✅ 最終確認: 2026-04-04
デマンド管理¶
デマンド(最大需要電力)の仕組み¶
デマンドとは、30分間の平均電力(kW)の最大値のことで、電力会社の基本料金の算定基準となる。
計算の仕組み¶
デマンド値 = 30分間の電力量(kWh)× 2(kW換算)
- 1日に48コマ(30分×48)の計測が行われる
- その月の最大値が「最大需要電力」として記録される
- 契約電力 = その月の最大需要電力(または契約上限)
年間管理の仕組み¶
電力会社の契約上、過去12か月の最大デマンド値が契約電力の基準になる場合がある(みなし契約)。 一度デマンドが跳ね上がると、12か月間基本料金に影響し続ける。
デマンド超過は即コスト増
夏季(7〜9月)の午後ピーク時に大型設備が重なって起動すると、その1コマで年間の基本料金が上昇する。 夏季前の設備起動計画の見直しが有効。
デマンド超過のペナルティ¶
基本料金への影響¶
| 状況 | 基本料金への影響 |
|---|---|
| 契約電力以下 | 影響なし |
| 契約電力超過 | 超過分×超過料金(電力会社・契約種別による) |
| 超過が翌月以降も継続 | 契約電力が自動的に引き上げられ基本料金増 |
具体的なコスト感¶
高圧受電(6kV)の場合、基本料金は概ね1,500〜1,800円/kW・月(関東エリア・概算)。 デマンドが100kW超過した場合:
追加コスト ≈ 100kW × 1,600円/月 × 12か月 = 約192万円/年
設備1台の起動タイミングを工夫するだけで100万円超のコスト削減になり得る。
デマンドコントローラの動作原理¶
デマンドコントローラ(デマンドコントロールシステム)は、30分コマの途中でデマンド超過を予測し、自動的に負荷を遮断する装置。
動作フロー¶
30分コマ開始
↓
電力積算値をリアルタイム計測
↓
[予測デマンド = 現在の電力量 ÷ 経過時間 × 60]
↓
予測値 > 警報設定値 → 警報出力(DI/ランプ)
↓
予測値 > 遮断設定値 → 優先順位に従い負荷遮断(DO出力)
↓
30分コマ終了でリセット
設定値の考え方¶
| 設定値 | 目安 | 用途 |
|---|---|---|
| 警報設定値 | 契約電力の90〜95% | 現場への警告・手動対応の起動 |
| 遮断設定値 | 契約電力の95〜98% | 自動負荷遮断の起動 |
設定値は余裕を持たせる
30分コマの後半(残り5分)で急激な負荷増加があると、コントローラが間に合わないことがある。 警報設定値を低めに設定し、早期に手動対応できる体制を作るのが実務的。
デマンド警報時の対応手順¶
警報発生時の即時対応¶
- 時刻確認: 30分コマの何分目かを確認(コマ終了まで時間があるか)
- 現在の電力と予測デマンドを確認: デマンドコントローラの表示を読む
- 負荷遮断可能な設備をリストアップ(下記の優先順位表を参照)
- 操作員・製造課に連絡: 生産への影響を確認してから遮断
- 遮断後にデマンドが低下したことを確認
- 記録: 警報発生日時・原因・対応内容を記録(省エネ法の記録義務にも対応)
負荷遮断の優先順位(例)¶
| 優先度 | 設備種別 | 理由 |
|---|---|---|
| 高(まず切る) | 照明(不要区画)、暖房・冷房の一時停止 | 生産影響なし |
| 中 | 補助ポンプ(予備機)、換気ファン(一時停止可) | 短時間なら許容 |
| 低(慎重に判断) | 主要プロセスポンプ、圧縮機 | 製造課と要相談 |
| 遮断不可 | 安全系・消火設備・制御電源 | 絶対に遮断しない |
製造課への事前合意が重要
遮断可能な設備リストと優先順位は、日常時に製造課と合意・文書化しておく。 緊急時に口頭で相談している時間はない。
大型モーター始動タイミングの分散¶
大型モーター(37kW以上を目安)の起動は瞬間的な電力需要を大きく引き上げる。
問題が起きやすいシナリオ¶
- 朝の一斉起動(8時の生産開始時に複数モーターが同時起動)
- 停電復電後の一斉復電(全設備が同時に起動)
- 設備点検後の一斉立ち上げ
対策¶
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 起動インターロック | 前の設備が定常状態になるまで次を起動しないシーケンス |
| スターデルタ起動 | 始動電流を1/3に低減(ただし起動トルクも低下) |
| インバータ軟起動 | 周波数を徐々に上げて始動電流を抑制(省エネ効果も兼ねる) |
| 起動スケジューリング | 手順書で起動間隔(例:5分おき)を定める |
季節・時間帯別のデマンド傾向分析¶
電力需要の季節パターン(化学工場の典型)¶
| 季節 | 傾向 | 注意点 |
|---|---|---|
| 夏季(7〜9月) | 冷却水ポンプ・空調の増加でデマンド最大 | 午後13〜16時がピーク |
| 冬季(12〜2月) | ヒーター・電熱負荷が増加 | 早朝の暖機運転に注意 |
| 春・秋 | 比較的デマンド低 | 大型設備の試運転はこの時期が有利 |
時間帯別パターン¶
00:00-06:00 低 ────────────
06:00-08:00 急上昇 ↑↑↑(生産開始)
08:00-12:00 高 ══════════
12:00-13:00 やや低下(昼休み停止設備あり)
13:00-17:00 高(夏は最大) ══════════
17:00-21:00 低下傾向 ↓
21:00-24:00 低(夜間運転設備のみ)
PIヒストリアンで過去1年の30分電力量トレンドを表示し、自工場のパターンを把握しておくことを推奨。
関連記事¶
- energy-law.md — 省エネ法の報告義務
- energy-monitoring.md — PIヒストリアンでのエネルギー監視
- vfd-energy.md — インバータによるデマンド低減効果