作業許可証(PTW)発行手順¶
30秒まとめ¶
工場内のすべての電気計装作業は PTW(作業許可証)の取得が前提。作業計画 → 申請書記入 → 製造課の承認(生産側の停止可否) → LOTO による危険エネルギー隔離 → 設備管理者の承認(電気安全側の措置確認)、の順で進み、隔離と無電圧確認が完了するまで作業は開始できない。
承認は2段階ある。片方だけでは着手できない
| 承認 | 誰が | 何を見るか | いつ |
|---|---|---|---|
| 生産側の承認 | 製造課(担当班長・当直長) | 設備を止めてよいか・停止時間・生産への影響 | 隔離の前(前日まで) |
| 電気安全側の承認 | 設備管理者(電気担当) | 隔離・施錠・検電が正しく行われたか | 隔離・検電の後 |
制度としての位置づけと様式は 作業許可(PTW) を正典とし、本ページは現場での実施手順を扱います。 承認者の役職名は事業場の保安規程で定まります。本ページの「製造課」「設備管理者」は役割の呼称であり、自事業場の規程の呼称に読み替えてください。
Permit to Work(PTW / 作業許可証)の申請・発行・作業完了の手順です。
工場内のすべての電気計装作業は PTW の取得が必要です。
PTW なしの作業は禁止
作業許可証を取得していない状態での設備作業は、社内規程違反です。
「ちょっとだけ」「急いでいるから」は理由になりません。
PTW の目的¶
- 危険エネルギーの管理:電気・圧力・熱エネルギーの隔離・除去を確実に行う
- 関係者への情報共有:製造課・保全・安全部門が同一の認識を持つ
- 責任の明確化:誰が作業し、誰が承認したかを記録する
- 再確認の仕組み:作業前のリスクアセスメントを強制する
PTW の種類(工場によって異なる場合がある)¶
| PTW 種別 | 対象作業 |
|---|---|
| 一般作業許可 | 通常の保全・点検作業 |
| 熱作業許可(Hot Work) | 溶接・切断・グラインダー等の火花発生作業 |
| 密閉空間入域許可 | ピット・タンク・マンホール内作業 |
| 高所作業許可 | 高さ2m以上の作業 |
| 特別高・高圧電気作業許可 | 高圧活線近接・停電作業 |
PTW 発行の全体フロー¶
作業計画立案 → PTW 申請(作業者) → リスクアセスメント実施
→ 製造課承認(運転員・班長) → 安全部門確認(必要な場合)
→ 現場の危険エネルギー隔離 → 作業開始 → 作業完了
→ 現場復旧確認 → PTW クローズ
STEP 1:作業計画の立案(作業前日まで)¶
-
以下の内容を整理する
- 作業場所:建屋名・設備名・タグ番号
- 作業内容:具体的な作業(例:インバータ点検・配線変更・計器校正)
- 作業時間:開始〜終了の予定時刻
- 作業者:氏名・資格(電気工事士・特別教育等)
- 必要な安全措置:停電・ロックアウト・立入禁止区画等
-
作業対象設備のP&ID・回路図・単線結線図を確認する
- 前回のトラブル・注意事項を過去記録で確認する
複数日にわたる作業
複数日にわたる場合は作業日ごとにPTWを更新する。
前日のPTWを翌日も使いまわすことは禁止。
STEP 2:PTW 申請書の記入¶
所定の PTW 申請書(紙 or 電子システム)に記入する。
必須記入項目¶
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 申請日時 | YYYY-MM-DD HH:MM |
| 作業場所 | 詳細な場所(棟・エリア・設備番号) |
| 作業内容 | 具体的・明確に(「点検」だけでは不可) |
| 作業者 | 全員の氏名・資格(リーダーを明記) |
| 予定時間 | 開始〜終了 |
| 危険エネルギー | 電気・熱・圧力・化学物質等 |
| 隔離方法 | 停電・ロックアウト・バルブ閉止等 |
| 必要な保護具 | 絶縁手袋・保護メガネ・難燃服等 |
| 緊急時連絡先 | 現場最寄りの内線番号 |
リスクアセスメント記入¶
PTW 申請書のリスク欄に以下を記入する:
| 危険要因 | 最悪のケース | リスクレベル | 対策 |
|---|---|---|---|
| 感電 | 死亡・重傷 | 高 | 停電・検電・絶縁保護具 |
| 高所転落 | 死亡・重傷 | 高 | 安全帯・手摺り・落下防止 |
| 工具の落下 | 下方作業者の怪我 | 中 | 工具係留・立入禁止区画 |
STEP 3:製造課への申請・承認(生産側の承認)¶
- 作業予定日の前日までに製造課(担当班長・当直長)に PTW を持参して説明する
- 以下の内容を口頭で説明する
- 作業の目的・内容
- 停止が必要な設備と停止時間の見込み
- 生産への影響(停止・減産・代替手段)
- 製造課の承認サインをもらう
製造課の承認なしに作業開始禁止
「口頭で言った」だけでは承認にならない。
必ずサインをもらい、両者の手元に控えが残るようにする。
これは「設備を止めてよいか」の承認。電気安全の承認は隔離の後
ここで得るのは生産側の停止許可です。隔離・施錠・検電が正しく行われたことを確認する電気安全側の承認(設備管理者)は STEP 5 の隔離が終わった後に受けます。 許可書の「安全措置」欄(LOTO実施箇所・検電実施確認)は隔離後でなければ記入できないため、この2つは順序が逆になりません。
STEP 4:危険エネルギーの隔離(LOTO)¶
作業直前に、製造課立会いのもとで実施する。
電気的隔離(ロックアウト)手順¶
- 対象回路のブレーカ・断路器を開放(OFF)する
- ロック錠を取り付ける(作業者ごとに専用の錠と鍵を使用)
- タグ(Do Not Operate タグ)を取り付ける
ロック錠 → 作業者が鍵を保持している間は誰も投入できない仕組み
- 検電器で確実に停電を確認する
- 三相全相・各相-接地間を確認
- 検電器自体の動作確認を事前に行う
- 接地棒を取り付ける(誘導電圧・誤通電対策)
ロックアウト・タグアウト(LOTO)
ロックアウトは「物理的に操作できなくする」。
タグアウトは「操作しないよう警告する」。
両方を実施することが原則。タグアウトのみは許可されていない(社内基準。安衛則第339条第1項第一号の条文は施錠・表示・監視人の選択制であり、「ロック+タグの両方」は条文より厳しい安全側の運用。詳細は LOTO(ロックアウト) が正典)。
複数の隔離点がある場合¶
- 複数のブレーカ・バルブを隔離する場合はすべての隔離点を記録する
- PTW の隔離点リストに全点を記載する
- 隔離点の見落としが感電事故の最大の原因
STEP 5:作業開始¶
- 全ての安全措置が完了したことを確認する
- 作業者全員に PTW の内容を周知する(ツールボックスミーティング実施)
- 作業開始時刻を PTW に記録する
- 作業中は PTW を現場に携帯(または現場に掲示)する
ツールボックスミーティング(TBM)のチェックポイント¶
- [ ] 本日の作業内容の確認
- [ ] 危険箇所の確認(隔離完了確認)
- [ ] 保護具の着用確認
- [ ] 緊急連絡先の確認
- [ ] 体調の確認(「体調不良者は申し出てください」)
STEP 6:作業中の管理¶
- 作業内容が PTW の範囲を超えそうな場合は作業を止めて PTW を再申請する
- 隔離した設備に他の人が触らないよう監視する
- 作業範囲外への立入を防ぐ区画(バリケード・カラーコーン)を設置する
- 問題が発生した場合は PTW 申請者(リーダー)に即報告する
STEP 7:作業完了・PTW クローズ¶
現場の確認¶
- 工具・材料・廃材をすべて回収する(現場の7S確認)
- 盤扉・カバー・安全カバーをすべて復旧する
- 接地棒を取り外す
- ロック錠・タグを取り外す(作業者本人のみが取り外す)
他人のロックを外すことは絶対禁止
他の作業者のロック錠を無断で取り外すことは、その作業者の安全を脅かす行為。
例外なく禁止。鍵をなくした・作業者が帰った等の場合は手続きに従う。
- ブレーカ・断路器を復旧する前に製造課に連絡する
完了連絡と復電¶
- 「作業が完了した」「安全措置を解除する」ことを製造課に連絡する
- 設備管理者(電気担当)が電気的な安全を確認する — 全作業者の錠が外れていること、作業用接地・短絡接地が撤去されていること、盤内に工具・仮設物が残っていないこと
- 上記の確認が済んでから、製造課の立会いのもとで電源を投入する(または製造課が投入する)
- 設備の動作確認を実施する
復電は「電気的安全の確認」と「投入操作」の2つに分かれる
どちらか一方だけでは復電できません。電気的に安全かを判断するのは設備管理者(自家用電気工作物では電気主任技術者の指示のもと)、実際に投入するのは製造課という役割分担です。 この分離を曖昧にすると「双方が相手が投入すると思っている」または「二重投入」が起きます。役職名は事業場の保安規程の呼称に読み替えてください。
PTW クローズ¶
- PTW 完了欄に完了時刻・完了サインを記入する
- 製造課担当者のサインをもらう
- PTW を所定の場所に保管する(保管期間は法定の保存年限ではなく、保安規程・社内規程で定める。通常1年以上が目安)
チェックリスト(PTW クローズ時)¶
- [ ] 全工具・材料の回収完了
- [ ] 盤・設備カバーの復旧完了
- [ ] 接地棒の取り外し完了
- [ ] ロック錠・タグの取り外し完了(作業者本人が実施)
- [ ] 製造課への完了連絡済み
- [ ] 電源復旧・動作確認完了
- [ ] PTW 完了サイン・保管完了
よくある PTW ミスと防止策¶
| ミス | 防止策 |
|---|---|
| 前日の PTW を使いまわす | 毎日更新・日付確認 |
| 隔離点の漏れ | 隔離点リストをすべて記入してから作業開始 |
| 作業範囲の拡大(クリープ) | 範囲を超えそうになったら即停止・再申請 |
| 他人のロックを外す | 手続き(上長承認)なしで外さない |
| 完了報告なしに作業終了 | 製造課への連絡を手順に組み込む |
セキュリティで見るところ¶
PTW の対象に含まれているか
- 制御系のネットワーク・PC に触れる作業が PTW の対象になっているか(盤を開けない作業は対象外にされがちです)
- 持込PC・USBメモリ・リモート接続の申告欄があるか
→ 7場面の全体は 制御セキュリティの現場チェック を参照してください。
根拠¶
- PTW という手続き自体は法定様式ではありません: 本ページの申請書式・2段階承認(生産側/電気安全側)・リスクアセスメント欄・TBM・作業日ごとの更新・完了連絡フローは、法令が様式・手順として定めるものではなく、社内保安管理の実務手順です。制度としての位置づけと様式の正典は 作業許可制度(PTW) です。
- 停電・LOTO の法定部分: STEP 4 の隔離(開閉器の開放・施錠・タグ・検電・接地)と STEP 7 の復電前確認に対応する法定措置は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第339条第1項第一号〜第三号・第2項および第340条です。e-Gov 現行条文で 2026-08-01 に再照合し、条文との対応関係の詳細は 停電作業(停電作業全体)と LOTO(ロックアウト)(施錠・タグ・複数作業者管理)の根拠節を正典とします。そのうえで、本ページの次の運用は条文より厳しい安全側の実務・社内基準です。
- ロック錠+タグの両方を実施すること(第1項第一号の条文は施錠・表示・監視人の選択制)
- 低圧回路でも検電・接地棒取り付けを行うこと(検電器具による停電確認と短絡接地の条文上の義務は高圧又は特別高圧であった電路=第1項第三号)
- 作業者ごとの個人錠(1人1錠)と「本人のみが取り外す」運用
- 高所作業の「2 m」: PTW 種別表の「高さ2m以上」は、労働安全衛生規則第518条第1項(作業床の設置等)が墜落防止措置(作業床の設置等)を求める高さ「二メートル以上」と一致します(e-Gov 現行条文で 2026-08-01 に逐語照合)。ただし「高所作業許可」という許可区分そのものは法定ではなく社内制度です。
- 照合していない領域(honest hold): 熱作業(火気)・密閉空間入域に対応する法規制(消防関係法令・酸素欠乏症等防止規則等)への一次照合は本ページでは行っていません。PTW の種別表は「工場によって異なる」社内制度の例示であり、法令上の作業区分ではありません。
- 法定でない実務事項: 前日までの申請・製造課承認のタイミング・リスクアセスメント表の項目立て・TBM チェック項目・バリケード区画・7S 確認は社内手順です。PTW の保管期間「1年以上」も法定の保存年限ではなく、保安規程・社内規程で定める目安です。
- 作業者の資格: 作業者欄に記入する資格(電気工事士・特別教育等)の要否・範囲の法的根拠(安衛則第36条第四号ほか)は 特別教育・資格一覧 が正典です。
セキュリティ観点の節について(2026-09-17 追加)¶
本ページの「セキュリティで見るところ」節は運用上のチェック観点であり、法令・規格の逐語照合を持ちません。チェック項目の網羅性はなく、リスクアセスメントの代替にもなりません。限界の明示は 制御セキュリティの現場チェック の根拠節にあります。
条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-18 閲覧)¶
本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-18 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出しています。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。
関連ページ¶
- 作業許可制度(PTW)
- LOTO(ロックアウト)
- リスクアセスメント
- 停電作業
- 制御セキュリティの現場チェック — 作業許可で見る制御セキュリティの観点
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