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✅ 最終確認: 2026-04-07
⚡ 電気担当

改造・更新設計の注意点

30秒まとめ

改造設計は「既設が正しく動いている」という前提から始まるが、その前提が崩れていることが多い。 着手前に「現状確認」「影響範囲特定」「MOC登録」の3ステップを完了させてから設計に入る。 「これくらいなら変更管理不要」という判断が最大のリスク。


新設と改造の違い

観点 新設 改造
既設の状態 考慮不要 既設の現状が不確かなことがある
設計根拠 仕様から作れる 既設図面が現状と合っていないことがある
影響範囲 新規系統のみ 既設系統への波及を確認する必要がある
停止計画 新規設備の試運転 稼働中ラインの停止が必要になる
承認フロー 新規申請 MOC(変更管理)登録が必要

改造の本質的な難しさ:現状図面が「あるべき姿」であり、現実の配線・接続と一致していないことがある。改造前の現状確認は設計と同レベルの工数がかかる。


改造前確認チェックリスト(8項目)

# 確認項目 確認手段 よくある落とし穴
1 最新版図面の存在確認 図面台帳・管理番号確認 現場の配線と図面が食い違っている
2 既設の負荷電流・容量の実測 クランプメータで実測 図面の設計値と運転値が異なる場合がある
3 影響を受ける計装ループの特定 P&ID・ループシート照合 インターロックへの入力を見落とす
4 停電時間・製造影響の見積もり 製造課へヒアリング 停止影響を過小評価して工期超過
5 使用部品の製造中止確認 メーカーへの問い合わせ 図面と同品番が廃番になっている
6 接地系統の確認 単線結線図・接地抵抗測定 計装アースとD種アースが混用されている
7 MOC申請の要否判断 変更管理規程を参照 「小さい変更」と思い込んでMOCを飛ばす
8 防爆エリアへの影響確認 防爆エリア区分図を参照 改造後に防爆区分に機器が入り込む

既設図面を「正」として設計すると後で必ずズレが出る

竣工図面は施工後に更新されていないことがある。改造前には現場の実物を目視確認し、図面との差異をリスト化してから設計を進める。


場面別 落とし穴と対策

既設盤への機器追加

やりがちな失敗例

  1. 盤内の空きスペースに機器を追加したが、熱容量超過で他の機器が誤動作
  2. ブレーカーの空き回路に接続したが、幹線ケーブルの許容電流を超えていた
  3. 端子台の空き端子がなく、現場合わせで配線が乱雑になった

確認手順

① 既設盤の熱計算
   現状の発熱量(W)= Σ(各機器の損失)
   追加後の発熱量 ≤ 盤の許容放熱量

② 幹線電流の確認
   既設幹線の許容電流(A)> 現状負荷電流 + 追加負荷電流

③ 盤内スペースの確認
   空きスペース(mm²)> 追加機器の投影面積 × 1.2(メンテスペース)
チェック項目 基準 判定方法
盤内温度 40°C 以下 計算値で確認
ブレーカー容量 既設+追加 ≤ 上位ブレーカーの 80% 実測電流で確認
幹線ケーブル 許容電流 ≥ 接続負荷の合計 電線サイズ表で確認

既設盤の盤内温度超過は他の機器の寿命を大幅に縮める

電子部品の寿命はアレニウス則に従い、温度10°C上昇で約半分になる。盤内温度が設計値を超えた状態で機器を追加するとインバータ・PLCが予定より早く故障する。


PLCプログラム変更

やりがちな失敗例

  1. バックアップなしでプログラムを変更し、変更後に動作不良。元に戻せなくなった
  2. 本番機と試験機(同型)を間違えて書き込んだ
  3. オンライン編集(稼働中変更)でインターロックが一時的に無効化された

バックアップ手順

変更前バックアップ:
  ファイル名: PLC_[設備名]_[YYYYMMDD_HHMM]_before.bak
  保存場所: 共有ドライブ/PLC-backup/[設備名]/
  保存確認: バックアップファイルのタイムスタンプで確認

変更後バックアップ:
  ファイル名: PLC_[設備名]_[YYYYMMDD_HHMM]_after.bak
  変更メモ: 変更箇所・理由・承認者を同フォルダのREADME.txtに記録
確認方法 手順
ラベル確認 機器本体のラベルで設備名・IPアドレスを確認
通信確認 接続後にIPアドレスをPingで確認してから書き込み
2者確認 書き込み前に担当者と確認者の2名でダブルチェック

本番PLCへのオンライン編集は製造課と電気主任に事前連絡してから実施

オンライン編集中にプログラムエラーが発生するとラインが即停止する。影響範囲と停止時の対処を製造課と合意してから実施する。


製造中止品の代替選定

やりがちな失敗例

  1. 型番が近い後継品を確認なしで使用。取付穴寸法が5mm違い、盤への取付不可
  2. 入力レンジが変わった後継品を設定変更なしで使用。計測値にオフセット誤差が発生
  3. 通信プロトコルのバージョンが変わりDCSとの通信が確立できなくなった

互換性確認5項目

確認項目 具体的な確認内容 確認手段
外形寸法 取付穴ピッチ・外形サイズ・ケーブル引き出し方向 図面・カタログ比較
端子配列 電源・信号・接地の端子番号と配列 取扱説明書比較
入出力仕様 入力レンジ・出力信号・精度・応答速度 仕様書比較
通信プロトコル HART・Modbus・PROFIBUS のバージョン メーカー確認
設定パラメータ 旧品の設定が新品に転用できるか メーカーへ問い合わせ

計装ループ変更

やりがちな失敗例

  1. ループテスト後にバイパス弁を閉め忘れた状態でプロセスを再起動
  2. インターロックへの入力信号が変更ループから来ていたことを見落とした
  3. 4-20mAの電流値が旧品と新品で0%基準点がずれており、DCS側のスパン設定を変更し忘れた

ループテスト(4-20mA 3点確認)

□ 0%(4mA):指示値 0.0% ± 0.5%
□ 50%(12mA):指示値 50.0% ± 0.5%
□ 100%(20mA):指示値 100.0% ± 0.5%

復帰確認:
□ バイパス弁・テストコック の元位置復帰
□ インターロックバイパスの解除
□ 全インターロックの動作確認

接地系の変更

接地種別と基準値

接地種別 適用場所 接地抵抗基準 根拠
第3種(D種) 低圧機器外箱 100 Ω 以下 電技解釈第29条
特別第3種(C種) 300V超低圧 10 Ω 以下 電技解釈第29条
計装アース(IA) 計装機器シールド 10 Ω 以下(推奨) JIS C 1010等
高圧機器接地 変圧器・遮断器外箱 10 Ω 以下 電技解釈第29条

計装アースとD種接地は原則として分離する

計装アースとD種接地を混用すると、インバータや大電流機器の漏電電流が計装系に流れ込み、センサ信号にノイズが乗る。既設で混用されている場合は改造時に分離を検討する。


MOC(変更管理)プロセスとの紐付け

変更内容 MOC対象 承認レベル
制御ロジックの変更 必須 電気主任・製造課長
安全インターロックの変更 必須 電気主任・安全環境・製造長
計装機器の型番変更 必須 電気担当・製造課
盤内の機器追加(容量変更なし) 推奨 電気担当
同型番の消耗品交換 不要 記録のみ

「軽微な変更」でMOCを省略すると法定点検で指摘される

電気事業法の保安規程では変更工事の記録義務がある。年次自主検査や保安監督でのMOC未登録は指摘事項になる。


竣工後確認:変更前後の比較記録の残し方

竣工記録の最低限:
  □ 変更前の状態(写真・測定値)
  □ 変更内容(何を・なぜ・どう変えたか)
  □ 変更後の状態(写真・測定値)
  □ 機能確認結果(ループテスト成績書・動作確認記録)
  □ 更新した図面リスト(図面番号・改訂番号・改訂日)
  □ 承認者・確認者のサイン
図面種別 更新タイミング 更新者
単線結線図 竣工当日 電気担当
計装ループシート 竣工当日 計装担当
制御回路図(展開接続図) 竣工当日 電気担当
P&ID 竣工2週間以内 計装・製造課合同

竣工翌日に図面更新を後回しにすると永遠に更新されない

「後でやる」は「やらない」と同じ。竣工当日に最優先図面だけでも更新する習慣を作ることで、次回改造時の「現状確認に時間がかかる」問題を予防できる。