コンテンツにスキップ

☢️ 原子力発電

核分裂の連鎖反応で熱を発生→蒸気→タービン。「燃料・制御・冷却」の3点が試験の核心。


🧠 直感的理解

火力発電との違いは「熱源が燃焼ではなく核分裂」という1点だけ。それ以外(蒸気→タービン→発電機)は同じ。

核燃料(核分裂)→ 熱エネルギー(冷却材)→ 蒸気(蒸気発生器 or 直接)→ タービン→ 発電機

試験の核心3点:

項目 火力との比較
燃料 化石燃料ではなく 核燃料(濃縮ウラン)
出力制御 燃料調整ではなく 制御棒(挿入で減少・引抜で増加)
冷却 崩壊熱があるため 冷却は停止後も必要

🏭 設備を歩く

graph LR
    A[核燃料集合体] -->|核分裂熱| B[原子炉圧力容器]

    subgraph PWR一次系
        B -->|高温高圧水| C[蒸気発生器]
        C -->|熱交換後| B
    end

    subgraph BWR直接サイクル
        B -->|蒸気直接| D2[タービン]
    end

    C -->|二次側蒸気| D[タービン]
    D -->|排気| E[復水器]
    D2 -->|排気| E
    E -->|給水| F[給水ポンプ]
    F --> B
    D --> G[発電機]
    D2 --> G

主要機器一覧

機器 役割 備考
核燃料集合体 核分裂反応で熱を発生 UO₂ペレットを燃料棒に封入
減速材 高速中性子を熱中性子に減速 軽水・重水・黒鉛
制御棒 中性子を吸収して出力制御 ハフニウム・ホウ素・カドミウム
冷却材 核分裂熱を外部へ輸送 軽水・重水・液体ナトリウム
圧力容器 炉心を収納・高圧維持 鋼製・数十cmの厚み
格納容器 放射性物質の外部漏洩防止 最終バリア

🔬 原子炉の種類比較表(最重要)

項目 PWR(加圧水型) BWR(沸騰水型) CANDU(重水型) 高速増殖炉
減速材 軽水 軽水 重水 なし(高速中性子利用)
冷却材 軽水 軽水 重水 液体ナトリウム
冷却材圧力 約155 atm(高圧) 約70 atm(中圧) 約100 atm 低圧
蒸気発生方法 蒸気発生器(二次側) 炉内で直接沸騰 蒸気発生器(二次側) 蒸気発生器
冷却水系統 2系統(一次・二次) 1系統(直接) 2系統 2系統以上
国内主流か ○(関西電力等) ○(東京電力等) ×(国内未使用) △(もんじゅは廃炉)
燃料濃縮度 低濃縮ウラン(2〜5%) 低濃縮ウラン(2〜5%) 天然ウラン(0.7%) Pu富化燃料(MOX:プルトニウム・ウラン混合酸化物)
特徴 安全性高・蒸気発生器必要 構造シンプル・放射性蒸気あり 濃縮不要・燃料費安 プルトニウム増殖可能

♻️ 核燃料サイクルの要点

ウラン採掘 → 精錬 → 転換 → ウラン濃縮(U-235濃度を高める)→ 燃料加工(ペレット→燃料棒→集合体)
→ 原子炉 → 使用済み燃料 → 再処理(Pu抽出)→ MOX燃料 or 廃棄物処理

核反応の基礎

事象 内容
U-235の核分裂 熱中性子を吸収して分裂→大量の熱エネルギーと2〜3個の中性子放出
U-238の変換 中性子を吸収→Pu-239に変換(高速増殖炉の原理)
連鎖反応 分裂で生じた中性子が次の核分裂を引き起こす

燃料構造

ペレット(UO₂焼結体)→ 燃料棒(ジルカロイ被覆管)→ 燃料集合体(数百本束ねたもの)

🧮 公式マップと物理的背景

なぜ原子炉に「4要素」が必要か(因果から理解する)

核燃料(U-235) が核分裂するには、適切なエネルギーの中性子を吸収する必要がある。

  1. 核燃料:U-235 が熱中性子を吸収して分裂 → 熱エネルギー + 2〜3個の高速中性子を放出
  2. 減速材が必要な理由:核分裂で放出される中性子は高速すぎてU-235に吸収されにくい。軽水・黒鉛などの減速材で衝突させて熱中性子(低速)に落とすことで連鎖反応を持続させる
  3. 制御棒が必要な理由:連鎖反応を放置すると増殖が止まらない。ハフニウム・ホウ素・カドミウムなどの中性子吸収断面積が大きい材料で余剰中性子を吸収し、反応速度を制御する
  4. 冷却材が必要な理由:核分裂で発生した熱を外部へ運び出さないと燃料棒が溶融する。また原子炉停止後も放射性崩壊(崩壊熱)が続くため、停止後も冷却継続が必須

重要:原子炉の4要素とその役割

要素 役割 代表的な材料
核燃料 核分裂で熱エネルギーを発生 UO₂(二酸化ウラン)ペレット
減速材 高速中性子→熱中性子に減速 軽水(H₂O)・重水(D₂O)・黒鉛
制御棒 中性子を吸収して出力制御 ハフニウム・ホウ素・カドミウム
冷却材 核分裂熱を外部へ輸送 軽水・重水・液体ナトリウム

軽水炉(PWR・BWR)は軽水が減速材と冷却材を兼ねる。

重要:PWR vs BWR の最重要ポイント

PWR(加圧水型): - 一次冷却水は約155 atmに加圧し、炉内で沸騰させない(液相維持) - 蒸気発生器で一次側の熱を二次側に伝え、二次側で蒸気を発生させてタービンへ - 系統数:2系統(一次+二次)→ タービン側は非放射性

BWR(沸騰水型): - 炉内で直接沸騰させた蒸気をそのままタービンへ送る(直接サイクル) - 系統数:1系統 → タービンを通る蒸気が放射性になる - 構造はシンプルだが、タービン保守時の放射線管理が必要

重要:CANDUが天然ウランを使える理由

通常の軽水炉では減速材の軽水が中性子を一定量吸収するため、連鎖反応を維持するには U-235 を 2〜5% に濃縮する必要がある。一方、重水(D₂O)は軽水と比べて中性子吸収断面積が極めて小さい(吸収率が1/650程度)。そのため余剰中性子が多く残り、天然ウラン(U-235濃度 0.7%)でも臨界を維持できる。

核反応の用語整理表

用語 意味 試験での扱い
臨界 連鎖反応が一定の割合で持続する状態(増倍率k=1) 通常運転の状態
未臨界 連鎖反応が減衰していく状態(k<1) 停止・制御棒挿入時
超臨界 連鎖反応が増加していく状態(k>1) 出力上昇中(制御された状態)※危険ではない
反応度 臨界からのずれを表す量(k-1)/k 制御の指標
熱中性子 減速材で減速された低エネルギー中性子 U-235を効率よく核分裂させる
高速中性子 核分裂直後の高エネルギー中性子 高速増殖炉が利用

🛤️ 解法パターン(核分裂エネルギーの計算)

問4の約半数は計算問題(ウランの核分裂エネルギーと石炭・重油の発熱量比較、燃料消費量)。以下の3ステップで全パターンに対応できる。

重要公式:核分裂エネルギー

\[E = \Delta m c^2\]
  • \(\Delta m\):質量欠損 [kg](核分裂で失われる質量。U-235では分裂質量の約0.09%)
  • \(c\):光速 = 3.0×10⁸ m/s
  • U-235原子1個の核分裂 ≈ 200 MeV = 3.2×10⁻¹¹ J(1 eV = 1.602×10⁻¹⁹ J)

基準値:U-235 1gが完全核分裂すると

\[E = \frac{1}{235} \times 6.02 \times 10^{23} \times 3.2 \times 10^{-11} \approx 8.2 \times 10^{10} \,\mathrm{J}\]

(1 g のU-235の原子数 = \(\frac{1\,\mathrm{g}}{235\,\mathrm{g/mol}} \times 6.02\times10^{23} \approx 2.56\times10^{21}\) 個。これに1核分裂 \(3.2\times10^{-11}\) J を掛ける)

(質量欠損で計算しても同じ:\(E = 1\times10^{-3} \times 0.0009 \times (3\times10^8)^2 \approx 8.1\times10^{10}\) J)

燃料 発熱量 U-235 1gとの比較
U-235 約8.2×10¹⁰ J/g 基準
石炭 約2.7×10⁷ J/kg U-235 1g ≒ 石炭 約3 t
重油 約4.4×10⁷ J/kg U-235 1g ≒ 重油 約1.9 t(約2 kL弱)

手順(燃料消費量を問われたら)

  1. 熱入力を求める:\(Q = \dfrac{P_{電気}}{\eta} \times t\)(電気出力を熱効率で割って熱に戻し、運転時間を掛ける)
  2. U-235 1gあたりのエネルギーで割る:\(m = Q / (8.2 \times 10^{10})\) [g]
  3. 比較問題なら石炭・重油側も「質量×発熱量」で熱量に揃えてから比を取る

例題(R01 問4型):電気出力1,000 MW、熱効率33%の原子力発電所を30日間連続運転したとき、消費するU-235の質量は?

→ 熱入力 P_熱 = 1,000 / 0.33 ≈ 3,030 MW → 30日 = 30 × 24 × 3,600 = 2.59×10⁶ s → 総熱量 Q = 3.03×10⁹ × 2.59×10⁶ ≈ 7.85×10¹⁵ J → m = 7.85×10¹⁵ / 8.2×10¹⁰ ≈ 9.6×10⁴ g ≈ 約96 kg

落とし穴

  • 熱効率で「割る」:電気出力から熱入力に戻すとき η を掛けてしまうのが典型ミス
  • 単位の混在:U-235は「J/g」、石炭・重油は「J/kg」で与えられることが多い。g/kg/t の換算を最初に揃える
  • 200 MeVを J に直す係数(1 eV = 1.602×10⁻¹⁹ J)は問題文で与えられることが多いが、8.2×10¹⁰ J/g ≒ 石炭3 t のオーダー感は暗記しておくと検算に使える

⚡ 正誤判定の急所(知識テーマの核心)

文章 正誤 解説
「PWRでは一次冷却水が直接タービンを回す」 誤 蒸気発生器で二次側の水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す
「BWRでは一次冷却水が直接タービンを回す」 正 炉内で発生した蒸気が直接タービンへ(放射性蒸気に注意)
「制御棒の材料にはウランが使われる」 誤 ハフニウム・ホウ素・カドミウムなど「中性子を吸収しやすい材料」を使う
「重水炉では重水が減速材と冷却材を兼ねる」 正 CANDUはD₂Oが減速材・冷却材の両方
「CANDUは天然ウランを燃料に使用できる」 正 重水は中性子吸収が少ないため、濃縮不要の天然ウランで臨界維持可能
「国内の商業用原子炉はPWRとBWRのみ」 正 黒鉛炉(GCR)・重水炉(CANDU)は国内商業運転なし
「制御棒を挿入すると原子炉出力が上昇する」 誤 挿入すると中性子吸収が増え出力低下。引き抜くと出力上昇
「PWRの冷却水系統はBWRより多い」 正 PWR=2系統(一次・二次)、BWR=1系統(直接サイクル)

💡 勘違いTOP3

1. 「超臨界」は危険な爆発状態ではない 超臨界とは「出力が増加しつつある制御された状態」。起動時は必ず超臨界を経て定格出力に達する。危険なのは「即発超臨界」(制御棒では対応できない速度で反応が増殖する状態)であり、超臨界とは別概念。

2. PWRとBWRの冷却水系統数 PWR=2系統(放射性の一次冷却水と蒸気発生器で分離された非放射性の二次側)、BWR=1系統(直接サイクルのため蒸気自体が放射性)。保守作業のしやすさが異なる。

3. 制御棒の操作と出力の方向 「制御棒挿入 → 中性子吸収 → 核分裂減少 → 出力低下」 「制御棒引抜 → 中性子吸収減少 → 核分裂増加 → 出力上昇」 緊急停止(スクラム)は「全制御棒を一斉挿入」。

引っかけパターン:制御棒の操作方向

「制御棒を引き抜くと出力が下がる」→ 誤。制御棒を引き抜くと中性子の吸収が減り、連鎖反応が活発になって出力が上昇する。緊急停止(スクラム)は「全制御棒を一斉挿入」して出力を急低下させる。

引っかけパターン:PWRの一次冷却水とタービン

「PWRでは炉内で発生した蒸気が直接タービンへ送られる」→ 誤。これはBWRの説明。PWRでは一次冷却水は沸騰させず(高圧維持)、蒸気発生器を介して二次側の水を蒸気にしてタービンへ送る。BWRとPWRを逆に書いた選択肢は頻出。

引っかけパターン:原子力発電の熱効率

「原子力発電の熱効率は火力発電より高い」→ 誤。軽水炉は安全上の制約から高温蒸気を使えず(約280〜300℃程度)、熱効率は30〜35%にとどまる。汽力発電(35〜42%)や特にコンバインドサイクル(55〜60%)より低い。

引っかけパターン:減速材と制御棒の材料の混同

「軽水は制御棒の材料として使われる」→ 誤。軽水は減速材・冷却材として使われる。制御棒の材料はハフニウム・ホウ素・カドミウムなどの「中性子を吸収しやすい元素」。


📊 出題実績

📚 横断一覧: 分野別一覧(該当分野) / 年度別一覧

年度 問 出題内容 問題タイプ 難易度
R07下 問4 将来に向けた新型炉の検討 論説 ★★★★☆
R07上 問4 原子力発電における核燃料サイクル 穴埋 ★★☆☆☆
R06下 問4 原子力発電で使用される燃料と原理 論説 ★★☆☆☆
R06上 問4 ウランの核分裂エネルギーと石炭の発熱量の比較 計算 ★★★☆☆
R05下 問4 軽水炉で使用される原子燃料 論説 ★★☆☆☆
R05上 問4 ウランの発生エネルギーと重油量の比較 計算 ★★★★☆
R04下 問4 日本で採用されている原子炉の型と特性 穴埋 ★★★☆☆
R04上 問4 沸騰水型原子炉(BWR)の特徴 論説 ★★☆☆☆
R03 問5 日本で使用されている原子力発電の構造や特徴 論説 ★★★☆☆
R02 問4 ウラン235など原子燃料に使用される物質 穴埋 ★★☆☆☆
R01 問4 ウランと石炭の燃料消費量の違い 計算 ★★★☆☆
H24 問4 ウランと重油の燃料消費量の違い 計算 ★★★☆☆
H23 問4 ウラン235が核分裂により発生するエネルギー 計算 ★★★★☆

詳細解説: 電験王 原子力カテゴリ

学習の優先順位: 1. PWR vs BWR の違い(冷却水系統数・蒸気発生方法) 2. 原子炉4要素の材料(特に制御棒はハフニウム・ホウ素・カドミウム) 3. 臨界・未臨界・超臨界の区別 4. CANDU・高速増殖炉は概要のみ


関連ページ

  • 火力発電 — ランキンサイクルの共通点と熱効率の差(原子力30〜35% vs 汽力35〜42%)の理由
  • 新エネルギー発電 — ベースロード電源としての特性比較(地熱・原子力)
  • 電力系統・需給運用 — ベースロード電源としての位置づけと負荷追従特性