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保護リレー試験手順

30秒まとめ

保護リレー試験は「整定値どおりに動作するか」を電流・電圧を模擬入力して確認する作業。年次点検・リレー更新後・整定変更後に実施し、動作値と動作時間の両方を判定する。CT二次回路を開路しないことが最重要の安全事項。


過電流継電器(OCR)・地絡継電器(GR/DGR)などの保護リレーの動作試験手順です。
年次点検・リレー更新後・設定変更後に実施します。


事前確認

停電作業が前提

保護リレー試験は原則として停電状態で実施する。
活線状態でのCT二次側開放は絶対禁止(高電圧発生・CT焼損)。

作業開始前に必ず確認

  • [ ] PTW(作業許可証)取得済み
  • [ ] 停電作業計画書・停電スケジュールを製造課と合意済み
  • [ ] 試験用継電器試験器(リレーテスタ)の準備・校正確認
  • [ ] 動作試験記録シート準備
  • [ ] 対象リレーの保護協調図・整定値一覧入手済み

必要な資格・教育

  • 高圧・特別高圧電気取扱特別教育の修了者(停電・検電・接地を含む一連の作業が高圧の充電電路の点検・操作の業務に当たるため。要件の正典は 特別教育・資格一覧)
  • 保護リレー試験は電気工作物を「設置し、又は変更する工事」ではないため、電気工事士の資格が法定要件となる作業ではありません。誰が実施し誰が監督するか(電気主任技術者の監督・承認を含む)は事業場の保安規程で定めます

必要な機器

機器 用途
継電器試験器(リレーテスタ) 試験電流・電圧の発生
秒時計・タイマー機能付き 動作時間計測
デジタルマルチメータ CT二次電流・電圧確認
保護協調図・整定値一覧 試験条件確認

主な保護リレーの種類と試験目的

リレー種別 略称 目的
過電流継電器 OCR (51) 短絡・過負荷保護
地絡継電器 GR (51G) 一般地絡保護(零相電流検出)
地絡方向継電器 DGR (67G) 方向性地絡保護(非接地系統)
過電圧継電器 OVR (59) 過電圧保護
不足電圧継電器 UVR (27) 停電・低電圧検出
距離継電器 Dist (21) 送電線保護

括弧内の器具番号は JEM 系の慣用表記です(64 は地絡「過電圧」継電器 OVGR の番号であり、ZCT の零相電流で動作する GR とは別物。図面照合時に取り違えないこと)。


手順

STEP 1:作業前安全確認

  1. 対象回路の停電・検電・接地を確認する
    • 検電器で充電なしを確認
    • 接地棒を取り付けて誤通電を防ぐ
  2. CT(変流器)二次側の短絡端子を確認する
    • 試験中にCT二次を開放しないこと
    • 試験前に短絡ジャンパを取り付けてから回路を切り離す
  3. 保護協調図から整定値を確認し、試験条件を記録シートに転記する

STEP 2:リレーテスタの接続

OCR(過電流継電器)の場合

  1. CT二次側にリレーテスタの電流出力端子を接続する
  2. リレーの動作出力端子(接点)にテスタを接続して動作検出できるようにする
  3. リレーテスタの電流値を整定電流(Tap電流)に合わせて設定する

Tap電流の確認

OCR整定票の「Tap」欄を確認する。例:Tap=5A、CT比=100/5
整定電流(一次換算)= Tap × CT比 = 5A × 20 = 100A

GR・DGR(地絡継電器)の場合

  1. ZCT(零相変流器)二次側にリレーテスタの電流出力を接続
  2. DGRの場合は電圧方向要素への接続も必要(試験器の電圧出力も使用)

STEP 3:動作試験

最小動作電流(感度)試験

  1. 整定値の 90% 程度から試験電流を徐々に増加させる
  2. リレーが動作した電流値を記録する
  3. 判定基準:採用リレーの仕様書の許容差に従う(±10% が代表的な目安)
試験電流 期待動作 判定
整定値 × 90% 不動作 動作→NG
整定値 × 105% 動作 不動作→NG

上表の 90%/105% はスポットチェックの例示です。許容差 ±10% の機種では 110% までの動作が仕様内のため、合否の線引きは必ずその機種の仕様書の許容差に合わせてください。

動作時間試験

  1. 整定電流値の200%・300%相当の電流を入力する(反限時特性の確認)
  2. 電流入力から接点出力までの時間をタイマーで計測する
  3. 時限曲線(T-I特性図)と照合して許容範囲内であることを確認する

反限時と定限時

  • 反限時(IDMT):電流が大きいほど動作時間が短い。時限特性の式・定数は 保護協調 が正典。判定は採用リレーの取扱説明書に記載の特性曲線を正とする
  • 定限時:電流値によらず整定時間で動作。直接整定値と比較

動作時間の判定基準:採用リレーの仕様書の許容差に従う(±10% が代表的な目安)

瞬時要素試験(High-Set/Inst.)

  1. 瞬時整定値の110%相当の電流を入力し、100ms以内に動作することを確認
  2. 瞬時整定値の90%相当の電流を入力し、不動作であることを確認

STEP 4:復帰試験

  1. リレー動作後、電流を徐々に下げる
  2. 復帰電流値(リセット電流)を記録する
  3. 復帰比(復帰電流/動作電流)を確認する
    • 通常 90%以上(低すぎると微小変動でハンチング)

STEP 5:接点確認

  1. 動作接点(a接点・b接点)の動作を確認する
    • 遮断器トリップ回路の動作確認
    • 警報出力の動作確認
  2. 接点の接触抵抗をマルチメータで確認する(0.1Ω以下が目安)

STEP 6:現地整定値の確認

  1. リレー本体の整定スイッチ・ダイヤルを確認し、整定値一覧と一致していることを確認
  2. デジタルリレーの場合は設定パラメータをリードアウトして記録
  3. 前回点検からの変更の有無を確認

STEP 7:復旧・記録

  1. CT二次側短絡ジャンパを取り外す(接続を元通りに戻す)
  2. 接地棒を取り外す
  3. 動作試験記録シートに全測定値・判定結果を記録
  4. チームリーダー・電気主任技術者のサインを得る

チェックリスト(作業完了時)

  • [ ] 停電・検電・接地の確認完了
  • [ ] CT二次側開放防止措置(短絡ジャンパ)の取付・取外し管理完了
  • [ ] 感度試験(最小動作電流):判定 OK
  • [ ] 動作時間試験(反限時/定限時):判定 OK
  • [ ] 瞬時要素試験:判定 OK(瞬時設定がある場合)
  • [ ] 復帰試験完了
  • [ ] 接点動作確認(トリップ・警報)完了
  • [ ] 整定値と本体設定値の一致確認完了
  • [ ] CT二次側の復旧確認(開放状態でないこと)
  • [ ] 試験記録シートへの記録・サイン完了

判定基準まとめ

試験項目 合格基準(代表的な目安)
最小動作電流 整定値 ±10%
動作時間 整定値 ±10%
瞬時動作時間 100ms 以内
復帰比 90% 以上
接点接触抵抗 0.1Ω 以下

上表はいずれも実務上の代表値であり、規格・法令の規定値ではありません。合否判定は採用リレーの仕様書・時限特性曲線を正としてください。


よくある不具合と対処

不具合 原因 対処
感度ずれ(整定値より早期動作) 整定スイッチ接触不良 整定スイッチ清掃・締め直し
動作時間が長い 機構摩耗(電磁式) 調整または交換検討
接点不動作 接点酸化・汚損 接点清掃または交換
DGRが電流のみで動作 方向要素の電圧入力断 PT二次配線確認

根拠

本ページが正典の範囲

二次電流注入による保護リレー動作試験の現場手順(テスタ接続・感度/動作時間/瞬時/復帰の各試験・記録様式・CT 二次開放防止の管理)が本ページの正典範囲です。継電器の種類・整定計算・施設義務の条文は 保護継電器、時限協調と反限時特性の式・定数は 保護協調、誤動作・不動作の切り分けは 保護継電器の誤動作・不動作、停電作業の法定措置(労安則第339条)は 停電作業・作業許可制度(PTW) が正典で、本ページは数値・条文を再記述しません。

是正の記録(2026-08-06)

  • 資格の誤帰属: 「電気工事士(第1種)または電気主任技術者の指導のもと作業」と、電気工事士資格が本作業の要件であるかのように書いていました。保護リレー試験は電気工作物を「設置し、又は変更する工事」ではないため電気工事士法の適用対象ではなく、法令側で効くのは電気取扱特別教育(安衛則第36条第四号・高圧充電電路等の点検・操作の業務。正典 特別教育・資格一覧 で e-Gov 逐語照合済み)です。実施者・監督者の決め方は保安規程の領域である旨に書き換えました
  • GR の器具番号の取り違え: 「GR (64)」と書いていましたが、64 は地絡過電圧継電器(OVGR)の番号です。GR は ZCT の零相電流で動作する電流リレーのため 51G に是正し、取り違え注意の1行を表下に追記しました
  • 感度試験手順の内部矛盾: 「整定電流値の 105% 相当の電流を徐々に増加させながら入力する」は、固定値入力と漸増が混ざった矛盾した記述でした。「整定値の 90% 程度から徐々に増加させ、動作した電流値を記録する」に是正しました
  • 判定幅とスポットチェックの不整合: 許容差 ±10% と「105% で動作しなければ NG」を無条件に併記すると、110% で動作する仕様内の機種を NG 判定してしまいます。90%/105% 表を例示と明記し、合否の線引きは機種仕様書の許容差を正としました
  • 規格番号による権威づけの除去: 反限時特性の確認先を「IEC 60255 規格の特性曲線」と書いていましたが、同規格は原本未照合です(保護協調 の根拠節で確定済み)。参照先を保護協調ページと採用リレーの取扱説明書に改めました

二次資料で一致を確認(原本未照合)

  • 器具番号(51・51G・67G・59・27・21、および 64=OVGR): JEM 系の慣用番号として電験教材・メーカー資料など二次資料で広く一致しますが、JEM 1090 の原本は未照合のため規格番号を根拠として引用しません。実際の図面・盤の番号表記はその設備の凡例を正としてください

実務慣行(規格・法令の裏付けなし)

  • 判定基準まとめの各値(最小動作電流・動作時間 ±10%、瞬時 100ms 以内、復帰比 90% 以上、接点接触抵抗 0.1Ω 以下)は実務上の代表値であり、合否は採用リレーの仕様書が正です
  • 試験の実施時期(年次点検・リレー更新後・整定変更後)は保全運用上の目安であり、試験周期を定めた法令の条項は本 Wiki では特定していません(保護継電器の誤動作・不動作 の根拠節と同旨)

原本未照合(honest-hold)

  • 試験記録の保存期間を定めた条文は確認できていません(保護継電器の誤動作・不動作 の根拠節で確定済み。高圧ガス側で期間があるのは帳簿の 2 年/10 年で、定期自主検査の記録は記載事項のみの規定)。保存期間は保安規程で定めた期間によってください
  • JIS C 4602 等の受電用継電器規格が定める許容差・試験条件は原本未照合です。本ページの ±10% はこれら規格の値としてではなく、実務代表値として扱っています

限界の明示

  • 本ページの単体試験(リレー単体の特性確認)が合格しても、トリップコイル・VCB 機構部を含めた連動が保証されるわけではありません。連動試験(トリップ回路の実動作確認)を STEP 5 で必ず併施してください
  • 整定値の変更は保護協調全体に影響します。試験中に整定ずれを見つけても本ページ単独で変更を決めず、保護協調 と電気主任技術者の承認を経てください

正典参照

項目 正典
継電器の種類・整定計算・施設義務(省令第14条・第15条) 保護継電器
時限協調・反限時特性の式と定数 保護協調
誤動作・不動作の切り分け・記録保存の扱い 保護継電器の誤動作・不動作
停電作業の法定措置(労安則第339条・第340条) 停電作業・作業許可制度(PTW)
電気取扱特別教育の要件 特別教育・資格一覧

照合日: 2026-08-06(新規の条文照合なし。資格・器具番号・判定幅・手順矛盾を既照合の正典ページと突合して是正)。

条文リンク(e-Gov 法令検索・2026-09-18 閲覧)

本節で引用した条文の所在です。e-Gov のリンクは現行条文で、2026-09-18 に e-Gov 法令 API(v1)で取得した本文と本節の引用内容が一致することを再確認しました。アンカー ID は e-Gov 法令 API の XML 階層(章・節・款)から算出しています。ただし e-Gov は読み込み直後に該当条まで自動でスクロールしないことがあります。その場合は画面左の目次または法令内検索で条番号へ移動してください。

  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号): 第36条

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