コンデンサの電界と電位差(誘電体挿入)¶
科目について
本テーマは理論科目(静電気)の内容だが、コンデンサ・誘電体・電界の基礎は電力科目のケーブル(静電容量・電界計算)とも直結する。過去問 H17-B 問18 を題材に、誘電体挿入時の電界比と充電電圧の求め方を整理する。
1. 直感的理解¶
本質: 平行板コンデンサに誘電体を挿入すると、電極間は「空気層」と「誘電体層」の直列になる。両層を貫く電気力線(電束)は共通で、電界の大きさは各層の誘電率で決まる。
考え方の3ステップ:
① 電極の電荷 Q から出る電束は共通(電束密度 D が連続)
② 各層の電界 E = D / ε → 誘電率が大きい層ほど電界は弱い
③ 全体の電圧 V = 各層の電界 × 各層の厚さ の合計(直列)
なぜ誘電体中の電界は弱くなるか(因果理解)
電極に与えた電荷 Q は固定。ここから出る電束密度 D = Q/S は空気層でも誘電体層でも同じ値(電束は途中で消えず貫通する)。 電界は \(E = D/\varepsilon\) なので、誘電率 \(\varepsilon = \varepsilon_0\varepsilon_s\) が大きい誘電体中では E が \(1/\varepsilon_s\) に弱まる。 誘電体内部では分極(誘電分極)によって逆向きの電界が生じ、正味の電界を打ち消す向きに働くため——というのが物理的な理由。
2. 例題(H17-B 問18)¶
問題設定¶
- 電極板間隔 \(d_0\) [m]、面積が十分広い平行板空気コンデンサ
- 同形・同面積、厚さ \(d_1\) [m]、比誘電率 \(\varepsilon_s\) の誘電体を挿入
- 電極 A・B に \(+Q\) [C]、\(-Q\) [C] を与えた
- 初期電荷は零、端効果は無視、空気の比誘電率は 1
A +Q ┌─────────────────────┐ ┐
│ 空気(εs = 1.0) │ │ d₀ - d₁ → 電界 E₁
├─────────────────────┤ ┤
│▓▓ 誘電体(εs)▓▓▓▓▓▓│ │ d₁ → 電界 E₂
B -Q └─────────────────────┘ ┘
(a) 空げきの電界 \(E_1\) と誘電体中の電界 \(E_2\) の比 \(E_1/E_2\)¶
電荷 \(Q\) が与えられ、電極間に電位差 \(V\)、電界 \(E_1\)・\(E_2\) が生じたと考える。 電極 A から B へ電気力線が貫通する(端効果無視 → 一様な平等電界)。
電極面積を \(S\)、真空の誘電率を \(\varepsilon_0\) とすると、電束密度 \(D = Q/S\) は両層で共通なので:
したがって:
答え (a):選択肢 (1) \(\varepsilon_s\)
電界の比は誘電率の比そのもの。\(D\) が共通で \(E = D/\varepsilon\) だから、面積 \(S\) も厚さも比には効かない。選択肢に \(d_0, d_1\) が入っているものはすべてダミー(電界比に厚さは無関係)。
(b) 充電電圧 \(V\) の算出¶
与えられた数値:
| 記号 | 値 |
|---|---|
| 電極板間隔 \(d_0\) | \(1.0\times10^{-3}\) m |
| 誘電体の厚さ \(d_1\) | \(0.2\times10^{-3}\) m |
| 比誘電率 \(\varepsilon_s\) | 5.0 |
| 空げきの電界 \(E_1\) | \(7\times10^{4}\) V/m |
手順1:各層の厚さを求める
- 空気層の厚さ = \(d_0 - d_1 = (1.0 - 0.2)\times10^{-3} = 0.8\times10^{-3}\) m
- 誘電体層の厚さ = \(d_1 = 0.2\times10^{-3}\) m
手順2:誘電体中の電界 \(E_2\) を求める((a) の結果を利用)
手順3:電圧は各層の「電界 × 厚さ」の和(直列だから加算)
答え (b):選択肢 (4) 58.8 [V]
3. 頻出計算パターン(誘電体直列コンデンサ)¶
公式¶
電束密度(共通): D = Q / S
各層の電界: E = D / ε = Q / (ε₀ εs S)
電界の比: E₁ / E₂ = εs₂ / εs₁ (厚さ無関係)
全電圧(直列): V = E₁ d₁ + E₂ d₂ + … (各層の電界×厚さの和)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \(D\) | 電束密度(各層で共通) | C/m² |
| \(E\) | 電界の強さ | V/m |
| \(\varepsilon_0\) | 真空の誘電率 | F/m |
| \(\varepsilon_s\) | 比誘電率 | — |
| \(S\) | 電極面積 | m² |
| \(V\) | 電極間電圧 | V |
手順¶
- 「電束密度 \(D=Q/S\) は全層共通」と押さえる(ここが起点)
- 各層の電界 \(E = D/(\varepsilon_0\varepsilon_s)\) → 誘電率が大きい層ほど電界は小さい
- 電界の比を出すときは \(\varepsilon_s\) の比だけ(厚さは無関係)
- 電圧は各層の \(E\times\)(厚さ) を足す(直列なので加算)
4. 引っかけパターン¶
【引っかけ1】電界比に厚さが効くと思わせる
(a) の選択肢には \(\dfrac{\varepsilon_s d_1}{d_0-d_1}\) のように厚さ入りの式が並ぶが、電界比は \(E_1/E_2=\varepsilon_s\) で厚さは無関係。\(D\) が共通で \(E=D/\varepsilon\) という関係を思い出せば即答できる。
【引っかけ2】電圧を「電界×全体間隔」で計算してしまう
\(V = E_1 \times d_0\) としてしまうミス(\(= 70.0\) V = 選択肢(2) のダミー)。 誘電体層は電界が弱い(\(E_2 = E_1/\varepsilon_s\))ので、層ごとに \(E\times\)厚さ を分けて足す必要がある。全体を \(E_1\) で通すと過大評価になる。
【引っかけ3】誘電体中の電界を強いと勘違い
「誘電率が大きい=電界も強い」は逆。\(D\) 一定のもとでは \(E=D/\varepsilon\) なので、誘電率が大きいほど電界は弱い。電圧配分も誘電体層の方が小さくなる。
5. 電力科目とのつながり¶
- 電力ケーブルの電界計算:CVケーブルの絶縁体(XLPE)中の電界分布も「電束密度連続 → \(E=D/\varepsilon\)」の同じ考え方。導体表面で電界最大になる。
- 絶縁材料の比誘電率:電気材料 で扱う絶縁材料の \(\varepsilon_s\) が、コンデンサ・ケーブルの静電容量や電界配分を決める。
- 静電容量の合成:空気層と誘電体層は直列コンデンサとして \(\dfrac{1}{C}=\dfrac{1}{C_1}+\dfrac{1}{C_2}\) で合成できる(別解)。
📊 出題実績¶
| 年度 | 問 | 出題内容 | 問題タイプ | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| H17 | B問18 | 誘電体挿入時の電界比および充電電圧の算出 | 計算 | ★★★☆☆ |