電気計測¶
「倍率器は直列、分流器は並列」を体に刻む。計器の種類は動作原理と交流/直流対応で切り分ける。
5秒で思い出す¶
「電圧計は直列(倍率器)、電流計は並列(分流器)、ブリッジは対辺の積が等しいとき平衡」
概念・趣旨¶
倍率器(電圧計の測定範囲拡大)¶
電圧計の測定範囲を広げるために、電圧計に 直列 に抵抗(倍率器)を追加する。
- 目的: 電圧計の内部抵抗 r に直列抵抗 R_m を加え、全体の電圧を分担させる
- 倍率の意味: 全体電圧 V_total が電圧計の表示値 V_meter の何倍かを示す
- 公式: m = (R_m + r) / r = 1 + R_m/r
- 倍率器の抵抗: R_m = r(m - 1)
- 例)倍率 m = 5、内部抵抗 r = 1kΩ → R_m = 1kΩ × (5-1) = 4kΩ
倍率器のイメージ
電圧計は「r だけで測れる範囲」しか持っていない。R_m を直列に追加することで、全体の電圧を r と R_m で按分する。電圧計は自分の分(r の分)だけを表示し、倍率 m を掛けると全体電圧がわかる。
分流器(電流計の測定範囲拡大)¶
電流計の測定範囲を広げるために、電流計に 並列 に抵抗(分流器)を追加する。
- 目的: 電流計の内部抵抗 r に並列抵抗 R_s を加え、電流を分担させる
- 倍率の意味: 全体電流 I_total が電流計を流れる電流 I_meter の何倍かを示す
- 公式: m = 1 + r/R_s
- 分流器の抵抗: R_s = r / (m - 1)
- 例)倍率 m = 10、内部抵抗 r = 0.1Ω → R_s = 0.1Ω / (10-1) = 0.0111Ω
分流器のイメージ
電流計に並列抵抗を接続すると、電流が r と R_s に分かれる。電流計には全体の 1/m だけ流れ、残りは分流器を通る。R_s が小さいほど多くの電流を迂回させられる。
ホイートストンブリッジ¶
4辺の抵抗でブリッジを組み、検流計がゼロを示すとき(平衡時)に未知抵抗を求める。
- 4辺の定義: P(左上)、Q(左下)、R(右上)、X = Rx(右下・未知抵抗)
- 平衡条件: P × Rx = Q × R(対辺の積が等しい)
- 平衡時: 検流計に電流が流れない(ゼロ点法)
- 未知抵抗の計算: Rx = (Q / P) × R
- 高精度な抵抗測定が可能(電流計・電圧計の読み誤差を排除できる)
「対辺の積」の覚え方
ブリッジを菱形で描くと、向かい合う辺(対辺)の積が等しいとき平衡。P(左上)とRx(右下)が対辺ペア、Q(左下)とR(右上)が対辺ペア。「P×Rx = Q×R → Rx = (Q/P)×R」の形で固定して覚える。
二電力計法(三相電力測定)¶
三相3線式の電力を2台の単相電力計で測定する方法。
二電力計法の公式と落とし穴
- 三相有効電力 P = W₁ + W₂
- 三相無効電力 Q = √3 × (W₁ - W₂)
- 力率 cosφ は tanφ = √3 × (W₁ - W₂) / (W₁ + W₂) から求める
- ひっかかり:「P = W₁ × W₂(積)」は誤り。必ず「W₁ + W₂(和)」
計器の誤差¶
- 絶対誤差: ε = 測定値 - 真値(単位あり)
- 誤差率: δ = (測定値 - 真値) / 真値 × 100 [%](相対誤差、単位なし)
- 精度階級: 計器の最大誤差率を示す。0.5級 = 最大目盛値に対して ±0.5%
精度階級の読み方
0.5級の電圧計で最大目盛 100V の場合、許容誤差は 100V × 0.5% = ±0.5V。 測定値が 50V のときでも誤差は ±0.5V(相対誤差は ±1%になる)。常に最大目盛に対するパーセントであることに注意。
比較表¶
計器の種類と動作原理¶
| 計器 | 動作原理 | 交流/直流 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 可動コイル形 | 電磁力(コイルに電流→磁界から力) | 直流のみ | 高精度・高感度・消費電力小 |
| 可動鉄片形 | 電磁力(鉄片吸引・反発) | 交流・直流 | 丈夫・安価・商用周波数に使用 |
| 電流力計形 | 電磁力(固定コイル×可動コイル) | 交流・直流 | 電力計に使用。波形影響なし |
| 整流形 | 整流器 + 可動コイル | 交流(平均値検波) | 平均値計測→実効値換算して表示 |
| 熱電形 | ジュール熱(熱電対) | 交流・直流 | 実効値直読。高周波・波形不問 |
倍率器 vs 分流器¶
| 項目 | 倍率器(電圧計) | 分流器(電流計) |
|---|---|---|
| 接続方法 | 直列 | 並列 |
| 目的 | 電圧範囲を広げる | 電流範囲を広げる |
| 抵抗の大きさ | 大きい(r より大) | 小さい(r より小) |
| 倍率の式 | m = 1 + R_m/r | m = 1 + r/R_s |
| 抵抗の式 | R_m = r(m-1) | R_s = r/(m-1) |
なぜそうなのか¶
倍率器が直列、分流器が並列である理由
- 電圧計: 内部抵抗 r が大きいのが特徴(回路に影響を与えないため)。さらに大きい抵抗を直列に追加しても電流はほぼ変わらず、電圧だけが分担される。
- 電流計: 内部抵抗 r が小さいのが特徴(電圧降下を最小化するため)。並列に小さい抵抗を追加して電流を分流させ、電流計本体を流れる電流を減らす。
「計器の接続の基本」=電圧計は並列(回路に)、電流計は直列(回路に)、の逆が拡張用の抵抗の接続方向になる。
ホイートストンブリッジが高精度な理由
電圧・電流計で直接抵抗を測ると、計器の誤差がそのまま測定誤差になる。ブリッジは「平衡時に検流計がゼロ」という状態を使うため、計器の絶対値精度が不要。ゼロ点の検出だけで済むので原理的に高精度。
ひっかかりポイント¶
倍率器・分流器の接続方向を逆にする
誤パターン: 「電圧範囲を広げるから並列に追加」「電流範囲を広げるから直列に追加」
- 倍率器(電圧計用)→ 直列。並列に追加すると電圧計の読みが変わらない。
- 分流器(電流計用)→ 並列。直列に追加すると電流計の読みが変わらない。
覚え方: 電圧計の回路接続(並列)の逆方向 = 倍率器は直列。電流計の回路接続(直列)の逆方向 = 分流器は並列。
ブリッジの平衡条件を「P/Q = R/S」で覚えると符号ミス
誤パターン: 比の形 P/Q = R/S と覚えると、どれが分子・分母かで混乱する。
正しい覚え方は 「対辺の積: P × S = Q × R」。 菱形を描いて向かい合う辺同士の積が等しい、と図形的に記憶する。 Rx を求めるときは P×S = Q×Rx → Rx = P×S/Q と変形する。
絶対誤差と誤差率(相対誤差)の混同
誤パターン: 「誤差 = 測定値 - 真値」を「誤差率」と言ってしまう。
- 絶対誤差: ε = 測定値 - 真値(単位あり。例: +0.5V)
- 誤差率: δ = ε / 真値 × 100%(単位なし。例: +1%)
問題文が「誤差」か「誤差率」かを必ず確認。精度階級は最大目盛値基準の誤差率。
可動コイル形が交流を測れないことを忘れる
誤パターン: 「高精度だからどんな回路でも使える」と思い込む。
可動コイル形は直流専用。交流を測るには整流形(平均値→実効値換算)または熱電形(実効値直読)を使う。問題に「交流回路の電流測定」と書いてあれば可動コイル形は選ばない。
頻出論点と落とし穴¶
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倍率器の計算でよくある計算ミス
- m = 5 のとき R_m = r × m と間違える。正しくは R_m = r(m-1) = 4r。
- 「m 倍」は「r の m 倍の電圧を測れる」であり、「追加する抵抗が r の m 倍」ではない。
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分流器の計算でよくある計算ミス
- R_s = r / m と間違える。正しくは R_s = r/(m-1)。
- m = 2 のとき R_s = r(分流器と電流計の抵抗が等しい)→ 電流が半分ずつ流れる、と確認できる。
-
計器の誤差計算
- 精度階級の誤差は「最大目盛値 × 誤差率」で計算する(測定値に対してではない)。
- 実際の測定値が最大目盛の半分なら、相対誤差は精度階級の2倍になる。
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熱電形の特徴を問う問題
- 実効値を直読できる唯一の方式(整流形は平均値測定を実効値換算)。
- 周波数特性が良く高周波測定に適する。波形の種類を問わず実効値が正確。
-
電流力計形の用途
- 電力計に使用される。固定コイルに電流、可動コイルに電圧を接続して電力 P = VI を測定。
- 交流・直流どちらでも使用可能(二乗平均なので波形不問)。
正答者 vs 誤答者の視点差¶
| 観点 | ||
|---|---|---|
| 倍率器の接続 | 「電圧計に並列に追加」と反射的に答える | 「直列に追加して電圧分担」と回路の原理から答える |
| 倍率の公式 | m = R_m/r と覚えて「1+」を忘れる | R_m = r(m-1) の変形を理解しているので導出できる |
| ブリッジ平衡条件 | P/Q = R/S の比で覚えて分子分母を混乱 | 「対辺の積 P×S = Q×R」の積で覚えて混乱なし |
| 誤差の種類 | 絶対誤差と誤差率を混同して単位を間違える | 問題文の「誤差」か「誤差率」かを先に確認する |
| 計器の選択 | 「高精度」だけで可動コイル形を選ぶ | 交流/直流対応を先に確認してから選ぶ |
関連テーマ¶
最終確認: 2026-04-14 | ステータス: v1.0 | バージョニング基準