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⚡ 電気担当

短絡電流計算

30秒まとめ

短絡電流は「%インピーダンス法」で計算する。計算値が設置する MCCB・VCB の定格遮断電流を超えてはならない。系統インピーダンスは電力会社に問い合わせ、変圧器の %Z はメーカー銘板から取得する。


%インピーダンス法の概要

基準容量の設定

基準容量 Pb = 任意(計算しやすい値を選ぶ)
例: Pb = 1,000kVA(1MVA)

基準電圧 Vb = 系統電圧
例: Vb = 6.6kV(高圧)または 200V(低圧)

基準電流 Ib = Pb / (√3 × Vb)

各要素の %Z 換算

変圧器 %Z(メーカー銘板値)→ 基準容量に換算:
  %Z換算 = %Z銘板 × (Pb / Pn)
  Pn: 変圧器定格容量 [kVA]

系統(電力会社)%Z(問い合わせ値)→ 基準容量で統一

ケーブル %Z(Z = R + jX [Ω]、Pb: 基準容量 [VA]、Vb: 基準線間電圧 [V]):
  %Z = Z × Pb / Vb² × 100  [%]
  %R = R × Pb / Vb² × 100  [%]
  %X = X × Pb / Vb² × 100  [%]

  導出: %Z = √3 × Ib × Z / Vb × 100 に Ib = Pb / (√3 × Vb) を代入
        → %Z = Z × Pb / Vb² × 100
  ※ Pb は VA、Vb は V で計算する(kVA・kV を使う場合は単位換算に注意)

三相短絡電流計算

%Z合計 = %Z系統 + %Z変圧器 + %Zケーブル

三相短絡電流 Is3 = Ib × 100 / %Z合計  [A]
または
Is3 = (Pb × 1000) / (√3 × Vb × %Z合計 / 100)  [A]

計算例

前提条件

項目 数値
変圧器容量 1,000kVA
変圧器二次電圧 200V
変圧器 %Z(銘板) 5%
系統インピーダンス(受電点から変圧器一次まで) 0.5%(1,000kVA 基準)

計算

基準容量 Pb = 1,000kVA
基準電流 Ib = 1,000,000 / (√3 × 200) = 2,887 A

変圧器 %Z換算 = 5% × (1,000 / 1,000) = 5.0%
系統 %Z = 0.5%(既に 1,000kVA 基準)

%Z合計(ケーブル無視)= 5.0 + 0.5 = 5.5%

三相短絡電流 Is3 = 2,887 × 100 / 5.5 = 52,490 A ≈ 52.5 kA

遮断容量確認

変圧器直近(二次側)の MCCB には 52.5kA 以上の遮断容量が必要。一般的な低圧 MCCB は 25〜50kA が多いため、変圧器直近では限流ヒューズまたは高遮断容量 MCCB(100kA 対応)を選定する。

上の 52.5 kA は「系統からの対称分」だけ

ここまでの計算値は電源(系統・変圧器)から供給される対称短絡電流です。回転機の多いプラントでは、これに 電動機の短絡電流拠出 を加え、さらに事故直後の 非対称分(直流分) を考慮した 波高値 で遮断器を選定する必要があります。以下で順に積み増します。


電動機の短絡電流拠出(motor contribution)

なぜ電動機が短絡電流を供給するのか

短絡が起きて母線電圧が落ちると、運転中の電動機(Motor)は回転子の慣性と残留磁束によって一時的に 発電機として振る舞い、短絡点へ向けて電流を送り込みます。プラントは誘導電動機(Induction Motor)が多数接続されているため、この拠出分は無視できません。

  • 誘導電動機: 拠出電流の初期値は 始動電流(拘束回転子電流、Locked Rotor Current) とほぼ同じ、すなわち 定格電流の約 4〜6 倍。電源電圧を失うと磁束が減衰するため、拠出は 数サイクル(おおむね 1〜4 サイクル)で急減衰 します。
  • 同期電動機: 自前の界磁(励磁)を持つため拠出が大きく、減衰も誘導機より遅く持続します。誘導機より 1 ランク大きく見積もります。

IEC 60909 でのモデル化

国際規格 IEC 60909-0 は、電動機を「拘束回転子電流比 I_LR / I_rM(既定値 5)」を持つインピーダンス源としてモデル化し、電動機拠出を系統短絡電流に加算します。実務の概算では 誘導機は定格電流 × 4〜6 の目安で足ります。

簡易見積り

電動機拠出電流 I_M ≒ (接続電動機の定格電流合計 ΣI_rM) × 倍率 m

m :誘導機 4〜6(始動電流倍率)、同期機はさらに大きく見積もる

遮断器・投入責務での扱い

責務 電動機拠出の扱い
投入電流・波高値(making) 事故直後の第1波であり、誘導機拠出をフルに算入(最も過酷)
遮断責務(interrupting / breaking、数サイクル後) 誘導機拠出はほぼ減衰済みで小さい。ただし 同期機の拠出は残る ため加算する

遮断容量・投入容量の確認には電動機拠出を加算

遮断器の定格遮断電流・定格投入電流と突き合わせる短絡電流には、系統からの対称分に電動機拠出を 加算した値 を使います。加算を忘れると容量不足の遮断器を選定する恐れがあります。定格遮断電流・投入電流の仕様は 遮断器・断路器 を、時限協調への影響は 保護協調 を参照してください。


非対称電流と直流分(DC offset)

短絡電流は、事故が発生した瞬間の電圧位相によって 直流分(DC offset)が重畳 します。電圧ゼロ点付近で事故が起きると直流分が最大となり、事故直後の実効値・波高値は対称分(定常的な交流分)より大きくなります。

  • 直流分は指数関数的に減衰します。減衰の時定数は次式で、X/R が大きいほど直流分の減衰が遅く、非対称が長く残ります。
直流分の減衰時定数 τ = (X / R) / (2π f)   [秒]

f :系統周波数 [Hz](50 または 60)
  • したがって「対称短絡電流」だけでは事故直後の過酷さを表しきれず、遮断器の投入能力の確認には次項の 波高値 を用います。

波高値(投入電流・making current)

波高値(ピーク電流、i_p)は短絡電流の第1波の瞬時最大値で、遮断器の 投入(making)能力 の確認に使います。IEC 60909 は次式で定義します。

i_p = κ × √2 × Ik″

Ik″ :対称短絡電流の実効値(初期対称短絡電流。ここでは系統分+電動機拠出)[A]
√2  :実効値→波高値の換算
κ   :波高率(peak factor)。系統の R/X(= 1 / (X/R))に依存

κ は IEC 60909-0 で次の近似式が与えられ、値域は 1.0(純抵抗)〜2.0(純リアクタンス) です。

κ = 1.02 + 0.98 × e^(−3 R/X) = 1.02 + 0.98 × e^(−3 / (X/R))

工場系統の X/R は概ね 4〜15 で、κ は 1.5〜1.9 に収まります。対称実効値からの総倍率 √2·κ は κ ≒ 1.8 で 約 2.55 となり、古くから言う「波高値は対称実効値の約 2.5 倍」に一致します。

X/R R/X κ = 1.02 + 0.98·e^(−3R/X) 総倍率 √2·κ
2 0.50 1.24 1.75
5 0.20 1.56 2.20
10 0.10 1.75 2.47
15 0.067 1.82 2.57

κ の選び方

系統の X/R が不明なら、変圧器直近(電源インピーダンスが小さくリアクタンス優勢)では X/R が大きくなりがちなので、κ ≒ 1.8〜1.9 と保守的に置きます。端末分岐(ケーブル抵抗で R が効く)では κ は小さくなります。


X/R 比の実務的意味

  • 非対称遮断責務: X/R が大きいほど直流分が残り、遮断器は非対称の大きい電流を切ることになります。カタログの定格遮断電流は前提とする X/R(力率)があるため、系統の X/R がそれより大きい場合はディレーティングを確認します。
  • 波高値(投入責務): 上式のとおり X/R が大きいほど κ が大きく、投入時のピークが増えます。
  • ヒューズ・限流器の選定: 限流ヒューズの遮断特性も非対称・X/R の影響を受けます。
  • 典型値の目安: 大容量変圧器の二次側で X/R ≒ 10〜15、末端の分岐回路では R が効いて X/R ≒ 2〜5 程度。

計算例(電動機拠出・波高値の積み増し)

前掲の計算例(変圧器 1,000 kVA・二次 200 V・系統からの対称短絡電流 Ik″(系統) = 52.5 kA)に、電動機拠出と波高値を積み増します。

前提の追加

項目 数値
母線に接続する誘導電動機の定格電流合計 ΣI_rM 1,500 A(例)
始動電流倍率 m(誘導機) 4(保守側の下限で概算)
系統の X/R 10(変圧器直近の想定)

計算

電動機拠出 I_M = 1,500 × 4 = 6,000 A = 6.0 kA

初期対称短絡電流 Ik″ = 系統分 + 電動機拠出
                      = 52.5 + 6.0 = 58.5 kA

波高率 κ = 1.02 + 0.98 × e^(−3 / 10) = 1.02 + 0.98 × 0.741 ≒ 1.75

波高値 i_p = κ × √2 × Ik″
           = 1.75 × 1.414 × 58.5
           ≒ 145 kA(peak)

選定への反映

  • 遮断容量の確認: 遮断器の定格遮断電流 ≥ Ik″ = 58.5 kA(電動機拠出込みの対称分)。系統分だけの 52.5 kA で選ぶと不足します。
  • 投入容量の確認: 遮断器の定格投入電流(波高値)≥ i_p ≒ 145 kA(peak)。
  • 定格遮断電流・定格投入電流の仕様は 遮断器・断路器、時限協調への波及は 保護協調 を参照。

系統インピーダンスの取得方法

方法 内容
電力会社への問い合わせ 受電点の最大短絡容量 [kVA] を問い合わせ → %Z に換算
変圧器銘板 %Z(インピーダンス電圧比)が記載されている
ケーブル抵抗 ケーブルメーカーカタログの導体抵抗・リアクタンス値
電力会社から「最大短絡容量 Ps [kVA]」を入手した場合:
%Z系統 = Pb / Ps × 100 [%](Pb:基準容量)

遮断容量の確認フロー

flowchart TD
    A[系統インピーダンスを収集\n電力会社・変圧器銘板・ケーブル] --> B[基準容量で%Z統一]
    B --> C[三相短絡電流 Is3 を計算]
    C --> D{設置 MCCB の\n定格遮断電流 ≥ Is3?}
    D -- Yes --> E[OK:遮断容量確認済み]
    D -- No --> F[MCCB を大きな遮断容量に変更\nまたは限流ヒューズ追加]
    F --> D

端末分岐回路はケーブルインピーダンスで電流が減衰

変圧器から遠い分岐端末では、ケーブルインピーダンスの影響で短絡電流が変圧器直近より大幅に減少する。端末では小容量 MCCB(5〜10kA)でも十分な場合が多いが、計算で確認する。


根拠と適用上の注意

  • 遮断容量確認の法的根拠:電技省令第14条(過電流からの電線及び電気機械器具の保護対策)を受けて、電気設備の技術基準の解釈 第33条第1項が「低圧電路に施設する過電流遮断器は、これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有するものであること」と定めています(高圧・特別高圧は第34条第一号に同旨)。本ページの「計算値 ≤ 定格遮断電流」の確認は、この条文の要求そのものです。
  • 第33条第1項のただし書きは、通過短絡電流が 10,000 A を超える箇所で、電源側の過電流遮断器と協調させて遮断する方式(いわゆるカスケード保護・バックアップ保護)を条件付きで認めています。変圧器直近で限流ヒューズと組み合わせる実務は、この規定の運用です。
  • 上記の条文は 電気設備の技術基準の解釈 令和7年11月版・電技省令(e-Gov 現行条文)で 2026-07-30 に逐語照合済みです。改訂で番号・細部が変わり得るため、適用時は最新版を確認してください。
  • IEC 60909-0(波高率 κ の式・電動機の拘束回転子電流比 既定値 5):κ = 1.02 + 0.98・e^(−3R/X) と既定値 5 は IEC 60909-0:2016(Ed. 2.0)の内容として複数の二次資料で一致確認しました(2026-07-30。規格原本は未照合)。なお IEC 60909-0 は 2026 年に新版(IEC 60909-0:2026)に置き換えられています(IEC Webstore で 2026-07-30 確認。2016 年版は 2026-07-23 に廃止)。新版で κ 式・既定値に変更が無いかは未確認のため、規格準拠の厳密計算では最新版原本を参照してください。
  • 計算式・計算例:%Z = Z・Pb / Vb² × 100、Is3 = Ib × 100 / %Z合計、τ = (X/R) / (2πf) の次元・導出、およびページ内の数値例(52.5 kA・κ ≒ 1.75・i_p ≒ 145 kA、κ 換算表)は 2026-07-30 に再計算で検算済みです。
  • 誘導機拠出 4〜6 倍・X/R 典型値・「低圧 MCCB は 25〜50 kA が多い」:いずれも実務目安・製品動向であり、規格・法令の規定値ではありません。電動機拠出は本来、機器ごとの拘束電流と減衰時定数によります。厳密な検討が必要な系統(大容量同期機がある等)では IEC 60909 準拠の計算またはメーカー解析によってください。
  • 系統インピーダンス:電力会社回答値・変圧器銘板 %Z・ケーブルカタログ値が一次情報です。銘板 %Z は自己容量基準のため、基準容量への換算を忘れると桁を誤ります。

条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-17 閲覧)

本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-17 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出し、実ページで要素の存在を確認しました。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。

  • 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号): 第14条
  • 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正): 経済産業省 原典 PDF — 第33条。2026-09-18 に同 PDF の該当条を直接照合し、本ページの引用内容と一致することを確認しました(前回照合 2026-07-30。条番号の異同はありません)

関連ページ

  • 遮断器・断路器 — 定格遮断電流・定格投入電流の仕様(電動機拠出込みの Ik″・波高値と突き合わせる)
  • 保護協調 — 短絡電流を用いた時限協調・TCC 再確認
  • 負荷計算 — 変圧器容量算定(負荷計算の結果が短絡電流計算の前提)
  • 電圧降下計算 — ケーブルインピーダンスを活用する電圧降下計算との連携
  • 盤設計 — 計算した遮断容量値をもとにした MCCB 選定・盤設計
  • 規格・法規 — 遮断容量確認に関連する電気設備技術基準・JIS の参照先
  • 定期点検 — 設置後の MCCB の点検・動作確認手順
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