接地・ノイズトラブル¶
30秒まとめ¶
計器が暴れる原因の8割はノイズかグラウンドループ。まずシールドの片端接地を確認し、次にインバータとの近接を疑う。
ノイズの3種類と対策¶
ノイズは「どこから来るか」で対策が変わる。まず種類を特定する。
発生源: 大電流を流す動力ケーブル・モーター・変圧器
特徴: - 動力ケーブルに平行して配線した計装ケーブルに影響しやすい - インバータの PWM スイッチング磁界が特に強い
対策: - 計装ケーブルと動力ケーブルの離隔確保(離隔距離の目安は 計装配線 が正典。交差は直角) - ツイストペアケーブルの使用(ツイストにより磁界の打ち消し効果) - シールド付きケーブルを使用してシールドを適切に接地
発生源: 高電圧導体・静電気帯電物体
特徴: - 高インピーダンス回路に影響しやすい - 熱電対信号(mV レベル)に出やすい
対策: - シールド付きケーブルを使用してシールドを接地 - 電界発生源(高圧ケーブル)との距離を取る
発生源: インバータ・開閉器・モーター起動機
特徴: - 電源ラインを伝わって広範囲に影響する - インバータのキャリア周波数(数 kHz〜数十 kHz)が特徴的
対策: - ノイズフィルタ(ラインフィルタ)の設置 - 計装電源と動力電源の分離(トランスによる絶縁) - アイソレータ(信号絶縁器)の介挿
グラウンドループの発生原因と検出方法¶
グラウンドループとは¶
シールドケーブルを両端接地すると、2点間の電位差により「ループ電流」が流れる。 このループ電流が信号に重畳してノイズになる。
機器A ─── シールドケーブル ─── 機器B
│ │
接地点 A(電位 VA) 接地点 B(電位 VB)
VA ≠ VB の場合 → ループ電流が発生 → ノイズになる
検出方法¶
- シールドの一端を外す(片端接地にする)
- ノイズが減少 → グラウンドループが原因だった
- ノイズが変わらない → 別の原因
接地点間の電位差を測定する
テスターで「2つの接地点間の電圧」を測定する。 数百 mV 以上の差がある場合、グラウンドループが発生しやすい環境。
シールドの正しい接地¶
用語整理:グランドと接地
「グランド(回路の基準電位)」と「接地(大地への接続)」、およびグランドの種類(FG/SG/AGND/DGND/PGND)は グランドと接地 を参照してください。
計装ケーブルのシールド接地原則¶
計装ケーブルのシールドは原則として片端接地
| 接地方式 | 特徴 | 適用 |
|---|---|---|
| 片端接地(フィールド端を浮かす) | グラウンドループ防止に有効 | 計装信号(4-20mA・熱電対) |
| 片端接地(制御室端を浮かす) | 現場側の感電防止になる | 長距離配線・屋外配線 |
| 両端接地 | 高周波ノイズには有効だが DC ループが発生 | 特殊な高周波対応が必要な場合のみ |
接地が「浮いている」状態の確認¶
- ケーブルのシールド端とケーブル本体(信号線)の絶縁を確認
- テスターの抵抗モードでシールドと接地間の抵抗を測定
- 低抵抗(数Ω 以下)→ 接地されている / 高抵抗(MΩ オーバー)→ 浮いている
インバータ起動時の計器誤動作¶
インバータを起動したタイミングで計器の値が跳んだり、暴れたりする場合:
確認手順¶
- インバータ起動と計器誤動作のタイミングを確認(DCS トレンドで時刻を照合)
- インバータのアース確認(PE 端子が確実に接地されているか)
- キャリア周波数の確認(キャリア周波数が低いとノイズが減ることがある)
- 配線ルートの確認(インバータ出力ケーブルと計装ケーブルが並走していないか)
インバータノイズ対策の優先順位¶
| 優先度 | 対策 |
|---|---|
| 1 | インバータの PE(アース)を確実に接地 |
| 2 | 計装ケーブルと動力ケーブルを別ルートへ |
| 3 | インバータ入出力にノイズフィルタを設置 |
| 4 | 計装信号にアイソレータを介挿 |
| 5 | インバータのキャリア周波数を下げる |
メガー測定手順と判定基準¶
測定前の注意事項¶
測定前に機器・電源を切り離すこと
メガーは高電圧(500V〜5000V)を印加する。 通電状態・IC チップを含む精密機器に対して測定すると機器破損や感電の危険がある。
- [ ] 測定対象の電源を切り、開路状態にする
- [ ] 測定対象に接続された精密機器(インバータ・PLC 等)を切り離す
- [ ] 測定後は必ず「放電」を実施してからケーブルに触れる
測定手順¶
- メガー電圧の選択(低圧回路:500V、高圧回路(6.6kV 級):5000V)— 正典は 絶縁管理
- L 端子をケーブル・機器に接続、E 端子を大地(アース)に接続
- 測定ボタンを押し、指針が安定するまで 1 分程度測定
- 読み値を記録(単位:MΩ)
- 測定後は放電スイッチで放電、または 10 秒以上待ってから接続を外す
判定基準¶
判定値は 絶縁管理 が正典です。本ページでは再掲しません。
境界は回路電圧ではなく設備種別で変わります(低圧なら幹線ケーブル・電動機・制御回路・電熱器で別、高圧ならケーブルの新品/使用中・変圧器一次側・電動機で別)。トラブル対応の場では「1 MΩ を切ったら黒」と単純化しがちですが、電熱器は 0.1 MΩ 以上が良、高圧電動機は「設備電圧 [kV] + 1 [MΩ] 以上」というように別の物差しになります。
また電技省令第58条の法定値(0.1/0.2/0.4 MΩ)は低圧電路の下限であって、実務管理値とは別物です。高圧設備には第58条の絶縁抵抗値の定めはありません。
化学プラント固有:迷走電流による腐食対策¶
迷走電流とは¶
複数の接地点間に電位差がある場合、土中・配管・構造物を通って電流が流れる。 この「迷走電流」は金属の電解腐食を引き起こす。
発生しやすい場所: - 直流電流を使用する電解設備・電気防食設備の近傍 - 接地点が複数あり電位差が生じやすい大型プラント
対策: - 接地系統の電位均等化(等電位ボンディング) - 絶縁フランジの設置(配管での迷走電流遮断) - 定期的な配管腐食点検(電位測定・肉厚測定)
等電位ボンディングの確認
設備の金属部(タンク・配管・構造物)が接地されていて、 かつ接地点間の電位差が少ない状態を「等電位ボンディング」という。 定期検査で等電位ボンディングの導通確認を行うこと。 等電位ボンディングは落雷時の地電位上昇による計装機器破損の防止にも直結する。 雷・サージからの保護(SPD の選定・接地)は雷・サージ保護を参照。
関連ページ¶
- 接地(低圧) — D種接地・シグナルグランド分離の実装
- グランドと接地 — FG/SG/AGND/DGND/PGND の定義
- 接地抵抗測定 — 現場での測定手順と判定
- 絶縁管理 — メガー印加電圧・判定値の正典
- 症状逆引きインデックス — 他の症状から探す
根拠¶
絶縁抵抗の判定基準表を撤去し、正典参照に置き換えました(2026-08-03 是正)¶
かつて本ページは「200V/440V 低圧=1 MΩ 以上、6600V 高圧=10 MΩ 以上」という回路電圧だけで切った1枚の表を載せていました。絶縁管理(正典)の実務管理値は設備種別で境界が異なるため、この単純化は次の取り違えを生みます。
| 単純化の結果 | 正典の実際 |
|---|---|
| 低圧はすべて 1 MΩ 以上が良 | 幹線ケーブルの要注意域は 0.1〜1 MΩ、電熱器は 0.1 MΩ 以上が良 |
| 6.6 kV はすべて 10 MΩ 以上が良 | 10 MΩ 以上は高圧ケーブル(使用中)の値。変圧器一次側は 100 MΩ 以上、高圧電動機は「設備電圧 [kV] + 1 [MΩ] 以上」 |
R6(同じ数値を複数ページに書かない)に従い、表そのものを撤去して判定値は正典に一本化し、本ページには「設備種別で物差しが変わる」という判断の注意だけを残しました。
離隔距離も正典参照に¶
誘導ノイズ対策の「最低 300 mm 以上」も 計装配線 が正典です(同ページで実務目安であり法令・規格の値ではないことを明示しています)。本ページからは数値の再記述をやめました。
シールド接地の方式が2ページで粒度違いです(未解決ではありません)¶
計装配線 は「接地点は DCS(制御盤)側の1点のみ」と設計の既定値を示し、本ページは片端接地のどちら端を落とすかという選択肢(フィールド端を浮かす/制御室端を浮かす)を扱っています。矛盾ではなく、設計の標準と現場での切り分けという役割分担です。迷った場合は計装配線側の既定値(DCS 側1点)に寄せてください。
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- 接地点間の電位差が数百 mV 以上ならグラウンドループが起きやすいという目安
- インバータ配線の離隔は通常動力線の2倍、キャリア周波数を下げるとノイズが減ることがある、という経験則
- インバータノイズ対策の優先順位(PE 接地 → 別ルート → フィルタ → アイソレータ → キャリア低減)
- 迷走電流対策(等電位ボンディング・絶縁フランジ・定期の電位/肉厚測定)
原本未照合(honest-hold)¶
- ノイズ対策の定量的な効果(離隔何 mm で何 dB 減衰するか等)を定めた規格は本 Wiki では照合していません。本ページの数値はすべて実務目安です
- 迷走電流・電気防食に関する規格(JIS 系の電気防食規格等)は未照合です。腐食対策の設計は防食の専門部署・専門業者によってください
- シールドを両端接地する高周波向けの手法は、条件(周波数帯・ケーブル長・接地系の等電位性)によって成否が変わります。本 Wiki は成立条件まで検証していないため、「特殊な場合のみ」という以上には踏み込みません
限界の明示¶
- 本ページは症状からの切り分けが目的です。設計時のケーブル選定・離隔・シールド方式は 計装配線、接地系統の設計は 接地(低圧)・グランドと接地 が正典です
- メガー測定は機器を壊し得ます。 手順の danger 注記(電源切り離し・精密機器の切り離し・測定後の放電)を省略しないでください
正典参照¶
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 絶縁抵抗の判定値・メガー印加電圧・温度換算 | 絶縁管理 |
| 離隔距離・ケーブル型式・シールド接地の設計既定値 | 計装配線 |
| FG/SG/AGND/DGND/PGND の定義 | グランドと接地 |
| D種接地・シグナルグランド分離の実装 | 接地(低圧) |
| 接地抵抗の測定手順と判定 | 接地点検ガイドライン |
| SPD の選定・接地 | 雷・サージ保護 |
照合日: 2026-08-03。
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