計装ループチェック手順¶
30秒まとめ¶
ループチェックは「センサ → 伝送 → DCS/調節計 → 最終操作端」の一連動作を通しで確認する作業。信号を模擬入力して指示値と弁の動きを両端で突合し、極性・レンジ・アクション(正逆)の3点を重点的に確認する。
新設・改造工事後に実施する計装ループの動作確認手順です。
DCS/調節計への信号入力から最終制御要素(制御弁・ポンプ等)までの一連動作を確認します。
事前確認¶
作業開始前に必ず確認
- [ ] PTW(作業許可証)取得済み
- [ ] 対象ループの P&ID・計装図(ループ図)準備済み
- [ ] 製造課との調整完了(プロセスへの影響確認)
- [ ] 無線機または内線電話の準備(DCS室↔現場の連絡手段)
- [ ] 校正済み電流発生器(ハンドヘルドキャリブレータ)準備
必要な資格¶
- 低圧電気取扱特別教育修了(電源ON/OFF作業時)
- 計装工事経験者の立会い(初回作業者)
必要な工具・機器¶
| 機器 | 用途 |
|---|---|
| ハンドヘルドキャリブレータ(HART対応推奨) | 信号発生・センサシミュレーション |
| デジタルマルチメータ | 電圧・抵抗測定 |
| ループ図・配線図 | 配線確認 |
| トランシーバ or 内線電話 | DCS室との連絡 |
| 記録用紙(ループチェックシート) | 測定値記録 |
ループチェックの流れ¶
センサ模擬信号入力 → フィールド信号確認 → DCS表示確認 → 制御出力確認 → 最終制御要素動作確認
手順¶
STEP 1:ループ図の確認¶
- 対象ループのループ図を入手し、以下を確認する
- センサ種別(熱電対・測温抵抗体・4-20mA発信器・差圧発信器 など)
- 測定範囲(スパン)と単位
- 制御出力先(制御弁・インバータ・ポンプ など)
- 電源供給元(ターミナルボックス番号・端子番号)
- DCS/調節計のタグ番号を確認する(例:FIC-101、TIC-202)
STEP 2:配線確認(導通チェック)¶
- センサ側の端子台でマルチメータを使い、芯線の導通を確認する
- 断線の有無:抵抗値が∞の場合は断線
- 極性の確認:+と-が逆転していないか
- シールド線の接地状態を確認する
- 片端接地(受信側 or 発信側のどちらか一方)になっているか
- 両端接地になっている場合は電計TLに報告
絶縁確認
配線導通確認後、DCSへの接続前に芯線間・芯線-アース間の絶縁抵抗を測定する。
基準値:DC500V メガーで 10MΩ以上(低い場合は工事担当者に報告)。
この 10MΩ は法定値ではなく、新設配線の工事受入で用いる実務基準(社内基準があればそちらを正とする)。既設設備の絶縁管理値・法定下限値とは別物で、それらの正典は 絶縁管理。
電子機器が接続されたままメガーを掛けない
500V メガーは伝送器・DCS 入力カード・バリア等の電子回路を破損させる。絶縁測定は必ず両端(センサ側・DCS 側)とも切り離した配線単体に対して行い、印加前に両端の切離しを指差し確認する。印加電圧の使い分け(弱電回路は 250V 等)は 耐圧試験・絶縁診断 を正典とする。
STEP 3:信号発生(センサシミュレーション)¶
4-20mA 発信器の場合¶
- センサを端子台から切り離す(または発信器のループ断点で接続)
- キャリブレータを接続し、以下の3点で電流を発生させる
| 発生電流 | 相当する入力値 | DCS表示確認目標 |
|---|---|---|
| 4.00 mA | 0% (スパン下限) | 測定範囲の下限値 |
| 12.00 mA | 50%(スパン中央) | 測定範囲の中央値 |
| 20.00 mA | 100%(スパン上限) | 測定範囲の上限値 |
- DCS室の担当者に各値での表示を口頭または記録シートで報告・確認してもらう
- 誤差基準:表示誤差 ±0.5% of Full Scale(機器仕様書で確認)
熱電対(TC)・測温抵抗体(RTD)の場合¶
- センサを切り離してキャリブレータを接続
- キャリブレータでTC/RTD種別を選択し、以下の温度を模擬入力する
- 下限温度・中央温度・上限温度の3点
- DCS表示値が設定温度と一致することを確認
差圧発信器(流量・圧力)の場合¶
- 発信器のゼロ点(均圧弁開・高低圧弁閉)でDCS表示が0%になることを確認
- キャリブレータで4-20mA を模擬入力して上記と同手順で確認
STEP 4:アラーム・インターロック確認¶
- DCS室担当者に確認してもらいながら、アラーム設定値付近の信号を入力する
- 以下の動作を確認する
- [ ] HH(高高)アラーム発報
- [ ] HI(高)アラーム発報
- [ ] LO(低)アラーム発報
- [ ] LL(低低)アラーム発報
- [ ] インターロック(トリップ)動作(設定がある場合)
インターロック試験の注意
インターロック試験はプロセスへの影響が大きい。
必ず製造課・運転員の立会い・承認のもとで実施すること。
バイパス設定が必要な場合は製造課長の承認を得ること。
STEP 5:制御出力確認¶
- DCS室から制御出力を手動で操作してもらう
- 現場でアクチュエータ(制御弁・インバータ等)の動作を確認する
| 出力値 | 確認内容 |
|---|---|
| 0% | 制御弁:全閉 / インバータ:停止 |
| 50% | 制御弁:半開 / インバータ:50%回転数 |
| 100% | 制御弁:全開 / インバータ:最大回転数 |
- 動作方向(フェールセーフ方向)を確認する
- FA(フェールオープン):信号喪失時に全開
- FC(フェールクローズ):信号喪失時に全閉
STEP 6:記録・サインオフ¶
- ループチェックシートに全測定値・確認結果を記録する
- 異常がなければ「OK」、不具合があれば「NG」と判定し原因・対策を記載
- 現場担当者・DCS室担当者・電計チームリーダーのサインをもらう
- 記録は工事書類として保管する
チェックリスト(作業完了時)¶
- [ ] 全ての信号点で DCS 表示値が正常範囲内
- [ ] アラーム動作確認済み(HH/HI/LO/LL)
- [ ] インターロック動作確認済み(該当ループのみ)
- [ ] 制御弁・アクチュエータの動作方向確認済み
- [ ] シールド接地状態確認済み
- [ ] 絶縁抵抗値記録済み
- [ ] ループチェックシートへの記録・サイン完了
- [ ] センサ・端子台の復旧(仮接続の解除)
よくある不具合と対処¶
| 不具合 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| DCS表示が動かない | 断線・端子緩み | 配線確認・端子増し締め |
| 表示値がずれる(オフセット) | ゼロ点ずれ・配線極性誤り | 極性確認・発信器ゼロ調整 |
| アラームが出ない | 設定値確認・入力信号不足 | DCS設定値・配線確認 |
| 制御弁が動かない | 空気源圧力不足・ポジショナ故障 | 空気圧確認・ポジショナ点検 |
| 信号がノイズで振れる | シールド接地不良・誘導 | シールド接地見直し |
根拠¶
本ページが正典の範囲¶
ループチェックの作業手順(模擬入力 3 点確認・アラーム確認・出力確認・記録)は本ページが正典です。4-20mA の電流帯区分・HART の要件は 計装基礎、メガーの印加電圧の使い分けは 耐圧試験・絶縁診断、絶縁抵抗の管理値は 絶縁管理、作業許可は 作業許可証(PTW)発行手順 が正典で、本ページは数値を再記述しません。
一次計算で検算済み¶
| 項目 | 検算 |
|---|---|
| 模擬入力 3 点とスパンの対応 | (4 − 4)/16 = 0%、(12 − 4)/16 = 50%、(20 − 4)/16 = 100% |
是正の記録(2026-08-06)¶
- 「DC500V メガーで 10MΩ以上」が法定値か実務値か不明のまま基準として書かれていた: 法定値ではなく新設配線の工事受入で用いる実務基準であることを明示しました(電技省令第58条の下限値は低圧「電路」の維持基準で、対象も値も別物。値は 絶縁管理 を参照)
- 電子機器接続回路へのメガー印加禁止の警告が無かった: 500V 印加は伝送器・DCS 入力カードを破損させるため、「両端切離しの指差し確認」を danger 注記として追加しました(従来の手順も「DCS への接続前」に測定する順序にはなっており、順序自体は安全側でした)
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- 受入絶縁抵抗 10MΩ 以上・表示誤差 ±0.5% of Full Scale・模擬入力 3 点(0/50/100%)は計装工事の実務慣行です。機器の許容誤差は機器仕様書、受入基準は社内基準・工事仕様書を正としてください
- シールドの片端接地の原則は 接地・ノイズトラブル を参照
限界の明示¶
- インターロック試験の可否・バイパス承認の主体(製造課長等)はプラントの安全管理規程で決まる社内手続で、本ページの記載は一例です
- 本ページは 4-20mA・TC/RTD の在来ループを対象とし、フィールドバス機器のコミッショニングには適用しません
照合日: 2026-08-06(模擬入力 3 点の換算を一次検算。10MΩ の位置づけを実務基準として明示し、電子機器保護の danger 注記を追加)。
関連ページ¶
🤖 この記事をChatGPTに渡す(プロンプト生成)
使い方: コピー → ChatGPT で貼り付け → 質問を追記して送信。