測定器の使い方¶
30秒まとめ¶
測定器は「目的に合った機種・レンジ・接続方法」を選ぶことが精度と安全の基本。ループキャリブレーターはソース/シンクモードの選択を間違えると機器を壊す。メガーは測定前後の放電徹底が必須。
デジタルマルチメーター(DMM)¶
各モードの使い方¶
| モード | 接続方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 電圧(AC/DC) | 並列接続(両端に当てる) | 高電圧レンジから始める・最大入力を超えない |
| 電流(AC/DC) | 直列接続(回路を切断して挿入) | 電流モードで電圧源に並列接続は破損の原因 |
| 抵抗 | 被測定物に接続(無電圧状態で) | 通電中の測定は禁止 |
| 導通チェック | 被測定物に接続 | ブザーが鳴る = 0〜数十Ω 以下 |
| ダイオード | 極性を確認して接続 | 順方向電圧を表示 |
電流測定の誤りで内部ヒューズが切れる
電流測定端子(mA/A 端子)に電圧源を接続すると大電流が流れ内部ヒューズが切れる(最悪は爆発)。電流測定前に「端子の位置」と「モード」を必ず確認する。
安全上の注意¶
- カテゴリ(CAT II/III/IV)を確認して使用環境に合った機種を選ぶ
- リード線は被覆の損傷がないことを確認してから使用
- 高電圧測定は片手を背中に回して作業(ループ電流防止)
クランプメーター¶
交流電流の実測¶
1. クランプ口を開け、測定する電線 1 本のみをクランプ内に入れる
2. 複数の電線を同時に挟むと電流が打ち消し合い 0 を示す
3. ケーブルをクランプ中央に位置させる(偏芯で誤差が生じる)
漏れ電流測定モード¶
クランプメーターのロー電流レンジ(mA 測定)または漏れ電流計を使用する。
漏れ電流測定の方法:
- 3 相回路:R・S・T の 3 本を同時にクランプ → 不平衡分(漏れ電流)を検出
- 単相 2 線:L・N の 2 本を同時にクランプ → 差分が漏れ電流
| 判定 | 漏れ電流値 |
|---|---|
| 良好 | 1mA 以下 |
| 要注意 | 1〜5mA |
| ELCB トリップ圏(30mA ELCB) | 15mA 超(動作感度の 1/2 以上) |
絶縁抵抗計(メガー)¶
→ 詳細手順は 絶縁管理 を参照
クイックリファレンス(印加電圧の選択)¶
| 対象 | 測定電圧 |
|---|---|
| 低圧電路・電動機(200V) | 500V |
| 高圧ケーブル・設備(6.6kV) | 5000V |
| 電子回路(PLC・伝送器) | 測定禁止(切り離してから測る) |
合否の判定値は設備種別で変わります
合格基準は回路電圧ではなく設備種別で決まります(低圧なら幹線ケーブル・電動機・制御回路・電熱器で別、高圧ならケーブルの新品/使用中・変圧器一次側・電動機で別)。 判定値の正典は 絶縁管理 です。本ページは印加電圧の選択にとどめ、合否の数値は持ちません。
測定手順(要点):
1. 停電・検電確認
2. 残留電荷放電(接地棒を当てて 5 分以上)
3. 電子機器の端子を外す
4. LINE → 導体、EARTH → 接地でメガーを接続
5. 1 分間値を記録
6. 測定後に放電(メガー内蔵放電スイッチ + 接地棒)
ループキャリブレーター¶
4-20mA ループ回路の信号出力・測定・シミュレーションに使用する。
モードの選択¶
モードの違いは「ループ電源をどちらが持つか」で決まります。
| モード | 動作 | 外部ループ電源 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| ソース(SOURCE) | キャリブレーターが電流源として能動的に出力する | 不要(キャリブレーターが駆動) | 電源を持たない受動側(DCS アナログ入力等)に信号を入れる |
| シンク(SINK/SIMULATE) | 外部電源が駆動するループの電流を、規定値に吸い込む。2線式伝送器の代役 | 必須(機種により 12〜48 V 程度) | ディストリビュータ等が電源を持つループで伝送器を模擬する |
| 測定(MEASURE) | ループに直列に入れて電流を読む(受動) | ループ側にあること | 伝送器の出力電流を実測する |
| ループ電源付き測定(LOOP POWER 等) | キャリブレーターが24V を供給しながら電流を読む | キャリブレーターが供給 | ディストリビュータの代わりに2線式伝送器を駆動し、出力を読む |
SINK は「24V を供給する」モードではありません
SINK(SIMULATE)は外部ループ電源が必須で、キャリブレーターは電流を吸い込む側です。「キャリブレーターが 24V を供給しながら測る」のは別の機能(ループ電源付き測定)で、両者を取り違えると接続を誤ります(下記「根拠」参照)。 呼称はメーカーにより SIMULATE / SINK / 電源供給 Off 設定と揺れますが、意味は共通です。
モードの誤選択で機器を壊す
ソースモードで外部電源のあるループに接続すると、電源同士が衝突して機器や校正器を損傷します。接続前に「そのループの電源はどこが持っているか」を必ず確認してからモードを選んでください。
接続方法¶
ソース(SOURCE): 受動側へ信号を入れる
ループキャリブレーター ─(+)─ DCS アナログ入力(+)
─(-)─ DCS アナログ入力(-)
※ 外部ループ電源なし。キャリブレーターが電流を作って流し込む
シンク(SINK/SIMULATE): 伝送器の代役になる
DC24V 電源(+) ─ ループキャリブレーター ─ 受信側 ─ DC24V 電源(-)
※ 伝送器を外し、その位置にキャリブレーターを入れる(ループ内に伝送器は無い)
※ ループを駆動するのは外部電源。キャリブレーターは電流を吸い込んで値を作る
測定(MEASURE): 伝送器の出力を実測する
DC24V 電源(+) ─ 伝送器 ─ ループキャリブレーター(電流計)─ DC24V 電源(-)
※ 伝送器はループ内に残したまま、直列に電流計として入れる
ループ電源付き測定(LOOP POWER 等): ディストリビュータの代わりをする
ループキャリブレーター(24V+) ─ 伝送器 ─ ループキャリブレーター(mA)
※ キャリブレーターが給電と電流測定を同時に行う
検電器の種類と使い方¶
| 種類 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| ネオン管式 | AC100〜600V | 接触型・電源不要・シンプル |
| 電子式(低圧用) | AC100〜600V | 非接触・LEDまたはブザーで報知 |
| 高圧用検電器 | 3.3〜33kV | 絶縁棒付き・ネオン管または電子式 |
使用上の注意¶
- 測定前後に「既知の活線」でテストし、検電器の動作確認を行う
- 電子式非接触型は誘導電圧に反応することがある → 最終確認は接触型でも確認
- 高圧検電器は定格電圧に合ったものを使用(6.6kV 系には 6kV 以上対応品)
- 雨天・結露時は検電器の絶縁性が低下するため天候を考慮する
関連ページ¶
- 絶縁管理 — メガーの詳細手順・温度補正・判定基準の全体像
- 定期点検 — 各測定器を使用する年次・月次点検の項目一覧
- 校正 — ループキャリブレーターの校正作業での活用方法
- データ活用・予兆保全 — クランプメータ・放射温度計・振動計を使った CBM の実践
- 停電作業 — 検電器を使った無電圧確認の安全手順
根拠¶
ループキャリブレーターの SINK の説明が別機能の説明になっていました(2026-08-03 是正)¶
かつて本ページは SINK を「キャリブレーターが 24V 電源を供給しながら mA を計測」と説明し、配線例も「DC24V 電源 → 伝送器 → キャリブレーター(電流計)→ 電源(−)」としていました。どちらも誤りです。
主要各社の取扱説明書・カタログを 2026-08-03 に照合したところ、SINK(SIMULATE)の定義は全社一致でした。
| 項目 | 各社の定義 | 本ページの旧記述 |
|---|---|---|
| 外部ループ電源 | 必須(機種により 12〜48 V 程度) | 記載なし(むしろ供給する側と書いていた) |
| キャリブレーターの役割 | 電流を吸い込む(2線式伝送器の代役) | 24V を供給する(誤り) |
| ループ内の伝送器 | 外して、その位置にキャリブレーターを入れる | 伝送器を残した配線図(=MEASURE の接続) |
旧記述の「24V を供給しながら測る」は、各社が MEASURE の派生機能(ループ電源付き測定/LOOP POWER)として別立てしているものでした。SINK と取り違えると、外部電源のないループに SINK で入って動かない、あるいは電源が二重になるといった誤りにつながります。表に4モードを並べて区別できるようにし、配線例も4つに分けました。
呼称は SIMULATE / SINK / 電源供給 Off 設定とメーカー間で揺れますが、意味の割れは確認されませんでした(「SINK=24V を供給する側」と定義するメーカーは確認できず)。
絶縁抵抗の「合格基準」を本ページから外しました(2026-08-03 是正)¶
クイックリファレンス表に「低圧 1 MΩ 以上/高圧 10 MΩ 以上」という合格基準を持たせていましたが、これは回路電圧だけで切った単純化です。絶縁管理(正典)の実務管理値は設備種別で境界が異なり、低圧では幹線ケーブルの要注意域が 0.1〜1 MΩ・電熱器は 0.1 MΩ 以上が良、高圧では 10 MΩ 以上はケーブル(使用中)の値で変圧器一次側は 100 MΩ 以上、高圧電動機は「設備電圧 [kV] + 1 [MΩ] 以上」です。
同型の単純化は 接地・ノイズトラブル にもあり、そちらも撤去済みです。本ページの表は印加電圧の選択に限定し、合否の数値は正典に一本化しました(R6)。
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- 漏れ電流の判定(1 mA 以下=良好/1〜5 mA=要注意/15 mA 超)。15 mA は「30 mA 定格の ELCB の動作感度の 1/2」という考え方に基づく目安です
- 残留電荷の放電を接地棒で5分以上、メガー測定を1分値で読む運用
- 高電圧測定で片手を背中に回す(ループ電流防止)という作業習慣
- 導通チェックのブザーが鳴る閾値(0〜数十 Ω)は機種によります
原本未照合(honest-hold)¶
- 漏電遮断器の不動作電流(定格感度電流の 50 % で動作しない)を定めた製品規格は本 Wiki では照合していません。 15 mA という境界はこの考え方から導いた目安で、規格値として引用しないでください。なお電技解釈第36条は施設義務のみで感度電流の数値を規定していません(接地(低圧) 参照)
- 測定カテゴリ(CAT II / III / IV)の区分は IEC 61010 系ですが原本未照合です。機種の適合表示と使用環境の対応はメーカーの仕様で確認してください
- 検電器の定格・使用条件(高圧用の 3.3〜33 kV、雨天時の性能低下)も未照合です。定格に合った機種の選定は製品仕様によってください
- ループキャリブレーターのモード定義はメーカーの取扱説明書・カタログで照合しました(複数社で一致)。規格として定義されたものではないため、実機の呼称・端子構成は必ずその機種の取説で確認してください
限界の明示¶
- 測定器は誤った使い方で機器を壊し、人を傷つけます。 本ページの注記(電流端子への電圧源接続、電子回路へのメガー印加、ソース/シンクの誤選択)は、いずれも実際に破損が起きる操作です
- 検電は「既知の活線でのテスト → 検電 → 再テスト」が原則です。停電作業での無電圧確認の手順は 停電作業 が正典です
- 本ページは使い方を扱います。校正(トレーサビリティ・周期)は 校正、判定値は 絶縁管理 が正典です
正典参照¶
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 絶縁抵抗の判定値・温度換算・トレンド管理 | 絶縁管理 |
| 校正のトレーサビリティ・周期・記録 | 校正 |
| 検電・短絡接地を含む停電作業の安全手順 | 停電作業 |
| 接地抵抗の測定手順と判定 | 接地点検ガイドライン |
| ELCB の感度電流と条文の関係 | 接地(低圧) |
| CBM でのクランプメータ・放射温度計・振動計の使い方 | データ活用・予兆保全 |
照合日: 2026-08-03。
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