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地中送電・電力ケーブル


1. 直感的理解

地中送電の本質: 架空送電線を地中に埋めたもの。都市部・海底・景観保護が必要な地域で使用される。架空送電線より安全性・信頼性が高い反面、建設費が高い・放熱が困難・充電電流が大きいという課題がある。

架空送電線: 空気中を電線が通る → 放熱は空気に頼る
地中ケーブル: 土中に埋設    → 放熱は土に頼る(放熱困難)

地中ケーブルの3大問題(なぜか)

  1. コスト高: 掘削工事・専用管路・マンホール設置が必要。架空の5〜10倍以上。
  2. 放熱困難: 架空線は周囲空気への対流・放射で自然冷却されるが、地中ケーブルは土壌への熱伝導のみで放熱経路の熱抵抗が大きい。さらに誘電損による発熱も加わるため、許容電流が架空線より制限される。
  3. 充電電流大: 導体と遮へい層の間隔が数mm〜数十mmと非常に小さく、静電容量Cが架空線に比べ桁違いに大きい。充電電流は \(I_c = \omega CV\) なので、Cが大きいと充電電流も大きくなり、長距離ほど顕著になる。

2. 設備を歩く

CVケーブルの断面構造

graph LR
    A["① 導体(銅またはアルミ)"] --> B["② 内部半導電層"]
    B --> C["③ 絶縁体(XLPE 架橋ポリエチレン)"]
    C --> D["④ 外部半導電層"]
    D --> E["⑤ 遮へい(銅テープ・銅線)"]
    E --> F["⑥ シース(ビニルまたはポリエチレン)"]
層 名称 役割
① 導体 電流を流す主体。銅またはアルミ
② 内部半導電層 導体表面の電界を均一化(電界集中を防ぐ)
③ 絶縁体(XLPE) 電気絶縁の主体。架橋ポリエチレン
④ 外部半導電層 絶縁体外面の電界を均一化
⑤ 遮へい 漏れ電流・誘導電流を流す。接地する
⑥ シース 機械的保護・防水

半導電層が上下にある理由(因果理解)

導体は断面形状が完全な真円でないため、表面に微小な凹凸がある。導体の角や凸部には電界が集中する(尖った導体では電荷密度が高くなるというガウスの法則の帰結)。
内部半導電層は導体と絶縁体の間に均一な電位面を作る「緩衝層」として機能し、電界の集中を防いで絶縁体への局所的なストレスを抑制する。外部半導電層も絶縁体外面の電界を均一化し、遮へい層との界面での電界集中を防ぐ。両側に設けることで絶縁体全体に均一な電界が印加され、絶縁寿命が向上する。


3. 架空送電 vs 地中送電 比較表(最重要)

項目 架空送電線 地中ケーブル
建設費 低い 高い(5〜10倍以上)
保守費 中(定期点検・除草等) 低い(埋設後は手がかからない)
信頼性・事故頻度 低(雷・風雪・塩害の影響大) 高(外部環境の影響小)
事故復旧時間 短い(目視で発見しやすい) 長い(掘削が必要)
充電電流 小さい 大きい(静電容量Cが大)
インダクタンスL 大きい 小さい(導体間距離が小さい)
静電容量C 小さい 大きい(導体間距離が小さい)
フェランチ効果の発生しやすさ 比較的少ない 発生しやすい(Cが大のため)
熱放散 容易(空気冷却) 困難(土壌依存)
環境影響・景観 鉄塔が目立つ・土地が使えない 地中化で景観保護・土地は使える

4. ケーブルの種類比較表

種類 絶縁材料 誘電正接 tanδ 最高使用温度 特徴 主な用途
OFケーブル(油浸紙絶縁油入) 浸油紙 大きい(0.002〜0.004) 75〜85℃ 油圧管理が必要・漏油リスク 古い高圧・超高圧幹線
CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース) XLPE 小さい(0.0003〜0.001) 90℃ 軽量・油不要・現在の主流 高圧・特別高圧幹線
CVTケーブル XLPE(単心3条) 小さい 90℃ 単心ケーブルを3本撚り合わせ 中圧配電・大電流回路

CVがOFより誘電損が少ない理由(因果理解)

誘電損 \(P_d = \omega C V^2 \tan\delta\) の式から、絶縁材料の誘電正接 \(\tan\delta\) が誘電損を左右する。
OFケーブルの絶縁体(浸油紙)は油を含む有機紙であり、双極子(分子の正負の電荷の中心がずれた構造)が交番電界で向きを変えるたびにエネルギーを消費する。この分子レベルの摩擦が誘電損の正体。
XLPEは分子構造が均一で双極子が少なく、 \(\tan\delta\) が桁違いに小さい。したがって同じ電圧・静電容量でも誘電損がOFケーブルの数分の一になる。

OF vs CV の核心比較:

  • 誘電正接 tanδ: OFはCVより大きい → 誘電損が多い
  • 最高使用温度: CV(90℃)> OF(75〜85℃)→ CVの方が許容電流が大きい
  • 維持管理: OFは油圧管理システムが必要(油が漏れると絶縁破壊)。CVは不要

5. 公式マップ

レイヤーA: 充電電流と誘電損

充電電流の公式

\[I_c = \omega C V \quad [\text{A}]\]
  • \(\omega = 2\pi f\)(角周波数)
  • \(C\): ケーブルの静電容量 [F]
  • \(V\): 相電圧 [V](三相の場合は線間電圧 ÷ √3)

なぜこの式か: ケーブルはコンデンサとして動作する。瞬時電圧 \(v = V_m\sin\omega t\) を印加すると電荷 \(q = Cv\) が充電され、電流は \(i = dq/dt = \omega C V_m \cos\omega t\)。電圧・電流をともに実効値で表せば \(I_c = \omega C V\) がそのまま実効値(\(V=V_m/\sqrt2\)、\(I_c\) も最大値の \(1/\sqrt2\) なので係数が相殺する)。したがって上式に相電圧の実効値を入れれば充電電流の実効値が直接得られる。

誘電損の公式

\[P_d = \omega C V^2 \tan\delta \quad [\text{W}]\]
  • \(\tan\delta\): 誘電正接(絶縁材料の損失特性)
  • OFより CVの方が \(\tan\delta\) が小さい → 誘電損が少ない

なぜこの式か: 理想コンデンサでは電流は電圧より90°進み、有効電力はゼロ。実際の絶縁体では損失角δだけ90°からずれる。損失電力は \(P = VI\sin\delta\)(\(I\)は充電電流 \(\omega CV\))= \(V \cdot \omega CV \cdot \sin\delta\)。\(\tan\delta = \sin\delta/\cos\delta \approx \sin\delta\)(δが小さい場合)として整理すると \(P_d = \omega CV^2\tan\delta\) になる。

レイヤーB: 静電容量が大きい理由

架空送電線: 導体間(または導体と大地間)の距離が大きい(数m〜数十m)→ C は小さい

地中ケーブル: 絶縁層が薄く、導体と遮へい層の距離が小さい(数mm〜数十mm)→ C は大きい

\[C = \frac{2\pi\varepsilon}{\ln(D/d)} \quad [\text{F/m}]\]
  • \(D\): 外側導体(遮へい)径
  • \(d\): 内側導体径
  • \(D/d\) が小さい(距離が近い)ほど C が大きくなる

6. 解法パターン(充電電流の計算)

パターン①: 充電電流 \(I_c = \omega CV\)

見分け方: 「地中ケーブル」「静電容量 ○ μF/km」「充電電流」のキーワードが揃っている

手順:

Step 1: ω = 2πf を計算(f = 50Hz なら ω = 2π × 50 = 314 rad/s)
Step 2: Ic = ωCV に代入
Step 3: 単位確認(C の単位が μF/km なら線路長を掛けて F に換算してから計算)

例題: 地中ケーブル(線路長 10km、静電容量 0.2μF/km、66kV系統、f = 50Hz)の充電電流は?

\[C_{total} = 0.2 \times 10^{-6} \times 10 = 2 \times 10^{-6} \text{ F}\]
\[\omega = 2\pi \times 50 = 314 \text{ rad/s}\]

三相では相電圧 \(V = 66{,}000 / \sqrt{3} = 38{,}105\) V を使う(相電圧×Cで各相の充電電流)

\[I_c = 314 \times 2 \times 10^{-6} \times 38{,}105 \approx 23.9 \text{ A}\]

7. 引っかけパターン

【頻出引っかけ1】LとCの大小が架空と逆

「地中ケーブルは架空送電線よりインダクタンスLが大きく、静電容量Cが小さい」→ 誤り。
- L(インダクタンス): 小さい(導体間距離が小さいため磁束が少ない)
- C(静電容量): 大きい(導体間距離が小さいため静電容量が大きい)
架空線とまったく逆になる点が試験で狙われる。

【頻出引っかけ2】フェランチ効果の発生しやすさ

「フェランチ効果は架空送電線の方が起きやすい」→ 誤り。
フェランチ効果(受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象)は静電容量Cが大きいほど発生しやすい。地中ケーブルはCが架空線より桁違いに大きいため、軽負荷・無負荷時に充電電流による進み無効電力が大きくなり、フェランチ効果が顕著になる。

【頻出引っかけ3】CVとOFの最高使用温度

「CVケーブルの最高使用温度はOFケーブルより低い」→ 誤り。
CVケーブル(XLPE絶縁)の最高使用温度は90℃。OFケーブル(浸油紙絶縁)の75〜85℃より高い。だからCVケーブルの方が許容電流が大きく取れる。

【頻出引っかけ4】事故復旧時間

「地中ケーブルの事故復旧は架空送電線より短時間で済む」→ 誤り。
信頼性(事故頻度)は地中の方が高いが、一度事故が起きると掘削が必要なため復旧時間は長い。信頼性と復旧時間は別の指標であることに注意。


8. 正誤判定の急所

文 判定 解説
地中ケーブルは架空送電線より静電容量が小さい 誤 地中ケーブルは導体間距離が小さいため C が大きい
CVケーブルはOFケーブルより誘電正接が小さく誘電損が少ない 正 XLPEは浸油紙より tanδ が小さい
地中ケーブルの事故復旧は架空送電線より短時間で済む 誤 掘削が必要なため時間がかかる
フェランチ効果は地中ケーブルで発生しやすい 正 静電容量Cが大きく充電電流が多いため
CVケーブルの最高使用温度はOFケーブルより高い 正 CV = 90℃、OF = 75〜85℃
地中ケーブルはインダクタンスが架空送電線より大きい 誤 導体間距離が小さいため L は小さい
地中送電は雷害や風雪の影響を受けにくく信頼性が高い 正 地中に埋設されているため外部環境の影響を受けにくい
充電電流は静電容量と周波数に比例する 正 \(I_c = \omega CV = 2\pi f C V\)(fとCの両方に比例)

📊 出題実績

📚 横断一覧: 分野別一覧(該当分野) / 年度別一覧

年度 問 出題内容 問題タイプ 難易度
R07下 問10 地中ケーブルの付設方法の違いと特徴 論説 ★★★☆☆
R07上 問10 地中送電線路に使用される各種電力ケーブル 論説 ★★★☆☆
R06下 問10 三相3線式地中電線路の無負荷充電容量 計算 ★★★★☆
R06上 問10 マーレーループ法による故障点位置標定 穴埋 ★★★☆☆
R05下 問10 地中送電線路の特徴や布設方法 論説 ★★★☆☆
R05上 問10 地中送電線路の線路定数 論説 ★★★☆☆
R04下 問10 地中送配電線の各布設方式の特徴 論説 ★★★★☆
R04上 問11 地中送電線路の故障点位置標定 論説 ★★★☆☆
R03 問11 地中送電線路の電力ケーブルの許容電流 論説 ★★★☆☆
R02 問11 架空送電線路と比較した地中送電線路の特徴 論説 ★★☆☆☆
R01 問11 電力ケーブルの布設方式 論説 ★★★☆☆

出題傾向まとめ: 地中送電は電力科目の 問10〜11 枠 で継続出題される定番テーマ。架空送電線との比較(建設費・保守・L/C大小・フェランチ効果)、各種電力ケーブル(CV・OF・CVT)の特徴比較(誘電正接・最高使用温度)、布設方式の違い、マーレーループ法による故障点位置標定、充電電流 \(I_c = \omega CV\) の計算などが繰り返し問われる。フェランチ効果の発生しやすさは地中>架空の理由まで説明できるようにすること。

詳細解説: 電験王 地中送電カテゴリ


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