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電気計装工事で押さえるJIS規格

30秒まとめ

計装工事で出てくるJISは 図記号・信号・温度センサ・圧力流量・保護等級・ケーブル・防爆 のグループに整理できます。番号を暗記するより、「その規格が何を決めていて、工事のどこに効くか」 を押さえるのが実務的です。計装のJISは IEC を国内に取り込んだもの(C で始まる5桁番号など)が多く、現場では JIS に加えて ISA・NAMUR が事実上の標準として併用されます。

このページの位置づけ — 一覧・法規との役割分担

  • 本ページ: 計装現場での 使いどころ(何に効くJISか)
  • 規格一覧: 規格番号・タイトル・入手先の網羅表
  • 規格・法規: 電気事業法・高圧ガス保安法・消防法など 化学プラント法規

A. 図記号・図面

図面を読み書きするための記号の規格です。電気側と計装側で別系統の記号体系を使う点に注意します。

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS C 0617 電気用図記号(IEC 60617 対応) 展開図・結線図・単線結線図の図記号。旧 JIS C 0301 から置き換わっており、古い図面は旧記号のことがある
JIS Z 8204:1983 計装用記号 P&ID・計装フロー図のループ番号・機能記号(TT/TIC など)。ISA-5.1 を基にした和製版で、2024年時点で有効。ただし会社ごとに自社標準を持つことが多く、現場の図面凡例を必ず確認

電気記号と計装記号は別物

同じ1枚の図面でも、電気部分は JIS C 0617、計装ループは JIS Z 8204(または社内標準・ISA-5.1)で描かれます。記号の出典を取り違えると読み違いにつながります。


B. 信号(計装の心臓部)

伝送器から DCS・PLC までを結ぶアナログ信号・デジタル通信の規格です。

規格 何を決めるか 工事での要注意点
IEC 60381-1 計装用統一信号 DC 4-20 mA(DC 電流信号) 伝送器〜受信計器間の標準アナログ信号。対応するJIS番号は無く、実務はIECに準拠
NAMUR NE 43 4-20 mA の故障判定レベル(≤3.6 mA / ≥21 mA)。有効測定範囲 3.8〜20.5 mA とは別の閾値 断線・センサ異常時に信号をどちらへ振るか(フェイル方向)の設計根拠
IEC 61158 / IEC 61784 フィールドバス(FOUNDATION Fieldbus・PROFIBUS 等)、HART 重畳通信 デジタル通信計装の配線・トポロジ・終端処理

「統一信号のJIS番号」は存在しない

4-20 mA 統一信号にきれいなJIS番号を当てるのは誤りです。実体は IEC 60381-1(DC 電流信号)であり、フェイル検出の考え方は NAMUR NE 43 が事実上の標準です。仕様書に根拠規格を書くときはここを混同しないようにします。

有効測定範囲と故障判定閾値は別物

  • 有効測定範囲 3.8〜20.5 mA: メーカが直線性を保証する計測有効範囲(この外はアンダー/オーバーレンジ)。
  • 故障判定 ≤3.6 mA / ≥21 mA(NAMUR NE 43): 断線・センサ異常を検出するフェイル判定の閾値。 数字が近いため混同しやすいですが、意味が異なります。詳しい電流値の区分表は 計装基礎 を参照してください。

信号方式そのものの基礎は 計装基礎 を参照してください。


C. 温度計測

計装JISの中核グループです。センサの特性と許容差クラス、補償導線の規格が工事の精度・誤接続防止に直結します。

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS C 1602 熱電対(K・J・T・E・R・S・B・N 型) 型式ごとの起電力特性・許容差クラス(クラス1/2/3)。型式の取り違えはそのまま指示誤差になる。許容差の値とクラスの対応は本 Wiki では未確定(温度計測 の warning 参照)。検収判定には使わないこと
JIS C 1604 測温抵抗体(Pt100 など) 許容差クラス(AA/A/B)、3線式/4線式の結線。配線抵抗が誤差に効くため結線方式の選定が重要
JIS C 1605 シース熱電対 保護管径・応答性・絶縁の選定
JIS C 1610 熱電対用補償導線 補償導線の種類記号(KX・JX 等)と識別色。逆接続・銅線代用・途中材質切替は代表的な現場ミス

センサの選び方・配線方式・補償導線の誤接続対策は 温度計測 で詳しく扱っています。


D. 圧力・流量

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS B 7505-1 ブルドン管圧力計 現場指示計の精度等級・目盛・接続。レンジは常用圧が目盛中央付近に来るように選定
JIS Z 8762 円形管路の絞り機構による流量測定(オリフィス等、ISO 5167 対応) 差圧式流量計の絞り板設計・上下流の必要直管長。直管長不足は計測誤差の定番原因

計測方式ごとの選定は 圧力計測・流量計測 を参照してください。


E. 機器の保護等級・設置環境

フィールド機器をどの環境に置けるかを決める保護等級の規格です。屋外・洗浄環境の多い化学プラントでは選定ミスが浸水・故障に直結します。

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS C 60529(旧 JIS C 0920) 外郭による保護等級(IP コード) フィールド機器・端子箱・盤の防塵防水等級(IP65・IP67 など)。設置環境(屋外・薬液飛散・洗浄)に対し等級が足りているかを確認
JIS C 60079 系 防爆(耐圧 Ex d・安全増 Ex e・本質安全 Ex i・危険場所への設置) 計装では 本質安全(Ex i) が主役。バリア・配線・機器の組み合わせ、危険場所区分との整合を確認

IP コードの規格番号が新しくなりました(2026年1月)

IP コードは 2026年1月20日付で JIS C 0920:2003 → JIS C 60529 に移行しました(IEC 60529 と整合させ番号を5桁化、高温・高圧水に対する IPX9 を追加)。既存の機器銘板・仕様書・図面の多くは当面 旧番号 JIS C 0920 や IP 表記のままなので、新旧どちらの番号も同じIPコード体系を指すことを理解しておきます。

出典: 日本規格協会(JSA)「23年ぶりにIPコードのJISを刷新」プレスリリース(2026-01)、JIS C 60529:2026 制定(2026-07 一次確認)。IPX9 は 80±5 ℃・14〜16 L/min の高温高圧水噴流に対する保護等級です。

防爆構造・エリア区分の詳細は 防爆 を参照してください。


F. ケーブル・配線・接地

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS C 3401 制御用ケーブル(CVV:制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル) 制御・信号配線の選定。許容電流より絶縁・芯数・機械的保護で選ぶことが多い
JIS C 60364 規格群(+JIS C 0364-7 規格群) 低圧電気設備(IEC 60364 対応) 低圧配線・保護・接地の基本設計。基本部分(基本原則・安全保護等)は JIS C 60364 番号、特殊設備・特殊場所の個別要求(-7-7xx)は旧来の JIS C 0364 番号のまま現行で、番号が新旧2系統併存している
  • 計装ケーブルはツイストペア・シールド(遮へい)付きを使い、シールドの 片端接地 などノイズ対策の処理が肝心です。配線・シールド処理の実務は 計装配線 を参照してください。
  • 計装の「GND」と保安の「接地」は別概念です。区別と種類(FG/SG/AGND/DGND/PGND)は グランドと接地 を参照してください。

G. 制御盤・操作機器

規格番号 何を決めるか 工事での要注意点
JIS C 8201 低圧開閉装置及び制御装置(IEC 60947 対応) 盤内の遮断器・接触器・スイッチ類の定格・性能
JIS C 0448 表示・操作機器の色(1997年制定が現行) 押しボタン・表示灯の色。起動ボタンは白が最適(赤は非常停止+黄背景に確保)、表示灯は赤=危険/異常・緑=正常 → 具体の割当は 操作盤・表示灯
JIS C 1010-1 測定・制御・試験室用電気機器の安全 計測器・変換器など機器側の安全要求

盤の構造設計は 盤設計、低圧側の制御回路は 制御回路 を参照してください。


H. 安全計装・機能安全

規格 何を決めるか 工事での要注意点
IEC 61511 プロセス産業の安全計装システム(SIS) 緊急遮断(ESD)・SIL の設計と検証。化学プラントでの安全計装の中心規格
IEC 61508 電気・電子・プログラマブル安全関連系の機能安全 SIL の定義となる基礎規格
  • 安全計装は一般のループと 保守・試験・変更管理(MOC)の扱いが異なるため、対象ループが SIS かどうかを工事前に確認します。
  • 計量器の校正(取引・証明用)は計量法・JCSS の体系で、保安の安全計装とは別管理です。

計装工事でのJIS活用のコツ

  • 番号より「何を決める規格か」で覚える: 仕様書・指摘事項で根拠を示すとき、温度なら C 1602/C 1604、IP なら C 60529、図記号なら C 0617 と引ければ十分です。
  • JIS と ISA・NAMUR を混同しない: 計装記号・統一信号・アラーム管理は ISA や NAMUR が事実上の標準です。JIS で書ける部分とそうでない部分を切り分けます。
  • 新旧番号の併存に注意: IP コード(C 0920→C 60529)のように番号が変わった規格は、現場の銘板・図面と仕様書で番号が食い違って見えることがあります。

根拠と適用上の注意

規格項目ごとの照合状況(仕分け)

本ページの各行を、何をどこまで一次照合したかで仕分けます(照合日はいずれも 2026-08-01。個別に記載のあるものを除く)。

区分 対象 備考
法令経由の一次アンカーあり JIS C 60079-14 電技解釈第 176 条が「JIS C 60079-14(2008)…の規定により施設すること」と名指し(原典 PDF 照合済み)。法令との対応の正典は 規格・法規
発行元(JSA)カタログで番号・名称・版年・現行を確認(本文未照合) JIS Z 8204:1983(1984-02-29 発行・2024-06-20 有効確認)、JIS C 0448:1997(2023-10-20 確認)、JIS B 7505-1:2017、JIS C 1605:2021、JIS C 1010-1:2019、JIS C 3401:2002、JIS Z 8762-1〜-4:2007(ISO 5167:2003 対応。1995 年版を分割改正)、JIS C 8201 規格群(部ごとに版年が異なる。IEC 60947 対応)、JIS C 0617 シリーズ(旧 JIS C 0301 は 1999 年廃止) 番号・名称・現行有効の確認のみで、規格本文の個別数値は本ページに書かない
発行元の公表資料で構成を確認 JIS C 60364 規格群/JIS C 0364-7 規格群 JSA の公表資料(2026-08-01 確認)によれば、基本部分は JIS C 60364 番号(例: C 60364-1:2010「低圧電気設備」)で、特殊設備・特殊場所の個別要求は JIS C 0364-7 番号のまま現行(2024 年発行の部あり)。旧 C 0364-3:1999 は 2006 年廃止。かつて本ページは「JIS C 0364 建築電気設備」と単一系列で書いていましたが、新旧2系統併存が実態のため是正しました
JSA プレスリリースで一次確認済み(既存記載) JIS C 60529:2026(IP コード。旧 JIS C 0920:2003) 本文の注記どおり 2026-07 に一次確認済み。IP の新旧番号の説明は本ページを参照先とする
repo 内の正典を参照 JIS C 1602:2015・C 1604:2013・C 1610:2012 の許容差・識別色(正典 温度計測)、NAMUR NE 43 の閾値(正典 計装基礎)、SIL・IEC 61511/61508 の使い方(正典 SIS・SIL)、防爆構造と Zone の対応(正典 防爆) 本ページは規格の「使いどころ」のみを書き、数値は正典側に置く(R6)
番号・主題は二次資料一致、原本未照合 IEC 60381-1、IEC 61158/IEC 61784、IEC 61511、IEC 61508、ISA-5.1、NAMUR NE 107、JIS C 60079 の -14 以外 規格の存在と主題は複数の二次資料で一致するが原本未照合のため、節・表番号や個別数値は書かない

是正記録

  • JIS C 0364 の行(2026-08-01): 上表のとおり、単一系列「JIS C 0364 建築電気設備」→「JIS C 60364 規格群+JIS C 0364-7 規格群」の併存表記に是正。
  • JIS C 1604 の許容差クラス(2026-08-01): 「クラスA/クラスB」→「AA/A/B」に是正(JIS C 1604:2013 はクラス AA を含む。正典 温度計測 と整合)。
  • JIS C 0448 の行(2026-08-01): 「赤=停止」と読める要約を規格の割当(起動=白が最適・赤は非常停止用)に是正。詳細と経緯は 操作盤・表示灯 の根拠節を参照。

限界の明示

  • 「IEC 60381-1(4-20 mA 統一信号)に対応する JIS は無い」という記述は、JSA・JISC の検索で対応 JIS を見いだせないことの確認にとどまり、不存在の悉皆証明ではありません。対応 JIS の存在が確認できた場合は本ページを訂正します。
  • JIS Z 8204:1983 は「有効」を確認しましたが、ISA-5.1 の最新版との差分は未照合です。P&ID 記号は会社標準が優先されることが多いため、必ず図面凡例を確認してください。
  • 熱電対の許容差はクラスと値の対応が未確定です(2026-09-19)。無償の一次資料が見つからず、二次資料に ±1.5 ℃/±0.004・|t| を「クラス2」に割り当てる記述もありました。詳細と扱いは 温度計測 の warning が正典です。規格番号だけを検収基準に書かず、許容差の値まで書くときは JIS 原本かメーカー成績書で確認してください
  • 各規格は改訂で版年・表番号・クラス構成が変わり得ます。調達仕様・検収基準に規格番号を書く際は、その時点の最新版を JSA webdesk 等で確認してください。本ページの版年は「その日に現行だった版」の記録です。

関連ページ

  • 規格一覧 — 電気・防爆・安全計装まで含む規格番号と入手先の網羅表
  • 規格・法規 — 化学プラントの法規制(電気事業法・高圧ガス保安法・消防法)
  • 計装基礎 — 4-20 mA・HART・フィールドバスの基礎
  • 温度計測 — 熱電対・測温抵抗体・補償導線の選定と配線
  • 圧力計測 / 流量計測 — センサ方式の選定
  • 防爆 — 防爆構造の種類・エリア区分・認証
  • 計装配線 — シールド処理・補償導線・端末処理
  • 計装カテゴリ — 計装分野の記事一覧
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