横断参照:同じ数値・キーワードが複数条文に登場するパターン集¶
同じ数値がなぜ複数の条文で繰り返し使われるのか——その因果を起点に整理した。丸暗記ではなく「物理的・生理的な根拠がある→だから複数の場所で同じ値が使われる」という接続を理解することが目的。
150V の横断¶
共通の根拠:人体の致死電流から逆算された閾値
濡れた手での接触を想定した場合、人体抵抗は約 2 kΩ。150 V ÷ 2 kΩ = 75 mA。これは心室細動閾値(約 50 mA)を超える。したがって 150 V が「これ以上は危険」の境界値として設計基準に採用された。
| 数値 | 条文 | 文脈 | なぜ同じ値? |
|---|---|---|---|
| 150 V 以下 | 電技解釈 第143条(屋内電路の対地電圧制限) | 住宅屋内電路の対地電圧を 150 V 以下に制限 | 「感電電流を 50 mA 未満に抑えるため」は人体抵抗を仮定した説明用の目安で、条文に 50 mA の記載は無い |
| 150 V 以下 | 省令第58条(低圧の電路の絶縁性能) | 対地電圧 150 V 以下の回路は絶縁抵抗 0.1 MΩ 以上(解釈第14条は「省令第58条によること」と委ねるだけで、値そのものは持たない) | 同じ危険境界を絶縁管理の区切りに流用 |
| 150/Ig | 電技解釈 第17条(B 種接地抵抗) | B 種接地抵抗 = 150 / 地絡電流(Ig) | 混触時に低圧側対地電圧を 150 V 以下に抑えることが設計目標 |
B 種接地の計算で混乱しやすい点
B 種接地の式 R ≤ 150 / Ig は「混触が起きても低圧側を 150 V 以下に保つ」という条件式。
数値 150 の意味を理解していれば式を忘れても再導出できる。
300V の横断¶
共通の根拠:直接接触時の致死リスクが急変する電圧帯
300 V 超になると、接触経路・接触時間によっては心室細動だけでなく熱傷・炭化のリスクが加わる。IEC の安全電圧基準とも整合した実用的な境界値。
| 数値 | 条文 | 文脈 | なぜ同じ値? |
|---|---|---|---|
| 300 V 超 → C 種(10 Ω) | 電技解釈 第29条(機械器具の金属製外箱等の接地・29-1表)+第17条(接地工事の種類及び施設方法) | 300 V 超の低圧機器はより低い接地抵抗 C 種を要求 | リスクが高い電圧域の機器は接地抵抗を厳しく管理 |
| 300 V 以下 → D 種(100 Ω) | 電技解釈 第29条(区分)+第17条(抵抗値) | 300 V 以下の低圧機器は D 種で可 | 150 V 以下・300 V 以下の区分と整合した段階的管理 |
| 300 V 以下(その他)→ 0.2 MΩ | 省令第58条 | 150 V 超〜300 V 以下の区分 | 電圧が上がるほど漏れ電流のリスクが増すため絶縁抵抗の要求値も上昇 |
| 300 V 超 → 0.4 MΩ | 省令第58条 | 300 V 超の区分 | 同上、段階的に要求値を厳格化 |
絶縁抵抗の区分を整理すると
対地電圧 150 V 以下 → 0.1 MΩ 以上
対地電圧 150 V 超 300 V 以下(その他) → 0.2 MΩ 以上
対地電圧 300 V 超 → 0.4 MΩ 以上
600V の横断¶
共通の根拠:日本の商用配電体系の最大電圧
100 V・200 V 系の配電システムを基準に設計された実用的な境界値。物理的な致死閾値というより「日本の低圧配電の実態に合わせた行政区分」として設定された。
| 数値 | 条文 | 文脈 | なぜ同じ値? |
|---|---|---|---|
| 交流 600 V 以下 = 低圧 | 電技省令 第2条(電圧区分) | 低圧・高圧・特別高圧の定義 | 日本の配電実態(最大 200 V 系)に基づく行政区分の基点 |
| 600 V 以下で受電 | 電気事業法 第38条(一般用電気工作物の範囲) | 一般用電気工作物は 600 V 以下受電が条件 | 電圧区分(省令 第2条)と整合させた定義 |
| 低圧(600 V 以下)= 第二種電気工事士の作業範囲 | 電気工事士法 第3条 | 資格の作業範囲区分 | 同じ 600 V 境界を資格制度に適用 |
直流の電圧区分に注意
直流は交流と境界値が異なる:直流 750 V 以下が低圧(交流は 600 V 以下)。試験で混同しやすい。
30日 の横断¶
共通の根拠:行政の技術的審査に要する最低期間
大規模設備の書類確認・現地調査・照会回答に現実的に必要な期間として 30 日が設定されている。
| 数値 | 条文 | 文脈 | なぜ同じ値? |
|---|---|---|---|
| 着工 30 日前に事前届出 | 電気事業法 第48条(工事計画の届出) | 一定規模以上の設備変更は着工 30 日前までに届出 | 行政が届出内容を審査する期間として設定 |
| 工事計画の届出→工事開始まで 30 日以上 | 電気事業法 第48条(工事計画の届出) | 届出が必要な設備は届出から 30 日経過後に着工可能。第47条(認可)に「三十日」は無い | 審査・認可手続きに要する期間として統一 |
届出と認可の違いを混同しない
- 届出(第48条):行政への通知。受理されれば着工可能。
- 認可(第47条):着工前に主務大臣の認可を受ける。より規模・リスクが大きい設備が対象。(法令用語では認可・承認・許可は別の手続き。第47条の条文に「承認」の語は無い) どちらも 30 日前という数字は同じだが、法的性格が異なる。
24時間 の横断¶
共通の根拠:二次災害防止のための初動期限
感電死傷・火災・爆発等は発生後の状況変化が速く、初動対応が遅れると被害が拡大する。
| 数値 | 条文 | 文脈 | なぜ同じ値? |
|---|---|---|---|
| 24 時間以内に速報 | 電気関係報告規則 第3条(事故報告) | 感電死傷・火災・電気設備の破損等は 24 時間以内に速報 | 二次災害防止・類似設備への横展開に必要な初動期限 |
速報と詳報の違い
- 速報:24 時間以内。発生事実・概要を報告。
- 詳報(正式報告):速報後 30 日以内。原因・再発防止策を含む詳細報告。
絶縁耐力試験電圧の横断(B 問題頻出)¶
倍率を掛ける相手は「最大使用電圧」
条文(解釈第15条 15-1表・第16条 16-1表〜16-4表)の左欄はすべて「最大使用電圧が〜」で始まる。公称電圧のまま倍率を掛けると低い側に外す(第1条第二号イ・1-1表: 1,000V超500,000V未満の係数は 1.15/1.1)。倍率の数値自体の根拠は解釈本文に書かれていない=条文上の所与。
| 区分 | 試験電圧 | 下限規定 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 低圧の電路(機械器具・第16条 16-4表) | 最大使用電圧 × 1.5 倍 | 500 V | 1.5 倍が 500 V 未満となる場合は 500 V |
| 高圧(最大使用電圧 7,000 V 以下・15-1表) | 最大使用電圧 × 1.5 倍 | なし | 7,000 V × 1.5 = 10,500 V がこの区分の上限。下限規定は無い |
| 特別高圧(7,000 V 超 60,000 V 以下・15-1表) | 最大使用電圧 × 1.25 倍 | 10,500 V | 1.25 倍が 10,500 V 未満となる場合は 10,500 V(15,000 V 以下の中性点多重接地式のみ 0.92 倍) |
| 特別高圧(60,000 V 超・15-1表) | 接地方式で分岐 | 75,000 V(1.1 倍のとき) | 非接地式 1.25 倍/接地式は 1.1 倍。170,000 V 超の直接接地式だけ 0.72 倍・0.64 倍 |
| ケーブル(直流試験の場合) | 交流試験電圧の 2 倍 | — | 第15条第一項第二号。√2 倍ではない |
10,500 V の下限は「7,000 V 超」の区分にかかる
「高圧は最低 10,500 V」は誤り。7,000 V × 1.5 = 10,500 V はこの区分で取りうる最大値であって最低保証ではない。10,500 V の下限規定は 7,000 V を超え 60,000 V 以下(1.25 倍)の側にある。 また「最大供給電圧」という用語は解釈に存在しない。条文の用語は 最大使用電圧(第1条第二号)。
需要率・不等率・負荷率の数値関係(B 問題横断)¶
共通の根拠:電力需要の統計的挙動を表す3つの指標
3 つは独立した概念ではなく、同一の電力系統を異なる視点で切り取った指標。試験では 1 問の中で 3 つとも問われることが多い(R03 問 13、R01 問 13 等)。
| 指標 | 定義式 | 値の範囲 | なぜその範囲か |
|---|---|---|---|
| 需要率 | 最大需要電力 ÷ 設備容量 | ≤ 1 | 設備全部が同時に最大需要電力を消費することはない |
| 負荷率 | 平均需要電力 ÷ 最大需要電力 | ≤ 1 | 平均は最大を超えない |
| 不等率 | 各需要家の最大電力の和 ÷ 合成最大電力 | ≥ 1 | 各需要家のピークが同時に発生しないため、合成最大は個別の和より小さくなる |
不等率が唯一 ≥ 1 になる理由
工場 A のピークが 9:00、工場 B のピークが 14:00 の場合、合成の最大電力は「A のピーク + B のピーク」よりも小さい。 したがって分子(各ピークの和)> 分母(合成最大)となり、不等率 > 1 になる。 不等率が大きいほど設備の有効利用率が高い(電力会社にとって有利)。
3 指標の計算順序
問題では「需要率で最大需要電力を求め → 不等率で合成最大電力を求め → 負荷率で平均電力を求める」という流れが典型。どの指標を先に使うかを問題文の与件から判断する。
関連ページ¶
監修ログ¶
- 2026-09-08 監査是正(横展開ラウンド): 絶縁耐力試験電圧の表を全面是正。①「最大供給電圧」は電技解釈にも省令にも存在しない用語(解釈PDF 全文で0件)だったため「最大使用電圧」に是正し、その用語を解説していた warning ブロックごと差し替えた。②「高圧(600V超〜7,000V以下)の最低保証電圧 10,500V」は誤り — 15-1表の7,000V以下の行に下限の括弧書きは無く、10,500V の下限は「7,000Vを超え60,000V以下」(1.25倍)にかかる。7,000×1.5=10,500V はこの区分の上限であって最低保証ではない。③60,000V超の分岐(非接地1.25倍/接地式は170,000V以下なら1.1倍/170,000V超の直接接地のみ0.72・0.64倍)を追記。④「係数1.5はJIS・IECの安全率の考え方に基づく」という原典に根拠の無い理由づけを削除した(work-rules セクション10「根拠のない法令説明を追加しない」)。典拠: 同梱PDF p.25 15-1表・p.3 第1条第二号イ 1-1表。新規ゲート事実
saidai-kyokyu-denatsu-not-a-term・koatsu-has-no-10500-floorが検出。