計装基礎¶
30秒まとめ¶
4-20mAは「電流ループ」で信号伝送する業界標準。4mAがゼロスケール(断線と区別できる)、20mAがフルスケール。電圧伝送より耐ノイズ性が高く、長距離伝送に向く。HARTはこのアナログ信号にデジタル通信を重畳する技術。
4-20mAループの仕組み¶
なぜ4mAがゼロか¶
| 電流値 | 意味 |
|---|---|
| 0 mA | 断線・電源失 |
| 4 mA | ゼロスケール(正常な最小信号) |
| 20 mA | フルスケール |
| 3.8 mA 以下 | アンダーレンジ警報 |
| 20.5 mA 以上 | オーバーレンジ警報 |
0mAを「生きている信号」として使わないことで、断線と測定値ゼロを区別できる。これが4-20mAの最大の利点。現場でアラームが出たとき、まず「0mAか否か」を確認する習慣をつける。
ループの電流計算¶
受信計器の表示値 = (I - 4mA) / 16mA × スパン + ゼロ点
例:0〜100℃ スパン、受信電流12mA の場合
(12 - 4) / 16 × 100 = 50℃
電流伝送 vs 電圧伝送¶
| 項目 | 電流伝送 (4-20mA) | 電圧伝送 (1-5V等) |
|---|---|---|
| 耐ノイズ性 | 高い | 低い |
| 長距離伝送 | 可(数百m) | 不向き(電圧降下) |
| 配線抵抗の影響 | 受けにくい | 受ける |
| 主な用途 | フィールド〜DCS間 | 盤内短距離 |
電流伝送が耐ノイズ性に優れる理由:ノイズは電圧として乗ってくるが、電流ループでは受信側の入力抵抗両端の電圧誤差にしかならず、電流自体は変化しない。
配線抵抗の上限
ループ電源電圧(通常24V)から伝送器の最低動作電圧(約12V)を引いた残りが許容電圧降下。 許容負荷抵抗 = (24V - 12V) / 0.020A = 600Ω が一般的な上限目安。 受信計器の入力抵抗+ケーブル抵抗の合計がこれを超えないこと。
HART通信の概要¶
HART(Highway Addressable Remote Transducer)は、4-20mAアナログ信号に1200bpsのデジタル信号をFSK変調で重畳する通信方式。
アナログ信号 4mA ────────────────────── 20mA
デジタル信号 ~~~~波形(1200Hz/2200Hz)~~~~
同一のケーブル上に共存
HARTでできること¶
- 機器情報の読み出し(製造番号・タグ・ステータス)
- 設定変更(レンジ・単位・減衰)
- 診断情報の取得(自己診断結果)
- 複数パラメータの同時取得(最大4変数)
現場での活用
ループキャリブレータ(FLUKE 707 等)にHARTモデムを繋げると、フィールドで伝送器のゼロ・スパン調整や診断ができる。工事・保全作業の効率が大きく上がる。
2線式と4線式¶
2線式(ループパワード)¶
[DCS/バリア] ─── (+) ─── [伝送器] ─── (-) ─── [DCS/バリア]
24VDCを供給 信号電流(4-20mA)を返す
- 電源と信号を同一の2本のケーブルで賄う
- 伝送器の消費電力は最大4mA×最低動作電圧で制限される
- 配線コストが安い → 現場では主流
4線式(セパレートパワード)¶
信号線 ─ (+) / (-) ─ 伝送器
電源線 ─ (+) / (-) ─ 伝送器(別電源 100/200VAC または 24VDC)
- 分析計・ガス検知器・超音波流量計など消費電力の大きい機器に使用
- 電源と信号が独立しているため、電源電圧の変動が信号に影響しない
P&ID 主要記号一覧¶
| 記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| FIC | Flow Indicating Controller(流量指示調節計) | FIC-101 |
| TIC | Temperature Indicating Controller(温度指示調節計) | TIC-201 |
| PIC | Pressure Indicating Controller(圧力指示調節計) | PIC-301 |
| LIC | Level Indicating Controller(液位指示調節計) | LIC-401 |
| FT | Flow Transmitter(流量伝送器) | FT-101 |
| TT | Temperature Transmitter(温度伝送器) | TT-201 |
| PT | Pressure Transmitter(圧力伝送器) | PT-301 |
| LT | Level Transmitter(液位伝送器) | LT-401 |
| AI | Analog Input(アナログ入力) | — |
| AO | Analog Output(アナログ出力) | — |
| FCV | Flow Control Valve(流量調節弁) | FCV-101 |
| HV | Hand Valve(手動弁) | — |
ISA-5.1 図記号の主要なもの¶
| 記号の形 | 意味 |
|---|---|
| 円(○) | フィールド設置計器 |
| 四角(□) | 盤面設置計器 |
| 六角(◇) | コンピュータ機能 |
| 上部に線のある円 | 盤裏設置(背面アクセス) |
| 実線 | 空気配管 |
| 破線 | 電気信号配線 |
| 二重線 | フィールドバス |
よくある現場トラブル¶
断線との区別
DCSのトレンドで突然0%(4mA相当)になったとき、プロセス値が本当にゼロになったのか断線かを確認する。ループチェッカーで実電流を測定する。
アース(シールド)問題
シールドの多点接地によるグラウンドループで、トレンドにノイズが乗ることがある。シールドは片端接地(DCS側)が原則。
負荷抵抗オーバー
安全バリア(本安バリア)を後付けする際、ループ抵抗が増えて伝送器が正常動作しないことがある。増設前にループ抵抗計算を確認する。