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✅ 最終確認: 2026-04-07
⚡ 電気担当 🔧 保全担当

データ活用・予兆保全

30秒まとめ

予兆保全のゴールは「感覚で判断していたことを数値化する」こと。絶縁抵抗が 1 MΩ を下回ったら要注意、0.1 MΩ で交換検討の目安。 モーターの電流値が定格比 110% を超えたら劣化サイン。振動速度が 4.5 mm/s 超えで精密診断が必要。 まずExcelで記録を始めることが予兆保全の第一歩。完璧なシステムより継続できるシンプルな仕組みを作る。


TBM vs CBM:どちらをいつ使うか

保全方式 定義 メリット デメリット
TBM(時間基準保全) 一定期間ごとに交換・点検 計画しやすい・保全作業が予測可能 劣化していなくても交換する無駄が出る
CBM(状態基準保全) 状態の変化を検知して対処 実際の劣化に対応・交換タイミングを最適化 測定・記録のコストがかかる

使い分けの基準(2軸マトリクス)

故障したら困る(重要度 高) 故障してもすぐ対処できる(重要度 低)
状態を測定できる → CBM(予兆保全) → TBM(定期交換)でも可
状態を測定できない → TBM(定期交換)+ 予備品確保 → 故障対応(事後保全)

CBMに向いている設備:電動機・変圧器・高圧ケーブル・計装機器など、絶縁抵抗・電流・振動・温度で状態がわかるもの。


絶縁抵抗トレンド管理

測定条件の統一ルール(5項目)

条件 記録方法 理由
測定時の気温・湿度 温湿度計で記録 絶縁抵抗は湿度で大きく変わる
機器の温度(冷間 or 熱間) 停止後の経過時間を記録 温度が高いと絶縁抵抗は低く出る
測定電圧 低圧: 500V / 高圧: 1000V 電圧が違うと比較できない
測定時間 1分値を基本とする JIS C 1302準拠
測定箇所 端子番号・相(R/S/T-E)を記録 同じ箇所を毎回測る

絶縁抵抗の判定基準

低圧電動機(200V系)

状態 測定値 対応
良好 10 MΩ 以上 通常運転継続
注意 1〜10 MΩ 半年以内に再測定
警戒 0.1〜1 MΩ 月1回測定、早期の交換計画立案
危険 0.1 MΩ 未満 即停止・点検、通電継続禁止

高圧電動機(3.3kV / 6.6kV系)

状態 測定値(1分値) 対応
良好 100 MΩ 以上 通常運転継続
注意 10〜100 MΩ 半年以内に再測定
警戒 1〜10 MΩ 精密診断(PI値・吸収比)を実施
危険 1 MΩ 未満 即停止・精密点検

絶縁抵抗の急落(前回比 1/10 以下)は緊急サイン

値の絶対値より「変化速度」の方が重要。前回測定から短期間で 1/10 以下に急落した場合は、設定値内でも即精密点検を行う。

「そろそろ交換」の判断フロー

flowchart TD
    A[今回の測定値] --> B{前回比で\n1/3以下に低下?}
    B -- YES --> C[急落判定\n精密診断を即実施]
    B -- NO --> D{測定値が\n警戒ゾーンに入ったか?}
    D -- YES --> E[測定頻度を\n年1回 → 月1回に増やす]
    D -- NO --> F{3年連続で\n低下トレンドか?}
    F -- YES --> G[次回定修での\n交換を計画に入れる]
    F -- NO --> H[通常のTBMサイクルで継続]

電力デマンドデータから読む設備劣化

モーター負荷電流の長期トレンド

劣化メカニズム別の電流変化パターン

劣化原因 電流の変化 追加確認事項
軸受け劣化 漸増(定格比 105〜110% 以上) 振動・温度の同時確認
負荷の増加(設備側) 漸増 プロセス量・ポンプ揚程の確認
電圧低下(電源側) 増加 端子電圧の確認
巻線劣化(短絡) 3相不平衡が拡大 相電流の差が 5% 以上で精密診断

判定基準

  • 定格電流比 105% → 注意域(月1回監視)
  • 定格電流比 110% → 警戒域(週1回監視、早期点検計画)
  • 定格電流比 115% 以上 → 危険域(即精密点検)

異常なデマンドピークの解釈

パターン 判断方法 次のアクション
大型モーターの起動電流 起動時刻と重なる 起動タイミングの分散を検討
設備の劣化による効率低下 生産量が変わらずデマンドが増加 該当設備の負荷電流を測定
インバータ設定ミス 特定インバータ稼働中に増加 出力・周波数設定を確認
別ラインの起動スケジュール変更 生産計画変更と時期が一致 製造課に確認

振動・温度による状態監視

簡易CBMで使えるツール

ツール 測定対象 価格帯 判断できること
クランプメータ 負荷電流 3〜10万円 モーター劣化・過負荷
放射温度計 軸受け温度 1〜3万円 軸受け劣化・潤滑不良
振動計(簡易) 振動速度 mm/s 5〜20万円 軸受け劣化・アンバランス
絶縁抵抗計 絶縁抵抗 MΩ 3〜10万円 絶縁劣化・汚損

振動速度の判定基準(ISO 10816準拠)

小型機械(15kW以下の電動機)の目安:

振動速度(RMS) 状態 対応
2.3 mm/s 以下 良好 継続使用
2.3〜4.5 mm/s 注意 次回定修で点検
4.5〜7.1 mm/s 警戒 早期精密診断
7.1 mm/s 超 危険 即停止・点検

温度判定の測定箇所と基準

測定箇所 警告温度 危険温度
電動機軸受け(外面) 70°C 90°C
インバータ放熱フィン 60°C 80°C
変圧器外箱 60°C 80°C
ブレーカー端子 55°C 75°C

放射温度計は「同じ設備を同じ角度で」測る習慣を作る

同じ条件で測ることで「前回より○°C上昇」という比較が意味を持つ。測定箇所の写真と共に記録すると比較しやすい。


CBM実装ステップ(ゼロからの始め方)

Step 1:対象機器の選定

機器 重要度 測定可否 優先度
主要ライン駆動モーター 高(ライン停止) → CBM最優先
高圧変圧器 高(全停電) → CBM最優先
非常用発電機 高(停電時バックアップ) → CBM優先
照明用安定器 困難 → TBM(寿命交換)

Step 2:記録システムの作り方(Excelで十分)

最低限必要な列:

設備名 | 測定日 | 気温 | 湿度 | 絶縁抵抗(MΩ) | 負荷電流(A) | 振動(mm/s) | 軸受温度(°C) | 判定 | 特記事項

運用のコツ

  • 月1回の測定日を固定する(例:毎月第1月曜日の午前中)
  • 前回値との比較欄を追加し、変化率を自動計算する
  • 警告値を超えたセルを赤くなる条件付き書式を設定する

Step 3:生成AIを活用したトレンド分析

ExcelデータをChatGPT/ClaudeにコピーしてAI分析を活用する具体的な指示例:

指示例1: 絶縁抵抗の急落・継続低下トレンドの特定
「以下の絶縁抵抗データを分析し、警戒が必要な設備を特定してください。
急落(前回比 1/3 以下)と継続低下トレンドの両方を確認してください。」

指示例2: 負荷電流異常の抽出
「モーター負荷電流の月次データから、定格電流比で異常なものを抽出し、
劣化の可能性が高い順にランキングしてください。」

指示例3: 振動基準判定
「以下の振動測定データについて、ISO 10816基準で判定し、
精密診断が必要なものを指摘してください。」

CBMはまず「記録を始める」ことが全て

完璧な管理システムを作ろうとして始められないよりも、Excelで月1回の記録を続ける方が100倍価値がある。3年分のデータが溜まると、トレンドが見え始め予兆が掴めるようになる。


関連記事リンク

  • 絶縁管理 — 絶縁抵抗の測定手順・記録様式の詳細はこちら(なぜつながるか:測定値の解釈基準が共通)
  • 寿命管理 — CBMで判定した機器の更新計画立案の方法はこちら(なぜつながるか:予兆検知 → 交換計画の連携)
  • 測定器の使い方 — クランプメータ・放射温度計・振動計の具体的な使い方はこちら(なぜつながるか:CBMの測定ツールを網羅)
  • 保全体系 — TBM/CBM/PDMの全体的な考え方はこちら(なぜつながるか:本記事はCBMの実装詳細、体系理解はこちら)