グランド(GND)と接地(アース)¶
30秒まとめ¶
「グランド(GND)」と「接地(アース)」は混同されがちですが別物です。 グランド = 回路の動作基準となる電位(必ずしも対地 0 V ではない)、 接地 = その電位を大地につなぐこと(対地電圧をほぼ 0 V に固定) が核心です。 計装ではグランドを用途別に分けて配線し、最後に 1 点で接続・接地 することでノイズを抑えます。
このページの役割
ここは GND と接地の 用語・分類の整理(概念) を担当します。 低圧の接地種別(A/B/C/D 種)は 接地(低圧)、 ノイズ・グラウンドループの対策は 接地・ノイズトラブル を参照してください。
グランドと接地は何が違うか¶
| 項目 | グランド(GND / Ground) | 接地(アース / Earth) |
|---|---|---|
| 意味 | 回路の電位の 基準点(0 V 基準) | 基準点を 大地に接続すること |
| 対地電圧 | 必ずしも 0 V ではない | 理想的には 0 V(実際は接地抵抗・電位差でわずかに生じる) |
| 主な目的 | 回路動作の 電位の安定 | 感電防止・電位固定・ノイズ逃がし |
| 例 | 電池駆動回路の「−」基準、基板の GND パターン | 制御盤の計装アース、機器筐体の保護接地 |
「グランド = 0 V」とは限らない
グランドはあくまで「回路内で 0 V とみなす基準点」です。電池駆動の浮いた(フローティング)回路では、 その基準点が大地に対して数 V〜数十 V の電位を持つこともあります。 基準点を大地につないで初めて「接地」 になり、対地電圧がほぼ 0 V に固定されます。
グランドの種類¶
回路の性質ごとにグランドを分けて配線し、最終的に 1 点で結ぶのが基本です。
| 種別 | 略号 | 内容 |
|---|---|---|
| フレームグランド | FG | シャーシグランドとも呼ぶ。製品の金属筐体をグランドにして、複数回路の基準電位を統一する |
| シグナルグランド | SG | 信号回路の基準電位。回路の性質に合わせて分けて配線し、最後に 1 点で接続してノイズを抑える |
| アナロググランド | AGND | アナログ回路用のシグナルグランド |
| デジタルグランド | DGND | デジタル回路用のシグナルグランド |
| パワーグランド | PGND | 電力(駆動)回路用のシグナルグランド |
AGND / DGND / PGND を分ける理由
デジタル回路やパワー回路は、スイッチング時に大きく変動する電流をグランドに流します。 アナロググランドと共用すると、その変動が 微小なアナログ信号(mV レベル)にノイズとして重畳 します。 そのため AGND・DGND・PGND を別々に配線し、1 点(スター接続)でまとめて接続 することで、 変動電流がアナログ基準を揺らさないようにします。
結線イメージ(1点接地 / スター接続)¶
用途別のグランドはそれぞれ独立して配線し、最後に 1 点(スターポイント)で母線にまとめてから接地 します。
flowchart TD
A[アナログ回路] --> AG[AGND]
D[デジタル回路] --> DG[DGND]
P[電力回路] --> PG[PGND]
AG --> SP[1点アース母線 スターポイント]
DG --> SP
PG --> SP
SP --> E[接地・大地]
やってはいけない:渡り配線(数珠つなぎ)
各グランドを順に渡り配線(デイジーチェーン)すると、電力・デジタルの戻り電流がアナログ GND を通り、 アナログ基準が揺れてノイズ源になります。必ず 1 点で母線に集約 してから接地してください。
接地の種類¶
グランドをさらに大地へつなぐと「接地」になります。目的別に次の3種類があります。
| 種別 | 内容 | 主な目的 |
|---|---|---|
| フレーム接地 | フレームグランド(筐体)を大地に接続する | 感電防止。漏電時に筐体電位を上げない |
| シグナル接地 | シグナルグランドの電位をさらに大地で安定させる | 基準電位の安定・ノイズ低減 |
| 保護接地 | 人の安全を目的に機器を大地に接続する | 漏電時の感電防止(保護) |
保護接地(保護アース)は人命に直結
保護接地は漏電時の感電を防ぐための接地です。保護接地(PE)端子の誤接続・接地外れは感電・死亡事故につながります。 機器の保護接地が確実に大地へ接続されているかを必ず確認してください。 確認に使うのは接地抵抗計(アーステスタ)で、絶縁抵抗計(メガー)ではありません(測定手順・判定値は 接地点検ガイドライン が正典)。
計装信号のシールドは「片端接地」が原則
シグナルグランドやシールドを 両端で接地 すると、2 つの接地点間の電位差で 「グラウンドループ電流」が流れ、信号にノイズが乗ります。 計装ケーブルのシールドは DCS(制御盤)側の 1 点だけ で接地するのが原則です。 詳細は 計装配線 と 接地・ノイズトラブル を参照してください。
実務での要点¶
- グランド(基準電位)と接地(大地接続)を区別して考えると、ノイズ対策の議論が整理しやすくなります。
- 用途の違うグランド(AGND/DGND/PGND)は 分けて配線 → 1 点で接続 が鉄則です。
- 「保護接地」は人命にかかわる接地です。低圧機器の接地種別(A/B/C/D 種)は 接地(低圧) を参照してください。
電験学習者向け
「グランド = 回路の基準電位」「接地 = 大地への接続」という区別を押さえておくと、理論・法規の理解がそろいます。 対地電圧が 0 V になるのは「接地された側」であって、グランドそのものが常に 0 V とは限らない点が要注意です。
関連ページ¶
- 計装配線 — シールドの片端接地・離隔・ループ抵抗の実務
- 接地・ノイズトラブル — グラウンドループ・ノイズ3種の対策
- 接地(低圧) — A/B/C/D 種接地・等電位ボンディング
- 雷・サージ保護 — SPD の接地・等電位ボンディング・誘導雷対策
- 計装基礎 — 4-20mA・HART・フィールドバスの基礎
根拠¶
保護接地の確認は接地抵抗計であってメガーではありません(2026-08-03 是正)¶
かつて本ページは、保護接地が確実に大地へつながっているかの確認について「接地・ノイズトラブル のメガー手順を参照」と書いていました。測定器の取り違えです。
| 測りたいもの | 使う計器 | 正典 |
|---|---|---|
| 接地極と大地の間の抵抗(保護接地が効いているか) | 接地抵抗計(アーステスタ) | 接地点検ガイドライン |
| 電路・機器と大地の間の絶縁(絶縁が保たれているか) | 絶縁抵抗計(メガー) | 絶縁管理 |
参照先のページが持っているのは絶縁抵抗(メガー)の手順であり、接地抵抗の測定手順ではありません。測る対象も判定値も別物なので、リンク先を接地点検ガイドラインに差し替えました。
本ページは「概念の整理」であって数値を持ちません¶
グランドと接地の区別、FG/SG/AGND/DGND/PGND の分類、1点接地(スター接続)の考え方は、用語と設計思想の整理です。本ページには判定値・離隔距離・接地抵抗値などの数値を置かず、すべて正典に委ねています(R6)。
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- AGND / DGND / PGND を分けて配線し1点で結ぶというスター接続の原則。効果は回路規模・周波数帯・配線長に依存します
- 渡り配線(デイジーチェーン)を避けるという指針
- 「グランド」「接地」の呼び分け自体、機器メーカー・分野によって用語が揺れます(FG をシャーシグランドと呼ぶ、PE を保護接地と呼ぶ等)。機器の端子記号は必ず取扱説明書で確認してください
原本未照合(honest-hold)¶
- FG / SG / AGND / DGND / PGND という略号を定義した規格は本 Wiki では照合していません。 広く使われている呼称に従っています
- 接地の種別(フレーム接地・シグナル接地・保護接地)という3分類も実務上の整理で、電技解釈が定める接地工事の種別(A/B/C/D 種)とは別の軸です。法令上の種別は 接地(低圧) が正典です
限界の明示¶
- 本ページは用語・分類の整理が役割です。実装(どの端子をどこに落とすか)は機器仕様と 計装配線、症状からの切り分けは 接地・ノイズトラブル を参照してください
- 保護接地は人命に直結します。 本ページの概念説明を根拠に接地の要否・方法を決めないでください
正典参照¶
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 接地抵抗の測定手順と判定値 | 接地点検ガイドライン |
| 絶縁抵抗の判定値・メガー印加電圧 | 絶縁管理 |
| A/B/C/D 種接地工事の法令上の種別 | 接地(低圧) |
| シールドの片端接地・離隔・ケーブル型式 | 計装配線 |
| グラウンドループ・ノイズの現場切り分け | 接地・ノイズトラブル |
| SPD の接地・等電位ボンディング | 雷・サージ保護 |
照合日: 2026-08-03。
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