計算ツール集¶
電気計装の現場でよく使う計算式を「式 + 数値例 + 判定基準」の形式でまとめた。
1. 電圧降下(三相 3 線式)¶
計算式¶
e = √3 × I × (R cosθ + X sinθ) × L
電圧降下率 [%] = e / V0 × 100
| 変数 | 単位 | 説明 |
|---|---|---|
| e | V | 線間電圧降下 |
| I | A | 負荷電流 |
| R | Ω/km | 導体抵抗。90 ℃ の交流実効抵抗 R(90℃) を使う(カタログの 20 ℃ 値は使わない) |
| X | Ω/km | リアクタンス(サイズ・種別・周波数で決まる)。R・X とも 正典の表 参照 |
| cosθ | — | 力率(電動機は 0.8 が目安) |
| L | km | 片道ケーブル長 |
| V0 | V | 公称線間電圧(200V または 400V)。受電端電圧ではない |
数値例¶
CV 14sq・50 Hz(R(90℃) = 1.71 Ω/km、X = 0.0828 Ω/km)、I = 30A、cosθ = 0.85、L = 80m
sinθ = √(1 - 0.85²) = 0.527
e = 1.732 × 30 × (1.71 × 0.85 + 0.0828 × 0.527) × 0.080
= 1.732 × 30 × 1.497 × 0.080
= 6.22 V
電圧降下率 = 6.22 / 200 × 100 = 3.1%
R(90℃) = 1.71・X = 0.0828 の出所
R は 日本電線工業会 技資第103号B 表③の CV 2 心及び 3 心・50 Hz の R(90℃)、X は同表の同列の規格値です。電圧降下計算 の R・X 表と選定ツール(docs/javascripts/cable-calc.js)は同じ値に統一済みです(R(90℃) は 2026-09-17 に確定。下記「根拠」参照)。
60 Hz なら X = 0.0994 となり e = 6.26 V・3.1 % です。CVT なら X = 0.107(50 Hz)と 3 割大きくなります。カタログの 20 ℃ 値(1.34 Ω/km)で計算すると 4.92 V・2.5 % と2 割強小さく出るので使いません。精算では採用するケーブルのメーカーカタログ値を使ってください。
判定基準¶
- 幹線 2% 以内、分岐 2% 以内、合計 4% 以内(内線規程の値として広く引用されるが原本未照合。下記「根拠」参照)
2. 短絡電流(%インピーダンス法)¶
計算式¶
Is3 = Ib × 100 / %Z合計
Ib = Pb / (√3 × Vb) [A] ← 基準電流
%Z合計 = %Z系統 + %Z変圧器 + %Zケーブル(各々を基準容量に換算)
数値例¶
変圧器 1,000kVA、%Z = 5%、系統 %Z = 0.5%(1,000kVA 基準)、Vb = 200V
Ib = 1,000,000 / (1.732 × 200) = 2,887 A
%Z合計 = 5.0 + 0.5 = 5.5%
Is3 = 2,887 × 100 / 5.5 = 52,490 A ≈ 52.5 kA
判定基準¶
- MCCB の定格遮断電流 ≥ Is3 であること
- 変圧器直近では 50kA 超になるため高遮断容量 MCCB または限流ヒューズを選定
3. Cv 値(制御弁の液体流量計算)¶
計算式¶
Kv = Q / √(ΔP / SG)
Q : 流量 [m³/h]
ΔP : 差圧 [bar](弁前後の圧力差。1 kgf/cm² ≒ 0.98 bar)
SG : 比重(水 = 1.0)
Cv(US 単位系)に直す場合: Cv ≒ 1.156 × Kv(Kv = 0.865 × Cv)
Kv と Cv は単位系が違う別の係数です
上式は Q を m³/h、ΔP を bar で扱うメトリック系の Kv です。Cv は US 単位系(流量 US gal/min、差圧 psi)で定義されるため、同じ式に m³/h と US gal/min を併記することはできません。 メーカーのカタログが Cv 表記か Kv 表記かを必ず確認してください。取り違えると約 1.16 倍のずれが出ます。
数値例¶
流量 10 m³/h、ΔP = 1.0 bar、SG = 1.0(水)
Kv = 10 / √(1.0 / 1.0) = 10 / 1.0 = 10.0
Cv 換算 = 1.156 × 10.0 ≒ 11.6
制御弁の選定時は計算値の 1.3〜1.5 倍の定格を持つバルブを選ぶ(50〜80% 開度で運転するため)。カタログの表記(Cv か Kv か)と計算値の単位系を必ず揃えてから比較してください。
判定基準¶
- 通常運転点での弁開度:50〜80% が適切
- 最小流量時の開度が 10% 以下になる場合はサイジングを見直す
4. 変圧器容量¶
計算式¶
必要変圧器容量 [kVA] = 合成最大需要電力 [kW] / 総合力率
合成最大需要電力 = 設備容量合計 × 需要率 / 不等率
数値例¶
動力 150kW(需要率 0.65)+ 照明 10kW(需要率 0.90)+ 計装 5kW(需要率 0.85)
最大需要電力合計 = 150 × 0.65 + 10 × 0.90 + 5 × 0.85
= 97.5 + 9.0 + 4.25 = 110.75 kW
不等率 = 1.1(工場一般目安)
合成最大需要電力 = 110.75 / 1.1 = 100.7 kW
総合力率 = 0.85 と仮定
必要容量 = 100.7 / 0.85 = 118.5 kVA
将来余裕 20% 考慮 → 118.5 × 1.20 = 142 kVA → 150kVA を選定
判定基準¶
- 設計負荷が変圧器定格の 70〜80% に収まるよう選定
- 将来拡張を 15〜20% 見込む
5. 4-20mA ループ負荷抵抗¶
計算式¶
最大ループ抵抗 [Ω] = (電源電圧 [V] - 最低動作電圧 [V]) / 最大出力電流 [A]
最低動作電圧 : 伝送器の最低必要電圧(一般的に 10〜12V DC)
最大出力電流: 20mA(フルスケール時)
数値例¶
電源電圧 24V、伝送器の最低動作電圧 12V
最大ループ抵抗 = (24 - 12) / 0.020 = 600 Ω
ループ内に並ぶ抵抗(受信抵抗 + 配線抵抗 + バリア抵抗)の合計が 600Ω 以下であること。
例: 受信抵抗(DCS 入力)250Ω + 配線抵抗 50Ω + 安全バリア 300Ω = 600Ω → ギリギリOK
判定基準¶
- 合計ループ抵抗 ≤ 最大ループ抵抗
- HART 通信を使用する場合は受信抵抗を 250Ω 以上にする(HART 最低受信抵抗)
6. コンデンサ容量(力率改善)¶
計算式¶
必要コンデンサ容量 [kvar] = P × (tanθ₁ - tanθ₂)
P : 有効電力 [kW]
tanθ₁ : 改善前の力率 cosθ₁ から求める tanθ₁ = √(1/cos²θ₁ - 1)
tanθ₂ : 改善後の目標力率 cosθ₂ から求める tanθ₂ = √(1/cos²θ₂ - 1)
数値例¶
有効電力 100kW、現在の力率 0.7 → 目標力率 0.95
tanθ₁ = √(1/0.7² - 1) = √(1/0.49 - 1) = √(1.04) = 1.020
tanθ₂ = √(1/0.95² - 1) = √(1/0.9025 - 1) = √(0.108) = 0.329
必要コンデンサ容量 = 100 × (1.020 - 0.329) = 69.1 kvar → 70kvar を選定
判定基準¶
- 目標力率:0.95 以上(電力会社の力率割引を受けるため)
- 高調波が大きい場合(インバータ多用)はコンデンサへの流入を確認。リアクトル付きコンデンサを使用する
根拠¶
本ページは式の索引であり、数値の正典ではありません¶
各式の設計上の位置づけ・許容値・限界は、それぞれの正典ページが正です。本ページは現場で式をすぐ引くための集約で、詳細は次を参照してください。
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 電圧降下の式・分母の定義・許容値 | 電圧降下計算 |
| 短絡電流(%Z 法)・遮断容量の確認 | 短絡電流計算 |
| 需要率・不等率・将来余裕 | 負荷計算 |
| 4-20 mA と故障判定(NAMUR NE 43) | 計装の基礎 |
| 導体抵抗 R | 電圧降下計算 の R 表(選定ツール docs/javascripts/cable-calc.js も同値) |
| 許容電流 | 低圧ケーブル(データは docs/javascripts/cable-calc.js) |
| 補正係数 | ケーブル許容電流と補正係数 |
| 制御弁の Cv・開度 | 制御弁 |
全6式の計算例を再計算しました(2026-08-01)¶
| # | 検算結果 |
|---|---|
| 1 電圧降下 | R(90℃) = 1.71・X = 0.0828(50Hz)で再計算(2026-09-17): sinθ = 0.5268、e = 6.2232 V、率 3.11 % → 掲載値(6.22 V/3.1 %)と一致。60 Hz(X = 0.0994)では e = 6.2596 V・率 3.13 %。旧掲載(R(20℃) = 1.34 で 4.92 V・2.5 %)は 20 ℃ 基準のため差し替え |
| 2 短絡電流 | Ib = 2,887 A、Is3 = 52,491 A ≒ 52.5 kA → 一致(fault-current.md の値とも整合) |
| 3 Kv | 10 / √(1.0/1.0) = 10.0 → 一致 |
| 4 変圧器容量 | 110.75 kW → 100.68 → 118.45 → ×1.2 = 142.1 kVA → 一致 |
| 5 ループ抵抗 | (24 − 12) / 0.020 = 600 Ω → 一致 |
| 6 力率改善 | tanθ₁ = 1.0202、tanθ₂ = 0.3287、69.15 kvar → 一致 |
是正の記録¶
| before → after |
|---|
| 電圧降下の分母 V0 を「受電端電圧」と説明していた → 公称線間電圧(受電端電圧ではない)。正典 電圧降下計算 の定義と食い違っていました |
| 導体抵抗 R の値が本 Wiki 内で揃っていないことを未解決として明示していた(2026-08-01) → 2026-08-02 に一次照合で確定・解消。旧2系列(1.32 / 1.37)はどちらも誤りで、正しくは 1.34 Ω/km(下記「解消済み: 導体抵抗 R の不整合」参照)。数値例を再計算しました |
| 電圧降下の数値例を R(20℃) = 1.34 Ω/km で計算していた(2026-08-02〜09-17) → R(90℃) = 1.71 Ω/km(技資第103号B 表③)に差し替え。20 ℃ 値では降下を 2 割強小さく見積もる(4.92 V → 6.22 V)。正典 電圧降下計算 と選定ツールも同日に R(90℃) へ統一 |
| Cv の式に「Q: 流量 [m³/h](または US gal/min)」と2つの単位系を併記していた → 換算係数のない同一の式で両方は成立しません。メトリック系の Kv として整理し、Cv ≒ 1.156 × Kv(Kv = 0.865 × Cv) の換算を明示 |
Cv / Kv の取り違えは約 1.16 倍のずれになります。カタログ表記と計算値の単位系を揃える注意を warning で追加しました。
解消済み: 導体抵抗 R の不整合(2026-08-02)¶
本ページは 2026-08-01 時点で、同じ CV 14 sq に 1.32 Ω/km(電圧降下計算 の R 表)と 1.37 Ω/km(選定ツール docs/javascripts/cable-calc.js の CABLE_DB)が併存することを「未解決の不整合」として掲示していました。2026-08-02 に一次照合で確定し、解消しました。
調べた結果、どちらも誤りでした。 正しい値は 1.34 Ω/km(多心 CV・CVT の JIS C 3605 最大導体抵抗、20 ℃)です。ただしこの 20 ℃ 値はカタログ照合用の参考値で、電圧降下の計算には 2026-09-17 以降 R(90℃) = 1.71 Ω/km を使います(上記「是正の記録」・正典 電圧降下計算)。
| 断面積 [mm²] | 旧・R 表 | 旧・選定ツール | 確定値(JIS C 3605) |
|---|---|---|---|
| 2 | (記載なし) | 9.61 | 9.42 |
| 3.5 | (記載なし) | 5.48 | 5.30 |
| 5.5 | 3.28 | 3.49 | 3.40 |
| 8 | 2.27 | 2.40 | 2.36 |
| 14 | 1.32 | 1.37 | 1.34 |
| 22 | 0.847 | 0.872 | 0.849 |
| 38 | 0.490 | 0.505 | 0.491 |
| 60 | 0.308 | 0.320 | 0.311 |
| 100 | 0.188 | 0.193 | 0.187 |
| 150 | (記載なし) | 0.128 | 0.124 |
| 200 | (記載なし) | 0.096 | 0.0933 |
| 250 | (記載なし) | 0.077 | 0.0754 |
全サイズが食い違っていました(14 sq だけの問題ではありませんでした)。旧2系列はいずれも照合した3社のどのカタログとも一致せず、出所を特定できませんでした。
照合の経路・出典・8 sq で3社が割れる件は 電圧降下計算 の「根拠と適用上の注意」が正典です。本ページの数値例・R 表・選定ツールの CABLE_DB はすべて確定値に統一済みです。
リアクタンス X も確定しました(2026-08-02・不整合は解消済み)¶
R に続いて X も確定し、手計算と選定ツールの結果は一致するようになりました。
| 旧 | 新(14 sq) | |
|---|---|---|
| 本ページ・電圧降下計算 | 0.083 Ω/km | CV 0.0828(50Hz)/0.0994(60Hz) |
選定ツール cable-calc.js |
0.09 Ω/km(全サイズ固定) | 同上(サイズ・種別・周波数ごと) |
出典は 日本電線工業会 技術資料 技資第103号B「低圧電線・ケーブルのインピーダンス」(2024年6月) で、無償公開のため原本 PDF を直接照合できました(本 Wiki では珍しく二次資料を経由していません)。詳細は 電圧降下計算 の根拠節が正典です。
確定によって分かった実務上の要点は 2 つあります。
- X は周波数で 2 割変わります(14 sq CV で 50 Hz 0.0828 → 60 Hz 0.0994)。旧「0.09 固定」は東西どちらでも合いませんでした。選定ツールに周波数の選択を追加しています。
- CVT の X は CV 3 心より 2〜3 割大きいです(14 sq・50 Hz で 0.107 対 0.0828)。許容電流は CVT が有利、リアクタンスは CV 3 心が有利という逆向きの関係になります。
ただし R の温度基準は未解決です
同じ技資第103号B は、電圧降下の計算例に 90 ℃ の抵抗を使っています。本 Wiki の R 表は 20 ℃ 基準のため、電圧降下を約 28 % 過小評価します。判定が甘くなる方向の差なので、許容値ぎりぎりの回路では 電圧降下計算 の R(90℃) 表で必ず検算してください。
原本未照合(honest-hold)¶
- 内線規程(JEAC 8001)の 2 % / 2 % / 4 %: 有償・原本未照合です。節番号・版年は挙げません(電圧降下計算 の根拠節と同じ扱い)
- Cv / Kv の定義と換算係数 0.865(Cv = 1.156 × Kv): 弁のサイジング規格(IEC 60534 系)は有償・原本未照合です。本ページは単位系の違いを注意喚起する範囲にとどめ、サイジング計算そのものの規格式(配管レデューサ係数・チョーク流れの判定など)は扱いません
- HART の最低受信抵抗 250 Ω: HART 仕様書は未照合です
実務慣行(法令・規格の裏付けなし)¶
- 電動機の力率 0.8・伝送器の最低動作電圧 10〜12 V DC(リアクタンス X は 2026-08-02 に技資第103号B で規格値を確定したため、この一覧から外しました)
- 弁の定格は計算値の 1.3〜1.5 倍・運転開度 50〜80 %・最小流量時 10 % 以下は見直し
- 変圧器は定格の 70〜80 % に収める・将来拡張 15〜20 %・不等率 1.1
- 目標力率 0.95 以上(電力会社の力率割引の一般的な水準。個別の契約条件は供給約款によります)
限界の明示¶
- 数値例は式の使い方を示すためのもので、特定の設備の設計値ではありません
- 電圧降下の式は送り端・受電端の位相差を無視した簡略式です
- 短絡電流の例は %Z を合計するだけの単純化で、電動機拠出・非対称分は含みません
照合日: 2026-08-01。
関連ページ¶
- ケーブル許容電流と補正係数 — 電流計算の根拠となる係数表
- 電圧降下 — 計算式と設計上の許容値
- 短絡電流 — 遮断容量選定の計算
- リファレンス — 他の参照資料へ
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