令和4年度上期 法規 問10 — 過電流継電器と真空遮断器の連動動作試験¶
関連テーマ:保護リレー(OCR・GR ほか) / 保護装置(過電流・地絡)
本問は条文暗記ではなく、OCR・VCB連動動作試験の回路計算 が主論点。形式は A問題だが、内容は回路計算型で B問題に近い読解力が必要。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題年度 | 令和4年度上期(2022年8月) |
| 問番号 | 問10(A問題・配点6点/内容は回路計算型でB問題に近い読解力が必要) |
| 形式 | 計算(単一値) |
| 大分類 | 法規/電気施設管理(自家用受電設備の年次点検試験) |
| 中分類 | 保護継電器試験・遮断器連動試験 |
| 主論点 | OCR動作 → VCBトリップコイル励磁の 連動動作試験回路で、トリップコイル(jX=10 Ω )に定格開路制御電流 3.0A 以上 を流せる R の最小値 |
| 関連条文 | 解釈第34条(現行条文「高圧又は特別高圧の電路に施設する過電流遮断器の性能等」— 本問は背景。問題文には条文への直接参照なし) |
| タグ | #OCR #VCB #連動動作試験 #保護継電器試験 #トリップコイル |
| 再出題 | なし(連動動作試験の回路計算は珍しいタイプ) |
| 典拠 | yaku-tik 令和4年上期 問10 |
| 照合日 | 2026-05-17 |
0. 最短解法カード(試験直前モード)¶
🎯 15秒で復元できる形
OCR動作前: V = 9R, 電流 9A(R のみ)
OCR動作後: R と トリップコイル jX(=10Ω) が直列 → Z = √(R²+100)
条件: I' = 9R / √(R²+100) ≥ 3.0
両辺2乗: 81R² ≥ 9(R²+100) → 8R² ≥ 100 → R² ≥ 12.5 → R ≥ √12.5 ≈ 3.54Ω
選択肢中、3.54以上の最小 → 5Ω
| 答え | 値 | 選択肢 |
|---|---|---|
| R の最小値 | 5Ω | (2) |
1. 設問を1分で読み解く¶
📌 この試験は『OCR単体の動作試験』ではない
本問の試験名は 「過電流継電器と真空遮断器の連動動作試験」。次の2段階を一気通貫で確認する 連動試験である。
- OCR が動作する(CT二次側 9A=整定タップ3Aの300% で検出)
- OCR動作 → VCB のトリップコイルが励磁される → VCB が物理的に開路する
問われているのは ②の段階でトリップコイルへ流れる電流 I' が、VCB の定格開路制御電流(3.0A)以上か という点。OCR が動くかどうかは前提条件であり、本問の計算対象ではない。
1-1. 与条件の整理¶
| 記号 | 値 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| I(OCR動作前) | 9 | A | OCR整定タップ 3A の 300% を流したときの電流計指示 |
| X_L | 10 | Ω | トリップコイルの 誘導リアクタンス |
| I'_min | 3.0 | A | VCBが正常動作する 定格開路制御電流の最低値 |
| R | ? | Ω | 可変抵抗(選択肢から最小値を選ぶ) |
| V | 9R | V | 試験電圧(OCR動作前の電流 9A から逆算) |
「整定タップ3Aの300%」とは
OCR は CT二次側に整定値(タップ)3A を設定してあり、その 300%(=9A) を流すと動作する条件で試験する。試験中ずっと電流計が 9A を示すように V と R を調整する。
1-2. 問われていること¶
- VCBが正常動作する最小の R [Ω](選択肢中の最小値)
1-3. ひっかけポイント早見¶
| # | ひっかけ | 罠 |
|---|---|---|
| 1 | OCR動作 前後で回路が変わる | 前は R のみ、後は R + jX_L 直列 |
| 2 | 試験電圧 V は与えられない | OCR動作前の I=9A と R から V = 9R で確定 |
| 3 | トリップコイルは 純リアクタンス(抵抗成分は無視) | Z = √(R²+X²) を使う(R+X の単純和ではない) |
| 4 | 「3.0A 以上」の境界(≥) | ちょうど 3.0A は OK |
1-4. 回路は2段階で切り替わる — 学習者向け構造ガイド¶
本問の最大の落とし穴は 「同じ試験回路だが OCR動作の前後で見るべき経路が変わる」 こと。先に全体像を掴むと セクション2 以降の計算が迷子にならない。
| 段階 | OCR接点 | 通る経路 | 使う式 | 役割 |
|---|---|---|---|---|
| ① 動作前 | 開 | 電源 → R → 電流計 → OCR電流コイル | V = 9R で電源電圧を決める | 試験電圧 V を確定するだけ |
| ② 動作後(本問の計算対象) | 閉 | 電源 → R → トリップコイル(jX_L=10Ω) → 戻り | I' = 9R / √(R²+100) | VCB が動くだけの電流が流れるか判定 |
読み方の順番:① で V を 9R に固定 → ② で OCR接点が閉じてトリップコイル経路に切り替わる瞬間に、電源電圧 V は変えずに、新しい回路インピーダンス Z=√(R²+100) で I' を再計算する。
2. 回路の理解 — OCR動作前と動作後¶
2-1. 試験回路の物理イメージ¶
左:OCR は電流コイルで9Aを検知してロック状態(接点開)。回路は R のみで V=9R。 右:OCR接点が閉じると、R と トリップコイル jX_L が直列になる。電源電圧 V=9R はそのまま、しかしインピーダンスが √(R²+100) に増えるため電流は減る。
2-2. なぜトリップコイルは「純リアクタンス」扱いか¶
- トリップコイルは VCB を機械的に開放するための 電磁石コイル(鉄心入り)。
- 銅損:コイルや巻線の抵抗成分によって生じる I²R 損。本問では、問題文の条件に従い、トリップコイルの抵抗成分は無視する(「OCRの内部抵抗・トリップコイル抵抗その他記載なきインピーダンスは無視」)。
- したがって Z = √(R² + X_L²)(R と X_L は直交合成)。
ひっかけ#3:R と X の単純和ではない
Z = R + 10 と書いてしまうと、I' = 9R/(R+10) になり、R = 5 のとき I' = 45/15 = 3.0 ちょうど → 同じ答えになることもあるが、境界判定が変わると誤答。必ず √(R² + X²) を使う。
3. 解法 — 4ステップで答えを出す¶
3-1. ステップ① V を確定する¶
OCR動作前、回路は R のみ(トリップコイルは OCR接点で切り離されている)。電流計指示が 9A になるように V を調整するので:
3-2. ステップ② OCR動作後の合成インピーダンス¶
R と jX_L(=j10)の直列:
3-3. ステップ③ トリップコイルに流れる電流 I'¶
OCR動作前に、可変抵抗 R のみの回路で電流計が 9A を示すように試験電圧 V を調整する。その後、OCR接点が閉じるとトリップコイル jX_L が回路に入り、電源電圧 V = 9R はそのまま、電流は I' に変化する:
「試験中ずっと9A」と読まない
9A は「OCR が動作するための整定タップ300%」を成立させるための OCR動作前の値。OCR接点が閉じた瞬間に経路が変わるため、電流は I' に切り替わる。9A はあくまで V を確定するための キャリブレーション値。
3-4. ステップ④ 条件式を解く¶
VCB を正常動作させるには I' ≥ 3.0 A:
両辺正なので2乗:
選択肢 (1)2 / (2)5 / (3)10 / (4)15 / (5)20 のうち、3.536 以上で最小は 5。
→ 答え = 5 Ω (選択肢2)
3-5. 検算(R=5 を代入)¶
→ 4.03 A ≥ 3.0 A ✅ 条件満足。
R=2 を代入すると I' = 18/√104 ≒ 1.77A < 3.0A で不可。境界は √12.5 ≈ 3.54 Ω の間にある。
4. グラフで「Rを増やすと I' はどう動くか」を直感する¶
4-1. グラフから読み取れること¶
- R を大きくすると V=9R も大きくなるので、I' は単純に減るのではなく 9A に近づく(X_L=10 が相対的に効かなくなる)。
- 直感に反して R が小さい方が I' は小さくなる(V が低くなり、相対的に X_L が支配する)。
- しきい値 3A を切るのは R<3.54 のとき。
発想の転換:V固定ではなく V=9R で連動
通常の「V固定でR変化」のグラフでは R↑で電流↓だが、本問は R を変えると V も同じ倍率で変わる。 だから R↑で I' も増える方向に動く。「電流計を 9A に固定する」という縛りが効いている。
5. ひっかけポイント総まとめ¶
| # | ひっかけ | 誤答パターン | 対策 |
|---|---|---|---|
| 1 | OCR動作 前後の回路差を見落とす | V を別途仮定してしまう | 動作前 V=9R を 真っ先に確定 |
| 2 | R+jX を 単純和 で扱う | I'=9R/(R+10) で計算 → 境界判定で誤答 | 必ず Z=√(R²+X²) |
| 3 | しきい値が「3.0A 超」と誤読 | 等号を含めず R=√12.5 を除外 | 問題文「3.0A 以上」→ ≥ |
| 4 | 「R が大きいほど I' は小さい」と思い込む | R=20 を選んでしまう | V=9R で連動するため逆。グラフで確認 |
| 5 | 「3.54Ω が選択肢にないから不正解扱い」 | R=2 を選んでしまう | 「最小の R」=境界以上で 最小を選ぶ |
6. OCR・VCB と関連条文の接続¶
6-1. 試験対象機器の位置づけ¶
| 機器 | 役割 | 種別 |
|---|---|---|
| OCR(過電流継電器) | 異常電流の 検出頭脳。CT二次側電流で動作 | 継電器 |
| VCB(真空遮断器) | OCR からの信号で 物理的に電路を切る 装置 | 遮断器 |
| トリップコイル | OCR接点 → VCB遮断バネ解放 を担う 電磁石 | VCB付属部 |
連動動作試験とは:OCR が動作してから VCB が実際に開路するまでの時間を計測する、自家用受電設備の 年次点検項目。
6-2. 関連条文(背景知識として)¶
| 条文 | 位置づけ |
|---|---|
| 解釈第34条 | 高圧又は特別高圧の電路に施設する過電流遮断器の 性能要件(OCR・VCBの存在義務の根拠/現行条文表記) |
| 解釈第14条 | 過電流からの低圧電路保護(低圧側 — 本問とは別系統) |
| 解釈第33条 | 低圧電路の過電流遮断器の 施設(本問とは別系統) |
条文への直接対応は薄い
本問は条文知識ではなく 回路計算 が主。kakomon.yml メタは射程整合のため 解釈第34条(高圧・特別高圧の過電流遮断器の性能)に統一。これは 背景 であり、設問が条文内容を直接問うわけではない。低圧側の第33条・第14条は別系統。
6-3. 関連ページ¶
- 保護リレー(保護継電器) — OCR/OVR/DGR ほか、検出側機器の全体像
- 保護装置(過電流・地絡) — 遮断器側を含めた保護システム全体
- 保護協調 — 動作時間特性と段階的遮断の整合
6-4. 同系統の過去問¶
| 年度 | 問 | 内容 | 主軸 |
|---|---|---|---|
| R04上 問10(本問) | A・計算 | OCR+VCB 連動動作試験回路 | 9R/√(R²+X²) ≥ 3.0 |
| R03 問10 | 択一 | 自家用受電設備の保護(DGR・OCR) | 解釈第34条 |
| H27 問8 | 択一 | 過電流継電器の整定 | 解釈第34条 |
連動動作試験を 計算問題として出したのは珍しいタイプ。次に出るとすれば、トリップコイルの抵抗成分を含めた合成インピーダンス計算(R₁ + R_coil + jX)への拡張が想定される。
7. 典拠・更新履歴¶
典拠¶
- yaku-tik「電験三種 R4年度上期 法規 問10」 — https://yaku-tik.com/denken/r4f-h10/
- 電気技術者試験センター 過去問題(令和4年度上期 法規 問10)
- 関連: themes/hogo-relay.md(OCR整定値・動作原理の解説)
更新履歴¶
| 日付 | 版 | 変更 |
|---|---|---|
| 2026-05-17 | v1.0 | 初版作成(R05-up-12テンプレ準拠・SVG2枚) |
| 2026-05-17 | v1.1 | ChatGPT監修反映:関連条文を現行「第34条」に修正/「9A継続」誤解防止のwarning追加/銅損脚注をトリップコイル向けに修正/A問題でも回路計算型である旨を補足 |
ステータス:[個別解説 v1.1] [計算問題] [OCR/VCB連動動作試験] [回路計算主体] [ChatGPT監修済]