試験直前3日チェックリスト¶
電力科目で直前3日間に確認すべき最重要項目を Day 別に整理する。 「知っているかどうか」ではなく「なぜその式になるか」を口に出して説明できるかを基準とする。
Day 3(試験3日前)— 数値と公式の因果確認¶
水力発電の出力公式¶
P = 9.8QHη の根拠
水の密度ρ = 1,000 kg/m³、重力加速度g = 9.8 m/s²。 水の質量流量 = ρQ [kg/s]、位置エネルギー = mgh なので、 理論水力 P₀ = ρgQH = 1,000 × 9.8 × Q × H [W] = 9.8QH [kW]。 ηは水車・発電機の総合効率。9.8はρgを単位変換した係数であり、丸暗記ではなく物理量の積。
確認事項:
- [ ] Q[m³/s]、H[m]、η(小数)の単位を正しく代入できるか
- [ ] 「9.8はρgから導出される」と説明できるか
- [ ] 揚水時の所要電力 P = 9.8QH / η(ηで割る)と発電時(ηを掛ける)を混同しないか
電圧降下式¶
単相と三相で係数が異なる理由
単相2線式: 往路・復路の2本分の抵抗・リアクタンスが直列に入るため、係数は2。
v = 2I(R cosΦ + X sinΦ) [V]
三相3線式: 線電流は1本分だが、線間電圧は相電圧の√3倍。
v = √3 · I(R cosΦ + X sinΦ) [V]
「なぜ√3か」— 三相の1線あたりの電圧降下は I(RcosΦ + XsinΦ) だが、 これは相電圧の降下。線間電圧は √3 倍なので全体も √3 倍になる。
確認事項:
- [ ] 単相2線式の係数「2」の理由を説明できるか
- [ ] 三相3線式の係数「√3」の理由を説明できるか
- [ ] R・X・Φの定義(R=抵抗、X=リアクタンス、Φ=力率角)を言えるか
電力損失式¶
P_loss = 3I²R のI²とその意味
3本の電線それぞれでジュール熱が発生する。1本あたりの損失は I²R。 3本分の合計が 3I²R。
I²になる理由: ジュール熱は電圧×電流 = (IR)×I = I²R。 電圧に比例するのではなく、電流の2乗に比例する。これは銅損の本質。
確認事項:
- [ ] 「なぜ I² か」をオームの法則から導けるか
- [ ] 3線分あるのに係数「3」と、三相の√3の混同をしていないか
力率改善(コンデンサ進相)¶
コンデンサで線電流が減る理由
有効電力P = √3 · V · I · cosΦ が一定のとき、cosΦが上がると I = P/(√3·V·cosΦ) は下がる。 コンデンサは遅れ電流(誘導性負荷)に対して進み電流を供給し、 電源から見た無効電流を相殺→合成電流(線電流)が減少する。
確認事項:
- [ ] コンデンサが「進み無効電力を供給する」ことを説明できるか
- [ ] 線電流が減ることで電圧降下・電力損失が同時に減る連鎖を説明できるか
Day 2(試験2日前)— 引っかけパターン復習¶
DS→CB操作順序¶
操作順序の誤りは最頻出引っかけ
投入時: DS(断路器)先投入 → CB(遮断器)後投入 開放時: CB先開放 → DS後開放
理由: DSはアーク消弧能力がない。負荷電流が流れている状態でDSを操作すると アークが発生し事故につながる。CBはアーク消弧機能を持つため、 電流を切る操作は必ずCBで行う。
確認事項:
- [ ] 「DSはアーク消弧できない→電流ゼロの状態でのみ操作」を言えるか
- [ ] 投入・開放それぞれの手順を、理由とセットで説明できるか
揚水発電の効率方向¶
発電時と揚水時でηの使い方が逆
発電時: P_出力 = 9.8QHη(η掛け → エネルギーが減る方向) 揚水時: P_入力 = 9.8QH / η(η割り → 入力エネルギーが増える方向)
理由: 発電時は水のエネルギーから損失を引いて電気出力を得る(出力 < 理論値)。 揚水時は必要な位置エネルギー以上のエネルギーを電力で投入しなければならない(入力 > 理論値)。
確認事項:
- [ ] 「入力=必要量/η、出力=投入量×η」という方向性を即答できるか
風力出力の風速指数¶
v²ではなくv³
風力発電の出力 P ∝ v³。
理由: 風の運動エネルギー E = ½mv²。風量(単位時間あたりの空気質量)は m ∝ Av(断面積×風速)。 よって P = E × 流量 ∝ v² × v = v³。
確認事項:
- [ ] 「質量流量がvに比例するため、指数が2から3になる」を説明できるか
- [ ] 風速が2倍になると出力は8倍(2³)になることを即答できるか
変圧器並行運転条件¶
並行運転の3条件
- 巻数比(変圧比)が等しい: 異なると循環電流が流れ、無駄な損失が発生する
- 極性が等しい: 異なると電圧が打ち消しあい短絡状態になる
- 百分率インピーダンスが等しい: 異なると負荷分担が変圧器容量に比例しない
確認事項:
- [ ] 3条件それぞれの理由(満たさないと何が起きるか)を説明できるか
- [ ] 「容量に反比例して電流分担→インピーダンスが小さい方に過電流」を言えるか
Day 1(試験前日)— B問題計算の最終確認¶
送電線路の計算手順¶
電圧降下・電力損失の計算ステップ
- 負荷電流 I を求める: I = P / (√3 · V · cosΦ)
- 電圧降下 v = √3 · I(RcosΦ + XsinΦ) を計算
- 電力損失 P_loss = 3I²R を計算
- 送電端電圧 Vs = Vr + v(受電端基準の場合)
ミスしやすい点: - IはP[W]・V[V]で計算→[A]になっているか単位確認 - sinΦ = √(1 - cos²Φ) を計算し忘れる - 受電端電圧Vrか送電端電圧Vsか問題文をよく読む
確認事項:
- [ ] 上記4ステップを見ずに再現できるか
- [ ] sinΦの計算を素早く行えるか(cos=0.8→sin=0.6、cos=0.6→sin=0.8)
変圧器効率の最大条件¶
鉄損 = 銅損のとき効率最大になる数学的根拠
効率 η = P_out / (P_out + P_i + P_c) - P_i = 鉄損(負荷に無関係・一定) - P_c = 銅損(負荷電流Iの2乗に比例: P_c = P_c0 × (I/I_n)²)
効率最大は「出力あたりの損失」最小化。負荷率 m を変数に、損失/出力 ∝ P_i/m + m·P_cn を最小化する。 2項の積 P_i·P_cn は m によらず一定なので、AM-GM不等式より P_i/m = m·P_cn(鉄損 = 銅損) のとき和が最小。 (「積が一定 → 相等時に和が最小」が正しい適用。「積が最小」ではない)
確認事項:
- [ ] 「鉄損=銅損」が最小損失の必要条件であることを導けるか
- [ ] 最大効率時の負荷率 m = √(P_i / P_cn) を式から導けるか
B問題の配点と時間配分¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 問15〜17の3問(科目内の選択はなく3問すべて解答) |
| 各問配点 | 10点(小問a・bの組合せ) |
| B問題合計 | 30点 |
| 推奨所要時間 | 1問15〜18分(3問で45〜55分) |
| 残り時間活用 | A問題見直し + 途中放棄問の再挑戦 |
当日朝 — 最重要10数値確認表¶
| 項目 | 数値・式 |
|---|---|
| 水力出力 | P = 9.8QHη [kW] |
| 電圧降下(三相) | v = √3·I(RcosΦ + XsinΦ) |
| 電力損失 | P_loss = 3I²R |
| 負荷電流(三相) | I = P/(√3·V·cosΦ) |
| 揚水時入力 | P = 9.8QH/η |
| DS→CB投入順 | DS先 → CB後 |
| CB→DS開放順 | CB先 → DS後 |
| 変圧器最大効率 | 鉄損 = 銅損のとき |
| 風力出力比例 | P ∝ v³ |
| 電線の許容電流 | 温度上昇→抵抗増→許容電流減 |
当日朝の使い方
試験会場入場前、この表を5分で黙読するだけでよい。 新しい知識を詰め込もうとしない。確認のみ。