高圧ケーブル¶
30秒まとめ¶
6.6kV 回路の標準は CV(架橋ポリエチレン絶縁)ケーブル。許容電流は布設条件で大きく変わる。水トリーイングによる絶縁劣化が高圧ケーブルの主要劣化メカニズム。定期的な絶縁診断が必須。
CV と CVT の違い¶
| 項目 | CV | CVT |
|---|---|---|
| 構造 | 3芯一括 | 3芯を撚り合わせたトリプレックス形 |
| 可とう性 | 低い(径が太い) | 高い(取り扱いやすい) |
| 熱放散 | やや劣る | 良好 |
| 接続作業 | 比較的容易 | 各心を個別に処理(端末部材は単心用) |
| 主な用途 | 既設に多い 3 芯一括形 | 現在の主流(ラック・管路とも取り回しやすい) |
許容電流と布設条件補正¶
許容電流はケーブルの布設方法によって大きく異なる。高圧 CV/CVT の基準許容電流と布設別の値はケーブルメーカーの技術資料(許容電流表)を正とし、下表は「布設方式でどの程度変わるか」の感覚をつかむための実務目安である(規格原本未照合。設計値には使わない)。
| 布設方式 | 許容電流補正係数の目安 |
|---|---|
| 気中布設(ケーブルラック・単独) | 1.0(基準) |
| 管路布設(コンクリート管路内) | 0.75〜0.85 |
| 直埋(土中埋設) | 0.90〜1.00(土壌熱抵抗率による) |
| 束ね(複数本密集) | 0.8〜0.9(本数・密度による) |
周囲温度補正・多条布設低減の計算手順(式と JCS 掲載値)は ケーブル許容電流と補正係数 を参照(同ページの数表は低圧 JCS 0168-2 系。高圧はメーカー表の係数を使う)。
束ね補正の見落としに注意
複数のケーブルを束ねてケーブルラックに並べる場合、相互加熱で許容電流が大きく下がる。 設計時に束ね補正係数を忘れると過負荷・絶縁劣化につながる。
終端処理の種類¶
ストレスコーン方式(旧来型)¶
絶縁体の遮蔽層を段状に切り落とし、ゴム製のストレスコーンを成形して電界集中を緩和する。現地加工が必要。
プレハブ型終端(現在の主流)¶
工場製のゴム製プレハブコネクタを使用。現地で引き伸ばして装着するだけで確実な絶縁処理ができる。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 屋内用(ドライタイプ) | 小型・軽量。清浄な屋内環境向け |
| 屋外用(耐候型) | 耐汚損・防水設計。プラント屋外向け |
| GIS 直結型 | ガス絶縁開閉装置への直結 |
絶縁劣化診断¶
直流耐圧試験(竣工時/維持時)¶
試験電圧は電技解釈 第15条に基づく法定値と、経年ケーブルの維持診断で用いる実務値を分けて考える。詳細な竣工試験手順は 耐圧試験・絶縁診断 を正典とし、本ページと同一の値で統一している。
竣工時(新設・更新時)の法定試験電圧は次のように求める。
最大使用電圧 = 公称電圧 × 1.15 / 1.1
= 6600 × 1.15 / 1.1 = 6900 V
交流試験電圧 = 最大使用電圧 × 1.5(7000 V 以下)
= 6900 × 1.5 = 10350 V(約10.35 kV)を10分間
直流試験電圧 = 交流試験電圧 × 2(ケーブルのみ直流代替が可)
= 10350 × 2 = 20700 V(約20.7 kV)を10分間
| 区分 | 試験電圧 | 印加時間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 竣工時 交流 | AC 約10.35 kV | 10 分 | 電技解釈 第15条・15-1表(最大使用電圧×1.5) |
| 竣工時 直流 | DC 約20.7 kV | 10 分 | 同 第15条第二号(交流試験電圧×2、電線にケーブルを使用する交流の電路のみ) |
| 維持(経年診断) | 単一のDC正典値なし(DC非推奨→下記) | 社内基準/VLF・tanδ・PD | 法定でなく劣化診断目的。前回比で判断 |
維持診断に単一のDC試験電圧はない(代替診断へ)
経年ケーブルの維持診断には法定値も単一の正典値も存在しません(未確定ではなく、固定DC電圧を定めた規格がないという事実)。XLPE(CV)へのDC直流耐圧は近年非推奨のため、実務は VLF(0.1Hz)耐圧・tanδ・部分放電(PD)・残留電荷法へ移行しています。判定は絶対値でなく前回比(目安:前回の 80% 以下で劣化疑い)と漏れ電流の時間変化で行います。やむを得ずDCを使う場合も全電圧(20.7 kV)は健全部を痛めるため低減電圧の段階印加とし、印加電圧は社内保全基準・メーカー診断基準で定めること。詳細な区分は 耐圧試験・絶縁診断 を正典とします。
XLPE(CV)ケーブルへの直流耐圧は近年非推奨
架橋ポリエチレン(XLPE=CV)ケーブルへの直流耐圧試験は、(1)交流と電界分布が異なり実運用と違うストレスを与える、(2)水トリー部に空間電荷を蓄積させ劣化を助長する、(3)試験後の残留電荷が原因で試験後にかえって絶縁破壊(アフターブレークダウン)を招く、との理由で技術的に非推奨となっている。近年は VLF(超低周波 0.1Hz)耐圧・交流耐圧や、tanδ・部分放電・残留電荷法などの非破壊診断へ移行している。ただし電技解釈 第15条の直流代替規定そのものは法的に廃止されておらず、竣工試験としては現在も適法である点に注意する。
試験中の漏れ電流を測定し、電圧上昇に対して急激な電流増加がないことを確認する。
直流耐圧後の残留電荷
直流耐圧試験後はケーブルに高電圧の残留電荷が蓄積されている。 接地棒で放電確認(接地後数分待つ)してから触れること。
誘電正接(tan δ)試験¶
誘電正接の値と電圧依存性(チップアップ:印加電圧を上げたときの tanδ の増加)から絶縁劣化度を評価する。
判定値に単一の正典値はない。測定方式(商用周波か VLF 0.1Hz か)・測定電圧・ケーブル種別で数値の意味が変わり、%表記と小数表記が資料により混在するため、絶対値の一覧表で判定せず、診断機関・メーカーの判定基準と前回測定値との比較(トレンド)で評価する。チップアップが大きい(電圧を上げると tanδ が明確に増える)ことは水トリー等の電圧依存性劣化を示唆する定性指標として使える。
部分放電試験¶
絶縁体内のボイド(空洞)や水トリーに起因する部分放電を検出する。近年は活線状態での高周波測定が普及してきている。
水トリーイング¶
架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体内に水分が侵入し、電界の繰り返しによって樹枝状の劣化トラック(水トリー)が発展する現象。
劣化進展ルート:
水分侵入 → ボウタイトリー(内部)またはベントトリー(外部から) → 絶縁破壊
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 遮水型ケーブルの採用 | 縦方向の水分浸入を防ぐ金属遮水層付き |
| 接続部の確実な防水処理 | プレハブ型接続材の適切な施工 |
| 定期診断 | 誘電正接・部分放電試験で進展監視 |
布設時の最小曲げ半径¶
ケーブルを過度に曲げると絶縁体・シースが損傷する。
| ケーブル外径 D | 最小曲げ半径 |
|---|---|
| D ≤ 25 mm | 6D 以上 |
| 25 < D ≤ 50 mm | 8D 以上 |
| D > 50 mm | 10D 以上 |
(参考値。メーカー仕様書を必ず確認すること)
根拠¶
本ページが正典の範囲¶
CV/CVT の構造比較・水トリーイングの機序・布設時の取り扱いは本ページが正典です。耐圧試験の電圧・時間・メガー印加電圧・PI 値は 耐圧試験・絶縁診断 が正典で、本ページの数値は同ページと同一値に統一しています(高圧ケーブルのメガーは 5000V、判定はトレンド管理)。
一次照合・一次計算で確認済み¶
- 竣工時試験電圧の導出: 最大使用電圧 6,600 × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900 V、交流 6,900 × 1.5 = 10,350 V(10 分)、直流 10,350 × 2 = 20,700 V(10 分)。2026-08-06 に再計算で一致を確認。条文根拠(電技解釈 第15条・15-1表・直流代替規定)の照合記録は 耐圧試験・絶縁診断 の根拠節を参照
- 維持診断に単一の DC 正典値が無いこと・XLPE への DC 耐圧非推奨: 同ページの根拠節と同一の整理(本ページは要約のみ)
是正の記録(2026-08-06)¶
- tanδ の判定表(0.01 以下良好/0.05 以上要交換検討)を撤去: 単位(%か小数か)も出典も特定できず、測定方式(商用周波/VLF)で数値の意味が変わるため、絶対値表のまま残すと誤判定を招きます。「診断機関・メーカー基準+前回比トレンドで判定」に置き換えました
- CVT の主な用途「長距離・屋外架空」を是正: CVT はラック・管路を含む現在の高圧配電の主流であり、「架空」に限定する記述は実態と異なります
- 許容電流補正の表を「実務目安・設計値には使わない」と明示: 従来は出所不明のまま係数だけが並んでおり、規格値と誤読される書き方でした。基準許容電流はメーカー技術資料を正とし、補正の計算体系は ケーブル許容電流と補正係数 への参照を追加しました
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- 布設方式別の補正係数(管路 0.75〜0.85 等)・最小曲げ半径(6D/8D/10D)は実務目安です。曲げ半径は JCS・メーカー仕様で「単心/多心」「布設中/固定時」の区分により異なるため、施工時は必ず当該ケーブルの仕様書によってください
- 終端処理の分類(ストレスコーン/プレハブ型)は施工実務の整理で、規格の分類名ではありません
限界の明示¶
- 本ページは 6.6kV 級を対象とし、特別高圧ケーブルには適用しません
- 部分放電試験・残留電荷法の判定基準は診断機関ごとに異なり、本ページでは数値を示しません
正典参照¶
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 耐圧試験電圧・時間・条文根拠・メガー印加電圧・PI 値 | 耐圧試験・絶縁診断 |
| 許容電流の補正計算の体系(周囲温度・多条低減) | ケーブル許容電流と補正係数 |
| ケーブルシース接地 | 接地(高圧) |
照合日: 2026-08-06(試験電圧の導出を一次計算で再検算し insulation-test.md と同値であることを突合。tanδ 判定表の撤去・用途と許容電流の出所是正)。
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