変圧器¶
30秒まとめ¶
化学プラントでは火災リスクからモールド変圧器を屋内に採用し、屋外・大容量には油入変圧器を使う。絶縁油管理(フルフラール・酸価)と保護継電器(ブッフホルツ)の理解が保全の核心。
油入変圧器 vs モールド変圧器¶
| 比較項目 | 油入変圧器 | モールド変圧器 |
|---|---|---|
| 絶縁・冷却方式 | 絶縁油 | エポキシ樹脂 |
| 設置場所 | 屋外、または耐火構造の変圧器室 | 屋内(電気室) |
| 火災リスク | あり(絶縁油可燃) | 低い(難燃性) |
| 容量範囲 | 大容量まで対応 | 〜数 MVA |
| 保守コスト | 絶縁油管理が必要 | 比較的低い |
| 化学プラントでの用途 | 屋外・大容量受変電所 | 屋内電気室・プロセスエリア近傍 |
容量選定¶
計算手順¶
1. 負荷設備の合計容量を積み上げる(銘板の単純合計・通常は kW)
2. 需要率を掛けて各系統の最大需要を求める … 全負荷が同時には動かない分を削る
3. 複数系統なら各系統の最大需要の合計を不等率で割る … ピーク時刻がずれる分を削る
ここまでの結果が「合成最大需要電力」[kW]
4. 力率で割って皮相電力 [kVA] に換算する … 変圧器の定格は kVA
5. 将来増設余裕を加算(20〜30%)
6. 標準容量(100/200/300/500/750/1000/1500/2000 kVA 等)から上位の容量を選定
手順2と3は「削る」段、手順5は「戻す」段。3を飛ばすと各系統のピークが同時に来る前提になり、変圧器が過大になる。段ごとの意味と数値例は 受変電設備概論 を参照。
選定時の注意点¶
- 力率の考慮:手順4で使う力率は合成最大需要が発生する時刻の総合力率であり、個別機器の定格力率ではない。力率が低い(0.8未満)ほど必要な kVA は大きくなる
- 需要率をまとめて掛けてよい条件:設備容量合計に需要率を1つ掛けられるのは、その値が各系統の需要率を設備容量で加重平均した値になっているとき。系統ごとに需要率が違い加重平均が確認できないなら、系統別に掛けてから足す
- 高調波を含む負荷:インバータ・UPS が多い場合は変圧器の高調波許容値(K ファクタ)を確認
- 始動電流:大型モーターの直入れ始動があると突入電流で電圧降下が大きくなる
保護方式¶
OCR(過電流継電器)¶
変圧器の一次側に設置。整定は限時要素と瞬時要素の2つで構成します。
- 限時要素:変圧器定格電流の 110〜125%(過負荷保護)。上位・下位との時限協調をとる。
- 瞬時要素:短絡保護用。投入時の励磁突入電流(定格の 6〜10 倍、継続数サイクル)で誤動作しないよう、定格の概ね 6〜10 倍以上(600〜1000%) に整定する。第2高調波抑制機能付き OCR なら突入電流を判別できるため、より低い整定でも突入時の誤トリップを回避できる。
瞬時整定を定格の1.5〜2倍に置いてはいけない
瞬時要素を定格の 1.5〜2 倍(150〜200%)に整定すると、変圧器投入のたびに励磁突入電流(定格の 6〜10 倍)で瞬時要素が誤動作トリップします。瞬時要素は励磁突入電流の上を確実にまたぐ値に設定してください(保護継電器 の整定計算例と整合)。
過熱継電器(温度継電器)¶
変圧器の油温・巻線温度が異常上昇したときに警報・トリップを発報。 - 警報設定:油温 85〜90℃ - トリップ設定:油温 95〜105℃(機種による)
ブッフホルツ継電器(油入変圧器専用)¶
内部故障(アーク・局所過熱)で発生するガスが絶縁油中に浮上し、ブッフホルツ継電器のフロートを動作させる。
| 動作段階 | 原因 | アクション |
|---|---|---|
| 1段(警報) | 軽微なガス発生 | 運転継続しながら点検 |
| 2段(トリップ) | 大量のガス・油流 | 即時遮断 |
ガスの採取と分析
ブッフホルツ継電器で採取したガスを分析することで内部故障の種類を推定できる。 水素(H₂):電気アーク、アセチレン(C₂H₂):高温アーク、メタン(CH₄):局所過熱
絶縁油管理¶
定期サンプリング¶
| 項目 | 測定周期 | 判定基準(参考) |
|---|---|---|
| 絶縁耐圧 | 年1回 | 30 kV/2.5mm 以上 |
| 酸価 | 年1回 | 0.2 mgKOH/g 以下(要注意:0.2〜0.4 / 要交換:0.4 以上) |
| 水分 | 年1回 | 30 ppm 以下 |
| フルフラール | 3〜5年ごと | 4 mg/L 以下(超えると固体絶縁の劣化進行) |
フルフラール分析の意義¶
フルフラールはセルロース系絶縁物(絶縁紙)の熱劣化で生成する。絶縁油中のフルフラール濃度から固体絶縁の劣化度を間接的に評価できる唯一の方法。
%インピーダンスと短絡電流¶
変圧器の%インピーダンス(%Z)は短絡電流の大きさを決める重要パラメータ。
短絡電流(変圧器二次側)= 定格電流 / (%Z / 100)
例:1000 kVA、440V、%Z=5% の変圧器の定格電流と短絡電流
定格電流 = 1000kVA / (√3 × 0.44kV) = 1312 A
短絡電流 = 1312 / 0.05 = 26,240 A
%Z が小さいほど短絡電流が大きくなり、保護機器(遮断器・ヒューズ)の遮断容量の確認が重要になる。
励磁突入電流¶
変圧器投入時に定格電流の6〜10倍の突入電流が流れることがある(継続時間:数サイクル〜0.1秒程度)。
OCR との協調確認
変圧器を投入したとき OCR が誤動作トリップしないよう、OCR の時限設定と励磁突入電流の継続時間を確認し、励磁突入電流を無視できる時限に設定する。 または、変圧器用 OCR に「第2高調波抑制機能」付きを選定する(突入電流に含まれる第2高調波を検出して動作を抑制する)。
根拠¶
「防爆室」という設置場所の記述を是正しました(2026-08-03)¶
油入変圧器の設置場所を「屋外または防爆室」としていましたが、用語の取り違えです。油入変圧器の屋内設置で問題になるのは絶縁油の可燃性に対する耐火区画であって、爆発性ガス雰囲気(防爆エリア)ではありません。むしろ防爆エリアに油入変圧器を置くことは避けるべき方向です。「耐火構造の変圧器室」に改めました。危険場所の区分そのものは 防爆 が正典です。
容量選定手順に不等率と力率の段を補いました(2026-08-10)¶
従来の手順は4段(合計容量 → 需要率 → 将来余裕 → 標準容量選定)で、不等率と力率の2段が抜けていました。
- 不等率が抜けていた:複数系統をまとめるとき、各系統の最大需要をそのまま足すとピーク時刻のずれを見落とし、変圧器が過大になります。手順3として明示しました。
- kW と kVA の境界が曖昧でした:旧手順1が「合計容量(kVA)」と書きながら、注意点では「kW を力率で割って kVA に換算する」としていて、どの段で単位が変わるのか読み取れませんでした。手順1を kW、手順4を kVA 換算として段を分けました。
- 需要率をまとめて掛けてよい条件を注意点に追加しました。設備容量合計に需要率を1つ掛けられるのは、その値が各系統の需要率を設備容量で加重平均した値になっているときに限られます(各系統の需要率が等しい場合はその特殊ケース)。
段ごとの意味・数値例・図は 受変電設備概論 が正典です。手順の各段が「削る/戻す」のどちらかである点も同ページで説明しています。
標準容量の「JIS」帰属を外しました¶
容量選定手順に「標準容量(JIS:100/200/300/500/750/1000/1500/2000 kVA)」と書いていましたが、規格番号を確認していないまま JIS に帰属させていました(feedback-rules R5)。数値そのものは流通しているメーカー標準容量と一致するため列は残し、帰属だけを外しています。
lint-ok を1件撤去しました¶
瞬時要素の warning は「1.5〜2 倍に整定すると誤動作する」と誤りを説明する正当な行でしたが、lint 20260710-ocr-shunji-150pct に引っかかるため lint-ok で免除していました。lint 側に負ガード(誤動作/してはいけない/是正 等)を追加して、免除なしで通るようにしました。docs 側の lint-ok はこれで 8 件 → 7 件です。
検算した箇所¶
%インピーダンスからの短絡電流の計算例を 2026-08-03 に再計算し、一致を確認しました。
定格電流 = 1000 kVA / (√3 × 0.44 kV) = 1312.2 A
短絡電流 = 1312 / 0.05 = 26,240 A
この式は電源側インピーダンスを無視した上限値です(無限大母線=変圧器の %Z だけで決まると仮定)。実際の短絡電流はこれより小さくなります。系統側を含む厳密な計算は 短絡電流計算 が正典です。
実務慣行(規格・法令の裏付けなし)¶
- OCR 限時要素 110〜125 %、瞬時要素 600〜1000 %(保護継電器・保護協調 と整合)
- 過熱継電器の警報 85〜90 ℃/トリップ 95〜105 ℃(機種による)
- 将来増設余裕 20〜30 %、力率 0.8 未満なら kW を力率で割って kVA 換算
- 励磁突入電流 定格の 6〜10 倍・数サイクル〜0.1 秒程度
原本未照合(honest-hold)¶
- 絶縁油の判定基準(絶縁耐圧 30 kV/2.5mm 以上、酸価 0.2 mgKOH/g 以下、水分 30 ppm 以下、フルフラール 4 mg/L 以下)は出典を照合していません。 一般に流通する参考値であり、判定は分析機関の報告書とメーカー基準によってください
- 変圧器の規格(JIS C 4304・C 4306 等)・ブッフホルツ継電器の動作条件は未照合です。標準容量の系列・保護継電器の整定条件を規格として引用しないでください
- K ファクタ(高調波許容値)の定義・算出も未照合です
限界の明示¶
- 本ページは変圧器の選定と保全の考え方の整理です。実機の整定値・判定値は保護協調計算とメーカー仕様によってください
- ブッフホルツ継電器のガス分析による故障種別の推定(H₂=アーク、C₂H₂=高温アーク、CH₄=局所過熱)は一般的な対応関係の紹介で、診断は分析機関の所見によります
正典参照¶
| 項目 | 正典 |
|---|---|
| 短絡電流の厳密計算(系統側インピーダンスを含む) | 短絡電流計算 |
| OCR の整定計算例・保護継電器の種類 | 保護継電器 |
| 上位・下位との時限協調 | 保護協調 |
| 絶縁抵抗・絶縁油の管理トレンド | 絶縁管理 |
| 危険場所の区分・防爆構造 | 防爆 |
照合日: 2026-08-03。
関連ページ¶
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