思い出す¶
「甲は風、乙は氷+風、丙は夏」 安全率 = 壊れる ÷ かかる(分子がデカい方が正しい) 支持物 2.0、支線 2.5(支線の方がシビア) 根入れは全長の1/6以上 ✅
セルフチェック①: 支持物の安全率と支線の安全率はそれぞれいくつか?
支持物(木柱・RC柱・鉄柱・鉄塔)は2.0以上、支線は2.5以上。支線の方が大きい点が頻出。安全率の計算方向は「破壊荷重 ÷ 使用荷重」(壊れる力÷かかる力)。
セルフチェック②: 氷雪の多い地方の低温季に適用する風圧荷重の種別は何か?
乙種風圧荷重。着氷(厚さ6mm)+風圧の組合せを想定する。甲種は氷雪なし地域の低温季(風のみ)、丙種は高温季(全地域)。
🔍 技術翻訳表¶
| 条文の表現 | 現場で言うと | 物理で言うと |
|---|---|---|
| 「想定される荷重に耐えるもの」 | 風圧・着雪・電線自重のすべてを考慮して計算する | 各荷重の合力ベクトルが支持物の断面耐力を下回ること |
| 「風圧荷重の種別(甲・乙・丙)」 | 地域と季節によって使う荷重を切り替える | 甲=最大風速想定、乙=着氷で受風面積増大、丙=高温時の弛度検討 |
| 「安全率」 | 壊れるまでどれだけ余裕があるかの比率 | 安全率 = 破壊荷重 ÷ 使用荷重(常時想定荷重) |
| 「支持物の根入れ深さ」 | 電柱を地面にどれだけ埋めるか | 根入れが浅いと転倒モーメントに負ける。全長の1/6以上が目安 ✅ |
| 「支線の安全率 2.5 以上」 | 支線ワイヤーは支持物より高い安全率が必要 | 支線は引張専用部材。設計荷重の2.5倍の破壊荷重を持つ素線を選ぶ ✅ |
| 「支線の施設角度」 | 支線は電柱に対して斜めに張る | 角度が浅い(水平に近い)ほど張力が大きくなる(水平分力が減るため) |
| 「径間の制限」 | 電柱と電柱の間を広げすぎてはいけない | 径間が長くなると電線のたるみ(弛度)が増大し、地表や他物への接近距離が問題になる |
| 「たるみ(弛度)」 | 電線が自重で垂れ下がる量 | 弛度 D = WS²/8T(W:単位重量、S:径間、T:張力)。高温時は張力が下がり弛度増加 ✅ |
📊 比較表¶
風圧荷重の種別比較¶
| 項目 | 甲種 | 乙種 | 丙種 |
|---|---|---|---|
| 適用季節 | 低温季 | 低温季 | 高温季 |
| 適用地域 | 氷雪の多い地方以外 | 氷雪の多い地方 | 全地域 |
| 着氷の考慮 | なし | あり(厚さ6mm ✅) | なし |
| 風圧の大きさ | 最大 | 中程度(着氷分で面積増) | 小 |
| 主な荷重 | 🌬️ 風圧 | 🧊 着氷+🌬️ 風圧 | ☀️ 温度上昇+微風 |
安全率・根入れ深さ比較¶
| 対象 | 安全率 | 備考 |
|---|---|---|
| 木柱 | 2.0 以上 ✅ | 省令第32条・解釈第59条 |
| 鉄筋コンクリート柱 | 2.0 以上 ✅ | 省令第32条・解釈第59条 |
| 鉄柱 | 2.0 以上 ✅ | 省令第32条・解釈第59条 |
| 鉄塔 | 2.0 以上 ✅ | 省令第32条・解釈第59条 |
| 支線 | 2.5 以上 ✅ | 解釈第60条。支持物より大きい点が頻出 |
| 支持物の種類 | 根入れ深さの目安 ✅ | 備考 |
|---|---|---|
| コンクリート柱(全長15m以下) | 全長の1/6 以上 ✅ | 解釈第59条。軟弱地盤では加算 |
| コンクリート柱(全長15m超) | 2.5m 以上 ✅ | 解釈第59条 |
| 木柱 | 全長の1/6 以上 ✅ | 解釈第59条 |
支線の必要条件¶
| 項目 | 内容 ✅ |
|---|---|
| 安全率 | 2.5 以上 ✅ |
| 支線の種類 | 亜鉛めっき鋼より線、ステンレス鋼より線 等 ✅ |
| 引張強さ | 素線の引張強さ × 条数 × 安全率 で計算 ✅ |
| 根開き | 支線の地上取付点から電柱までの水平距離 |
🕳️ 頻出論点と落とし穴¶
危険度ランク: 🔴致命(連鎖失点リスク)/ 🟡要注意(単発失点)/ 🟢安心(加点要素)
-
🔴致命
甲乙丙の適用条件の混同 — 「地域×季節」の2軸で判定する
甲種 = 氷雪の多い地方以外の低温季(風のみ) 乙種 = 氷雪の多い地方の低温季(着氷+風) 丙種 = 高温季(全地域)
- 覚え方: 「甲(こう)→ 高気圧(晴天・風のみ)」「乙(おつ)→ 凍(とう)=氷がつく」
- 乙種は着氷で電線の見かけ直径が増えるため、受風面積が増大する点がポイント
-
🔴致命
安全率の分母を逆にする — 「壊れる÷かかる」が正しい方向
- ❌ 安全率 = 使用荷重 ÷ 破壊荷重(逆にすると1未満になり意味がない)
- ✅ 安全率 = 破壊荷重 ÷ 使用荷重
- 支持物(木柱・RC柱・鉄柱・鉄塔)は安全率 2.0 以上 ✅
- 支線は安全率 2.5 以上 ✅(支持物より大きい — ここを問う問題が頻出)
-
🟡要注意
支線の計算で「条数」を求める問題 — 安全率を忘れると1条足りなくなる
- 手順: 支線1条の破壊荷重 → ÷ 安全率 → 1条の許容引張荷重 → 必要条数 = 総荷重 ÷ 1条の許容荷重(小数点以下切り上げ)
- 安全率を掛け忘れて「破壊荷重そのまま」で割ると必要条数が少なく出てしまう
-
🟡要注意
根入れ深さの要件 — 「全長の1/6」が目安として問われる ✅
- コンクリート柱の根入れ深さは全長の1/6以上が一般的な目安 ✅
- 問題文に「全長○m」が与えられ、根入れの計算値を選ぶ形式が頻出
- 地盤条件(軟弱地盤)では規定値より深くする必要がある点も注意
-
🟢安心
支線の施設角度と張力の関係 — 角度が浅いほど張力が大きい
- 支線の地際取付点と電柱の距離(根開き)が小さいほど支線角度が深くなり、必要張力は小さくなる
- 問題文に「根開きが全長の○倍」と出たら、三角関数(sin・cos)で張力を計算する
- 見落としやすい: 支線の張力 ≠ 水平力(角度分で割る必要がある)
📝 出題実績¶
| 年度 | 問 | 形式 | 何が問われたか | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| R05 | — | — | — | — |
| R04 | — | — | — | — |
| R03 | — | — | — | — |
| R02 | — | — | — | — |
| R01 | 問4 | 択一 | 架空電線路の支持物の強度(風圧荷重・安全率) | 解釈第59条 |
| H30 | 問11 | 計算 | 支線の必要条数計算(引張荷重・安全率) | 解釈第60条 |
| H29 | — | — | — | — |
| H28 | — | — | — | — |
| H27 | 問11 | 択一 | 架空電線路の強度(風圧荷重の種別) | 解釈第58条 |
| H26 | 問11 | 計算 | 支持物の安全率の計算 | 解釈第59条 |
出題頻度: H26〜R05(10年間)で確認済4回 ★★★☆☆
🔗 混同注意¶
| 混同しやすいペア | 違い |
|---|---|
| 甲種風圧荷重 vs 乙種風圧荷重 | 甲=風のみ(氷雪なし地域)、乙=着氷+風(氷雪地域) |
| 支持物の安全率 vs 支線の安全率 | 支持物 2.0 ✅ vs 支線 2.5 ✅(支線の方が大きい) |
| 径間 vs たるみ(弛度) | 径間=柱間の水平距離、たるみ=電線の垂れ下がり量 |
| 架空電線路 vs 本テーマ | 架空電線路は電線の種類・施設方法、本テーマは支持物・強度 |
Level 2: 物理的背景 🔬
風圧荷重の物理¶
- 風圧力 P = 1/2 × ρ × v² × C × A(ρ: 空気密度、v: 風速、C: 抗力係数、A: 受風面積)✅
- 着氷すると電線の直径が増加 → 受風面積 A が増える → 乙種は着氷を考慮
- 高温季は風速が小さいが、電線のたるみ(弛度)が温度膨張で増加 → 丙種の検討対象
支線の力学¶
- 電柱に作用する水平力(風圧)を支線の張力で相殺する
- 支線の角度が浅い(水平に近い)ほど大きな張力が必要
- 根開きが大きいほど支線角度が浅くなり、張力が増える
Level 3: 設計パラメータ 📐
風圧荷重の計算値 ✅¶
| 構成要素 | 甲種 | 乙種 | 丙種 |
|---|---|---|---|
| 電線(丸形) | 980 Pa ✅ | 着氷時の直径で計算 ✅ | 490 Pa ✅ |
| 支持物(円形) | 780 Pa ✅ | — | 390 Pa ✅ |
着氷条件(乙種)✅¶
- 比重: 0.9 ✅
- 厚さ: 電線外周に6mm ✅
※ 上記数値は e-Gov 法令検索・電技解釈第58条にて確認済み。
最終確認: 2026-03-30 | ステータス: v1.0 完全版 | バージョニング基準