PLC/DCS トラブル¶
30秒まとめ¶
PLC/DCS トラブルは「物理配線 → ネットワーク設定 → ハードウェア → ソフト」の順で切り分ける。プログラム変更を伴う場合は MOC(変更管理)手続きが必須。
通信断の切り分け¶
切り分けフロー¶
PLC/DCS との通信が切れた
├─ 物理配線の確認
│ ├─ ケーブル断線・コネクタ抜け
│ ├─ HUB/スイッチの電源 ON
│ └─ リンクランプ点灯確認
├─ ネットワーク設定の確認
│ ├─ IP アドレスの重複・誤設定
│ ├─ サブネットマスク設定
│ └─ 通信プロトコル設定(Modbus/Ethernet IP 等)
└─ ノイズの確認
├─ ケーブルが動力線と近接していないか
└─ シールドの接地状態
ネットワーク確認コマンド(エンジニアリング PC から)¶
| 確認内容 | コマンド例 |
|---|---|
| 疎通確認 | ping [PLC/DCS の IP アドレス] |
| 接続機器一覧 | arp -a |
| ルーティング確認 | tracert [対象 IP] |
通信断は再起動で解決する場合がある
通信ハードウェアの内部的なフリーズは、電源再投入で解消することがある。 ただし再起動前に「再起動の影響範囲(どのプロセスが止まるか)」を製造担当に確認すること。
I/O 点が読めない¶
確認手順¶
- 現場配線の確認
- ターミナルへの配線接続(緩み・断線)
-
フィールド機器への電源供給(24VDC など)
-
ヒューズ確認
- I/O カード専用ヒューズが断線していないか
-
電源分配盤のヒューズ確認
-
I/O カードのステータス確認
- DCS エンジニアリングツールでカード診断を実施
-
I/O ランプの状態(正常:緑 / 異常:赤・橙)
-
ソフト設定確認
- I/O タグのアドレス設定が実機と一致しているか
- I/O スキャン設定(スキャン周期・有効/無効)
| 症状 | 有力な原因 |
|---|---|
| 特定の1点だけ読めない | 配線断線・ヒューズ断 |
| カード単位で全点読めない | I/O カード故障・ヒューズ断 |
| 全点が 0 になる | カード電源喪失・ラック電源喪失 |
| 値が固定値のまま変化しない | スキャン停止・ソフト設定ミス |
プログラムが意図通り動かない¶
インターロック条件の確認¶
「起動ボタンを押しても動かない」「指令を出しても弁が動かない」などの場合、 インターロック条件(起動許可条件)が成立していない可能性が高い。
確認手順:
- DCS/PLC のラダー・ファンクションブロックでロジックを確認
- 起動許可条件を一つずつリスト化する
- 各条件の入力信号が正しい状態かを確認
- 入力信号の物理値(現場)と DCS 表示が一致しているかを確認
タイムチャートで動作を追う
DCS のトレンド機能でインターロック入力信号と出力指令を同時に記録する。 「何時何分に何が変化したか」をタイムチャートで追うと原因特定が速い。
プログラムの問題箇所を絞り込む¶
- 入力は正常、出力は異常 → ラダー・ロジックの問題
- 入力が異常 → フィールド信号・配線の問題
- 出力は出ているが現場機器が動かない → 出力先の配線・機器の問題
バッテリー低下アラームの対応¶
バッテリー低下アラームは早急に対応する
バッテリーが完全放電すると、停電復帰後にプログラムが消失する機種がある。 アラーム発生後 1〜2 週間以内に交換することを推奨。
バッテリー交換手順¶
- 事前準備
- バッテリー品番を確認(機種・メーカーにより異なる)
- バッテリー交換中にプログラムを保持できるか確認(通電状態での交換が原則)
-
プログラムのバックアップを PC に保存
-
交換作業
- 通電状態のまま交換(電源を切るとプログラムが消える機種あり)
-
交換時間の上限内(通常数分以内)で作業完了
-
交換後確認
- プログラムが正常に動作しているか確認
- バッテリーアラームが消灯したか確認
CPU 異常時の対応(冗長系への切替)¶
冗長 CPU の切替作業はプロセスに直接影響する
切替前に必ず製造担当に報告し、切替のタイミングと影響を確認すること。
冗長 CPU 切替手順(一般的な手順)¶
- 待機系 CPU が正常状態であることを確認
- 製造担当に切替を通知し、実施許可を得る
- 現行系(アクティブ)→ 待機系への切替操作(DCS エンジニアリングツール or ハードスイッチ)
- 切替後、全 I/O が正常に動作しているか確認
- 異常系 CPU を切り離して原因調査(メーカーサポートへ連絡)
定修での DCS 設定変更手順(MOC)¶
DCS 設定変更は必ず MOC(変更管理)手続きを踏む
製造プロセスに影響する設定変更は MOC(Management of Change)が必要。 「少し変えるだけだから」で MOC を省略すると重大事故の原因になる。
MOC の基本フロー¶
変更内容の提案
└→ 影響評価(安全・品質・生産への影響)
└→ 関係者承認(製造・安全・電計担当)
└→ 変更実施(定修中)
└→ 変更後確認試験
└→ 記録・更新(図面・設定バックアップ)
変更後の確認事項¶
- [ ] 変更した設定が意図通りに動作しているか
- [ ] 関連するインターロックが正常に機能しているか
- [ ] DCS の設定バックアップを更新したか
- [ ] 図面(計装図・制御ロジック図)を最新版に更新したか
SIS との違い¶
DCS と SIS は独立したシステム。混同しない
| 項目 | DCS | SIS(安全計装システム) |
|---|---|---|
| 目的 | プロセス制御 | 安全機能(緊急遮断) |
| 故障時の動作 | 可用性を優先 | 安全側(フェールセーフ)を優先 |
| 変更管理 | MOC | SIL 評価を含む厳格な変更管理 |
| テスト | 通常運転中に確認可能 | 定期的な機能テスト(TÜV 等の基準) |
| 電源 | 共通電源から供給可 | 独立した電源系統 |
SIS の設定変更・信号確認には DCS とは別の手続きが必要。 SIS に関わる作業は SIS 担当者・安全担当者を必ず関与させること。