保護継電器¶
🎯 このページで得点できる問題
本ページを通読すると、過去問で次の論点に答えられるようになる:
- 主要継電器の略称・制御器具番号・用途:OCR(51) / OCGR(51G) / DGR(67G) / UVR(27) / OVR(59) / 87 / 21
- 動作特性:定限時(時間一定)と 反限時(電流大→動作早い)の違いと採用理由
- 差動継電器(87)の原理:入力電流と出力電流の差で内部故障を検出
- DGR の特殊性:電流の 大きさ だけでなく 方向(位相) も判定
- CT・PT との連携:継電器は CT・PT の二次出力を入力源として動作
各論点の詳細は §3 比較表・§4 動作特性・§5 整定の考え方へ。
🗺️ 棲み分けマップ
本ページ=保護継電器:異常を 検出して指令を出す 装置(OCR/OCGR/DGR/UVR/OVR/87/21)。継電器の動作原理・整定・選定。
遮断器・断路器(CB・DS):本ページの継電器が「切れ」と指令する 実行側。
計器用変成器(VT・CT):継電器の 入力センサー。継電器は CT/VT の二次出力を見て判定する。
開閉装置・保護継電器(hub):3 ページの全体俯瞰・出題実績インデックス。
1. 直感的理解¶
保護継電器の本質: 系統の異常(短絡・地絡・過電圧・過電流等)を CT・PT 経由で検出 し、遮断器(CB)に「切れ」の指令 を出す装置。系統保護の頭脳。
役割フロー¶
graph LR
A[電力系統<br/>異常発生] -->|大電流/高電圧| B[CT/PT]
B -->|二次出力 5A/110V| C[保護継電器]
C -->|整定値と比較| D{異常?}
D -->|YES| E[トリップ指令]
D -->|NO| F[監視継続]
E --> G[遮断器 CB<br/>事故区間切り離し]
style C fill:#388e3c,color:#fff
style G fill:#d32f2f,color:#fff
5 秒で思い出す: 継電器は 「センサーが運んだ信号で判定し、CB に指令する」 装置。自身は電流を切らない。
整定値(setting)という概念¶
継電器は「整定値」と呼ばれる動作の閾値を持つ。例えば OCR の整定値が二次 4 A なら、CT 二次に 4 A 以上流れた瞬間(または時限後)にトリップ。
整定値は 現場で調整可能で、系統条件・負荷変動・上下流継電器の協調を考えて設定する。
2. 設備を歩く¶
CT/VT → 継電器 → CB の信号フロー¶
graph TD
subgraph 一次側
A[電力系統] --> B[CT]
A --> C[VT]
end
subgraph 二次回路
B --> D[OCR 51]
B --> E[電力計]
C --> F[UVR 27]
C --> G[電圧計]
B --> H[87 差動継電器]
C --> H
end
D --> I[トリップ指令]
F --> I
H --> I
I --> J[遮断器 CB]
複数の継電器が同じ CT・VT の二次出力を共有することが多い。CT 負担(接続継電器の合計 VA)が定格を超えないよう注意(→ 計器用変成器ページ §4 レイヤー C)。
3. 保護継電器の比較表(最重要)¶
| 継電器 | 略称 | 制御器具番号 | 検出対象 | 動作条件 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| 過電流継電器 | OCR | 51 | 過電流(短絡等) | 整定値以上の電流 | 線路・変圧器の短絡保護 |
| 地絡過電流継電器 | OCGR | 51G | 地絡電流 | 地絡電流が整定値以上 | 非接地系の地絡保護 |
| 地絡方向継電器 | DGR | 67G | 地絡の方向 | 地絡電流の流入方向判定 | 自家用構内の地絡・波及防止 |
| 不足電圧継電器 | UVR | 27 | 電圧低下 | 電圧が整定値以下 | 停電検出・系統解列 |
| 過電圧継電器 | OVR | 59 | 電圧上昇 | 電圧が整定値以上 | 単独運転防止・電圧上昇保護 |
| 地絡過電圧継電器 | OVGR | 64 | 零相電圧(EVT 経由) | 零相電圧が整定値以上 | 非接地系の地絡検出 |
| 差動継電器 | 87 | 87 | 変圧器・発電機内部故障 | 入出力電流の差 | 変圧器・発電機の内部保護 |
| 距離継電器 | 21 | 21 | 線路インピーダンス | インピーダンス整定値以下 | 長距離送電線の保護 |
制御器具番号(JEM 1090)は ANSI/IEEE デバイス番号と共通
51(過電流)・87(差動)・21(距離)等の番号は、日本では JEM 1090(日本電機工業会規格) の制御器具番号で、米国 ANSI/IEEE C37.2 と共通の体系。試験では番号と日本語名・略称を結びつけて問われる(「JIS番号」ではない点に注意)。
4. 動作特性(定限時・反限時・差動原理)¶
定限時 vs 反限時(OCR)¶
| 特性 | 動作時間 | 採用理由 |
|---|---|---|
| 定限時特性 | 整定値超の電流の大きさに関わらず 一定の時限 でトリップ | 動作時間が読みやすい・上下流継電器の協調が容易 |
| 反限時特性 | 電流が大きいほど 短い時間 でトリップ(反比例的) | 重大事故ほど早期遮断=系統への影響最小化 |
なぜ反限時特性が必要か(因果理解)
事故電流が大きい=事故の深刻度が高い=早期に遮断すべき。という論理に合致する動作特性。 系統への影響が大きい事故ほど迅速に遮断できる。線路の OCR では反限時特性が一般的。
差動継電器(87)の原理¶
入力電流(CT1) ─┐
├→ 差動比較 → 差が整定値超 → トリップ
出力電流(CT2) ─┘
正常時:入力≒出力 → 差≒0 → 動作しない
内部故障時:入力≠出力 → 差大 → 動作してトリップ
差動継電器が変圧器内部故障を検出できる理由
変圧器が正常動作している場合、一次側電流と二次側電流は変圧比に従って一定の比率を保つ。差動継電器は両者の差を監視しており、正常時は差≒0。 内部故障(巻線間短絡・地絡等)が発生すると、故障電流の一部が変圧器内部を短絡経路で流れ、一次・二次の電流比が崩れる。この「差」を検出してトリップする。外部短絡では一次・二次の差が出ないため誤動作しない(保護範囲が変圧器内部に限定)。
距離継電器(21)の原理¶
CT・VT の入力から インピーダンス Z = V/I を計算し、整定値以下なら事故とみなしてトリップ。
- 整定値:保護したい線路のインピーダンスに対応する値
- 動作領域:通常 R-X 平面(インピーダンス図)上の円・四角形・多角形で表現
- 段階保護:1 段(瞬時)・2 段(短時限)・3 段(長時限)の3段で広い範囲をカバー
DGR(地絡方向継電器)の特殊性¶
DGR は 電流の大きさ+方向(位相) の両方を判定する。これにより:
- 自構内の地絡 ⇒ 地絡電流の方向が「構内向き」 ⇒ 動作
- 隣接回路の地絡 ⇒ 地絡電流の方向が「構外向き」 ⇒ 不動作(波及防止)
DGR の入力は ZCT(零相電流)+EVT(零相電圧)のセット(→ 計器用変成器 §3)。
5. 整定の考え方¶
OCR の整定(時限協調)¶
直列に複数の OCR が並ぶ系統では、下流が先に動作・上流が後で動作 する時限差をつける(時限協調)。
上流 OCR (時限 0.6s)
↓
下流 OCR (時限 0.3s)
↓
事故点
下流の OCR が先にトリップして事故区間だけを切り離し、上流の健全区間は通電継続。下流が動作失敗した場合のバックアップとして上流が動作。
DGR の整定¶
- 電流整定:地絡電流の最小予想値より小さく
- 方向整定:自構内方向のみ動作するよう位相基準を設定
- 時限整定:上位(系統側)の DGR と協調
87(差動)の整定¶
- 不平衡電流許容値:CT 誤差・タップ位置による差を吸収する余裕
- 比率差動特性:負荷電流に比例して動作感度を変える(外部事故時の誤動作防止)
5.5 解法パターン¶
解法パターン①:継電器の略称・制御器具番号・用途を結びつける(R06上問8型)¶
典型問題:「次の保護継電器の名称と 制御器具番号の組合せのうち、誤っているものを選べ」
判別マトリクス
| 略称 | 制御器具番号 | 検出対象 | 引っかけ筆頭 |
|---|---|---|---|
| OCR | 51 | 過電流(短絡) | 「OCR は地絡保護」→ 誤(地絡は OCGR / DGR) |
| OCGR | 51G | 地絡電流の大きさのみ | 「OCGR は方向判定する」→ 誤(方向判定は DGR) |
| DGR | 67G | 地絡の 大きさ+方向(位相) | 「DGR は大きさだけ」→ 誤 |
| UVR | 27 | 不足電圧 | 「UVR は過電圧」→ 誤(過電圧は OVR / 59) |
| OVR | 59 | 過電圧 | 「OVR は過電流」→ 誤(過電流は OCR / 51) |
| 87 | 87 | 変圧器・発電機内部故障 | 「87 は外部短絡でも動作」→ 誤 |
| 21 | 21 | 線路インピーダンス | 「21 は物理距離で動作」→ 誤(V/I のインピーダンス) |
→ 制御器具番号は ANSI/IEEE C37.2 と共通。51(過電流)・87(差動)・21(距離) の 3 つは暗記必須。
解法パターン②:差動(87)と距離(21)の動作原理を判別(R04上問8型)¶
典型問題:「差動継電器と距離継電器の動作原理に関する記述として、適切なものを選べ」
判別基準(2軸対比)
| 観点 | 差動継電器(87) | 距離継電器(21) |
|---|---|---|
| 入力 | 2 つの CT(一次・二次 または 両端) | CT + VT(電流と電圧) |
| 判定指標 | 入出力電流の 差 | V/I の インピーダンス |
| 保護範囲 | 内部のみ(外部短絡は不動作) | 整定値以下のインピーダンス区間 |
| 誤動作モード | CT 誤差・タップ位置→比率差動特性で抑制 | 電圧低下・電力動揺→3 段時限で抑制 |
| 主な対象 | 変圧器・発電機 | 長距離送電線 |
→ 「差で見る vs インピーダンスで見る」 が一行整理の決め手。87 は外部短絡で動作しない(保護範囲限定)が頻出ひっかけ。
解法パターン③:定限時・反限時の特性を判別(OCR論点)¶
典型問題:「過電流継電器の動作特性として、電流が大きいほど動作時間が短くなる特性の名称を答えよ」
判別基準
| 特性 | 動作時間と電流の関係 | 採用場面 |
|---|---|---|
| 定限時特性 | 整定値超なら 一定時間でトリップ | 上下流の時限協調が容易 |
| 反限時特性 | 電流大 → 動作時間 短 | 重大事故ほど早期遮断(線路 OCR の主流) |
| 瞬時特性 | 整定値超で 即時トリップ | 大電流事故の高速遮断(87 と併用) |
→ 「電流大→時間短」は 反限時。逆に「電流に関わらず一定時間」は 定限時。両者の取り違えは引っかけ⑤と直結。
解法パターン④:保護継電器方式の総合判別(誤り選択型)¶
典型問題:「電力系統の保護継電器方式に関する記述として、誤っているものを選べ」
判別チェックリスト
- OCR の時限協調 = 下流先動作・上流バックアップ(下流時限 < 上流時限)
- 差動継電器(87) = 内部故障のみ動作(外部短絡では一次・二次の差が出ない)
- 距離継電器(21) = インピーダンス(V/I)で判定(物理距離ではない)
- DGR の方向判定 = ZCT(零相電流)+ EVT(零相電圧)の組合せで自構内/構外を仕分け
- 段階保護 = 距離継電器は 1 段(瞬時)・2 段(短時限)・3 段(長時限)
→ 5 つの基準のいずれかに違反する選択肢が「誤り」。保護範囲の誤認と 方向判定の有無が出題の 7 割。
6. 引っかけパターン¶
① OCR と OCGR の混同¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「OCR は地絡電流を検出する」 | 誤:OCR は 過電流(短絡等)。地絡は OCGR(51G)または DGR(67G) |
② DGR の動作条件¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「DGR は電流の大きさだけで地絡を判定する」 | 誤:電流の大きさに加え 方向(位相) も判定する |
③ 差動継電器の保護範囲¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「差動継電器(87)は変圧器の外部短絡でも動作する」 | 誤:87 は 内部故障のみ動作。外部短絡では一次・二次の差が出ない |
④ 距離継電器の動作¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「距離継電器は事故点までの物理的距離で動作する」 | 誤:インピーダンス(V/I)で動作。長さに比例するが直接の距離測定ではない |
⑤ 反限時と定限時の取り違え¶
| 誤った記述 | 正しい記述 |
|---|---|
| 「定限時特性は電流が大きいほど早く動作する」 | 誤:定限時は 一定時間。電流が大きいほど早いのは 反限時 |
7. 正誤判定の急所¶
| 文章 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 「差動継電器は変圧器の内部故障を検出する」 | 正 | 87 が変圧器の巻線内部故障の主保護 |
| 「OCR の反限時特性は電流が大きいほど短時間で動作する」 | 正 | 重大事故ほど早期遮断の論理 |
| 「距離継電器は事故点までのインピーダンスで動作する」 | 正 | 事故点までのインピーダンスが整定値以下になると動作 |
| 「地絡方向継電器(DGR)は電流の大きさだけで地絡を判定する」 | 誤 | 電流の大きさに加え 方向(位相) も判定 |
| 「OCR は地絡保護に用いる継電器である」 | 誤 | OCR は過電流(短絡)保護。地絡は OCGR / DGR |
| 「差動継電器は外部短絡でも誤動作する」 | 誤 | 外部短絡では一次・二次の差が出ないため誤動作しない |
| 「UVR は電圧が整定値以下になったとき動作する」 | 正 | 不足電圧継電器(27) |
| 「OVR は電圧が整定値以上になったとき動作する」 | 正 | 過電圧継電器(59) |
| 「定限時特性は電流が大きいほど早く動作する」 | 誤 | 定限時は 一定時間。反限時の説明と混同 |
| 「制御器具番号 87 は差動継電器である」 | 正 | ANSI/IEEE C37.2 と共通の番号体系 |
| 「DGR の入力には ZCT と EVT を用いる」 | 正 | 零相電流と零相電圧の両方で方向判定 |
| 「OCR は時限協調により上流より下流を早く動作させる」 | 正 | 下流先動作・上流バックアップが時限協調の原則 |
8. 出題実績¶
📚 横断一覧: 分野別一覧(該当分野) / 年度別一覧
電験王実題で照合した令和の保護継電器の出題(単独論点は少なく、問番号も変動):
| 年度 | 問 | 出題内容 | 問題タイプ | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| R04上 | 問7 | 過電流継電器(OCR)の限時特性 | 穴埋 | ★★☆☆☆ |
| R01 | 問8 | 保護継電器(OCR)の動作時間 | 計算 | ★★★★★ |
詳細解説: 電験王 開閉・保護カテゴリ
R08 予測
保護継電器単独の出題は少なく(令和ではR04上問7・R01問8)、問番号も固定でない。ただし OCR・DGR・差動・距離の動作原理は配電の地絡保護や変電の論説に断片的に織り込まれるため、自家用受電設備の地絡保護と合わせた横断学習が有効。R08 では DGR の方向判定/反限時特性/差動原理のいずれかが問われる可能性。
関連ページ¶
- 遮断器・断路器(CB・DS) — 継電器のトリップ指令を受ける実行側
- 計器用変成器(VT・CT) — 継電器の入力センサー(CT/VT/ZCT/EVT)
- 開閉装置・保護継電器(hub) — 3 ページの全体俯瞰・出題実績インデックス
- 変圧器 — 差動継電器 87 の保護対象
- 架空送電線路 — 距離継電器 21 の適用先
- 自家用受電設備の地絡保護 — DGR・もらい事故防止の応用編(需要家側)