遮断器・断路器(CB・DS)¶
🎯 このページで得点できる問題
本ページを通読すると、過去問で次の論点に答えられるようになる:
- DS と CB の役割分担:DS=無負荷時の電路分離/CB=負荷電流・事故電流の遮断
- 操作順序:投入時 DS → CB/開放時 CB → DS(逆は焼損)
- 遮断器の種類:OCB・ABB・GCB(GIS)・VCB の 消弧媒体と主流変遷
- GIS の絶縁媒体:SF₆ガス(圧縮空気と混同最多)
- VCB が主流の理由:真空中はアーク維持不可・保守容易・環境負荷小
各論点の詳細は §3 開閉装置の比較・§4 遮断器の種類・§5 消弧物理へ。
🗺️ 棲み分けマップ
本ページ=遮断器・断路器(CB・DS):負荷電流・事故電流を 実際に切る機器の物理・種類・操作順序。
保護継電器:異常を 検出して指令を出す側(OCR・DGR・87 等)。本ページの遮断器に「切れ」を送る装置。
計器用変成器(VT・CT):継電器の入力源となる センサー。3 つは「センサー → 判断 → 切る」の機能順序で繋がる。
開閉装置・保護継電器(hub):3 つを俯瞰する hub。全体フロー・出題実績インデックスはこちら。
1. 直感的理解¶
遮断器の本質: 電力系統で 電流を強制的に止める 機器。負荷電流(正常)も事故電流(異常)も両方遮断できるのが遮断器(CB)、無負荷時の電路分離専用が断路器(DS)。
役割分担表(最重要)¶
| 機器 | アナロジー | 負荷電流遮断 | 事故電流遮断 |
|---|---|---|---|
| 断路器(DS) | 工事用バルブ(電気が来ていないことの確認用) | ✕ | ✕ |
| 遮断器(CB) | 高速シャッター(電気が流れていても切れる) | ○ | ○ |
| 負荷開閉器(LBS) | 通常用バルブ(事故時は使えない) | ○ | ✕ |
操作順序(最頻出論点)¶
- 投入時:DS → CB の順(先にDS閉→その後CB閉)
- 開放時:CB → DS の順(先にCB開→その後DS開)
なぜ DS→CB の順で投入するのか(因果理解)
断路器(DS)は 電流遮断能力を持たない。DS の接触子はアーク消弧機能を持たないため、電流が流れた状態で開放するとアーク放電が持続し機器を破損する。
投入時:まず DS を閉じて回路を形成し、その後 CB を閉じる。電流は CB が入った瞬間から流れ始めるため、DS はゼロ電流の状態で操作できる。
開放時:先に CB を開いて電流をゼロにしてから DS を開く。逆にすると DS がアーク電流を遮断しようとして焼損する。
5 秒で思い出す: 「入は D→C・切は C→D」と覚える(投入=DSが先・開放=CBが先)。
2. 設備を歩く¶
系統内の配置¶
graph LR
A[電力系統] --> DS1[断路器 DS]
DS1 --> CB[遮断器 CB]
CB --> DS2[断路器 DS]
DS2 --> B[負荷側]
OCR[OCR 等継電器] -->|トリップ指令| CB
style CB fill:#d32f2f,color:#fff
style DS1 fill:#1976d2,color:#fff
style DS2 fill:#1976d2,color:#fff
CB の前後に DS を配置するのが標準。保守時には CB を開放してから両端の DS を開き、保守区間を完全に系統から切り離す。
遮断器の物理構造(共通)¶
graph TD
A[トリップ指令] --> B[操作機構<br/>バネ/油圧/電磁]
B --> C[接触子 開離]
C --> D[アーク発生]
D --> E[消弧媒体で消弧<br/>油/空気/SF6/真空]
E --> F[電流遮断完了]
接触子が開離した瞬間に アーク が発生する。これをどう消弧するかで遮断器の種類が決まる(§4)。
3. 開閉装置の比較表(最重要)¶
| 機器 | 略称 | 負荷電流遮断 | 事故電流遮断 | 機能 | 用途・特記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 断路器 | DS | × | × | 無負荷時のみ開放可能 | 保守・点検時の電路分離 |
| 遮断器 | CB | ○ | ○ | 負荷電流・事故電流の両方遮断 | 系統保護の中心機器 |
| 負荷開閉器 | LBS | ○ | × | 負荷電流は開放可能 | 事故電流は遮断不可 |
| 高圧交流負荷開閉器 | PAS | ○ | × | 柱上設置 | 高圧需要家の引込口 |
| 地絡継電器付き開閉器 | UGS | ○ | × | 地絡検出機能内蔵 | 地中線引込・波及事故防止 |
【頻出引っかけ】断路器(DS)の誤操作
「断路器は電流を遮断できる」→ 誤り。断路器には電流遮断能力がない。 負荷電流が流れた状態で DS を開放するとアーク放電が発生し、機器破損・感電の危険がある。 必ず CB で電流を遮断してから DS を操作すること。試験では「断路器で事故電流を遮断した」という記述は誤り。
LBS・PAS・UGS は「事故電流は切れない」点で共通
LBS・PAS・UGS は 負荷電流は開放できる が 事故電流は遮断不可。事故電流は CB に任せる構成が前提。 UGS は地絡検出機能を内蔵するが、検出後に遮断するのではなく 波及事故防止のため自家用引込を切り離す という役割(地絡電流そのものを切るのは系統側の CB)。
4. 遮断器の種類比較¶
| 種類 | 略称 | 消弧媒体 | 特徴 | 主な用途 | 主流度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 油遮断器 | OCB | 絶縁油 | 旧来型・火災リスクあり | 既存設備の一部に残存 | × 旧式 |
| 空気遮断器 | ABB | 圧縮空気 | 騒音大・大型。※ACB(気中遮断器・低圧用、大気中で消弧)とは別物 | 大容量変電所(旧来型) | × 旧式 |
| ガス遮断器 | GCB | SF₆ガス | 絶縁性能が高い・小型化可能。GCBを内蔵した一体型設備がGIS | 都市型変電所・GIS | ○ 主流 |
| 真空遮断器 | VCB | 真空 | 保守容易・環境負荷小・小型 | 変電所・工場の主流 | ◎ 主流 |
主流変遷の歴史(背景理解)¶
OCB(戦前〜1970年代)→ ABB(〜1980年代)→ GCB/VCB(1990年代〜現在)の順で主流が移行。理由は 消弧性能・小型化・環境負荷 の3軸。
5. 消弧物理(GIS・VCB が主流になった理由)¶
VCB(真空遮断器)
真空中では気体分子がないためアークを維持できず、電流がゼロになる瞬間に消弧する。保守が少なく、油も不要で環境負荷が小さい。接触子の摩耗も小さく、開閉寿命が長い。
GIS(ガス絶縁開閉装置)
SF₆ガスは空気の約 3倍の絶縁耐力を持つ。高絶縁性により機器をコンパクト化でき、都市部の狭い敷地に建設できる。CB・DS・LA(避雷器)等を1つの金属容器に収めた 一体型設備 で、保守時の手間が大幅に削減される。
【頻出引っかけ】GIS の絶縁媒体
「GIS は圧縮空気を絶縁媒体に使用する」→ 誤り。GIS は SF₆(六フッ化硫黄)ガス を使用。圧縮空気を使用するのは 空気遮断器(ABB)。混同最多。
SF₆ガスの環境問題
SF₆は 温室効果が CO₂ の約 23,500 倍(IPCC 第5次評価 AR5・GWP100)と非常に高い。漏洩防止・回収・再使用の管理が国際的に厳格化されている。試験では直接問われにくいが、近年の論点として頭の片隅に。
5.5 解法パターン¶
解法パターン①:DS と CB の操作順序を選ぶ(R05下問8型)¶
典型問題:「GIS に使用される断路器と遮断器について、停電作業時の操作順序として正しいものを選べ」
判別基準
| 場面 | 正解 | 根拠 |
|---|---|---|
| 投入時 | DS → CB | DS が無電流で操作される(電流は CB が入った瞬間から流れる) |
| 開放時 | CB → DS | CB で電流ゼロにしてから DS を開く(DS はアーク消弧能力なし) |
→ 「入は D→C・切は C→D」を 5 秒で書き出してから選択肢と照合。逆順序の選択肢は DS焼損 につながる NG パターン。
解法パターン②:遮断器の種類と消弧媒体を結びつける(R03問8・R06下問8型)¶
典型問題:「次の遮断器と消弧媒体の組合せのうち、誤っているものを選べ」
判別マトリクス
| 略称 | 消弧媒体 | 主流度 | 引っかけ筆頭 |
|---|---|---|---|
| OCB | 絶縁油 | × 旧式 | 「OCB は油で絶縁する」→ 正(消弧も絶縁も油) |
| ABB | 圧縮空気 | × 旧式 | 「ABB は SF₆」→ 誤(GCB と取り違え最多) |
| GCB | SF₆ガス | ○ 主流 | 「GIS は圧縮空気で絶縁」→ 誤(GISはSF₆。ABB と取り違え) |
| VCB | 真空 | ◎ 主流 | 「VCB は SF₆で消弧」→ 誤(真空中で電流ゼロ点消弧) |
→ 絶縁媒体と消弧媒体は同じか? という別軸の引っかけも頻出。GIS は SF₆ガスが 絶縁・消弧の両方を担う。
解法パターン③:開閉機器の遮断能力を仕分ける(R02問8型)¶
典型問題:「次の開閉機器のうち、事故電流を遮断できるものを選べ」
判別基準(負荷電流 / 事故電流の2軸)
| 機器 | 負荷電流遮断 | 事故電流遮断 | 用途の決め手 |
|---|---|---|---|
| DS | × | × | 保守時の電路分離(無電流で操作) |
| CB | ○ | ○ | 系統保護の中心(事故電流遮断が役割) |
| LBS | ○ | × | 常時の負荷開閉のみ(事故時は CB に任せる) |
| PAS | ○ | × | 高圧需要家引込(柱上設置) |
| UGS | ○ | × | 地中線引込(地絡検出機能あり・遮断は系統側 CB) |
→ 事故電流が切れるのは CB だけ。LBS/PAS/UGS は「負荷電流のみ」と即答できれば 90% 正解。
解法パターン④:変電所機器の特徴を総合判別(R07下問8・R05上問8型)¶
典型問題:「変電所で使用する機器の特徴に関する記述として、誤っているものを選べ」
判別チェックリスト
- 遮断器 = 負荷・事故電流の両方を切る/断路器 = 無電流時のみ操作可能(→ §3 比較表)
- VCB = 真空中の電流ゼロ点消弧・保守容易/GIS = SF₆ガスでコンパクト化(→ §4 種類比較)
- 避雷器(LA) = サージ電圧吸収・常時 OFF(GIS には内蔵される)
- 計器用変成器 = CT は直列・VT は並列(→ 計器用変成器)
→ 4 つの基準のいずれかに違反する選択肢が「誤り」。操作順序の逆転と 消弧媒体の取り違えが出題の 7 割。
6. 引っかけパターン¶
① 断路器の遮断能力¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「断路器は事故電流を遮断できる」 | 誤:断路器には電流遮断能力なし |
| 「保守時にまず断路器を開いてから遮断器を開く」 | 誤:先に CB を開く(電流を切ってから DS) |
② 操作順序の取り違え¶
| 場面 | 正しい順序 | よくある誤り |
|---|---|---|
| 投入時 | DS → CB | CB → DS(DS がゼロ電流投入できない) |
| 開放時 | CB → DS | DS → CB(DS が事故電流を切ろうとして焼損) |
③ GIS の絶縁媒体¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「GIS は圧縮空気で絶縁する」 | 誤:SF₆ガスで絶縁。圧縮空気は ABB |
④ VCB の消弧媒体¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「VCB は SF₆ガスで消弧する」 | 誤:真空で消弧。SF₆ガスは GCB |
7. 正誤判定の急所¶
| 文章 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 「断路器は事故電流を遮断できる」 | 誤 | 断路器は電流遮断能力なし。遮断器(CB)が担当 |
| 「真空遮断器の消弧媒体は真空である」 | 正 | VCB は真空中でアークを消弧 |
| 「遮断器投入時は CB→DS の順で操作する」 | 誤 | 投入時は DS→CB。開放時が CB→DS |
| 「GIS は圧縮空気を絶縁媒体に使用する」 | 誤 | GIS は SF₆(六フッ化硫黄)ガスを使用 |
| 「LBS(負荷開閉器)は事故電流も遮断できる」 | 誤 | 負荷電流のみ。事故電流は CB が必要 |
| 「PAS は高圧需要家の引込口に設置される」 | 正 | 柱上設置の高圧交流負荷開閉器 |
| 「UGS は地絡電流そのものを系統から遮断する」 | 誤 | 地絡検出機能内蔵だが、波及事故防止で自家用を切り離す役割 |
| 「VCB は保守性が高く環境負荷が小さい」 | 正 | 真空シール構造・油不要・SF₆不要 |
8. 出題実績¶
📚 横断一覧: 分野別一覧(該当分野) / 年度別一覧
電験王実題で照合した令和の遮断器・断路器・GIS の出題(問番号は年により変動):
| 年度 | 問 | 出題内容 | 問題タイプ | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| R07上 | 問6 | ガス絶縁開閉装置(GIS)の特徴 | 論説 | ★☆☆☆☆ |
| R06上 | 問6 | ガス絶縁開閉装置(GIS) | 穴埋 | ★★☆☆☆ |
| R03 | 問8 | 変電所で使用される断路器 | 論説 | ★★☆☆☆ |
| R02 | 問7 | 真空遮断器の特徴及び動作メカニズム | 論説 | ★★☆☆☆ |
| R01 | 問6 | ガス絶縁開閉装置 | 論説 | ★☆☆☆☆ |
詳細解説: 電験王 開閉・保護カテゴリ
R08 予測
遮断器・断路器・GIS は問6または問8に分散して出題される(かつて「問8固定」と言われたが、令和の問8は架空送電が最多)。GIS の絶縁媒体(SF₆)・DS→CB の操作順序・VCB の消弧・断路器の遮断能力のいずれかが穴埋・論説で出る見込み。
関連ページ¶
- 保護継電器 — CB に「切れ」を指令する側(OCR/DGR/87/21)
- 計器用変成器(VT・CT) — 継電器の入力センサー
- 開閉装置・保護継電器(hub) — 3 ページの全体俯瞰・出題実績インデックス
- 変圧器 — 主変圧器周辺の保護・引込