コンテンツにスキップ

🔌 pn接合・ダイオード

ダイオードの問題は「どの種類か(整流・ツェナー・LED)」と「バイアスの向き(順・逆)」を最初に確認する。それだけで回路動作の8割が決まる。

⚡ 5秒で思い出す

「順バイアス→空乏層が縮む→電流が流れる。逆バイアス→空乏層が広がる→電流が流れない(ただし完全ゼロではない)」


🧠 概念・趣旨

pn接合の基礎

半導体に不純物を加えると「多数キャリア」が変わる。これを利用してダイオードを作る。

  • p型半導体: III族不純物(B:ホウ素、Al:アルミニウム)を添加 → 正孔(ホール)が多数キャリア
  • n型半導体: V族不純物(P:リン、As:ヒ素)を添加 → 電子が多数キャリア
  • 接合部(pn接合): p型とn型を接触させると、正孔と電子が相互に拡散して打ち消し合い、キャリアが存在しない「空乏層」が形成される
  • ビルトイン電位(内部電位差): 空乏層に電位差が生じ、それ以上の拡散を阻止する平衡状態になる

「p型は正に帯電している」は誤り

p型半導体は正孔(プラスの電荷を持つキャリア)が多いが、材料全体としては不純物原子と正孔の数が釣り合っており、電気的に中性。 「p型 = プラスに帯電」と混同するのは典型的な誤答パターン。


ダイオードの順逆特性

バイアス 接続方向 空乏層 電流
順バイアス p側を正、n側を負 縮む 流れる
逆バイアス p側を負、n側を正 広がる ほぼ流れない
  • 順方向電圧降下: Si(シリコン)≒ 0.6〜0.7V、Ge(ゲルマニウム)≒ 0.3V
  • 逆方向飽和電流: 逆バイアス時でも極微小な電流(nA〜μAオーダー)が流れる

「逆バイアスで電流ゼロ」は近似

厳密には逆方向飽和電流 Is(数nA程度)が流れている。試験では「ほぼ流れない」が正解だが、「完全にゼロ」と断言する選択肢は誤り。


整流回路

交流を直流に変換する基本回路。ダイオードの枚数と出力波形が出題の核心。

半波整流(ダイオード1本)

  • 正の半サイクルのみ通過、負の半サイクルはカット
  • 公式: 平均値 = Vm/π(≒ 0.318Vm)

全波整流・ブリッジ整流(ダイオード4本)

  • 正負両サイクルを正方向に変換
  • 公式: 平均値 = 2Vm/π(≒ 0.637Vm)

(Vm = 交流の最大値)

半波整流の平均値を「Vm/2」と答えるミス

「半波だから半分 → Vm/2」と反射的に答える誤答が多い。

正しくは Vm/π(≒ 0.318Vm)。半サイクルの正弦波の平均をπで割る計算から導かれる。 覚え方:「半波は π 分の Vm、全波は π 分の 2Vm」と組み合わせで覚える。


ツェナーダイオード

逆バイアスを大きくしていくと、ある電圧(ツェナー電圧 Vz)で急激に電流が流れる「降伏」が起きる。これを意図的に利用した素子。

  • 使用方向: 逆バイアス(通常ダイオードとは逆)
  • 動作: 逆電圧が Vz に達すると一定電圧を維持しながら電流が流れ続ける
  • 用途: 定電圧回路・電源の過電圧保護

ツェナーは「逆向きで使う」

通常の整流ダイオードは順バイアスで使うが、ツェナーは逆バイアスで使う定電圧素子。 回路図でダイオード記号が逆向きに入っていたら「ツェナー定電圧回路」と判断する。


📊 ダイオード種類比較表

種類 使用方向 主な用途 特徴
整流ダイオード 順バイアス 整流・スイッチング 一般用途。Si: 0.6〜0.7V降下
ツェナーダイオード 逆バイアス(降伏) 定電圧・過電圧保護 Vzで一定電圧を維持
発光ダイオード(LED) 順バイアス 表示・照明 順電流→光放出(電子・正孔の再結合)
フォトダイオード 逆バイアス 光検出センサ 光が当たる→逆電流が流れる

💡 なぜ空乏層でスイッチングするのか

「空乏層の幅 = ダイオードのON/OFF」の因果

  • 順バイアス: 外部電圧がビルトイン電位に抗して正孔・電子を接合部に押し込む → 空乏層が消滅 → キャリアが移動できる → 電流が流れる
  • 逆バイアス: 外部電圧がビルトイン電位と同方向に加わる → 空乏層がさらに広がる → キャリアが枯渇 → 電流が流れない

結論: 順バイアス→空乏層を消す→ON、逆バイアス→空乏層を広げる→OFF この因果を言えれば回路解析に応用できる。


🚨 ひっかかりポイント

混同 No.1: 「p型は正に帯電している」

誤パターン: 「正孔(プラス)が多い = p型全体がプラスに帯電」と混同する。

p型半導体は電気的中性。不純物原子(負イオンとして固定)と正孔の数が釣り合っている。 「帯電」は電荷が偏った状態を指し、p型全体では偏りがない。

混同 No.2: 半波整流の平均値を Vm/2 と答える

誤パターン: 「半波 = 半分 = Vm/2」と直感で答える。

正弦波の半サイクルを平均すると Vm × (2/π)/2 = Vm/π。 全波の 2Vm/π と対比して「半波はその半分 = Vm/π」と覚えると間違えない。

混同 No.3: ツェナーの向きを逆に覚える

誤パターン: 「ツェナーも順バイアスで使う」と思い込む。

ツェナーは逆バイアス側の降伏現象を利用する。回路図では通常ダイオードと逆向きに描かれる。 「逆に使うから定電圧が取れる」という用途とセットで覚える。

混同 No.4: 「逆バイアスで電流ゼロ」

誤パターン: 逆バイアス = 電流完全遮断と断言する。

微小な逆方向飽和電流(Is)が常に流れている。試験の記述問題では「ほぼ流れない」「逆方向飽和電流のみ流れる」が正確な表現。


📝 頻出論点と落とし穴

  1. 🎯 整流回路の実効値・平均値の使い分け

    • 発熱計算(ジュール熱)には実効値を使う(交流の実効値と同じ扱い)
    • 直流電圧・電流の大きさには平均値を使う
    • 問題が「平均電圧」か「実効値電圧」かを冒頭で確認してから計算する
  2. 🎯 ブリッジ整流の電圧降下

    • ダイオード4本のブリッジでは、電流は常に2本のダイオードを通過する
    • 出力電圧 = Vm - 2 × 0.7V(Siダイオードの場合)の補正が必要な場合がある
    • 「ダイオードの電圧降下を無視できる」と問題文に書いてあれば補正不要
  3. 🎯 ツェナーダイオードの電流方向

    • ツェナー回路では電流の矢印が「ダイオード記号の逆向き」に流れる
    • 直列抵抗(電流制限抵抗)で Vz を超えた電圧を消費する設計が基本
    • 負荷が変動しても Vz は一定 → 定電圧回路として機能する理由
  4. 🎯 LEDとフォトダイオードの電流方向の違い

    • LED(順バイアス):電流の向きと光放出は順方向
    • フォトダイオード(逆バイアス):光が当たると少数キャリアが増加し、逆方向電流が増える(光電流)
    • 出題では「光→電流」か「電流→光」かで素子を判断する

🧠 正答者 vs 誤答者の視点差

観点 ❌ 誤答者 ✅ 正答者
p型の帯電 「正孔が多い = 正に帯電」と思い込む 不純物原子と正孔が釣り合い、全体は電気的中性と理解
逆バイアスの電流 「電流ゼロ」と断言する 逆方向飽和電流が微小ながら流れると理解
半波整流の平均値 「Vm/2」と直感で答える 「Vm/π」と正弦波の平均計算から導いて答える
ツェナーの向き 「順バイアスで使う」と混同 「逆バイアス側の降伏を利用する」と用途とセットで理解
整流回路の計算 実効値と平均値を混同して計算する 発熱→実効値、直流出力→平均値と使い分ける

🔗 関連テーマ


最終確認: 2026-04-14 | ステータス: v1.0 | バージョニング基準