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電圧降下計算

30秒まとめ

電圧降下の許容値は幹線 2% + 分岐 2% = 合計 4% 以内。導体抵抗 R は 90 ℃ の交流実効抵抗 R(90℃) で計算する(カタログの 20 ℃ 値で計算すると降下を 2 割強小さく見積もる)。電動機の始動電流(定格の 5〜8 倍)での電圧降下も別途確認し、他の設備への影響がないか確認する。太線化で電圧降下を解消するか、MCCB の位置を変えて配線を短縮するかを比較する。


三相電圧降下計算式

基本式(三相 3 線式)

e = √3 × I × (R cosθ + X sinθ) × L

e     : 線間電圧降下 [V]
I     : 電流 [A]
R     : 導体抵抗 [Ω/km](90 ℃ の交流実効抵抗 R(90℃)。下表。カタログの 20 ℃ 値は使わない)
X     : 誘導リアクタンス [Ω/km](下表。ケーブル構成と周波数で決まる)
cosθ  : 負荷力率
sinθ  : √(1 - cos²θ)
L     : 片道ケーブル長 [km]

電圧降下率

電圧降下率 [%] = e / V0 × 100

V0 : 基準とする公称線間電圧(本Wikiは公称電圧を分母とする)[V]
例: 200V 系統なら V0 = 200V

受電端電圧が要る場合は Vr = V0 - e として別に求める
(送り端電圧と受電端電圧は別の量。分母をどちらにするかで率の値が変わる)

計算例

条件: 三相 200V・50 Hz、負荷電流 50A、力率 0.85、CV 14sq(R(90℃) = 1.71 Ω/km、X = 0.0828 Ω/km)、片道 100m

sinθ = √(1 - 0.85²) = 0.527

e = √3 × 50 × (1.71 × 0.85 + 0.0828 × 0.527) × 0.100
e = 1.732 × 50 × (1.454 + 0.044) × 0.100
e = 1.732 × 50 × 1.498 × 0.100
e = 13.0 V

電圧降下率 = 13.0 / 200 × 100 = 6.48%  → 許容値 4% 超 → 太線化が必要

同じ条件を 60 Hz(X = 0.0994 Ω/km)で計算すると e = 13.0 V・6.52% になります。X は周波数に比例するため、東日本と西日本で値が違います。下表から該当する周波数の列を使ってください。

カタログの 20 ℃ 値で計算しないこと

同じ条件をカタログの導体抵抗 R(20℃) = 1.34 Ω/km で計算すると e = 10.2 V・5.1 % になり、降下を 2 割強小さく見積もります。CV は最高許容温度 90 ℃ で運転される前提で許容電流が決まっており、日本電線工業会 技資第103号B も電圧降下の計算例に R(90℃) を使っています(下記「根拠」)。満負荷から遠い回路でも、判定は R(90℃) で行ってください。


許容値の目安

区分 許容電圧降下率 根拠
幹線(受電点〜分電盤) 2% 以内 内線規程 JEAC8001 とされる値(原本未照合)
分岐(分電盤〜負荷) 2% 以内 内線規程 JEAC8001 とされる値(原本未照合)
幹線 + 分岐(合計) 4% 以内 上記合算
電動機始動時(瞬時) 10〜15% 以内(他機器への影響で判断) 実務慣行値(規格根拠の裏付けなし。下記「根拠と適用上の注意」参照)

法令が定めているのは「受電点までの電圧」です

構内の電圧降下そのものを定めた法令はありません。法令が定めるのは電気事業者が供給する電圧の維持義務で、電気事業法 第26条第1項と同法施行規則 第38条第1項が次の値を定めています(2026-09-19 に e-Gov 法令 API で逐語照合)。

標準電圧 維持すべき値
100 V 101 V の上下 6 V を超えない値(95〜107 V)
200 V 202 V の上下 20 V を超えない値(182〜222 V)

上表の 2 % / 2 % は、受電点で保証されたこの電圧を、構内でどこまで削ってよいかの配分です。負荷端の電圧が機器の許容変動(多くは ±10 %)に収まるかで最終判断してください。受電点が下限寄りのときは、4 % の配分でも負荷端が機器の許容を割ることがあります。


電動機始動時の電圧降下確認

電動機の始動時には定格電流の 5〜8 倍の電流が流れ、その間は電圧降下が急増する。

始動時電流 Is = In × Ks

In : 定格電流 [A]
Ks : 始動電流倍率(直入れ: 5〜8、Y-Δ: 1.7〜2.7)

始動時電圧降下 es = √3 × Is × (R cosθs + X sinθs) × L
cosθs : 始動時力率(電動機始動時: 0.3〜0.4 が目安)

確認すべき事項:

  1. 始動時電圧降下により、他の電動機の運転が止まらないか(電圧 85% 以下でトリップする機器あり)
  2. 計装機器・DCS の電源電圧が許容範囲内(±10%)に収まるか

太線化判断の基準

flowchart TD
    A[電圧降下率 計算] --> B{降下率 ≤ 4%?}
    B -- Yes --> C[合格]
    B -- No --> D[対策を検討]
    D --> E{ケーブル長を短縮できる?\n分電盤の位置変更等}
    E -- Yes --> F[レイアウト変更で解決]
    E -- No --> G[断面積を大きくする\n次の標準サイズに変更]
    G --> A

断面積アップと電流の関係

太線化は電圧降下を改善するが、許容電流も増える副次効果がある。反面、ケーブルコスト・重量・曲げやすさが悪化する。断面積を 1 ランク上げて再計算し、基準を満たす最小断面積を選ぶ。

導体抵抗 R とリアクタンス X は下表を使います。この2表が本Wikiの R・X の正典で、ケーブルサイズ選定ツール(docs/javascripts/cable-calc.js)も同じ値を参照しています。

導体抵抗 R [Ω/km]

電圧降下の計算には R(90℃) の列を使います。 R(20℃) はカタログ照合・測定値との比較用の参考値で、電圧降下には使いません。

断面積 R(20℃) 参考 R(90℃) CV 2/3心 50Hz 同 60Hz R(90℃) CVT 50Hz 同 60Hz
2 sq 9.42 12.0 12.0 — —
3.5 sq 5.30 6.76 6.76 — —
5.5 sq 3.40 4.34 4.34 — —
8 sq 2.36 3.01 3.01 — —
14 sq 1.34 1.71 1.71 1.71 1.71
22 sq 0.849 1.08 1.08 1.08 1.08
38 sq 0.491 0.626 0.627 0.626 0.626
60 sq 0.311 0.397 0.397 0.397 0.397
100 sq 0.187 0.239 0.240 0.239 0.240
150 sq 0.124 0.160 0.160 0.159 0.160
200 sq 0.0933 0.121 0.122 0.121 0.121
250 sq 0.0754 0.0985 0.0995 0.0981 0.0989

リアクタンス X [Ω/km]

断面積 CV 3心 X(50Hz) CV 3心 X(60Hz) CVT X(50Hz) CVT X(60Hz)
2 sq 0.0992 0.119 — —
3.5 sq 0.0914 0.110 — —
5.5 sq 0.0914 0.110 — —
8 sq 0.0870 0.104 — —
14 sq 0.0828 0.0994 0.107 0.128
22 sq 0.0820 0.0984 0.103 0.123
38 sq 0.0771 0.0925 0.0955 0.115
60 sq 0.0768 0.0922 0.0913 0.110
100 sq 0.0773 0.0928 0.0881 0.106
150 sq 0.0744 0.0893 0.0846 0.102
200 sq 0.0755 0.0906 0.0859 0.103
250 sq 0.0739 0.0887 0.0836 0.100

多心(2/3/4 心)・CVT の値です

R(20℃) は JIS C 3605 の最大導体抵抗(20 ℃)で、多心 CV と CVT は同値です。単心(1 心)はこれより低く、14 sq で 1.31 Ω/km です(下記「根拠」参照)。単心を並列に布設する回路では単心の値を使ってください。 R(90℃) は技資第103号B の 交流実効抵抗で、表皮効果・近接効果を含むため 38 sq 以上では周波数でわずかに変わります(250 sq で 50 Hz 0.0985・60 Hz 0.0995)。単純に 20 ℃ 値へ温度係数を掛けた値(0.0754 × 1.275 = 0.0961)より大きく、大サイズほど差が開きます。 X は同じ断面積でも CVT のほうが CV 3 心より 2〜3 割大きい値です(14 sq・50 Hz で 0.107 対 0.0828)。CVT は単心を撚り合わせるぶん導体間隔が広く、その分リアクタンスが増えます。許容電流は CVT が有利・リアクタンスは CV 3 心が有利という逆向きの関係になるため、種別を取り違えないでください。


根拠と適用上の注意

  • 幹線 2%・分岐 2%(合計 4%):民間自主規格である内線規程(JEAC 8001)の規定値として広く引用される値です。法令(電気事業法・電技省令)が電圧降下率を直接規定しているわけではありません。複数の二次資料で 2026-07-30 に一致確認しましたが、内線規程の原本は未照合のため、本ページには節番号・版年を記載しません。
    • 2026-09-19 時点で入手の見込みが立っていません。 同規程は日本電気協会が発行する有償の民間規格で、無償公開版はありません。この項目は当面「原本未照合」のまま据え置きます(入手できたときの確認手順は RENOVATION-PLAN-2026-07.md の付録チェックリスト A1・A2)。
    • 無償の一次資料では埋まりません。 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正)の原典 PDF を全文検索した結果、「電圧降下」の語は 1 件もありません(2026-09-18 確認)。関連して確定できたのは上記 note の供給電圧の維持義務(電気事業法第26条第1項・施行規則第38条第1項)までです。
    • 据え置いても危険側にはなりません。 本ページは緩和規定を採らず、最も厳しい 2 % + 2 % を設計基準としています。未照合なのは「これより緩めてよい条件」の側です。
  • 内線規程には「電気使用場所内の変圧器から供給される場合は幹線 3 % 以下にできる」「こう長が 60 m を超える場合の緩和(こう長区分に応じ許容値を拡大)」の規定があるとされます(同じく二次資料ベース・原本未照合)。本ページは最も厳しい 2% + 2% を設計基準として採用しています。緩和は本 Wiki の値では適用できません。 適用する場合は必ず最新版の内線規程本体の当該条を自分で確認し、節番号と版年を控えてください。
  • 電動機始動時の 10〜15%:実務慣行値です。かつて本ページは根拠を「JEM 規格」と記載していましたが、該当する JEM 規格番号を一次確認できなかったため削除しました(2026-07-30)。実際の許容値は接続機器側の制約(電磁接触器の保持電圧、不足電圧継電器の整定、DCS・計装電源の許容変動 ±10% など)から個別に決めます。
  • 計算式:e = √3・I・(R cosθ + X sinθ)・L は送り端・受電端の電圧位相差を無視した簡略式です(通常の低圧配線の精度としては十分。内線規程系の簡略式も同じ近似に立ちます)。本ページの計算例の算術は 2026-07-30 に再計算で検算済みです。
  • 導体抵抗 R(20℃)(2026-08-02 に確定・参考値):R 表の R(20℃) 列は JIS C 3605 が定める最大導体抵抗(20 ℃)です。JIS 原本は有償のため未照合ですが、同規格を関連規格として明記したメーカーカタログ3社で全サイズを照合し、一致を確認しました(出典は下表)。かつて本ページは 14 sq を 1.32 Ω/km、選定ツールは 1.37 Ω/km としており、どちらも3社のいずれとも一致しない出所不明の値だったため、両方を規格値に統一しました。

    照合先 対象 備考
    フジクラ・ダイヤケーブル 600V CV カタログ 単心/2 心/3 心/4 心 「関連規格 JIS C 3605」「最大導体抵抗(20℃)」と明記
    矢崎エナジーシステム 物品仕様書 YESS 3131-2E1S(600V CV) 1〜4 心 付表「導体抵抗(20℃)」
    古河電工産業電線 600V CV 構造表 単心/2〜4 心 「最大導体抵抗(Ω/km)20℃」
    • 8 sq のみ3社が割れます:フジクラ・古河は 2.36(導体構成 7/1.2)、矢崎は 2.34(円形圧縮)。導体構成が違えば規格値も変わるため、2社一致かつ保守側の 2.36 を採用しました。他の全サイズは3社完全一致です。
    • 多心と単心は別の値です:上表は多心(2/3/4 心)の値で、CVT(600V CVT 仕様書)も同値です。単心はより線の撚り込みが無いぶん約 2 % 低く、14 sq で 1.31 Ω/km です。
    • 20 ℃ の値は電圧降下の計算には使いません。運転温度では抵抗が上がります(銅の温度係数は約 0.00393 /K。CV の最高許容温度 90 ℃ では 20 ℃ 値の約 1.28 倍)。設計基準は次の R(90℃) です。
    • 導体抵抗 R(90℃)(2026-09-17 に設計基準として確定):R 表の R(90℃) 列は 日本電線工業会 技術資料 技資第103号B「低圧電線・ケーブルのインピーダンス」(2024年6月) 表③(50 Hz)・表④(60 Hz)の「R(90℃)」列の値です。CV 2/3心は「2心及び3心 一括シース形」、CVT は「デュプレックス形・トリプレックス形・カドラプレックス形」の列を採り、2026-09-17 に原本 PDF の 8〜9 ページで全サイズ・両周波数を直接照合しました。
    • 同資料 5 章の計算例①が R(90℃) を使っています:「三相 3 線式・200 V・125 A・力率 0.85 の回路に 600V CV 3×60 mm² を 60 m 布設(50 Hz)」で e = √3 × 125 × 0.06 × (0.397 × 0.85 + 0.0768 × 0.527) = 4.9 V → 2.5 %。この 0.397 は 60 sq の R(90℃) で、20 ℃ 値 0.311 ではありません。
    • 2026-08-02〜09-17 の間、本ページと選定ツールは R(20℃) で計算していました。この期間の計算結果は電圧降下を 2 割強小さく見積もっています(14 sq の例で 10.2 V → 13.0 V)。同期間に本ページの式で判定した回路は、R(90℃) で再計算してください。
    • R(90℃) は交流実効抵抗で、表皮効果・近接効果を含みます。20 ℃ の直流抵抗に温度係数を掛けただけの値とは 38 sq 以上で一致しません(250 sq で 0.0961 対 0.0985)。温度換算で代用しないでください。
    • X は温度で変わりません(下記)。R(90℃) と組み合わせて使います。
  • リアクタンス X:日本電線工業会 技術資料 技資第103号B「低圧電線・ケーブルのインピーダンス」(2024年6月) 表③(50 Hz)・表④(60 Hz)の規格値です。同資料は無償公開で、2026-08-02 に原本 PDF を直接照合しました(本 Wiki で数値の出所を一次資料そのもので確認できた数少ない例です)。CV 3 心は「2 心及び 3 心 一括シース形」、CVT は「デュープレックス形・トリプレックス形」の列を採っています。

    • X は温度では変わりません。導体間隔と導体径で決まる幾何量に周波数を掛けたもの(同資料 3.3 の算式は X = K1(0.25 + log(K2·S/d1))、K1 は 50 Hz で 0.0628・60 Hz で 0.0754)なので、R(90℃) と組み合わせてそのまま使えます。
    • かつての値はどちらも誤りでした。本ページの計算例は X = 0.083 Ω/km、選定ツールは X = 0.09 Ω/km 固定でしたが、0.09 は全サイズ・両種別・両周波数のどれとも一致せず出所不明でした(0.083 は CV 14 sq・50 Hz の 0.0828 にたまたま近い値です)。2026-08-02 に全値を規格値へ差し替えました。
    • 同資料はアルミ導体(AL-CVT 等)の表も持ちます。本 Wiki は銅導体のみを扱います。
  • 始動電流倍率 5〜8 倍・始動時力率 0.3〜0.4:一般的な誘導電動機の目安値で、機種・メーカーにより異なります。正確には銘板・データシートの拘束電流値を用いてください。

条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-19 閲覧)

本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-19 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出しています。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。

  • 電気事業法(昭和39年法律第170号): 第26条
  • 電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号): 第38条

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