pn接合・ダイオード¶
ダイオードの問題は「どの種類か(整流・ツェナー・LED)」と「バイアスの向き(順・逆)」を最初に確認する。それだけで回路動作の8割が決まる。
5秒で思い出す¶
「順バイアス→空乏層が縮む→電流が流れる。逆バイアス→空乏層が広がる→電流が流れない(ただし完全ゼロではない)」
概念・趣旨¶
pn接合の基礎¶
半導体に不純物を加えると「多数キャリア」が変わる。これを利用してダイオードを作る。
- p型半導体: III族不純物(B:ホウ素、Al:アルミニウム)を添加 → 正孔(ホール)が多数キャリア
- n型半導体: V族不純物(P:リン、As:ヒ素)を添加 → 電子が多数キャリア
- 接合部(pn接合): p型とn型を接触させると、正孔と電子が相互に拡散して打ち消し合い、キャリアが存在しない「空乏層」が形成される
- ビルトイン電位(内部電位差): 空乏層に電位差が生じ、それ以上の拡散を阻止する平衡状態になる
「p型は正に帯電している」は誤り
p型半導体は正孔(プラスの電荷を持つキャリア)が多いが、材料全体としては不純物原子と正孔の数が釣り合っており、電気的に中性。 「p型 = プラスに帯電」と混同するのは典型的な誤答パターン。
ダイオードの順逆特性¶
| バイアス | 接続方向 | 空乏層 | 電流 |
|---|---|---|---|
| 順バイアス | p側を正、n側を負 | 縮む | 流れる |
| 逆バイアス | p側を負、n側を正 | 広がる | ほぼ流れない |
- 順方向電圧降下: Si(シリコン)≒ 0.6〜0.7V、Ge(ゲルマニウム)≒ 0.3V
- 逆方向飽和電流: 逆バイアス時でも極微小な電流(nA〜μAオーダー)が流れる
「逆バイアスで電流ゼロ」は近似
厳密には逆方向飽和電流 Is(数nA程度)が流れている。試験では「ほぼ流れない」が正解だが、「完全にゼロ」と断言する選択肢は誤り。
整流回路¶
交流を直流に変換する基本回路。ダイオードの枚数と出力波形が出題の核心。
半波整流(ダイオード1本)
- 正の半サイクルのみ通過、負の半サイクルはカット
- 公式: 平均値 = Vm/π(≒ 0.318Vm)
全波整流・ブリッジ整流(ダイオード4本)
- 正負両サイクルを正方向に変換
- 公式: 平均値 = 2Vm/π(≒ 0.637Vm)
(Vm = 交流の最大値)
半波整流の平均値を「Vm/2」と答えるミス
「半波だから半分 → Vm/2」と反射的に答える誤答が多い。
正しくは Vm/π(≒ 0.318Vm)。半サイクルの正弦波の平均をπで割る計算から導かれる。 覚え方:「半波は π 分の Vm、全波は π 分の 2Vm」と組み合わせで覚える。
ツェナーダイオード¶
逆バイアスを大きくしていくと、ある電圧(ツェナー電圧 Vz)で急激に電流が流れる「降伏」が起きる。これを意図的に利用した素子。
- 使用方向: 逆バイアス(通常ダイオードとは逆)
- 動作: 逆電圧が Vz に達すると一定電圧を維持しながら電流が流れ続ける
- 用途: 定電圧回路・電源の過電圧保護
ツェナーは「逆向きで使う」
通常の整流ダイオードは順バイアスで使うが、ツェナーは逆バイアスで使う定電圧素子。 回路図でダイオード記号が逆向きに入っていたら「ツェナー定電圧回路」と判断する。
ダイオード種類比較表¶
| 種類 | 使用方向 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 整流ダイオード | 順バイアス | 整流・スイッチング | 一般用途。Si: 0.6〜0.7V降下 |
| ツェナーダイオード | 逆バイアス(降伏) | 定電圧・過電圧保護 | Vzで一定電圧を維持 |
| 発光ダイオード(LED) | 順バイアス | 表示・照明 | 順電流→光放出(電子・正孔の再結合) |
| フォトダイオード | 逆バイアス | 光検出センサ | 光が当たる→逆電流が流れる |
なぜ空乏層でスイッチングするのか¶
「空乏層の幅 = ダイオードのON/OFF」の因果
- 順バイアス: 外部電圧がビルトイン電位に抗して正孔・電子を接合部に押し込む → 空乏層が消滅 → キャリアが移動できる → 電流が流れる
- 逆バイアス: 外部電圧がビルトイン電位と同方向に加わる → 空乏層がさらに広がる → キャリアが枯渇 → 電流が流れない
結論: 順バイアス→空乏層を消す→ON、逆バイアス→空乏層を広げる→OFF この因果を言えれば回路解析に応用できる。
ひっかかりポイント¶
混同 No.1: 「p型は正に帯電している」
誤パターン: 「正孔(プラス)が多い = p型全体がプラスに帯電」と混同する。
p型半導体は電気的中性。不純物原子(負イオンとして固定)と正孔の数が釣り合っている。 「帯電」は電荷が偏った状態を指し、p型全体では偏りがない。
混同 No.2: 半波整流の平均値を Vm/2 と答える
誤パターン: 「半波 = 半分 = Vm/2」と直感で答える。
正弦波の半サイクルを平均すると Vm × (2/π)/2 = Vm/π。 全波の 2Vm/π と対比して「半波はその半分 = Vm/π」と覚えると間違えない。
混同 No.3: ツェナーの向きを逆に覚える
誤パターン: 「ツェナーも順バイアスで使う」と思い込む。
ツェナーは逆バイアス側の降伏現象を利用する。回路図では通常ダイオードと逆向きに描かれる。 「逆に使うから定電圧が取れる」という用途とセットで覚える。
混同 No.4: 「逆バイアスで電流ゼロ」
誤パターン: 逆バイアス = 電流完全遮断と断言する。
微小な逆方向飽和電流(Is)が常に流れている。試験の記述問題では「ほぼ流れない」「逆方向飽和電流のみ流れる」が正確な表現。
頻出論点と落とし穴¶
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整流回路の実効値・平均値の使い分け
- 発熱計算(ジュール熱)には実効値を使う(交流の実効値と同じ扱い)
- 直流電圧・電流の大きさには平均値を使う
- 問題が「平均電圧」か「実効値電圧」かを冒頭で確認してから計算する
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ブリッジ整流の電圧降下
- ダイオード4本のブリッジでは、電流は常に2本のダイオードを通過する
- 出力電圧 = Vm - 2 × 0.7V(Siダイオードの場合)の補正が必要な場合がある
- 「ダイオードの電圧降下を無視できる」と問題文に書いてあれば補正不要
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ツェナーダイオードの電流方向
- ツェナー回路では電流の矢印が「ダイオード記号の逆向き」に流れる
- 直列抵抗(電流制限抵抗)で Vz を超えた電圧を消費する設計が基本
- 負荷が変動しても Vz は一定 → 定電圧回路として機能する理由
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LEDとフォトダイオードの電流方向の違い
- LED(順バイアス):電流の向きと光放出は順方向
- フォトダイオード(逆バイアス):光が当たると少数キャリアが増加し、逆方向電流が増える(光電流)
- 出題では「光→電流」か「電流→光」かで素子を判断する
正答者 vs 誤答者の視点差¶
| 観点 | ||
|---|---|---|
| p型の帯電 | 「正孔が多い = 正に帯電」と思い込む | 不純物原子と正孔が釣り合い、全体は電気的中性と理解 |
| 逆バイアスの電流 | 「電流ゼロ」と断言する | 逆方向飽和電流が微小ながら流れると理解 |
| 半波整流の平均値 | 「Vm/2」と直感で答える | 「Vm/π」と正弦波の平均計算から導いて答える |
| ツェナーの向き | 「順バイアスで使う」と混同 | 「逆バイアス側の降伏を利用する」と用途とセットで理解 |
| 整流回路の計算 | 実効値と平均値を混同して計算する | 発熱→実効値、直流出力→平均値と使い分ける |
関連テーマ¶
最終確認: 2026-04-14 | ステータス: v1.0 | バージョニング基準