低圧分岐回路の施設(過電流遮断器の位置・電線太さ)¶
30秒まとめ¶
分岐回路は「①過電流遮断器をどこに置くか(分岐点から3m以下が原則)→ ②回路の種類ごとに電線太さと遮断器定格を決める」の順で設計する。原則3m以下だが、分岐電線の許容電流が幹線保護遮断器定格の 35%以上なら8m以下、55%以上なら距離制限なしまで延ばせる。一般分岐回路は遮断器50A以下・電線太さは149-1表で決まる。電動機のみの分岐は幹線と同じ2.5倍/1.25・1.1倍の考え方を使う。
幹線側(許容電流の割り増しと遮断器定格)は 幹線サイズと過電流遮断器 を参照。本ページはその負荷側(分岐)を扱う。
① 過電流遮断器の施設位置(3m・8m・制限なし)¶
分岐回路の過電流遮断器は、低圧幹線との分岐点から電線の長さ3m以下の箇所に施設するのが原則(第149条第1項第一号)。ただし分岐電線が太く許容電流に余裕があれば、下表のとおり距離を延ばせる。
| 条件(I_wb=分岐電線の許容電流、I_B=幹線を保護する過電流遮断器の定格電流) | 過電流遮断器の位置 |
|---|---|
| 原則 | 分岐点から 3m 以下 |
| I_wb ≥ I_B × 35% | 分岐点から 8m 以下 |
| I_wb ≥ I_B × 55% | 距離制限なし(任意の位置) |
- ここでの I_B は「その分岐回路がつながる幹線を保護する過電流遮断器の定格電流」。分岐回路自身の遮断器ではない。
- 分岐電線が太い(許容電流が大きい)ほど、幹線遮断器が動作するまで電線が焼けないため、遮断器を分岐点から離せる、という趣旨。
flowchart TD
A[分岐点から分岐回路開始] --> B{分岐電線の許容電流 Iwb は\n幹線遮断器定格 IB の何%?}
B -- 55%以上 --> C[距離制限なし\n任意の位置に過電流遮断器]
B -- 35%以上55%未満 --> D[8m 以下に施設]
B -- 35%未満 --> E[3m 以下に施設]
幹線側の『遮断器の省略条件』と混同しない
同じ 35%/55%・3m/8m が 幹線ページ にも出るが、あちらは第148条第1項第四号「幹線の過電流遮断器を省略できる条件」。こちらは第149条第1項第一号「分岐回路の過電流遮断器を分岐点から離して置ける条件」。対象(幹線か分岐か)と効果(省略か位置緩和か)が違う。混同源として頻出。
② 分岐回路の種類別ルール¶
分岐回路は接続する負荷で3種類に分かれる(第149条第2項)。
(1) 一般分岐回路(第2項第一号)¶
- 過電流遮断器の定格電流は 50 A 以下であること。
- 電線の太さは遮断器の定格に応じて 149-1表以上とする。
149-1表(過電流遮断器の定格 → 最小電線太さ)¶
| 過電流遮断器の種類 | 軟銅線の太さ | MIケーブル |
|---|---|---|
| 定格 15 A 以下 | 直径 1.6 mm | 断面積 1 mm² |
| 15 A 超 20 A 以下(配線用遮断器) | 直径 1.6 mm | 断面積 1 mm² |
| 15 A 超 20 A 以下(配線用遮断器を除く=ヒューズ等) | 直径 2.0 mm | 断面積 1.5 mm² |
| 20 A 超 30 A 以下 | 直径 2.6 mm | 断面積 2.5 mm² |
| 30 A 超 40 A 以下 | 断面積 8 mm² | 断面積 6 mm² |
| 40 A 超 50 A 以下 | 断面積 14 mm² | 断面積 10 mm² |
20A の分かれ目は『配線用遮断器かヒューズか』
同じ 20 A でも、配線用遮断器なら 1.6 mm、ヒューズ(配線用遮断器を除く)なら 2.0 mm。両者で規定上想定される動作特性が異なるため、最小電線サイズが分かれる(「動作特性が緩いから守りやすい」という説明は因果が逆になるので使わない)。接続できるコンセント定格は 149-3表で別途規定(15A遮断器→15Aコンセント 等)。
(2) 電動機のみに至る分岐回路(第2項第二号)¶
- 過電流遮断器の定格電流:電線の許容電流 × 2.5 倍以下(当該遮断器が第33条第4項のものなら1倍)。電線許容電流が 100 A 超で算定値が標準定格に無ければ直近上位。
- 電線の許容電流:電動機等の定格電流合計 × 1.25 倍以上(合計が 50 A 超なら 1.1 倍)。
電線の許容電流 I_wb ≥ 1.25 × ΣI_M (ΣI_M ≤ 50A)
≥ 1.1 × ΣI_M (ΣI_M > 50A)
過電流遮断器の定格 I_b ≤ 2.5 × I_wb
幹線(第148条)と同じ 1.25/1.1・2.5 の係数が、分岐(第149条)でも電動機回路に適用される。
(3) 定格 50 A 超の1機器(電動機を除く)に至る分岐回路(第2項第三号)¶
- その機器以外の負荷を接続しないこと。
- 過電流遮断器の定格:機器の定格電流 × 1.3 倍以下(標準定格に無ければ直近上位)。
- 電線の許容電流:機器の定格電流以上、かつ過電流遮断器の定格電流以上。
計算例(一般分岐回路)¶
前提:配線用遮断器 20 A の一般分岐回路、CV ケーブル、分岐点から過電流遮断器まで 5 m。
Step 1: 過電流遮断器の位置
分岐点から 5 m > 3 m のため、原則では NG。
緩和条件を確認:分岐電線の許容電流 I_wb が
幹線遮断器定格 I_B の 35%以上なら 8m 以下まで可。
例)幹線遮断器 I_B = 100A、分岐電線 5.5mm²(気中・暗渠 1条 許容 44A・lv-cable.md 表) なら
44 / 100 = 44% ≥ 35% → 8m 以下 OK(5m は可)。55%未満なので距離制限なしは不可。
Step 2: 電線の太さ(149-1表)
配線用遮断器 20A → 軟銅線 直径 1.6mm 以上(≒2.0mm² 相当)。
ただし Step1 の位置緩和(35%)を使うなら、その許容電流を満たす太さ
(例 5.5mm²)が別途必要。太い側が支配する。
Step 3: コンセント
20A 配線用遮断器の回路 → 定格 20A 以下のコンセント(149-3表)。
『遮断器定格→電線太さ』と『位置緩和→許容電流』は別条件
149-1表は「遮断器定格に対する電線の最小太さ」。位置を3m超に延ばすための35%/55%は「幹線遮断器定格に対する電線の許容電流」。両方を満たす太い方が最終的な電線サイズになる。
つまずきやすいポイント¶
| 誤り | 正しい理解 |
|---|---|
| 3m/8m の % を分岐回路自身の遮断器で計算 | % の基準は幹線を保護する過電流遮断器の定格 I_B |
| 35%で距離制限なしにする | 35%は 8m 以下まで。距離制限なしは 55%以上 |
| 20A なら電線は一律同じ太さ | 配線用遮断器 20A=1.6mm/ヒューズ 20A=2.0mm(149-1表) |
| 算定値が標準定格に無いとき直近下位 | 電動機分岐・50A超機器分岐は 直近上位(第149条第2項二号イ・三号ロ) |
| 幹線の省略条件(第148条)と混同 | 第149条は分岐回路の位置規定。対象と効果が別 |
根拠と適用上の注意¶
- 法的根拠:電気設備技術基準の解釈 第149条(低圧分岐回路等の施設)。幹線側は第148条。
- 過電流遮断器の位置=第1項第一号(原則3m・イ55%で制限なし・ロ35%かつ8m)。
- 一般分岐回路=第2項第一号(遮断器50A以下・149-1表・コンセントは149-3表)。
- 電動機のみ=第2項第二号(2.5倍/1.25・1.1倍)、50A超機器=第2項第三号(1.3倍)。
- 上記の条文表現・数値(3m/8m・35%/55%・50A・1.25/1.1/2.5/1.3倍・149-1表)は 電気設備技術基準の解釈 令和7年11月版(2026-07-18 逐語照合) で確認済み。改訂で番号・細部が変わり得るため適用時は最新版を確認。
- 電線許容電流の実数値は電線種別・敷設方法・補正係数で変わる。数値は 低圧ケーブル の規格値を正とする。
関連ページ¶
- 幹線サイズと過電流遮断器 — 電源側(幹線)の許容電流・遮断器定格。本ページと対
- 低圧ケーブル — 許容電流表・補正係数・断面積選定
- 負荷計算 — 分岐に振り分ける前の需要電流の算定
- 低圧配電 — 分電盤構成・MCCB の AF/AT・保護協調・ELCB 感度
- 盤設計 — 分岐回路構成を反映する盤設計
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