コンテンツにスキップ
✅ 最終確認: 2026-04-04

リスクアセスメント

実施義務

事業者は機械・設備・化学物質等による危険・健康障害を防止するため、リスクアセスメントの実施が努力義務(労働安全衛生法第28条の2)。

電気作業においては、停電作業・高所作業・高圧設備の点検等でリスクアセスメントを実施することが安全衛生管理の基本。

「努力義務」≠ やらなくていい

化学工場の電気作業は感電・アーク閃光・誤操作による重大災害リスクがある。リスクアセスメントは「実施しないと罰則がある」義務ではなく、「実施しないと自分と仲間が怪我をする」実務行為として捉える。


リスク評価の手順

ステップ1:危険源の特定

作業で接触する可能性のある危険源を全て洗い出す。

電気作業での典型的な危険源

危険源 具体例 結果
充電部への接触 開放した制御盤内の端子・バスバー 感電・死亡
アーク閃光(アークフラッシュ) 高圧部の短絡・誤操作 重度熱傷・失明
誤操作・誤投入 停電中と思い込んだ回路への作業 感電・巻き込まれ
高所からの転落 配電盤上部の作業 骨折・死亡
残留電荷 インバータの平滑コンデンサ 感電
高温部への接触 運転中の変圧器・ケーブル 熱傷

ステップ2:リスク評価

特定した危険源ごとに「影響度」と「発生頻度(可能性)」を評価する。

リスクマトリクス

影響度:軽微 影響度:中程度 影響度:重大 影響度:致命的
頻度:高い 最高
頻度:中程度 中〜高
頻度:低い 最低 中〜高
頻度:まれ 最低 最低

判定の目安

リスクレベル 対応
最高・高 作業を中止し、リスク低減措置なしに作業開始禁止
リスク低減措置を実施してから作業開始
低・最低 通常の安全手順を守って作業可能

ステップ3:リスク低減対策の検討

対策は以下の優先順位で検討する(高位の対策が優先)。

① 除去(危険源そのものをなくす)
   例:使わない動力回路を廃棄撤去

② 代替(危険の少ない方法に変える)
   例:高圧を低圧に降圧して対応

③ 工学的対策(隔離・インターロック等)
   例:開放時に電源が切れるインターロック設置

④ 管理的対策(手順・訓練・許可制度)
   例:LOTO手順の徹底・PTW制度

⑤ 保護具(PPE)
   例:絶縁手袋・顔面シールド(アーク対応)

ステップ4:残留リスクの確認

対策実施後に残るリスクが許容可能かを再評価。許容できない場合は再度ステップ3へ。


電気作業の典型的な危険源と対策

危険源 主なリスク低減対策
充電部への接触 LOTO・検電・絶縁手袋・絶縁シートで充電部を養生
アーク閃光 高圧部はアーク対応PPE(FR服・フェイスシールド)着用
誤操作・誤投入 PTW制度・操作禁止タグ・LOTO
残留電荷(コンデンサ) 電源遮断後の放電確認(インバータは電源OFF後5分以上待機)
高所転落 足場・安全帯の使用・ヘルメット

KY(危険予知)活動との連携

KY活動は、その日の作業を始める前にチームで危険源を話し合う短時間の安全確認活動。リスクアセスメントの「現場版・簡易版」と位置づけられる。

電気作業でのKYシートの書き方

【作業内容】インバータ盤(MCC-101)内部の端子増し締め作業

どんな危険があるか?
① 充電中の端子に触れて感電する
② LOTO解除前に復電し通電する
③ 接続工具が落下して端子短絡・スパーク

どうすれば防げるか?
① 停電確認(検電器使用)・絶縁手袋着用
② 自分の個人錠を掛ける・全員が掛けるまで復電しない
③ 工具には落下防止ひもを取り付ける

今日の重点目標:「LOTO確認してから手を入れる!」

変更管理(MOC)でのリスクアセスメント

設備の変更(配線変更・回路追加・設定変更等)を行う場合は、変更管理(Management of Change: MOC)プロセスの中でリスクアセスメントを実施する。

MOCで電気担当が確認すること

変更内容 電気リスクのチェックポイント
回路の追加・変更 過電流保護の整定値は適切か・幹線容量に余裕があるか
制御システムの変更 インターロックの変更影響・フェイルセーフの確認
電動機の換装 起動電流・制御回路の互換性
防爆エリアの変更 防爆グレードの適合性・点火源になるものがないか
計装ループの変更 ループ電源の容量・アース設計

「小さな変更」も必ずMOCへ

「ちょっとした配線変更」「設定値の変更」も波及リスクがある。特に制御系の変更はプロセス安全に直結するため、影響範囲を過小評価しないこと。


参考