接地抵抗測定手順¶
30秒まとめ¶
接地抵抗は接地工事の種別ごとに基準値が決まっており、まず対象がどの種別かを確定してから測る。標準は3極法、狭隘部などで2極法(簡易法)を使う。判定NGなら接地極の増設・並列化を検討し、測定値は必ず記録に残す。
設備接地の定期検査・法定点検における接地抵抗測定手順です。
接地の要求そのものは電気設備技術基準(省令)第10条・第11条が定め、接地工事の種類ごとの抵抗値は電技解釈 第17条が定めています(「電気設備技術基準」という名の条文に抵抗値が書かれているわけではありません)。本ページの数値は同条の一次照合値です(ページ末尾の「根拠」参照)。
事前確認¶
作業開始前に必ず確認
- [ ] PTW(作業許可証)取得済み
- [ ] 接地抵抗計の校正有効期限確認(校正シールで確認)
- [ ] 補助接地極の打ち込み場所確認(測定対象の接地極から十分離れた位置)
- [ ] 雨天直後の測定を避ける(土壌水分が多く低い値が出る)
- [ ] 接地対象設備の電源OFF確認(漏電電流による誤差防止)
必要な機器¶
| 機器 | 仕様目安 |
|---|---|
| 接地抵抗計(アーステスタ) | 0.01 Ω〜1 kΩ 以上のレンジ。適合規格は製品仕様で確認(下記注記) |
| 補助接地棒(P棒・C棒) | 各1本(長さ30cm以上の金属棒) |
| 補助接地コード | 各10m以上(色分け推奨:黄・緑) |
| スパナ・ドライバ | 接地端子取り外し用 |
| 記録用紙 | 測定値記録用 |
接地抵抗計の適合規格と端子記号は製品ごとに確認する
現行製品のカタログは IEC 61557-5(および IEC 61010-1 / JIS C 1010-1)を適合規格として掲げるものが主流です。 一方で「JIS C 1304:2002 準拠」と併記する製品もあり、両者の現行・廃止関係は本Wikiでは未照合です(下記「根拠」参照)。 実務で効くのは規格名より端子記号で、補助極を P・C と表記する製品と S・H と表記する製品があります。 本ページは P・C 表記で記述しているため、手持ちの計器の取扱説明書で端子記号の対応を必ず確認してください。
接地工事の種別と基準値¶
| 接地工事の種類 | 対象設備 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| A種接地工事 | 高圧・特別高圧機器の金属製外箱等、避雷器 | 10 Ω 以下 |
| B種接地工事 | 高圧・特別高圧の電路と低圧電路を結合する変圧器の低圧側中性点 | 150/Ig Ω 以下(Ig:1線地絡電流 [A])。遮断時間により緩和あり(下表) |
| C種接地工事 | 300 V 超の低圧機器の金属製外箱等 | 10 Ω 以下(下記の自動遮断装置がある場合は 500 Ω 以下) |
| D種接地工事 | 300 V 以下の低圧機器の金属製外箱等 | 100 Ω 以下(同上) |
「避雷針」ではなく「避雷器」
A種接地工事が要求されるのは避雷器(サージアブソーバ/アレスタ)です(電技解釈 第37条第3項)。 建築物の避雷針(受雷部)は別系統で、電技解釈は第17条第1項第四号で 「接地線は、避雷針用地線を施設してある支持物に施設しないこと」と、むしろ両者を分けるよう定めています。 避雷針(雷保護設備)は建築基準法令・JIS A 4201 の管轄で、電技解釈のA種接地工事ではありません。
C・D種の 500 Ω 緩和は「漏電遮断器があること」ではない
条文の要件は「低圧電路において、地絡を生じた場合に 0.5 秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するとき」です。 漏電遮断器が付いていれば無条件に 500 Ω でよい、という意味ではありません。 時延形など動作時間が 0.5 秒を超えるものでは緩和は適用できないため、 緩和を使う場合は当該遮断装置の動作時間を仕様で確認してください。
B種接地抵抗値(遮断時間による緩和)¶
| 変圧器の種類 | 低圧側の対地電圧が 150 V を超えたときの高圧側自動遮断時間 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| 下記以外の場合 | (自動遮断しない・下記に当たらない) | 150/Ig Ω 以下 |
| 高圧または 35,000 V 以下の特別高圧の電路と低圧電路を結合するもの | 1 秒を超え 2 秒以下 | 300/Ig Ω 以下 |
| 同上 | 1 秒以下 | 600/Ig Ω 以下 |
B種接地抵抗の計算
B種接地抵抗 = 150 ÷ Ig(緩和が使える場合は 300 ÷ Ig・600 ÷ Ig)
例:Ig = 5 A → 150 ÷ 5 = 30 Ω 以下
Ig(1線地絡電流)は、実測値または電技解釈 17-2表の計算式による値です。計算値は小数点以下を切り上げ、2 A 未満となる場合は 2 A とします。実務では電力会社への問い合わせ値を使うことも多いですが、その場合も出所を記録に残してください。
緩和は「35,000 V 以下」に限られる
300/Ig・600/Ig の緩和が使えるのは「高圧または 35,000 V 以下の特別高圧の電路と低圧電路を結合する変圧器」です。 これを超える特別高圧との結合では緩和はなく、150/Ig が適用されます。
測定方法:3極法(標準法)¶
最も一般的な測定方法。補助接地棒2本を使用します。
配置のルール¶
[測定対象接地極 E] ←── 10 m ──→ [補助P極] ←── 10 m ──→ [補助C極]
- E(被測定接地極)〜P(電位補助)〜C(電流補助)を一直線上に配置
- E〜C間:20m以上(推奨)
- E〜P間:E〜C間の50%の位置
手順¶
- 補助接地棒(P棒・C棒)を所定の位置に打ち込む
- 地面に対して垂直に、ハンマーで深さ20cm以上打ち込む
- 石・コンクリートの上は避ける
- 接地抵抗計のリード線を接続する
- E端子(通常:緑)→ 被測定接地端子
- P端子(通常:黄)→ 補助P棒
- C端子(通常:赤)→ 補助C棒
接地端子の切り離し
測定対象の接地線を他の接地系統から切り離してから測定する。
切り離さないと並列接地の合成抵抗を測定することになり、正しい値が得られない。
-
接地抵抗計のスイッチを押して測定する
- 指針またはデジタル値が安定するのを待ってから読み取る
- 3回測定して平均値を記録する(ばらつきが大きい場合は補助極の位置を変えて再測定)
-
測定終了後、接地端子を元通りに接続する(必ず復旧を確認)
測定方法:2極法(簡易法)¶
補助接地棒を打ち込む場所がない場合(コンクリート床上等)に使用。
精度は3極法より劣る。
- 接地抵抗計のE端子を被測定接地端子に接続
- P・C端子を同一の補助極(既設の別接地)に接続
- 別接地の抵抗値が十分低い(ほぼ0Ω)ことが前提
- 測定値 = 被測定接地抵抗 + 補助極抵抗(補助極が低いほど精度が上がる)
2極法の注意
2極法はスクリーニング用途として使用する。
判定が境界値に近い場合は必ず3極法で再測定すること。
測定記録¶
測定後は以下の項目を記録する:
| 記録項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 測定日時 | YYYY-MM-DD HH:MM |
| 天候・気温 | 晴れ/曇り/雨、○℃ |
| 接地種別 | A/B/C/D種 |
| 設備名・接地極番号 | 例:No.3変圧器 A種接地 |
| 測定値(3回) | 〇.〇 / 〇.〇 / 〇.〇 Ω |
| 平均値 | 〇.〇 Ω |
| 判定 | OK / NG |
| 測定者・確認者 | 氏名・サイン |
チェックリスト(作業完了時)¶
- [ ] 接地端子の復旧確認(切り離したすべての接地線を再接続)
- [ ] 補助接地棒の回収
- [ ] 全測定点の記録完了
- [ ] 基準値超過箇所(NG)の報告・改善計画立案
- [ ] 測定記録のファイリング(保存年限は保安規程に従う。本Wikiの推奨は3年以上。法定の保存年限ではありません)
判定がNGだった場合の対処¶
NG判定時の対応
判定NGは設備の安全機能低下を意味する。速やかに電計チームリーダーに報告すること。
| 対処方法 | 内容 |
|---|---|
| 接地線の増設 | 接地極の追加打ち込みまたは接地銅板の埋設 |
| 接地線の点検 | 断線・腐食の確認と交換 |
| 接地端子の清掃 | 端子部の錆・汚損除去と再接続 |
| 大地抵抗率の確認 | 土壌改良(良導電性材料の混合)が必要な場合は設計部門相談 |
測定時期の目安¶
| 接地種別 | 測定頻度 | 位置づけ |
|---|---|---|
| A種(高圧) | 年1回(年次点検時) | 保安規程に定める年次点検の一項目 |
| B種(変圧器中性点) | 年1回(年次点検時) | 同上 |
| C・D種(低圧機器) | 保安規程で定める周期(本Wikiでは3年に1回以上を推奨) | 自主保安の計画値 |
| 避雷器(A種)接地 | 年1回(雷シーズン前) | 高圧・特別高圧の避雷器はA種接地工事(解釈第37条第3項)。年次点検の一項目 |
| 避雷針(受雷部)接地 | 年1回(雷シーズン前) | 電技解釈のA種ではなく建築側の設備。建築物の定期検査との実施時期の調整は建築部門と行う(本Wikiでは根拠未照合) |
測定周期を定めるのは法令ではなく保安規程
電気事業法は「保安規程を定めて届け出て、それを守る」ことを求めており、接地抵抗測定の周期そのものを法令が数値で定めているわけではありません。上表は本Wikiの推奨であって法定周期ではないため、実際の周期は自事業場の保安規程に従ってください。 法定業務一覧 の年次点検表は A〜D種を一律「年1回以上」としていますが、これは年次点検を年1回実施する事業場を前提にした記載です。C・D種を3年周期とする場合は保安規程側でその旨を定めておく必要があります。
よくある測定誤差の原因¶
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 雨天直後(土壌水分過多) | 晴天2日以上後に再測定 |
| 迷走電流の影響 | 測定値が安定しない→夜間または電流源を切断して測定 |
| 補助極が近すぎる | 配置を見直してE〜C間を広げる |
| 接地線を切り離していない | 必ず切り離してから測定 |
| 接地抵抗計の電池切れ | バッテリーチェック機能で確認 |
根拠¶
本ページは接地抵抗値の正典です。他ページは数値を再記述せず本ページを参照してください。
一次照合済み(電技解釈 令和7年11月版・原典PDF)¶
- 接地工事の種類と抵抗値: 電技解釈 第17条(省令第11条を受ける)
- A種=10 Ω 以下(第1項第一号)
- B種=17-1表。「下記以外の場合」=150/Ig、「高圧または 35,000 V 以下の特別高圧の電路と低圧電路を結合するもの」で低圧側の対地電圧が 150 V を超えた場合に高圧側を自動遮断する装置を設けるとき、遮断時間 1 秒超2秒以下=300/Ig、1 秒以下=600/Ig(第2項第一号)
- Ig の求め方: 実測値、または高圧電路では 17-2表の計算式。計算結果は小数点以下を切り上げ、2 A 未満となる場合は 2 A(第2項第二号)
- C種=10 Ω 以下、ただし「低圧電路において、地絡を生じた場合に 0.5 秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するときは 500 Ω」(第3項第一号)
- D種=100 Ω 以下、緩和条件は C種と同一文言(第4項第一号)
- 参考(第5項): C種接地工事を施す金属体と大地との間の電気抵抗値が基準値以下であれば、C種接地工事を施したものとみなす
- 参考(第6項): D種についても同様に、金属体と大地との間の電気抵抗値が基準値以下であればD種接地工事を施したものとみなす
- どの機器にどの種別か: 電技解釈 第29条・29-1表(低圧 300 V 以下=D種、300 V 超過=C種、高圧または特別高圧=A種)
- 避雷器のA種: 電技解釈 第37条第3項(高圧および特別高圧の電路に施設する避雷器にはA種接地工事)。ただし高圧架空電線路に施設する避雷器のうち第1項の規定によらないものは JESC E2018(2015)により第17条第1項第一号によらないことができる
- 避雷針との分離: 電技解釈 第17条第1項第四号(接地線は避雷針用地線を施設してある支持物に施設しないこと)
- 照合日: 2026-08-02。「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月版)原典 PDF で逐語照合。改正で番号・数値が変わり得るため適用時は最新版を確認してください
是正の記録(2026-08-02)¶
| 箇所 | 修正前 | 修正後・根拠 |
|---|---|---|
| A種の対象設備 | 高圧機器の外箱、避雷針 | 避雷器(第37条第3項)。避雷針は第17条第1項第四号でむしろ分離が求められる別系統 |
| B種の抵抗値 | 150/Ig のみ | 17-1表の緩和(300/Ig・600/Ig)を追加。適用は 35,000 V 以下の特別高圧までに限る |
| C・D種の緩和条件 | 「漏電遮断器設置時は 500 Ω」 | 「地絡を生じた場合に 0.5 秒以内に自動遮断する装置を施設するとき」(第3項第一号・第4項第一号) |
| 冒頭の帰属 | 「電気設備技術基準により…定められています」 | 省令第10条・第11条を受けた解釈第17条が抵抗値を定める、と階層を明示 |
| 記録の保存 | 「法定保存:3年以上推奨」 | 法定の保存年限ではなく保安規程で定める運用値である旨に修正 |
原本未照合(honest-hold)¶
- 接地抵抗計の適合規格: 現行製品のカタログは IEC 61557-5・IEC 61010-1(JIS C 1010-1)等を掲げ、一方で「JIS C 1304:2002 準拠」と併記する製品もあります。JIS 原文および JIS 検索データベースを照合していないため、JIS C 1304 が現行か廃止かを本ページでは断定しません(2026-08-02 にメーカー公開資料2社で表記の相違のみ確認)。旧版の規格番号を購入仕様に書くと調達で行き違うため、適合規格は採用製品の仕様書を正としてください
- 補助極の端子記号: P・C 表記と S・H 表記が製品によって異なります。これもメーカー公開資料ベースで、規格原文は未照合です
- 避雷針(雷保護設備)の点検周期・接地基準: 建築基準法令・JIS A 4201 の管轄で、いずれも未照合です。本ページは電技解釈の接地工事のみを扱います
実務慣行(法定値ではない)¶
- 3極法の配置(E〜C 間 20 m 以上、E〜P 間はその 50 %)、補助極の打込み深さ 20 cm 以上、3回測定の平均値採用
- 2極法をスクリーニング用途に限り、境界値では3極法で再測定すること
- C・D種を3年周期とする測定頻度、記録の3年以上保存
- 雨天直後を避ける、迷走電流時は夜間測定、といった誤差要因への対処
限界の明示¶
- 測定周期を法令が数値で定めているわけではありません(上の「測定時期の目安」の warning のとおり)。周期は自事業場の保安規程が正です
- 本ページは接地抵抗値の判定までを扱い、接地極の設計(大地抵抗率の測定・接地網の計算・等電位ボンディングの設計)は範囲外です
- 接地線の太さ・埋設深さ等の施設方法は第17条各項に定めがありますが、本ページは測定手順に絞るため転記していません。施工時は 接地(高圧)・接地(低圧) と条文原文を参照してください
条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-19 閲覧)¶
本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-19 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出しています。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号): 第10条・第11条
- 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正): 経済産業省 原典 PDF — 第17条・第29条。本文の照合日は本ページ既存の記載のとおりです
関連ページ¶
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