非接地テブナンパターン — B問題で「対地容量+絶縁低下」を見たら即この型¶
対称三相3線式・非接地方式の高圧電路で、ある相の絶縁抵抗が低下したときの 地絡電流 と 中性点電位 を求める B問題は、すべて 同じ4ステップ で解ける。年度を超えて再利用できる「型」を1枚で固める。
重要度: A(B問題の頻出計算パターン・テブナンの定理+対地静電容量の合成が必須)
0. 棲み分けマップ — ほかページとの境界¶
| ページ | 役割 | 本ページとの違い |
|---|---|---|
| 絶縁テーマ | 条文ベース(電路の絶縁/高圧・低圧の絶縁性能) | 「条文・基準値の暗記」が中心。本ページは「式の組み立て」 |
| 接地工事比較 | A〜D種の物理量比較・本体規定 | 接地工事の 種類選定。本ページは 計算解法 |
| B問題得点戦略 | 時間配分・捨て問・部分点全体戦略 | パターン横断のメタ戦略。本ページは 1パターンの完全攻略 |
| 三相交流理論 | 平衡条件・フェーザ・線間/相電圧 | 理論。本ページは 法規B問題での適用 |
| 解釈第13条 | 電路は大地から絶縁する(原則) | 条文原文(背景)。本ページは 絶縁低下時の計算 |
| 解釈第15条 | 高圧・特別高圧の電路の絶縁性能(試験電圧) | 条文原文(高圧電路の絶縁基準)。本ページは 絶縁低下時の地絡電流計算 |
| 解釈第17条 | B種接地工事(150/Ig 系) | 接地系の 対立パターン 条文。本ページは 非接地系の計算 |
使い分けの目安
試験本番で問題文に「非接地方式」「対地静電容量C」「絶縁抵抗が低下」のうち2つ以上が同時に現れたら、本ページの4ステップを反射的に取り出す。
1. パターン認識 — これは「非接地テブナン」だ¶
1-1. トリガーワード5つ¶
設問文に以下のうち 3つ以上 が現れたら、ほぼ確実にこの型。
| # | トリガーワード | 役割 |
|---|---|---|
| ① | 対称三相3線式・非接地方式 | 中性点がフリー(=テブナンの基準) |
| ② | 対地静電容量C[F](各相) | 対地への漏れ経路 |
| ③ | R相(または1相)の絶縁抵抗が RG[Ω]に低下 | 故障の挿入位置 |
| ④ | 地絡電流 IG | 求める量A |
| ⑤ | 中性点電位 VO | 求める量B |
1-2. 認識フローチャート¶
flowchart TD
A[問題文を読む] --> B{非接地方式と<br/>明記されているか?}
B -- いいえ --> X[別パターン<br/>例: B種接地150/Ig]
B -- はい --> C{対地静電容量Cが<br/>与えられているか?}
C -- いいえ --> X
C -- はい --> D{1相のみ絶縁低下<br/>または地絡発生?}
D -- いいえ --> X
D -- はい --> E[本パターン確定<br/>4ステップで解く]
1-3. 用語・記号対応表¶
| 記号 | 意味 | よくある別表記 |
|---|---|---|
ER |
R相の電源電圧(相電圧E) | E, V_p, E_p |
ω |
角周波数(=2πf) | omega |
C |
1相あたり の対地静電容量[F] | Co, Cg |
RG |
低下した絶縁抵抗値[Ω] | Rg, R_G |
IG |
地絡電流(=I_AG) | I_g, Ig |
VO |
変圧器中性点O点の電位 | V_0, Vn |
2. 万能テンプレ — 4ステップで解ける¶
2-1. ステップ概要¶
flowchart LR
S1[Step1<br/>対地容量を合成<br/>3個並列 = 3C] --> S2[Step2<br/>テブナン開放電圧<br/>Vab = ER]
S2 --> S3[Step3<br/>テブナン等価<br/>インピーダンス<br/>Zab = 1/j3ωC]
S3 --> S4[Step4<br/>地絡電流+<br/>中性点電位を導出]
2-2. 各ステップの中身¶
Step 1 — 対地容量3個を「RGから見て」並列合成¶
RG(地絡点 a-b 間)から回路を見ると、テブナン等価インピーダンスの算出では電源を短絡する。電源を短絡すると、3相の対地容量Cは a点(R相導体)と大地(b点)の間に、3本すべて並列に見える。直列ではない。
Step 2 — RGを取り外したときの開放電圧(テブナンVth)¶
健全時(RG=∞)は対称3相平衡。a点(R相の対地点)b点(大地)間の電圧は R相の相電圧E_R そのもの。
Step 3 — RGから見たテブナン等価インピーダンス¶
電源を短絡(=R相とS相とT相をすべて中性点に短絡)すると、a-b間には 3個の対地容量Cが並列 に見える。
Step 4 — 地絡電流と中性点電位¶
RGをテブナン回路に接続して直列回路として解く。
中性点電位はキルヒホッフ第2法則(中性点O→R相電源→a点→RG→大地→中性点O への閉路)から:
2-3. 数値検証PASS(次元・極限)¶
| 検査項目 | 計算 | 期待値 | 判定 |
|---|---|---|---|
IG の次元 |
[V] / [Ω] = [A] | [A] | PASS |
VO の次元 |
[V] × 無次元 = [V] | [V] | PASS |
RG → 0(完全地絡) |
IG → j3ωC·ER(= 充電電流の合計)/VO → 0(中性点が大地と同電位) |
物理整合 | PASS |
RG → ∞(健全状態) |
IG → 0(地絡なし)/VO → -ER · (1/∞) → 0(厳密には極限0、ただし j3ωC·RG 項が支配的なら -ER/(j3ωC·RG)) |
健全時の中性点フリー | PASS |
C → 0(対地容量なし) |
IG → 0(電流路なし)/VO → -ER(R相電源が直接中性点を引き下げる) |
単相等価で整合 | PASS |
3. フラッグシップ例題 — 令和4年度下期 法規 問13¶
3-1. 問題の骨格¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題年度 | 令和4年度下期(2022年) |
| 問番号 | 問13(B問題・配点14点) |
| 形式 | 計算 2小問(a)(b)/5択 |
| 関連条文 | 解釈第13条(電路の絶縁/原則)・解釈第15条(高圧電路の絶縁性能)/対比:解釈第17条(B種接地) |
| 一次出典 | 一般財団法人 電気技術者試験センター 過去問題(令和4年度下期 法規 問13) |
| 解説補助 | yaku-tik R4下問13 / denken-ou houkir4-2-13 |
| 照合日 | 2026-05-16 |
条文の射程に注意(高圧 vs 低圧)
本問は 高圧電路の非接地方式・対地静電容量C・絶縁低下 をテブナンの定理で解く計算問題。省令第58条・解釈第14条は低圧電路の絶縁抵抗値の規定 であり、本問の計算式の直接根拠ではない。背景条文として参照するのは 解釈第13条(電路の絶縁) と 解釈第15条(高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能)。
3-2. 与条件と回路¶
- 対称三相3線式高圧電路
- 各相の相電圧
ER、角周波数ω - 変圧器中性点 O は 非接地方式
- 各相の対地静電容量
C[F] - R相のみ絶縁抵抗
RG[Ω] に低下(a点=R相導体、b点=大地)
3-3. 設問¶
- (a) RG を取り外したa-b間:開放電圧 Vab=(ア)、a-b間インピーダンス Zab=(イ)、RG を接続したときの電流 IG=(ウ) を求めよ。
- (b) 中性点O点の電位 VO について、キルヒホッフから VO = (エ) + RG·IG = (オ) を求めよ。
3-4. 4ステップ適用¶
Step 1(イ)— 対地容量を合成¶
3本の対地容量Cが中性点から見て並列 → 合成は3C。
Step 2(ア)— RG除去時の開放電圧¶
健全時は対称3相平衡で中性点O は対地基準で電位ゼロ。よってa点(R相導体)b点(大地)間は R相の相電圧 ER。
Step 3(ウ)— テブナン直列回路で IG¶
→ (a) の正解は選択肢 (1)
Step 4(エ)(オ)— 中性点電位¶
キルヒホッフ第2法則:O→電源(R相)→a→RG→大地→Oの閉路で、
(ウ)を代入:
→ (b) の正解は選択肢 (1)
3-5. テブナン等価への変換図¶
4. 類似パターン横展開表¶
| 過去問 | 与条件の違い | 適用ステップ | ひっかけ要素 | 答えの方針 |
|---|---|---|---|---|
| R04下 問13(本ページ セクション3) | 対称三相非接地・R相絶縁低下 | 4ステップそのまま | 3C を C/3 と誤認・VOの符号 | IG=j3ωCER/(1+j3ωCRG) / VO=-ER/(1+j3ωCRG) |
| R05下 問11 | 小規模事業所・変圧器付近1線地絡 | Step 1〜3 のみ(VO問われず) | 高圧側の充電電流計算式の係数 | IG = √3·ωC·V_L 系(線間電圧基準) |
| R01 問13 | B種接地150/Ig 計算系(別パターン) | 4ステップ不適用 | 「B種=150/Ig」のほうを使う | B問題得点戦略 参照 |
| R06上 問13 | B種ED種接地(別パターン) | 4ステップ不適用 | 接地工事種別ごとの抵抗値計算 | 解釈第17条の本体規定 |
| H30 問13 | B種接地計算(別パターン) | 4ステップ不適用 | 同上 | 同上 |
本パターンが効くのは「非接地+対地容量+絶縁低下」の3点セットがそろったときだけ
B種接地系の問題(R01・R06上・H30)は同じB問題でも別パターン(150/Ig)で解く。混同しないこと。
5. ひっかけポイント総まとめ¶
| 重大度 | ひっかけ | 正しい理解 |
|---|---|---|
| 🔴 致命 | 対地容量3個を C/3 と直列合成してしまう | 中性点から見て 並列=3C。直列計算は誤り |
| 🔴 致命 | VO の符号を + にしてしまう | キルヒホッフで O→電源→a→RG→大地→O の閉路を回る向きで -ER+RG·IG |
| 🔴 致命 | 省令第58条・解釈第14条の 低圧の絶縁抵抗値(0.1/0.2/0.4 MΩ ) をこの 高圧計算問題 にそのまま当てる | 本問は高圧電路の非接地・対地容量・絶縁低下のテブナン計算。省令58・解釈14は 低圧電路の絶縁性能基準 であり、計算式の根拠にはならない(背景は解釈第13条/第15条) |
| 🟡 注意 | jωを省略してDC扱いで解く | 対地容量Cは交流回路でのみ電流を流す。Z_C=1/(jωC) の j を消すと位相が崩れる |
| 🟡 注意 | 電圧基準を 線間V_L と 相電圧E_R で混同 | 本パターンは R相の相電圧 ER が基準。線間V_L=√3·ER を使うのは別パターン |
| 🟢 軽度 | 単位 mA / A の取り違え | 問題文の選択肢の単位を最後に必ず再確認 |
| 🟢 軽度 | 極限値(RG→0 / RG→∞)の確認忘れ | 答えが出たら必ず両極限で物理的に整合するかチェック(セクション2-3参照) |
6. 関連条文・理論ページとの接続¶
6-1. 法令側¶
- 解釈第13条 — 電路の絶縁(原則)。「絶縁低下=条文違反の状態」の背景
- 解釈第15条 — 高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能(試験電圧)。本問が対象とする 高圧電路の絶縁 の本体規定
- 解釈第17条 — B種接地工事(150/Ig)。本パターンの 対立パターン(接地系)として併習推奨
- (参考)解釈第14条/省令第58条 — 低圧電路 の絶縁抵抗値。本問(高圧)の計算根拠ではないので混同しない
6-2. 理論側¶
6-3. 戦略側¶
6-4. 出題実績(本パターン適用問題)¶
| 年度 | 問 | 形式 | 何が問われたか |
|---|---|---|---|
| R04下 | 問13 | 計算(B問題) | 本ページ セクション3 で完全解説 |
| R05下 | 問11 | 計算(B問題) | 小規模事業所の1線地絡電流(線間電圧基準) |
→ 本パターン以外の B問題地絡計算(B種150/Ig 系)は B問題得点戦略 を参照。
7. 典拠・更新履歴¶
一次出典(試験原本)¶
- 一般財団法人 電気技術者試験センター:令和4年度 第三種電気主任技術者 下期試験 法規科目 問13(試験問題・正解)
- 試験問題と解答(公式ページ)
- 注:問題用紙PDFは年度・期ごとに公開フォルダが変わるため、上記公式ページから「令和4年度下期 第三種 法規」をたどる
解説補助(二次ソース・照合用)¶
- yaku-tik:https://yaku-tik.com/denken/r4s-h13/(令和4年下期 法規 問13)
- 電験王(denken-ou):https://denken-ou.com/houkir4-2-13/(同上)
関連条文(背景)¶
- 電気設備の技術基準の解釈:第13条(電路の絶縁/原則)・第15条(高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能)・第17条(B種接地工事・対比)
- 参考:解釈第14条/省令第58条は 低圧電路の絶縁性能 であり、本問(高圧)の計算式の直接根拠ではない
監修プロセス¶
| 検査項目 | 状態 |
|---|---|
| 一次照合(yaku-tik / denken-ou 両方で問題文・選択肢・正解確認) | ✅ 2026-05-16 |
| 数値検証PASS(次元・極限値・特殊ケース) | ✅ セクション 2-3 参照 |
| wiki_check.py CI-clean | ✅ 実行確認 |
| AI社員3者諮問(落合・ひろゆき・ホリエモン) | ✅ プラン段階で全員一致Reshape→ひろゆき案採用 |
バージョン履歴¶
| 版 | 日付 | 変更内容 |
|---|---|---|
| v1.0 | 2026-05-16 | 新規作成。R04下問13 をフラッグシップ例題として4ステップテンプレを確立 |
| v1.1 | 2026-05-16 | ChatGPTレビュー反映:(1) 関連条文を解釈第13・15条(背景)+第17条(対比)に修正、低圧基準(解釈第14・省令58)を計算根拠から外す/(2) 一次出典を電気技術者試験センターに格上げ、yaku-tik・電験王は解説補助に格下げ/(3) 「電源短絡→C×3並列=3C」の変換図A を Step 1 に追加/(4) 低圧基準の流用ひっかけ行を追加 |
最終確認: 2026-05-16 | ステータス: v1.1 完全版 | バージョニング基準