耐圧試験・絶縁診断¶
30秒まとめ¶
絶縁抵抗測定は「数値の絶対値」より「経年変化のトレンド」が重要。PI 値 2.0 以上が良好の目安。直流耐圧試験後は必ず残留電荷の放電を確認してから接触する。
絶縁抵抗測定 判定基準一覧¶
設備種別ごとの絶縁抵抗の目安値(法定値・実務値の出所はページ末尾の「根拠と適用上の注意」参照)。メガー印加電圧・法定絶縁抵抗値・実務管理値の正典は 絶縁管理 とし、本表はそれと同一基準で整理している。
| 設備種別 | 測定電圧(メガー) | 判定基準 |
|---|---|---|
| 低圧回路(300V 以下・対地電圧 150V 以下) | 500 V | 法定 0.1 MΩ 以上(電技省令58条)、実務は 1 MΩ 以上を良好 |
| 低圧回路(300V 以下・対地150V 超) | 500 V | 法定 0.2 MΩ 以上、実務は 1 MΩ 以上を良好 |
| 低圧回路(300V 超) | 500 V | 法定 0.4 MΩ 以上、実務は 1 MΩ 以上を良好 |
| 6.6kV 高圧機器 | 5000 V | 法定値の定めなし。トレンド管理(前回比の急低下に注意) |
| 高圧ケーブル(6.6kV) | 5000 V | トレンド管理。新品は数 GΩ、劣化で低下 |
| 高圧モーター | 5000 V | PI 値 ≥ 2.0(下表参照)・トレンド管理 |
| 変圧器巻線 | 5000 V | トレンド管理(新品時の 1/10 以下は要注意) |
メガー印加電圧の統一基準
低圧回路=500V メガー、高圧機器・ケーブル(6.6kV 級)=5000V メガーを原則とする(AC100V 以下の弱電機器は 250V、用途により 1000V・2500V もあり)。詳細は 絶縁管理 を参照。
絶縁抵抗は温度依存性が大きい
巻線温度が 10℃上昇すると絶縁抵抗は約 1/2 に低下する。 測定値は温度記録と合わせて管理し、同条件(同温度)での値を比較すること。
PI 値(成極指数)の計算と評価¶
PI 値は時間とともに絶縁体内の電荷分布が安定していくことを利用した劣化指標。
PI = 10分後の絶縁抵抗(MΩ) / 1分後の絶縁抵抗(MΩ)
| PI 値 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| 4.0 以上 | 優良 | そのまま継続使用 |
| 2.0〜4.0 | 良好 | そのまま継続使用 |
| 1.5〜2.0 | 要注意 | 清掃・乾燥を実施して再測定 |
| 1.0〜1.5 | 不良 | 使用停止・巻線清掃・乾燥処置 |
| 1.0 未満 | 危険 | 運転禁止・修理または交換 |
吸収比(1分値/30秒値)¶
PI 値の簡易版として使われる指標。
吸収比 = 1分後の絶縁抵抗(MΩ) / 30秒後の絶縁抵抗(MΩ)
| 吸収比 | 判定 |
|---|---|
| 1.3 以上 | 良好 |
| 1.0〜1.3 | 要注意 |
| 1.0 未満 | 不良 |
直流耐圧試験の手順と注意事項¶
試験電圧の目安¶
竣工時(新設・更新時)の試験電圧は、6.6kV ケーブル(電路)が電技解釈 第15条、6.6kV モーター(回転機)が第16条第2項に基づく法定値。最大使用電圧=6600 × 1.15 / 1.1 = 6900 V(係数は解釈第1条の1-1表)を基準に、交流試験電圧はケーブル・回転機とも 6900 × 1.5 = 10350 V(約10.35 kV)。直流代替の倍率はケーブルと回転機で異なり、ケーブル=交流試験電圧 × 2 = 20700 V(約20.7 kV、第15条第二号)、回転機=交流試験電圧 × 1.6 = 16560 V(約16.6 kV、第16条第2項第二号)となる。いずれも印加時間は 10 分。ケーブルの詳細計算は 高圧ケーブル と同一値で統一している。
| 設備 | 区分 | 試験電圧 | 印加時間 |
|---|---|---|---|
| 6.6kV 高圧ケーブル | 竣工時 交流 | AC 約10.35 kV | 10 分 |
| 6.6kV 高圧ケーブル | 竣工時 直流 | DC 約20.7 kV(交流試験電圧の2倍・ケーブルのみ) | 10 分 |
| 6.6kV 高圧ケーブル | 維持(経年診断) | 単一のDC正典値なし。DCは非推奨→下記参照 | 社内基準/VLF・tanδ・PD |
| 6.6kV モーター | 竣工時 交流 | AC 約10.35 kV | 10 分 |
| 6.6kV モーター | 竣工時 直流 | DC 約16.6 kV(交流試験電圧の1.6倍・回転機の代替) | 10 分 |
| 6.6kV モーター | 維持(診断) | 単一のDC正典値なし。DCは非推奨→下記参照 | 社内基準/トレンド管理 |
維持診断に単一のDC試験電圧はない(代替診断へ)
竣工時(新設・更新)のケーブルの交流 10.35 kV/直流 20.7 kV・各10分は電技解釈 第15条、モーター(回転機)の交流 10.35 kV/直流 16.6 kV は第16条第2項の法定値です。一方、経年ケーブルの維持診断には法定値も単一の正典値も存在しません——これは未確定事項ではなく、そもそも「診断目的の固定DC電圧」を定めた規格がないという事実です。XLPE(CV)へのDC直流耐圧は近年非推奨(電界分布の相違・水トリー助長・残留電荷によるアフターブレークダウン)で、実務は VLF(0.1Hz)耐圧・交流耐圧・tanδ・部分放電(PD)・残留電荷法などの非破壊診断へ移行しています。判定は絶対値でなく前回比(目安:前回の 80% 以下で劣化疑い)で行います。やむを得ずDCを用いる場合も全電圧(20.7 kV)印加は健全部を痛めるため低減電圧の段階印加とし、印加電圧は必ず社内保全基準・ケーブルメーカー診断基準(JEAC 8021 の趣旨に沿う)で定めること。第15条の直流代替規定は竣工試験としては法的に現存します。
試験手順¶
1. 試験対象を系統から完全に切り離す(断路器・VCB を開路)
2. 対象機器の両端に放電棒で接触し残留電荷がないことを確認
3. 高電圧試験器を接続(非試験側は接地)
4. ゆっくり電圧を上昇させる(急上昇はサージを与える)
5. 試験電圧到達後、所定時間維持(竣工時の法定試験は上表のとおり 10 分)
6. 漏れ電流を測定・記録
7. 電圧をゆっくりゼロまで降下させる
8. 接地棒を使って放電する(★必ず実施)
9. 放電後も数分待ってから触れる
残留電荷の放電確認は最重要
直流耐圧試験後のケーブルや機器には試験電圧に近い残留電荷が蓄積されている。 接地棒をケーブル端末に接触させると放電音がする場合がある。 放電確認なしに触れることは厳禁。 接地操作後も最低2〜3分は放電を継続し、接地したまま作業する。
測定前の残留電荷放電確認¶
あらゆる絶縁測定・耐圧試験の前にも、前回の試験や通常運転から残留している電荷を放電することが必要。
確認手順:
1. 測定対象を停電・切り離し
2. 接地棒(放電棒)を使って各端子を接地する
3. 接地した状態で最低30秒〜2分待つ
4. 残留電圧が0Vであることを検電器で確認
5. 測定器を接続する
大容量コンデンサ・長距離ケーブルの放電時間
進相コンデンサや長距離高圧ケーブルは容量が大きいため、放電に時間がかかる。 接地棒での放電後に放電抵抗(放電専用の高抵抗器)を使って安全に放電する。
根拠と適用上の注意¶
- 低圧回路の法定絶縁抵抗値(0.1 / 0.2 / 0.4 MΩ): 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第58条。区分は「使用電圧 300 V 以下で対地電圧 150 V 以下=0.1 MΩ」「300 V 以下のその他=0.2 MΩ」「300 V 超=0.4 MΩ」。同条の「対地電圧」は、接地式電路では電線と大地との間の電圧、非接地式電路では電線間の電圧を指します(条文内の定義)。
- 高圧機器・ケーブルの絶縁抵抗: 法定値はありません(省令第58条は低圧のみ。高圧・特別高圧の絶縁性能は耐圧試験〔解釈第15条・第16条〕で規定される)。本表の 5000 V メガー・トレンド管理は実務慣行です。
- 最大使用電圧 6900 V: 電技解釈 第1条第二号イ・1-1表(使用電圧 1,000 V 超 500,000 V 未満は係数 1.15/1.1。公称電圧の定義は同表が引用する JEC-0222-2009「標準電圧」による)。
- ケーブル(電路)の耐圧: 電技解釈 第15条第一号(最大使用電圧 7,000 V 以下の交流電路は最大使用電圧の 1.5 倍の交流電圧を連続 10 分)・第二号(電線にケーブルを使用する交流の電路は、交流試験電圧の 2 倍の直流電圧でも可)。
- 回転機(モーター)の耐圧: 電技解釈 第16条第2項第一号・16-2表(最大使用電圧 7,000 V 以下は最大使用電圧の 1.5 倍〔500 V 未満となる場合は 500 V〕を連続 10 分)・第二号(回転変流機を除く交流の回転機は、試験電圧の 1.6 倍の直流電圧でも可)。直流代替の倍率がケーブルの 2 倍とは異なる点に注意。なお同項第三号により、最大使用電圧 7,000 V 以下の誘導電動機は日本電気技術規格委員会承認規格「電路の絶縁耐力の確認方法」による確認も認められます。
- 照合日: 上記の条番号・数値は、省令=e-Gov 法令検索の現行条文、解釈=「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月版)の原典 PDF で 2026-07-30 に逐語照合しました。改正で番号・数値が変わり得るため、適用時は最新版を確認してください。
- 限界の明示:
- PI 値(2.0 以上で良好等)・吸収比(1.3 以上で良好等)の判定表は法定値ではなく実務慣行値です(回転機絶縁の判定慣行は IEEE Std 43 に由来するとされますが、原典未照合のため本ページでは規格の節番号を記載しません)。
- 「10 ℃上昇で絶縁抵抗が約 1/2」も実務の経験則であり、規格の規定値ではありません。
- 維持診断(VLF・tanδ・PD・前回比 80 % の目安)は JEAC 8021 の趣旨に沿うとされる実務運用で、JEAC 8021 原本は未照合のため節番号は意図的に記載していません。判定は社内保全基準・メーカー診断基準を正としてください。
条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-17 閲覧)¶
本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-17 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出し、実ページで要素の存在を確認しました。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号): 第58条
- 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正): 経済産業省 原典 PDF — 第1条・第15条・第16条。2026-09-18 に同 PDF の該当条を直接照合し、本ページの引用内容と一致することを確認しました(前回照合 2026-07-30。条番号の異同はありません)
関連ページ¶
- 絶縁監視(常時監視) — 停電できない回路の絶縁劣化を常時監視する方法(本ページのスポット測定と補完関係)
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