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故障モード棚卸し

30秒まとめ

復旧性管理 の表は 1 行 = 1 故障モードですが、実際に埋めようとすると最初に止まるのは「この設備の故障モードとして何を書けばいいのか」です。本ページは行の起こし方を与えます。割り方の基準は部品の数ではなく、復旧の打ち手が変わるかどうかです。打ち手が同じモードは 1 行にまとめ、打ち手が違うモードは分けます。目安は 1 台あたり 3〜4 行で、これ以上細かくすると表が埋まりません。


行の割り方 — 打ち手が変わるところで割る

故障モードを FMEA のように網羅すると、インバータ 1 台で数十行になって表が埋まりません。復旧性表の目的は原因の網羅ではなく、復旧時間を決めている経路を見つけることです。

割る/まとめるの判断 例
割る: 修理主体が違う 冷却ファン交換(自分たち)と 主回路素子故障(メーカー)は別の行
割る: 部品の納期の桁が違う 汎用の電源ユニット(数日)と 機種専用の制御基板(数週間)は別の行
割る: 部品が要る/要らない 導圧管の詰まり(作業だけ)と ダイヤフラム損傷(部品交換)は別の行
まとめる: 打ち手が同じ 「入力回路故障」と「出力回路故障」はどちらも同じ調節計の丸ごと交換なら 1 行

最初の 1 台は 3 行で書き切る

「自分たちで直せるもの」「部品待ちになるもの」「メーカーを呼ぶもの」の 3 行から始めます。細かさは 2 周目に足します。1 台目に完璧を求めると 2 台目に到達しません。


行を書く前に決める 4 属性

1 行ごとに次の 4 つを決めると、復旧性管理 の「修理主体」「部品納期」「予備品」「修理」の各列が自動的に決まります。

属性 問い 表のどの列になるか
修理主体 自分たちで交換できるか。専用ツール・メーカー認証が要るか 修理主体・到着(h)・診断(h)
部品の性格 汎用品か/機種専用か/製番管理の特注か 部品納期(h)
現地交換の可否 通電したまま抜けるか。停止・隔離・足場・防爆解除が要るか 修理(h)
復元に要る情報 部品を替えただけで戻るか。設定・整定値・プログラムの復元が要るか 修理(h)・後述の設定情報

「部品の性格」を汎用/専用/特注の 3 段で押さえるだけで、納期の桁がおおよそ決まります。 正確な納期はベンダーに聞く必要がありますが、聞く前に「これは特注だから長い」と当たりを付けられれば、問い合わせの優先順位が決まります。


機器種別ごとの代表モード

各設備の実際の構成はメーカー取説の交換部品リストが正です。下表は棚卸しの出発点として使い、自社の機種で確認してください(本ページ末尾の「限界の明示」)。切り分けの手順は各トラブル記事が正典で、本ページは繰り返しません。

インバータ

故障モード 修理主体の目安 部品の性格 備考
冷却ファン停止・目詰まり 自分たち 機種専用だが小額 予備品として持ちやすい。放置すると素子故障に発展する
主回路素子(IGBT)故障 メーカー 基板単位・機種専用 本体交換になることが多い。容量とオプションで機種が分かれる
制御基板故障 メーカー 機種専用・製番管理あり 廃番リスクが出やすい。更新計画と接続する
パラメータ喪失・設定誤り 自分たち 部品不要 バックアップが無いと部品があっても戻らない(後述)

切り分けは インバータトラブル。パラメータバックアップの具体手順も同記事にあります。

PLC・DCS

故障モード 修理主体の目安 部品の性格 備考
I/O モジュール故障 自分たち 型式単位・同型を保有しやすい 活線挿抜の可否は機種による。取説で確認
電源ユニット故障 自分たち 型式単位 冗長化されていれば停止しない。冗長の有無を行に書く
CPU 故障 自分たち+メーカー 型式単位 プログラムの復元が要る。バックアップ世代が命
通信モジュール・ネットワーク断 自分たち 汎用〜型式単位 局番・IP の設定復元が要る
メモリ保持用電池の消耗 自分たち 汎用 寿命部品。計画交換の対象(寿命管理)

切り分けは PLC/DCSトラブル。

計装伝送器(圧力・温度・流量・レベル)

故障モード 修理主体の目安 部品の性格 備考
導圧管の詰まり・凍結 自分たち 部品不要 部品納期 0。作業時間だけの行になる
伝送器本体の故障 自分たち 汎用〜型式単位 交換後にレンジ設定と校正が要る
センサ部(測定素子)の故障 自分たち/メーカー プロセス接続が特注のことがある フランジ・材質が特注だと納期が伸びる
配線・端子の断線、シールド接地不良 自分たち 部品不要〜汎用 計装信号トラブル

校正は 校正 が正典です。交換後に校正が要る行は、修理(h) に校正時間を必ず含めます。

調節弁

故障モード 修理主体の目安 部品の性格 備考
計装空気の供給不良(元圧低下・水分) 自分たち 部品不要〜汎用 弁単体でなく空気源側の行にもなる(計装空気)
ポジショナ故障 自分たち 型式単位 交換後に弁の再校正(ストローク調整)が要る
アクチュエータ(ダイヤフラム・ばね)の損傷 自分たち/外部 型式単位 現地で交換できるか、弁を降ろすかで修理(h) が変わる
弁座・プラグの摩耗、シートリーク 外部(分解整備) 特注・製番管理 長納期になりやすい。定期整備の計画に接続する

切り分けは 制御弁トラブル、機器そのものは 制御弁。

モーター・受変電

故障モード 修理主体の目安 部品の性格 備考
モーター軸受の劣化 外部(整備工場) 汎用ベアリング 予備モーター 1 台を持つか、整備を待つかの判断(モータートラブル)
モーター巻線の絶縁劣化・焼損 外部 標準品は代替入手可/防爆・特注は長納期 防爆・特殊フランジは別の行に割る
遮断器の操作機構不良 外部/メーカー 機種専用 停電しないと交換できない。修理(h) に停電調整が乗る
保護継電器の故障 自分たち/メーカー 型式単位 交換後に整定値の復元と動作試験が要る(保護継電器試験)
UPS バッテリの劣化 自分たち 汎用〜型式単位 寿命部品。故障ではなく計画交換で扱う(UPS・非常電源)

見落としやすい行

設備本体ばかり見ると、実際に止める原因が表から抜けます。次の 6 つは、A ランク設備の行を起こすたびに一度は自問してください。

見落とし なぜ抜けるか
冷却・空調(盤クーラー、換気扇) 「電気設備」と思われていない。夏に集中して止まる
計装空気・窒素の供給 弁の故障として記録され、空気源側が行にならない
制御電源(DC24V、制御用 UPS) 1 個の電源ユニットが複数設備を同時に落とす。波及範囲を行に書く
通信(スイッチ、光ケーブル、無線) 単体では止まらないため軽視される。監視が落ちると運転継続できない場合がある
接地・シールド 故障ではなく「調子が悪い」として扱われ、記録に残らない(接地・ノイズ)
設定情報・図面 物ではないので棚卸しの対象にならない(次節)

1 個の部品が複数設備を落とす行は別扱いにする

共通の制御電源やネットワークスイッチは、1 行の故障で A ランク設備が複数止まります。この行の許容停止時間は、ぶら下がる設備のうち最も厳しいものを採ります。設備ごとの行に分散させると、共通部の重大さが表から消えます。


部品があっても戻らない — 設定情報の復元性

予備品を持っていたのに復旧しなかった、という失敗の多くは設定情報が原因です。物理的な部品は買えますが、設定は買えません。

設定情報 無いと起きること
インバータのパラメータ 交換した本体が初期値で立ち上がり、加減速時間・上限周波数・保護設定が元と違う
PLC・DCS のプログラムと最新の変更 CPU 交換後に古い版が入り、直近の改造が消える
保護継電器の整定値 整定を戻せず、保護協調が崩れたまま送電することになる
伝送器のレンジ・HART 設定 スケールが違う値を DCS が正しい値として表示する。気付きにくく危険
ポジショナのストローク調整値 全開・全閉位置がずれ、制御が合わない
現状の図面・結線(改造が反映されているか) 図面どおりに戻して動かない

棚卸しの副産物として、行ごとに「復元に要る情報は今どこにあるか」を 1 列書いてください。 「メーカーしか持っていない」「担当者の PC にある」「最新版か分からない」が出たら、それは部品を買うより先に潰す対象です。費用がほぼかかりません。

設定のバックアップは「取ってある」ではなく「戻せる」で確認する

バックアップファイルの存在と、それを使って復元できることは別です。計画停止や定期点検の機会に、実際に読み戻す手順まで一度通しておきます。SIS に関わる機器の変更は別の管理系統に従います(SIS・SIL)。


棚卸しのやり方

設備 1 台あたり 30 分を目安にします。情報源は 3 つで、この順に安いものから使います。

  1. メーカー取説の交換部品リスト・消耗品リスト(費用ゼロ・その場で読める)。ここに載っている部品が、その設備でメーカーが交換を想定している単位です
  2. 過去のトラブル記録(あれば)。実際に起きたモードは、起きる確率が確認されている行です。記録が無ければ「無い」と書いて次へ進みます
  3. ベンダーへの問い合わせ(時間がかかる。まとめて 1 回)。聞くことは「この機種で交換対象になる部品と、その標準納期」の 2 点です。1 台ずつ聞くと回答待ちで止まるので、A 設備分をまとめて発出します

分からない行は空欄にせず「不明・要照会」と書く

空欄は「まだ見ていない」、不明は「見たが分からない」です。区別しないと、棚卸しがどこまで進んだのかが測れません(復旧性管理 の充足率)。


よくある誤解

  • 誤: 故障モードは網羅しないと意味がない 正: 網羅は FMEA の目的で、復旧性表の目的ではありません。復旧時間を決めている経路が見えれば、その行の対策が打てます。網羅を目指して埋まらない表より、3 行で埋まった表の方が使えます
  • 誤: 過去に起きていない故障は書かなくてよい 正: 「まだ起きていないが起きたら長い」行こそ、予備品と契約の対象です。過去実績は確率の情報であって、影響の大きさの情報ではありません
  • 誤: 予備品を持てばその行は解決する 正: 設定情報を戻せなければ部品があっても復旧しません。棚卸しで設定の所在を先に確認します。判定の考え方は 復旧性管理 の 3 段判定に従います
  • 誤: 故障モードは設備担当者の経験で書くもの 正: 経験だけで書くと、経験した人がいない設備が空白になります。取説の交換部品リストから起こせば、経験の有無に関係なく行が立ちます

根拠

本ページが正典の範囲

本ページは「復旧性表の行の割り方(打ち手が変わる単位)・棚卸しの手順・設定情報の復元性」の正典です。以下は他ページが正典で、本ページでは手順・数値を再掲しません。

項目 正典
復旧時間の算式・復旧境界・対策の 3 段判定・指標 復旧性管理
予備品の選定軸・在庫数量・保管条件・廃番対応 予備品管理
重要度ランクの定義・保全方式の使い分け 保全体系
寿命部品の計画交換・更新計画 寿命管理
校正の手順・トレーサビリティ 校正
各機器の切り分け手順・エラーコード 症状逆引きインデックス と各トラブル記事

出所の切り分け

本ページに法令・規格の規定値は登場しません。

記述 出所
「打ち手が変わるところで割る」という粒度の基準 復旧性表の目的(復旧時間を決めている経路の特定)からの設計判断であり、FMEA など既存手法の規定ではありません
1 台あたり 3〜4 行、最初は 3 行、設備 1 台 30 分 表が埋まり切ることを優先した運用上の目安であり、根拠のある標準値ではありません
機器種別ごとの代表モード表(修理主体・部品の性格) 一般的な実務上の傾向です。メーカー・機種・年式で変わります
「汎用/型式単位/特注」の 3 段 納期の桁に当たりを付けるための便宜的な区分で、業界標準の分類ではありません

限界の明示

  • 機器種別ごとの表は一次照合していません(honest-hold)。 メーカー取説・部品表との逐語照合は行っておらず、自社の機種でそのまま使える保証はありません。実際の交換単位は取説の交換部品リストで確認してください。表の「備考」に書いた傾向(製番管理の有無、活線挿抜の可否など)も機種依存です
  • 本ページは安全性の評価をしません。 故障モードが安全機能に関わる場合(SIS のセンサ・最終要素など)は、復旧の速さより先に機能安全側の要求が決まります。SIS・SIL に従ってください
  • 防爆区域の機器は、交換の可否が先に決まります。 復旧性の行を立てる前に区域区分と機器要件を確認してください(防爆)
  • 本ページは FMEA・RCM の代替ではありません。 設計段階のリスク評価や保全方式の決定にはそれぞれの手法があります。本ページの範囲は既設 A ランク設備の復旧性表を埋めることに限られます

照合日: 2026-09-14(repo 内のリンク先ページの実在と、正典範囲が 復旧性管理・予備品管理・各トラブル記事と重複していないことを確認。機器別の傾向表はメーカー一次資料との照合を行っていないため honest-hold として明示)。

関連ページ

  • 復旧性管理 — 本ページで起こした行を入れる表と、復旧時間の算式・対策の判定
  • 予備品管理 — 行の対策案が「自社保有」になったときの在庫数量・保管・廃番対応
  • 保全体系 — 重要度ランクと保全方式。棚卸しの対象設備を決める前段
  • 寿命管理 — 冷却ファン・電池・バッテリなど寿命部品を故障でなく計画交換で扱う
  • 症状逆引きインデックス — 症状から切り分け記事を探す。本ページは逆に、機器から故障モードを起こす
  • 校正 — 交換後に校正が要る行の修理時間に含める作業
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