保護継電器¶
30秒まとめ¶
OCR(過電流)・GR/DGR(地絡)が高圧回路保護の基本2本柱。整定は「保護したい設備の定格電流」と「上位との時限協調」で決まる。CT 二次回路を開路すると高電圧が発生する危険があるので絶対に開放しない。
OCR(過電流継電器)整定計算¶
電流整定¶
変圧器一次側 OCR の整定電流は変圧器定格電流を基に設定する。
CT 二次換算電流 = 変圧器定格電流(A) / CT 変流比
例:1000 kVA、6.6kV 変圧器の場合
定格電流 = 1000kVA / (√3 × 6.6kV) = 87.5 A
CT 変流比:100/5A の場合
CT 二次換算電流 = 87.5 / 20 = 4.375 A
限時電流整定値 = 4.375 × 1.2 = 5.25 A → 5.5 A タップに設定
瞬時電流整定値 = 4.375 × (6〜10) = 26〜44 A → 最大短絡電流を超えないよう設定
時限整定¶
上位変電所との協調を確保するため、下位の時限 < 上位の時限(最低 0.3 秒以上の差)。
| 階層 | 時限設定の目安 |
|---|---|
| 最下位(モーター/変圧器直近) | 0.1〜0.3 秒 |
| 中間(フィーダー) | 0.4〜0.7 秒 |
| 上位(母線側) | 0.8〜1.2 秒 |
GR と DGR の違い¶
| 項目 | GR(地絡継電器) | DGR(地絡方向継電器) |
|---|---|---|
| 検出方式 | 零相電流(I₀)の大きさのみ | 零相電流(I₀)+零相電圧(V₀)の方向 |
| 判定 | 地絡の有無のみ | 地絡の発生方向(自回線 or 他回線) |
| 誤動作 | 他回線地絡で誤動作の可能性あり | 他回線地絡での誤動作を防げる |
| 使用箇所 | 単一フィーダー | 複数フィーダーが並列の系統 |
化学プラントでの選定
複数の 6.6kV フィーダーが同一母線から出ている場合は DGR を採用し、 他回線地絡による不必要停電を防止する。
デジタル継電器の設定画面の見方¶
主要メーカーのデジタル継電器で確認する主要パラメータ。
| パラメータ | 三菱(MELPRO-D) | 東芝(GRL) | オムロン |
|---|---|---|---|
| 限時電流整定 | PICKUP | I₁ | IS |
| 瞬時電流整定 | INST | I₂ | Ih |
| 時限 | TIME | TL | T |
| 位相角(DGR) | θ | θ | θ |
設定変更後は必ず設定値の記録と試験(注入試験)による動作確認を実施する。
CT 二次回路の開路禁止¶
CT 二次回路を開路すると危険
CT(変流器)は一次電流を強制的に二次側に流そうとする。 二次回路を開路すると、一次電流がすべて二次コイルの磁化に使われ、 数 kV の高電圧が二次端子に発生する。感電・機器破損の危険がある。
CT の二次回路で作業する際のルール: 1. CT 短絡(shorting)端子で二次回路を短絡してから作業する 2. 作業完了後に短絡を外す 3. 停電状態での作業が最も安全
トリップ確認試験の実施手順¶
定期点検時に継電器の動作を確認する試験。
【注入試験手順】
1. 対象フィーダーの VCB を開路し、停電状態にする
2. CT 二次側に試験電流注入装置を接続
3. 整定値の 1.1 倍の電流を注入し、規定時限内でトリップ出力が出ることを確認
4. 瞬時要素については整定値以上の電流を注入してトリップ確認
5. トリップ確認後、VCB の解放動作を確認
6. 試験記録(電流値・時限・担当者・日時)を作成
無電圧試験(継電器単体試験)
VCB のトリップ回路を含めた一連の動作確認を「トリップ試験」と呼ぶ。 継電器単体の特性確認だけでなく、トリップコイル・VCB 機構部も含めた総合確認が重要。
根拠と適用上の注意¶
- 過電流保護(OCR)の施設義務: 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第14条。「電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない」。
- 高圧の過電流遮断器の性能: 電技解釈 第34条第1項。短絡時に「施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力」(第一号)と、動作に伴う開閉状態の表示装置(第二号。開閉状態を容易に確認できるものを除く)が要求されます。
- 地絡保護(GR/DGR)の施設義務: 省令 第15条(地絡遮断器の施設その他の適切な措置)。高圧電路への具体的規定は電技解釈 第36条第4項・36-1表で、「他の者から供給を受ける受電点」の負荷側電路が施設対象です。ただし同表右欄に「他の者から供給を受ける電気を全てその受電点に属する受電場所において変成し、又は使用する場合」は施設不要とする除外があり、施設要否は構内の受電構成によって変わります。
- 照合日: 上記条文は、省令=e-Gov 法令検索の現行条文、解釈=「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月版)の原典 PDF で 2026-07-30 に逐語照合しました。改正で番号・内容が変わり得るため、適用時は最新版を確認してください。
- 限界の明示:
- 本ページの整定値(限時=定格の 1.2 倍、瞬時=定格の 6〜10 倍、時限差 0.3 秒以上、時限階層の目安、注入試験の 1.1 倍)はいずれも法定値ではなく実務慣行値です。高圧受電設備規程(JEAC 8011)に整定・協調の考え方が示されているとされますが、原本未照合のため本ページでは節番号を記載しません。適用時は自事業場の保安規程・上位系統(電力会社)との協議値を正としてください。
- メーカー別のパラメータ名の表(MELPRO-D/GRL 等)は実務経験に基づく参考であり、各社の最新マニュアルとは未照合です。設定作業では必ず該当機種の取扱説明書を確認してください。
条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-17 閲覧)¶
本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-17 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出し、実ページで要素の存在を確認しました。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号): 第14条・第15条
- 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正): 経済産業省 原典 PDF — 第34条・第36条。2026-09-18 に同 PDF の該当条を直接照合し、本ページの引用内容と一致することを確認しました(前回照合 2026-07-30。条番号の異同はありません)
関連ページ¶
- 遮断器・断路器 — VCB 動作・トリップ信号・インターロック
- 変圧器 — OCR・ブッフホルツ継電器の配置
- 保護協調 — 多段階保護・時限協調設定
- 保護リレー試験手順 — OCR/GR/DGR の動作試験・整定値確認を現場で行う実務手順
- 高圧カテゴリ — より広い高圧知識へ
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