磁界¶
磁界の問題は「どの源か(点か線か)」を最初に確認する。それだけで距離依存がわかる。
5秒で思い出す¶
「直線電流の磁界は 1/r(線だから2次元)、点電荷の電界は 1/r²(点だから3次元)」
概念・趣旨¶
無限長直線電流による磁界¶
電流が流れる無限長の直線導体の周りに磁界が生じる。磁界の大きさ H は次の関係で決まる。
- 式の意味: 電流 I が大きいほど強く、導体からの距離 r が遠いほど弱くなる
- 距離依存: 1/r — 距離が2倍になると磁界は半分になる
- 公式: H = I ÷ (2πr) [A/m]
- 向き: アンペアの右ねじの法則(電流の方向に右ねじを進めると、磁界はねじの回転方向)
右ねじの法則の使い方
右手の親指を電流の向きに合わせる。残りの4本指が磁界の向き(電流を囲む方向に回る)。 向きを決めてから大きさを計算するのが正解手順。
点電荷による電界(比較用)¶
静止した点電荷 Q の周りに電界 E が生じる。
- 式の意味: 電荷 Q が大きいほど強く、電荷からの距離 r の2乗に反比例して弱くなる
- 距離依存: 1/r² — 距離が2倍になると電界は1/4になる
- 公式: E = Q ÷ (4πε₀r²) [V/m]
磁界 vs 電界 距離依存 比較表¶
| 項目 | 直線電流の磁界 H | 点電荷の電界 E |
|---|---|---|
| 源の形 | 線(1次元の源) | 点(0次元の源) |
| 広がり方 | 2次元的(円筒面) | 3次元的(球面) |
| 距離依存 | 1/r | 1/r² |
| 公式 | H = I/(2πr) | E = Q/(4πε₀r²) |
| 単位 | A/m | V/m |
| 向きの法則 | 右ねじの法則 | クーロンの法則(同符号で反発) |
なぜ距離依存が違うのか¶
「源の形」が違うから広がり方が変わる
-
直線電流は「線」の源。場は線を中心とした円筒面に広がる。 円筒の表面積は半径 r に比例するので、磁界は 1/r で弱くなる。
-
点電荷は「点」の源。場は点を中心とした球面に広がる。 球の表面積は半径 r の2乗に比例するので、電界は 1/r² で弱くなる。
結論: 線→円筒→1/r、点→球→1/r² この因果を言えれば暗記不要。
磁界と磁束密度の違い¶
H(磁界)と B(磁束密度)はセットで出題される別物。
| 記号 | 名称 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|---|
| H | 磁界 | コイルや電流が「磁気的な力を作り出す能力」 | A/m |
| B | 磁束密度 | 実際に空間を通り抜ける磁束の密度(媒質の影響を受ける) | T (テスラ) |
| μ | 透磁率 | 媒質が磁束を通しやすいかの係数 | H/m |
関係式: B = μH
μ(透磁率)の内訳
μ = μ₀ × μr(真空の透磁率 × 比透磁率)
- 真空・空気: μr ≒ 1
- 鉄・フェライト: μr = 数百〜数千(磁束が大幅に強まる)
同じ電流でも鉄心があると B が数百倍に増える。H は変わらない。
ひっかかりポイント¶
混同 No.1: 「磁界は1/r²では?」
誤パターン: 「距離が遠いと弱くなる → 電界の式 1/r² を磁界にも当てはめてしまう」
これは点電荷の電界の話。直線電流の磁界は 1/r(2乗ではない)。
瞬時に区別する方法:
- 「点(点電荷)→ 二乗(r²)」で統一して覚える
- 直線電流は「線」だから2乗にならない、と源の形で判断する
混同 No.2: H と B を同じものと思う
「磁界が強い = 磁束密度が大きい」は真空・空気中だけ正しい。
鉄心を入れると B = μH の μ が数百倍になるため、H が同じでも B は桁違いに増える。 問題に「鉄心」「フェライト」が出たら B と H を分けて考える。
混同 No.3: 右ねじの法則の向きをミスする
計算を先にして向きを後で決めようとすると混乱する。
正しい手順: 向き(右ねじで確認)→ 大きさ(公式で計算)の順番を守る。 向きが決まってから符号と大きさを埋める。
頻出論点と落とし穴¶
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「無限長」の意味
- 「無限長直線電流」は試験問題の定番条件。有限長だと端の影響で式が変わる。
- 「無限長」と書いてあれば迷わず H = I/(2πr) を使ってよい。
-
磁界の重ね合わせ
- 複数の直線電流がある場合、各電流が作る磁界をベクトルで加算する。
- 向きが反対の場合は打ち消し合う。向きが同じ場合は強め合う。
- 計算前に各電流の磁界の向きをすべて確認してから足し算する。
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距離 r の取り方
- r は電流が流れる導体の中心線からの距離(導体の表面からではない)。
- 問題文の図で「距離」がどこを指しているか確認する。
-
単位のチェック
- H の単位は A/m(アンペア毎メートル)。
- B の単位は T(テスラ)= Wb/m²(ウェーバー毎平方メートル)。
- 選択肢に「A/m²」「T/m」などのひっかけ単位が出ることがある。
正答者 vs 誤答者の視点差¶
| 観点 | ||
|---|---|---|
| 距離依存 | 「遠いと弱くなる = 1/r²」と反射的に答える | 源が「線」か「点」かを確認してから判断する |
| H と B | H = B だと思っている(真空前提で思考が止まる) | μ を介して別物と理解。媒質が変われば B だけ変わる |
| 向きの計算 | 計算後に向きを決めようとして混乱 | 向き(右ねじ)→ 大きさ の手順を守る |
| 公式の意味 | H = I/(2πr) をそのまま暗記 | 円筒面の面積が 2πr に比例するから 1/r になると理解 |
関連テーマ¶
最終確認: 2026-04-01 | ステータス: v1.0 | バージョニング基準